Live At Leeds(25th Anniversary Edition)
ザ・フーはライブバンドとして特に有名であったが、1982年の活動停止までに発売されたライブ・アルバムは、"Live At Leeds"ただ1枚である。これは1970年の2月14日に行なわれたリーズ大学でのライブを録音・編集して同年に発売された。ジャケットは海賊盤を模したようなシンプルなデザインである。ザ・フーを知らない人だったら、見向きもしないような気もするが、それでも全英3位、全米4位を記録している。プロモーションはどうやったのだろうか、と少しばかりだが気になってしまう。
1970年に発売された当時は、6曲のみが収録されていた。それらは"Young Man Blues"、"Substitute"、"Summertime Blues"、"Shakin' All Over"、"My Generation"、"Magic Bus"である。もちろん、レコードの収録時間制限もあったのだろうし、"Tommy"に続いてまたも2枚組とすることに、トラック・レコードが難色を示したことがあったのかもしれない。しかし、この選曲はかなり意図的と感じる。その意図とは、「最も知的なヘビーメタル」というイメージの造出ではないだろうか。実際、オリジナルの"Live At Leeds"から聞き取れるのは、歪んだヘビーかつハードな音、静と動のコントラスト、ロジャーの低音を前面に出した雄々しいボーカルなど、どれもハードロックの共通項である。逆に、"Tattoo"、"Amazinng Journey/Sparks"、"I'm A Boy"などで聞ける繊細さは排除されているし、ハードロックのボーカリストとしては難があるジョンがリードボーカルを取った曲も収められていない。
では、何故当時のザ・フーはそういったイメージを造出することに執心したのだろうか。それは、もちろんレッド・ツエッペリンへの対抗意識もあったのだろうが、それよりも、ザ・フー=「トミー」という、古くは無いが強固なパブリック・イメージを捨て去る必要性を感じていたからに他ならない。
しかし、1994年のボックスセット発売という、キャリア総括の出来事を通過した後、ザ・フーが実に多面な音楽性を持っていたことが明らかになっている。だからこそ、リミックス&リマスター盤を制作するにあたり、スタッフは、単にオリジナルの音質改善という目的だけでなく、「多面性」というザ・フーの本質をCD化することに意義を見出したのかもしれない。そこで、本作にはオリジナルで排除された曲を復活させたのではないだろうか。
ところで、本作が発売された後に、"Tommy"からは2曲しか収められていないことに対し一部で不満があった。筆者としても、あるものは全部出して欲しいと思うことがあった。しかし、冷静に考えると、これはこれで良かったのではないかとも思えるようになった。それは、"Live
At
Leeds"のコンセプトは、あくまでも「"Tommy"とは異なるザ・フー」の提示であると認識しているからである。更に、リミックス&リマスター盤は、往年のファンだけでなく、若者に向けても発信すべき作品なのであるから、当初のコンセプトをある程度までは維持すべきだとも思う(そういった意味では、"Quick
One+10"などのボーナストラックには、引っ掛かりがある)。なるほど「ワイト島フェスティバル」では、"Tommy"全曲を収めているが、ライブバンドとしての魅力を伝えるという点では共通している。しかし、「ワイト島」は歴史的イベントをありのままに伝えるという意義があるのに対し、"Leeds"の方は、繰り返すが、「"Tommy"とは異なるザ・フー」の提示に意義があるのだ。
(くどいようだが、往年のファン向けならば、全て放出で構わないのである)
などと小難しいことを書いているが、"Tommy"から2曲しか収められなかったのは、締め切りに間に合わなかったのか、テープの状態が思わしくなかったのか、そんな理由だけかもしれないのである。
1. Heaven And Hell
2. I Can't
Explain
3. Fortune Teller
4. Tattoo
5. Young Man
Blues
6. Substitute
7.
Happy Jack
8. I'm A Boy
9.
A Quick One While He's Away
10. Amazing
Journey/Sparks
11. Summertime Blues
12. Shakin' All Over
13. My
Generation
14. Magic Bus
ジョンが作詞作曲したもので、リード・ボーカルもジョンが取っている。いきなり、ヘビーなイントロで始まるアップテンポな曲である。ジョンの書いた曲としては、比較的キャッチーなメロディを持っているし、ライブ向きな曲でもあるだろう。
アルバムの殆どがそうであるとも言えるのだが、キースのシンバル音が全く鳴り止まない。その一方でバスドラ中心のリード・ドラム(キースにはリズム・キープという言葉は似合わない)が聞ける。
間奏のパートは、当時彼等が得意としていたインプロビゼーション中心の演奏である。ピートはリード・ギターを弾きまくっている。
ザ・フーのデビュー・シングルである。オリジナルよりもテンポを遅くしているが、これはこれでスタジオ盤と違ってタメが効いていて、聴き応えがある演奏である。また、ロジャーのボーカルもこのテンポに合った歌唱法であるような気がするが、なんといっても、イントロのリフが素晴らしい。ステージから飛び出してくるような錯覚を持ってしまう(「ワイト島」ではもっと顕著であるが)。
キースのドラミングは、全く常識外れな所がある。片手又は片足で連打をしている小節がそれである。それも含めて、並のバンドならリズム的に崩壊してしまうかのようなリズム・アンサンブルを平然とやってのける点が凄い。
この曲はストーンズのカバーで結構知られている(はず)。ピートのギターのエフェクトは、前の2曲ではファズのようであったが、この曲では今でいうオーバー・ドライブのような音を出している。
この曲でのキースのドラムは、ジョン・ボーナムを思わせるような連打(乱れ打ちという表現が近いのだが、乱れてはいない)を聞かせてくれる。きっと、ボーナムの打法が気に入っていたのだろう。
この曲での演奏は、前半はブルース・ロック調であるが、後半になるとポップなR&Rになって行く。このあたりがザ・フーのバンドとしての個性とも言えるのだが。
アルバム"The Who Sell Out"から演奏された唯一の曲。もともと繊細な曲、アレンジであるが、ここでもピートはアルペジオを弾いたりしているので、曲の持ち味を充分出していると言える。ところがサビメロでは、轟音ギターのストロークをやっているので、レコードとはまた違った楽しみがあると思う。
また、後半ではピートがストリングスのような音をエレクトリック・ギターで出していることも聞き逃したくない。
前半では、何回か繰り返されるギター・リフ(シングルノート中心)とキースのヘビーなドラム、そしてロジャーの雄々しいボーカルが魅力である。これだけでも圧倒されてしまう。アルバム全体として、演奏が素晴らしいことは勿論であるが、中でもこの曲は最高と言って良いだろう。
中盤以降は、ピートの無茶とも言えるリードギター(あのチョーキング連発などはその最たる例)がバンドを引っ張っているが、同時にジョンもリード・ベースを弾きまくっている。やはりザ・フーはアンサンブル重視であり、ソロなどは二の次なのだろう。それにしても、キースのドラミングは、ドラマーが二人いるとしか思えない(勿論錯覚であるが)。
後半では静と動のコントラストが魅力であり、繊細なトーンのピートのギターを中心に据えている。
オリジナルからして、ベースがもう一台のギターの役割を果たすアレンジなのだが、それがライブでは一層顕著である。また、キースのドラムもオリジナルより遥かに手数が多く、躍動感がある。もちろんピートのあのD/G/Aのリフも健在だし、ファンならこのリフだけでも大喜びするだろう。ただ、この曲ではロジャーのボーカル、特に初めのうちがあまり芳しくないようでもある。
オリジナルよりもやはりこのライブの方が良いと感じてしまう。特に、キースの変則ドラミングは、ちょっと他の人では考え付かないだろうし、それをライブでやってしまうところが、本当に凄い。
元々R&Bからの脱却を図って作られたような曲(ヘンリー・パーセルからコード進行を戴いたとされる)であるせいか、ピートのギターのハードロック度は高くない。しかし、であるからこそ、ザ・フーの魅力はパワーだけではないと再認識させられる。
9. A Quick One While He's Away
今までライブで同曲が演奏された時よりもハードなギターが聞ける。ジョンのベースはやはりもう一台のギターである。キースも後半ではまるでスピーカから飛び出してくるようなダイナミックなドラミングを聴かせてくれる。ただし、前半でのキースのノリがあまり良くないようで、もたついているような印象を持ってしまう。
当日はアルバム"Tommy"から全曲が演奏されたという話を聴くが、このアルバムに収められたのは、この2曲のメドレーである。"Tommy"が、クラシックからの影響を今まで以上に受けて作られたアルバムであるためか、ハードというよりもアンサンブルや展開の巣晴らしさを聴かせる演奏になっている。例えば、イントロでジョンがベースにエフェクトをかけていない点や、ピートがストリングスのような音を出している点(M4の所にも書いたことだが)がそうであるし、"Sparks"などは基本的にミディアム・テンポの曲なのに、全くだれることがない点もそうである。
もちろん、オリジナル同様に、"Amazing Journey"でのキースのドラミングが非常にインパクトがあることには変わりが無い。
ロカビリーのエディ・コクランのカバーであるが、現在"Summertime Blues"をカバーで演奏する場合、必ず手本とされるのがザ・フーのバージョンであることは疑いの余地が無いだろう。また日本ではザ・フーのシングルの中で最も売れた曲でもある(喜ぶべきこととは思えないが)。
この演奏に対して、最も話題になったのは、やはりジョンの「テケテケテケテケ」ベース奏法ではないか。筆者も、初めて聴いた時は、ギタリストがもう一人ゲスト参加しているに違いないと思ったものだ(余談だが、ベンチャーズの面々はこのアルバムを聞いたことがあるだろうか)。
また、ピートのコード・ストロークも、基本的には3コード(A/D/E)なのだが(厳密に言えばA9なども含まれている)、ピックの当て方などに変化を付けることで、実に豊かな表現を生み出している。もっともこれはピートの最も得意とするところであるから、「何を今更」なのであるが。
本作つまりリマスター盤では、ピートの冒頭のカウントが聞けるのも、ファンとして嬉しい。明確な理由など無いけれども。ところで、ザ・フーがライブでカウントを取るのは珍しいと思ったのだが、これは単に筆者の無知であろうか。
パイレーツのメンバーが書いた曲のカバーである。とにかく、ロジャーの雄々しく太いボーカルの迫力に圧倒される。
オリジナルの"My Generation"は2分半程度までで、その後は"See Me, Feel Me"、ピート、ジョン、キースによるインプロビゼーション、"Sparks"を含んでおり、トータルで15分弱の演奏である。オリジナル"My Generation"のパートの演奏も間違い無く素晴らしいが、中盤以降のインプロビゼーションのパートは更に凄いと思う。特に静と動のコントラストは素晴らしい(M5の所にも書いたが)。また、本作中最も「ヘビーメタル」を感じさせる演奏が、8分40秒過ぎから聴くことができる。エンディングはまるでレッド・ツェッペリンであり、ピートがツェッペリンを嫌いだったなんて、怪しいと思わせる内容である(例のインタビューは、インタビュアーや視聴者・読者を混乱させる、ピートの「悪い癖」だと思う。
ボ・ディドリーのリズムを拝借して出来た曲であるが、オリジナルではさほどボ・ディドリー調の印象は強くないだろう。しかし、ライブではやはりボ・ディドリー調を強く意識したアレンジになっている。中盤までは、キースはウッド・ブロックを叩いているだけだが、結構嬉しそうに叩いていたのではないかと推測してしまう。それに対して、キースの代わりなのか、ジョンはバスドラのようなベースを弾いている。また、ピートのギターが左右のチャンネルから聞える(右のチャンネルの方にディレイがある)が、これはミックス段階で処理したのだろう。
中盤以降は、ハードロックに変化し、ピートのファズを効かせたギター、ジョンのベース、キースのデカいドラミングが聞ける。ここでも、静と動のコントラストが上手く作用している。しかし、確かにハードロックなのだが、レッド・ツェッペリンと違って粘っこい感覚がないところが、ザ・フーの本来の特徴なのだろう(おや、M14と矛盾するようなことを書いているな)。