Then And Now

 

 1. I Can't Explain
 2. My Generation
 3. The Kids Are Alright
 4. Substitute
 5. I'm A Boy
 6. Happy Jack
 7. I Can See For Miles
 8. Magic Bus
 9. Pinball Wizard
10. See Me, Feel Me
11. Summertime Blues
12. Behind Blue Eyes
13. Won't Get Fooled Again
14. 5:15
15. Love, Reign O'er Me
16. Sqeeze Box
17. Who Are You
18. You Better You Bet
19. Real Good Looking Boy
20. Old Red Wine


 本作"Then And Now"は、ザ・フーがハイ・ナンバースとしてデビュー後40周年を 記念して、米国ゲフィン・レーベル(ユニヴァーサル・グループである)が制作した「ベスト盤」である。2002 年にも"Ultimate Collection"と題した2枚組ベスト盤が発売されており、本サイトでも「これこそ決定的ベスト盤だ」と しておきながら、またしてもベスト盤を取り上げる羽目となった。

 もっとも、今回は従来のベスト盤に加え、新曲が2曲収めら れており、話題の中心はこちらであろう。何しろ、ザ・フー名義としては、ピート・タウンゼンドのソロ作"The Iron Man"(1989年発表)に収録された2曲("Dig"、"Fire"のこと。ただし、"Fire"はカバー)以来なのだから。

 新曲のみによるアルバムを期待する向きもあるだろうが、還暦近くになったピートにそんなことを期待していては、いつ出来上がるか知れたものではな い。先行して2曲だけを発売するというのは、正しい判断だったと思える(このやり方は、ローリング・ストーンズの"Forty Licks"にならったのかもしれない)。


◆リマスタリング
 本作も"Ultimate Collection"と同様に、ミックスはオリジナルのままで、デジタル・リマスタリングが施されている。ただし、最終的なボリューム・バランスは、 ベースを強調したものになっていて、これはもしかするとジョン・エントウィッスルへの追悼の意味が込められているのかもしれない。

 ところで、"Tommy"のデラックス・エディションに おいても、オリジナル曲の2チャンネル・ステレオ・バージョンでは、オリジナル・ミックスだったし、どうもこのところの再発作品は、全てこの形態("My Generation"は別)のようだ。となると、一連の「リミックス&リマスター・シリーズ」 とは一体なんだったのだろうか。もちろん、リマスタリング 技術が10年前よりも進歩していることは知っているが。
 


◆選曲とバージョン
 選曲に関しては、"Ultitame Collection"に比べるとどうしても分が悪い。本作は1枚CDで新曲をプラスするということから、過去の曲の収録時間は70分弱とならざるを得 ず、ある程度仕方のないことであろう。それでも本作には何らかの選曲基準があったように思えてならない。それは2点あって、
(1)ライブでよく取り上げられた曲を中心とする、
(2)米国におけるザ・フーの活動を記録するベスト盤にする、
であると推測している

 例えば、"Pictures Of Lily"が選に漏れたのに、"Happy Jack"が収録されたのは何故だろうか。曲の出来としては前者の方が上だろう。だが後者は、初めて米国でトップ30入りしたという記念の 曲である し、ライブでもキース・ムーン存命中には結構取り上げられた曲でもある。また、"I Can See For Miles"はである(となると、"I'm A Boy"が外れてもおかしくはなかったのだが)。
 その他、"See Me, Feel Me"や"Love Reign O'er Me"もライブで多く取り上げられた曲である。

 次にバージョンについてである。M3 "The Kids Are Alright"は、相変わらずギターソロを大幅カットしたバージョンである。この点については何とかならないのだろうか。また、M15 "Love Reign O'er Me"は編集バージョンである。特に後者については納得しかねるところがあるし、もちろん"Pictures Of Lily"は収録されるべきであっただろう。

 さて、"Ultimate Collection"と比べると、編集盤としての価値はどうだろうか。やはり、「一長一短がある」という、つまらない結論に落ち着いてしまうだろう。 "Ultimate Collection"には、ザ・フーの魅力を網羅するには充分な曲数(特に英国盤!)という長所があるが、モノ、擬似ステレオ、ステレオの混在が激しい という短所があるからだ。


◆新曲

 2曲とも、新規のファン層を開拓するためではなく、以前からのファンに向けて演奏しているような仕上がりである。ファンに媚びているというのではなく て、過去に思いをはせる今の自分の心境を唄っているというのが的確だろう。


(1) Real Good Looking Boy
 イントロがエルヴィス・プレス リーの"I Can't Help Falling In Love With You"(邦題:「好きにならずにいられない」)で始まると いう仕掛けが施されている。この曲は中間パートでも引用されていて、ロジャー・ダルトリーは、
"Wise men say
Only fools, only fools rush in
But I - I can't help
Fallin in love, in love with you"
と唄っている。ピートが他者の作品をカバーとしてでなく引用するというのも珍しいことだ。先例としては、"Tommy"における"The Hawker"くらいだろう。

 オリジナルのパートを含めて、この曲はミディアム・テンポになっている。ロジャーも軽くシャウト気味に唄っているのだが、加齢から来る衰えは隠せないも のの、変な力みがなくていい。
 アレンジは特に目新しいものではなく、むしろザ・フーが過去において得意としていたものを利用している。アコースティック・ギターを打楽器のように使う のはピートが昔から得意としていたし、エレクトリック・ギターでフレーズではなく「トーン」を重視した弾き方は、"Who Are You"でやっていたことだ。先ほど述べた中間パートの後には、パワーコードとドラムの絡みが来て、これも往年のファンを喜ばせるだろう。
 そのドラムだが、例によってザック・スターキーが叩いている。最早、ザック以外にドラマーは考えられないだ ろう。キースと比べると大人しい叩き方ではあるが、現在のザ・フーに当時のキースのエネルギーは迷惑(?)だろうし、今のザックの持つグ ルーブ感が丁度よいのではないかと思う。
 残念なのが、グレッグ・レイクのベースで、CDラジカセ程度の装置では殆ど聴こえない。ヘッドフォンを使った方がいいだろう。

 次に歌詞についてである。中高年となった主人公が少年時代を振り返って思い出すのが、あの「格好いい少年」のことだという話から始まっている。し かもいわゆる「一目ぼれ」である。その格好いい少年とは、曲を引用した頃からも想像できるが、エリヴィス・プレスリーに代表されるロックンロール・スター のことであろう。
 主人公は、自分の姿を鏡に写してみる(恐らく憧れの少年の真似をしてだろう)。自分も結構イケていると思っているのだが(天にも昇る気持ち?)、母親が水を差すことを言う。

 「お前は醜いよ。あの少年とは似ても似 つかないじゃないか。」

 浮かれている息子に対して、「お前、何言っているんだよ」位は、どの母親でも言うかもしれないが、歌詞からは息子を傷つけるようなニュアンスが伝 わってくるピートは昔か ら、母親を浅はかな人間として描いてきたが、この年になっても、その点は変わっていないようだ。
 しかも、その後に続く歌詞では、母親が主人公に向かって「お前は変な遺伝子を全て受け継いでしまった」と言っている。「追い討ち」にも程があるような気 がするが。

 その後、「好きにならずに・・・」の歌詞を引用した後、話は現在に戻る。「可愛いお前」と言うのが誰を指すのか不明だが(多分パートナーだろ う)、その相手から、「あなたは今のままで美しいのよ」と言われ、主人公は「何とか生き延びていけると考える」となっている。

 だが、このパートだけを読んで、「ピーとも年取って背中がかゆくなるようなラブソングしか書かなくなったのか」と批判するのは見当はずれである。 次の2行もパートナーを称える歌詞ではあるが、3行目に至ると、

「俺は、つまりは『美しい嘘』だと分かっ ている」

なのである。もっとも、全体としては感謝の念が強いことには変わりがないが。


 さて、この曲の歌詞について別の解釈をしてみよう。例えば、「可愛いお前」は、今でもザ・フーのライブを 見に行くファンと考えるのはどうだろうか("you"は単複同形だから、別に問題はない)。彼(女)たちは、「全盛期に比べるとやっぱり ね」だとか「キースもジョンもいないザ・フーなんて」と思いながらも、現在のザ・フーを称えてくれる。「美しい嘘」だってことは、主人公(=ピート、ロ ジャー)だって気付いている。でも、そうしたファンのお陰でこうしてロックしていられるんだ。そういうことを言いたかったのではないだろうか。


(2)Old Red Wine
 
この曲は、サブタイトルが"for John"となっていて、ジョンに奉げた曲であるらしい。スローなバラードだが、今のロジャーにはこの程度のテンポの曲がマッチしているよ うに思える。ただしエンディングでは、往年のザ・フーを彷彿させるかのように、テンポアップした、荒々しいギター・フレーズを主体にしたインストゥルメン タル・パートになっている。これも、往年のファンにとっては喜ばしい。

 歌詞は、決して「古い赤ワイン」をジョンの比喩として使っているわけではなく、 "you"がジョンに相当するようだ。例えば、
     「君は日がまだ高いうちに寝入ったんだね」
というフレーズは、ジョンの死を残念がっている様子がうかがえる。ただ、その直後に、
     「君の連れの女性は、すっかり出来上がっていた(酒をしこたま飲んだ)そうじゃないか」
というのは、ジョンの死にまつわるスキャンダルを連想せざるにはいられない。いや、それだけではない。更に歌詞は続く。
     「彼女は言った。『私は彼を連れて行こうとした/下へやら上へやら』」
下手な訳になってしまったが、何だか、これもドラッグを連想させるではないか。

 もっとも、この歌詞は、"My Wife"がピートの頭の中にあったのかもしれないが。

 死者への追悼の歌詞として は、随分過激なジョークだと思う。しかしジョンは、生前にブラック・ジョークを元にした歌詞を多く書いていたことでも知られている。であるからこそ、こう いった歌詞はジョンを送るに相応しいとも言えるのではないか。



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(2004-7-11)