The Kids Are Alright

 

 "The Kids Are Alright" は、1979年に英米で公開された同名タイトル映画のサウンドトラック盤である。この映画はデビュー〜キース死亡直前までのザ・フーの足跡を追ったものであるが、当時の日本では映画館館で公開されなかった。その後ビデオになって発売されているが、一部カットされた箇所がある。この映画のタイトルは初期ザ・フーの代表曲の1つから取られているが、1974年までのザ・フー(というよりはピート)にとってはメインテーマでもあったのである。ところが、本作にはタイトル曲が収められていない。良い映像が見つからなかったのだろうか。

 本作はアナログ・レコード時代は2枚組であったが、CD化に際して曲数を減らし1枚CDとして再発されていた。ところが、1999年の紙ジャケCDシリーズにおいては、原盤通りの2枚組CDとして限定発売されたのである。収録トラックはライブ演奏だったり、スタジオロ録音そのままだったりする。ただし、他のCDと異なり、デジタル・リマスターやデジタル・リミックスは施されていない。理由は明らかにされていないが、ピートがこの映画を気に入っていないからかもしれないが、筆者なりに推測すれば、本作の価値が発表当時よりも低下した、とスタッフ一連のプロジェクトの関係者が判断しているためだろうと考えられる。これについては後述する。

 本作のプロデュースはジョン・エントウィッスルが担当している。一番不思議な点は、本作の収録曲のうち、映画で使われていない曲があったり、逆に映画で使われながら本作に収録されなかった曲があることだろう。恐らくは映画の最終的な編集段階でボツにしたのだろうが、その後にサントラ盤の編集をすれば済むことであり、意味不明である。

 さて、「本作の現時点での価値」という点であるが、やはり発表当時に比べて相対的に下がったというのが正直な感想である。それは、映画に対してでなく、サントラ盤の本作に対してのことである。というのも、90年代に入って、様々なライブ映像や未発表曲が日の目を見たため、スタジオ録音したトラックをそのまま流用していることに対し、あまり良いこととは思えなくなったからである。ただし、ビデオについても、一部手直しして欲しい点があるので、再編集したビデオを新規に発売し、サントラはコレクター向けの限定販売とすべきではないだろうか。例えば、ビデオを買った人だけの特典でも構わないような気がする。なお、その場合、本作の付録のブックレットは当然ビデオの付録にすべきであろう。

 


DISC-1

1. My Generation

 米国のTVショーに出演した時のライブから取られている(1967年)。恐らく、放映前に演奏だけを録音しておいて、本番では当て振りにしたのだろう。イントロのギター音が歪んでいるのは、テープの回転数がずれていたためだと考えられる。この曲は、ザ・フーの攻撃性という特色を最もよく表しているものであるが、ここでの演奏自体は比較的大人しい。更に、演奏の最後に、例によって楽器破壊パフォーマンスが繰り広げられているが、これもそれほど激しいものではなく、何処か遠慮が見られる。しかし、アンプが爆発してしまったのは、アクシデントなのだろうか?

 

2. I Can't Explain

 英国のTVショー出演時のライブ(1965年?)から取られている。これも放映前に演奏を録音したものと考えられる。テンポがレコードよりも早くなっているが、そのせいでレコードよりも攻撃的に感じられる。

 

3. Happy Jack

 映画ではプロモーション・フィルムが流れ、バックではスタジオ録音のテイクがそのまま使われているが、本作ではライブ・バージョンが使われている。クリス・チャールズワースによれば、これはあのリーズ大学でのライブということである。全盛期のライブであるから、質が高いことは言うまでもないが、ロンドン・コロシアムのライブ(ビデオ盤"30 Years Maximum R&B")の方が爆発度の点で、軍配が上がると思う。

 

4. I Can See For Miles

 M1と同日のTV出演時に使われた曲であるが、こちらはライブ演奏ではなく、レコードそのものであるような気がする。実際は、この曲の後にM1が演奏されたはずである。

 

5. Magic Bus

6. Long Live Rock

 M5、M6はスタジオ録音テイクがそのまま使われている。M6は映画ではエンディングで使われ、後期ザ・フーのメインテーマとなっていた曲でもあるだけに、無造作にこのような箇所に挿入されているのは、大変残念である。

 

7. Anyway, Anyhow, Anywhere

 英国でのTV出演時のライブから取られている。形態はM2と同様だろう。ピートによるフィードバック奏法(しかもハーモニクスをフィードバックさせる)が聞ける。ジミ・ヘンドリクスが登場するまで、ピートは紛れもなく最も革新的なギタリストだったと思う。

 

8. Young Man Blues

 ロンドン・コロシアムでのライブらしい。ということは1970年か。当時のザ・フーのライブでは定番であり、ハイライトでもあった曲である。ピートのリード・ギターが前面に出たミックスになっている。

 

9. My Wife

 何年のライブなのか不明だが、恐らくは1973年以降だと思う。というのは、演奏が70年前後と比べて落ち着いているからである。

 

10. Baba O'riley

 キースが参加した最後のライブとなった、1978年のシェパートン・フィルム・スタジオでの演奏から取られている。初めのうち、キースのドラムがもたついているのだが、ピートのギターが入ってくる頃から、だいぶまともになっている。とはいっても、往年のキースの面影は何処にも無い。救いは、ピートやロジャーに気が入っていることだろう(ジョンはいつも平常心に見える)。ロジャーのハーモニカ演奏も良い。

 


DISC-2

1. A Quick One

 長いことお蔵入りしていた、TV番組「ロックンロール・サーカス」でのライブから取られている(1968年)。音質が良いことは真っ先に挙げておかねばなら無いだろう。ピートのアルペジオ・ギター、ジョンの早弾きベースがクリアに聞える。キースが時折歓声を上げているのが聞え、つい笑ってしまうが、ドラミングそのものはやはり「天才」の一言。

 オリジナルからして、それほど爆発力ある演奏にはしにくい曲であるが(例えば、モンタレーでも激しく演奏してはいない。ただし、それは後続の曲があるからでもあるが)、ここでは終盤素晴らしいほどの爆発力を見せつけている。それに対する前半の繊細さな演奏は、まぎれもなくザ・フーである。その上、エンディングがコミカルになっている点も評価したい。

 それにしても、何故ザ・フーはこの曲を選んで演奏したのだろうか。一般に言われているのが、翌年(1969年)"Tommy"を発表するに当たって、反応を知りたかったので、「ミニ・オペラ」を演奏することにしたのだろう、という説である。これは同時に楽器破壊パフォーマンスからの決別という意味でもある。それもあるだろうが、しかし、実情はどうだったのだろう。持ち歌は1曲だけという要請がストーンズ側からあったので、出来るだけ長く演奏していられる曲を選んだというのが真相なのではないか?

 

2. Tommy, Can You Hear Me?

 スタジオ録音のテイクがそのまま取られている。本曲は、"Tommy"の中でもそれほど重要ではない。つなぎとしての存在である。あまり必然性が感じられない選曲である。無理に考えれば、ここでは「トミー=ピート」であり、キースを失って自分の殻にこもろうとするピートに対するスタッフ側からのメッセージだと読めなくは無い。

 

3. Sparks

4. Pnball Wizard

5. See Me, Feel Me

 M3〜M5はウッドストックでのライブ(1969年)から取られている。本人達にとってはあまり良い思い出では無いようだが、演奏そのものは良い(ただし、ワイト島やリーズに比べると劣るような気がするが)。映像の無造作振りには呆れてしまうが、これはCDだから映像は関係無いので、その点は良い(?)
特に、M5における次第にテンポアップして行くあたりが最も聞き所であろう。

 

6. Join Together/Roadrunner/My Generation Blues

 3曲のメドレーである。年代が分からないのだが、1975年辺りだろうか。ライブ自体はレッド・ツェッペリンを相当意識したものになっている。"Join Together"ではロジャーがファルセットでシャウトしているし、"My Generation Blues"のエンディングのギター・フレーズはジミー・ペイジを連想させるからだ。ところが、"Roadrunner"でのピートのコード・カッティングの音は、当時のハードロック系のギターの音とは全く異質に聞える。どちらかというと、90年代前半の米国オルタナティブに近い感触である。

 逆に、映画の方で "Join Together" がカットされている点については、改訂を望みたい。

 

7. Won't Get Fooled Again

 "Baba O'riley"と同日にライブ演奏されたものから取られている。要するに、キース最後の演奏なのである。シンセサイザーは録音テープを使っているはずだが、そんな中でインプロビゼーションを試みるとは、なんというバンドなのだろうか、と絶句したいくらいである。

 

                                                 (2000-8-2)

(2000-8-12)訂正

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