1. My Generation (Radio 1
Jingle)
2. Anyway, Anyhow, Anywhere
3. Good Lovin'
4. Just You And Me
5. Leaving Here
6. My Generation
7. The Good's Gone
8. La La La Lies
9. Substitute
10. Man With Money
11. Dancing In The Street
12. Disguises
13. I'm A Boy
14. Run Run Run
15. Boris The Spider
16. Happy Jack
17. See My Way
18. Pictures Of Lily
19. A Quick One (While He's Away)
20. Substitute (Version2)
21. The Seeker
22. I'm Free
23. Shakin' All Over/Spoonful
24. Relay
25. Long Live Rock
26. Boris The Spider ((Radio 1 Jingle)
ザ・フーが1965年から1973年において英国BBCのために録音したライブの音源が、2000年になって公式盤CDとして発売された。ファンとして嬉しい限りである。というのも、ザ・フーの60年代のライブ音源は、ごくごく一部がビデオで発売されただけだったからである。
本作に収められた演奏は、ラジオ放送(一部テレビ放送)を目的として録音されている。現在のようなCD時代においても、FM放送の周波数帯域は15kHz以下だし、当時の録音技術から言っても、正直なところ、筆者は音質にはあまり期待していなかった。デジタル・リマスターのおかげなのか定かではないが、本作の音は実にクリアである。再発CDよりも音質が良いと感じたところも多々ある。マスターテープの保存状態が良かったのかもしれない。
本作を聴いてまず感じるのは、コーラス・ワークの上手さである。これが本当にライブ録音なのだろうか。そのせいか、ロジャーのボーカルの拙さが目立つ箇所もある。その一点を除けば、演奏力の高さに驚くばかりである(スタジオ・ライブであるから、録り直しをしたこともあっただろうが)。目立つものとして、以下の3点を挙げておく。
(1)ピートが「トミー」発表以前に盛んにやっていたフィードバック奏法、しかも、単に音が延びるというのではなく、ハーモニクスをフィードバックさせ、それを暴発でなくコントロールしている点が特徴である(特にM2)。しかし、ラジオでフィードバック奏法が聞けるなんて。知らない人がラジオをつけた途端に、フィードバック音が聞こえたら、その人は慌てふためくに違いない。
(2)ジョンのベースはまるでギタリスト並みである。ルート音を弾いてグルーブ感を生み出すというレベルに留まらないテクニックは、今までも充分知られてはいたことなのだが。それにしても、ベース音がよく聞こえる(M11、M19)。
(3)キースのドラム、これはザ・フーのサウンドの要であることは、ファンならば誰でも認識していることではある。しかし、本作において顕著であり、キースの特異さを感じるのは、バスドラのプレイであろう。並みのドラマーの場合、バスドラもしくはハイハットでリズムをキープすることに留まっている。そうでなければ、バスドラは低音で迫力を出すために使うというアイデアに終始することが殆どであろう。しかし、本作におけるキースのプレイは、バスドラだけでグルーブ感を生み出している。同じパターンを繰り返すのではなく、ある小節で3拍めを抜いたりするのがそれである(特にM3、M5)。また、タムの叩き方においても、他のドラマーとはかなり毛色が異なるものがある(M8)。
しかし、本作で聴ける演奏は、クラブのような観客を前にした演奏にみられるほどの爆発力は無く、ある程度抑えられている。やはり、ライブは観客からのフィードバックが、バンドに対し無意識な作用を及ぼすのだろうか、と改めて考えさせられたりする。
ところで、コーラスワーク云々の所でも触れたが、本作中の諸音源はどのような形態で録音されたのであろうか。本作は録音年代順に収録されていて、分かりやすいのだが、まずM1〜M19は1960年代の録音のようで、これらは一発録りのようだ。次に、M20〜M23は1970年の録音で、後からギターやキーボードをオーバーダブしているようだ。そして、M24とM25はバッキングにはレコードを使い、ボーカルだけ後から入れているようである。これはテレビ放送用で1973年の録音である。してみると、1960年代と1970年代とでは、オーバーダブ無し有りという差異があることに気付く。実は、この間に約2年半の隔たりがあるのである。その間にザ・フーのライブの形式は、クラブでの1時間未満の演奏から、大会場での2時間の演奏に変化している。クラブ時代の場合、ライブはあくまでも限られた層に対するものだった(本当にモッズだけが聴きに行っていたわけではなかろうが)。そして、「マス」に対してラジオでのライブが存在したわけである。ところが、大会場となると、相手は「マス」である。つまり、ラジオでのライブは、その役割を終えるか変質せざるを得ない。その結果、ラジオでのライブは、オーバーダブを採用することで、外でのライブとは「別のもの」として残ったのではないか、と考えられるのである(意識的か無意識かは分からないが)。
一方、1973年録音の2曲はテレビ向けである。映画「ザ・キッズ・アー・オールライト」の「スマザース・ブラザース・ショー」などを見ても分かることだが、テレビ出演時は、ボーカルだけライブで、バックの演奏は予め録音したテープを使うことが多いらしい(日本とは事情が異なる)。結局、この2曲はその習慣に則っているわけであろう。
それでは、前の文章と重複する箇所もあるが、一部の曲について個別に述べる。
M1: ラジオのジングル。本編のM6よりも、キースのバスドラが冴えている。
M2: コーラスがばっちり決まっている。最大の聴きどころは、ピートによるハーモニクスのフィードバック奏法であろう。
M3: ラスカルズのバージョンが有名(マツダのCMで使われている)。ザ・フーは恐らくラスカルズのレコードを参考にしている。
M4: ジェームス・ブラウン(JB)のカバー。メンバーの中でも特にロジャーがJBのファンらしい。しかし、JBのようなアクの強さは感じられず、むしろ漂白された印象を与えてしまう。しかし、それがザ・フーの特色でもあるのだが。
M5: ザ・フーがカバーした作品としては、個人的にはこの曲が一番好きである。初期ザ・フーの特徴でもある縦ノリのビート感覚が、R&BもしくはR&Rからロックが独立したことを如実に表している。ところで、この曲の歌詞の冒頭は、レッド・ツェッペリンの「ハートブレーカー」に引用されたのだろうな。
M7: ピートのギター・トーンのアイデアの多彩さが光る。
M9: M20に比べてレコードに近い演奏である。どうも、ロジャーはこの曲を唄うのが不得手なようだ。
M10: エヴァリー・ブラザースというと上品なイメージがあるが、なるほどザ・フーによるこの演奏もボーカルだけはソフトである。しかし、バックの演奏はハードだ。特にエンディングへ向けてのインスト・パートは。
M11: 超有名なモータウン・ソング。ザ・キンクス、ヴァン・ヘイレン、ミック・ジャガー&デヴィッド・ボウイらによるカバーが良く知られている。それらに比べて、ザ・フーのバージョンは白っぽい。やはりジョンのファンキーなベースが最大の聴きどころであろう。
M12: ドラムの金属的な音に注目されたい。これは意図的にチューニングしたのだろうが、キースというと「叩きまくり」のイメージが強いのだが、ロック界において、ドラムの音そのものを研究したパイオニアであったことも忘れてはならないだろう。
M16: 「ハッピー・ジャック」はいつも通りキースの独壇場である。最後のしわがれ声はやはりジョンなのだろうか。
M18: ギターの代わりにキーボードを使った演奏である。おそらく、レコードでザ・フーのライブ感覚が出ているから、このような編成にしたのではないか。
M22: ロジャーがソフトにこの曲を唄うのは、ライブ・バージョンでは、今まで聞いたことがなかったので、逆に嬉しい。
M23: ロジャーの声にエフェクトがかけられているようだ。最大の聴きどころは、「スプーンフ」のパートにおけるピートの爆発するコード・カッティングであろう。
M24: バックの演奏はレコードを流用しているし、それについては既に解説を書いているので、ここで別段取り上げる必要はなかった、はずなのだが。
今回聴いてみて感じたのは、キースのドラム・パターンが、「抑制されたグルーブ感」を生み出していることである。砕けた言い方をすれば、「ザ・フー流ダンス・ビート」か。
M25: スタッフのミスにより、冒頭でバックの音がきちんと入っていない。ピートは歌詞を間違えてしまい笑ってしまう、など出来は良くない。
なお、アメリカでは、BBCセッションズは2枚組で発売されている(限定らしいが)。一枚目は日本盤、英国盤と同じ内容である。2枚目は選から漏れた7曲プラス、ピートのインタビューが収録されている。収録曲は以下の通りである。
1. Pete Townshend Interview
2. Pinball Wizard
3. See Me, Feel Me
4. I Don't Even Know Myself
5. I Can See For Miles
6. Heaven And Hell
7. The Seeker (Version2)
8. Summertime Blues
参考文献:ライナーノーツ
(2000-1-8)