The Zombies "Odessey And Oracle"
1. Care Of Cell 44
2. A Rose For Emily
3. Maybe After He's Gone
4. Beechwood Park
5. Brief Candles
6. Hung Up On A Dream
7. Changes
8. I Want Her She Wants Me
9. THis Will Be Our Year
10. Butcher's Tale (Front 1914)
11. Freinds Of Mine
12. Time Of Season
本作は、ザ・ゾンビーズとしての最後のアルバムである。発表は1968年(英国では4月、米国では10月)で、実は当時すでにバンドは分裂状態にあったそうだ。
全12曲からなる本作は、60年代英国ポップ・バンドが好きな人からすれば、名盤中の名盤に挙げられる作品であるらしい。筆者にはそこまでの思い入れはないが、名盤という点については賛成である。ただし、惜しむらくは発表がやや遅かったことであろう。本作も発表当時は、「サージェント・ペパーズの亜流」とみなされたのではないか。本作が、ビートルズやビーチボーイズの影響下に生まれたことは否定できないだろうし、その強力が引力圏から脱出できているとは言い難い。
もう1点、本作の問題点を挙げるならば、それは曲順であろう。本作で最もキャッチーな曲である"Frends
Of Mine"と"Time Of Season"が、アルバムの最後に並んでいるのである。これでは、M11とM12が本作のボーナス・トラックのような印象を受けてしまう(当時、ボーナス・トラックという用語はなかったと思うが)。M1〜M10でみせた「ゾンビーズの新たな展開」に対してもマイナスだし、M11とM12に対してもマイナスである。むしろ、A面、B面の1曲めに、これら2曲を振り分けておけば、もっとアルバムとしてバランスが取れたし、好セールスも記録したのではないかと思う。
だが、そういった問題点があることを考慮しても、本作の出来はかなり良いと思う。まず、曲の出来が良い。どうしても、アルバムを通して聞くと、最後の2曲の印象が強く、M1〜M10が頭に残りづらいのだが、確かにそれらは地味とはいえ、かなりのハイレベルである。そして、何と言ってもコーラスワークが素晴らしい。ビーチボーイズに匹敵すると言っても過言ではあるまい。
また、録音エンジニアの貢献も忘れてはならないだろう。当時は恐らく4トラック録音だったと考えられ、制約も多々あったであろうが、各パートの定位の振り分け方などには、本当に感心させられる。
では、各曲ごとに述べる。
1. Care Of Cell 44
幕開けは、「サージェント・ペパーズ」を連想させるベースラインとビーチボーイズ風コーラスが印象的な曲である。歌詞は、刑務所に入っている友人に宛てた手紙のような内容である。その友人はもうすぐ「娑婆」に戻ってくることになっている。ここで、刑務所を軍隊のメタファーだと考えるのは的外れだろうか?
2. A Rose For Emily
ピアノをバックにした独唱のようなスタイルの曲。
「薔薇」は幸福の象徴と考えて間違いないだろう。エミリーは、自宅で薔薇を栽培している。もしかしたら売っているのかもしれない。歌詞の結末はあっけないもので、エミリーは幸福になることなく死んでいったとされている。
3. Maybe After He's Gone
アコースティック・ギターをベースにしたアレンジの曲だが、メロトロンが効果的に使われている。コーラスワークが素晴らしい。
歌詞には、僕、彼女、彼という3人が登場する。僕と彼女とはかつて恋愛関係にあったのだが、彼が彼女を奪い取ってしまったという設定になっている。タイトルにもある通り、2ndヴァースにおいて、
「奴が去ったならば、彼女は僕の元に戻ってくるだろう」
と歌われるのだが、その後の展開はというと、結局は彼女は戻らないようなのである。4thヴァースでは、
「僕は(かつてのように)息をすることはないだろう」、つまり、
「僕が活き活きとすることはないだろう」という絶望感が歌われているのである。
4. Beechwood Park
左チャンネルからオルガンが聞こえ、左右両チャンネルからリードボーカルが聞こえるという配置がなされた曲。ドラム奏法は、プロコル・ハルムの「青い影」のドラムに似ているような気がする。
歌詞は、ビーチウッド・パークでの彼女との思い出を綴ったものである。
5. Brief Candles
冒頭は、静かなピアノソロのイントロに導かれてボーカルが入ってくる。全体としてはまったく別の2曲を合体させた構成になっている。
歌詞は、彼と彼女について第3者の視点から書かれたものである。正直なところ、よく分からない内容である。例えば、「彼女が彼の元を去った時に、彼は彼女を思っていた以上に必要としていたことに気付く」という下りがあるのだが、その理由が「彼女は彼にとって必要ではないから」なのである。妙に哲学的である。
6. Hung Up On A Dream
これもピアノソロによるイントロで幕を開ける。その後、ロック編成のアレンジに移り、ピアノは目立たなくなる。ギターの拙さは、今となっては却って面白く聞こえる。本作中でも屈指の名曲であろう。
邦題が「夢破れて」となっているが、歌詞からすると、夢の途中で目が覚めたというのが正しいようだ。夢の中で主人公は、人々から愛や思いやりについて語られたとされている。恐らく、作者にとっての現実とは、これとは正反対のことばかりだったのではないか。
7. Changes
元々はアカペラ曲だったのではないかと思える曲調である。まるで尺八のような音色の管楽器が使われており、これが印象深い。他にもメロトロンやタブラが使われており、サイケ色全開である。
これも邦題が歌詞の内容にそぐわない。「変革」と名付けられているが、そんな大それたことではなく、「変化していく彼女」について歌ったものである。彼女は主人公の手の届かない人になっていく様子が描かれているのである。
8. I Want Her She Wants Me
ベースとドラムが主体になった曲。途中からハープシコードが入ってくる。M1と同様に、ベースラインは「サージェント・ペパーズ」を連想させる。
歌詞は、僕と彼女のことを歌ったものだが、非常に冷めた印象がある。
9. This Will Be Our Year
日本盤(ボーナストラック付き)CDでは、この曲はモノラル・ミックスになっている。理由は不明である。ブラスが使われたり、ソウル風の歌唱法が聞ける。コーラスは他の曲に比べて控えめだ。
歌詞は、「今年は僕らの年になるんだ/やっと来たんだ」といった、恋愛における喜びを歌ったもので、M8とはまるで正反対である。
10. Butcher's Tale (Front 1914)
アルバム中、歌詞もアレンジも異色と言える曲である。サウンド・コラージュとリード・オルガンという組み合わせは、まるで商業的成功を考えていないかのような組み合わせだし、気を付けていないと聞き逃してしまいそうな打楽器も混じっている。
今聞くと、メロディは悪くないのに、オルガンの音がそれに噛み合っていないような印象を受ける。ピアノあるいはアコースティック・ギターを使った方が良かったのではないか。 歌詞は、タイトルにもある通り「虐殺者の物語」であり、テロリストと伝道師が歌われている。ここでは、伝道しが否定的なニュアンスで扱われている。
ところで、副題の「1914」とは第一次世界大戦の始まった年なのだが、恐らく作者はベトナム戦争のことを直接歌詞にせずに、1914年に舞台を設定したのだろう。
11. Freinds Of Mine
M10に続いてこの曲を聴くと、「斬新な音作りに対する強迫観念」という言葉を思い出す。4半世紀を過ぎた今、M10とM11のどちらを聞きたいか、と問われれば、筆者は迷わずM11を押す。この曲はシングルA面になって当然と思えるキャッチーなメロディを持っているし、アレンジもポップだ。むしろ、王道ブリティッシュ・ポップと言うべきか。
歌詞は友人に彼女が出来た「僕」が、そのことを非常に喜んでいるということを歌ったもので、「恋愛の絆は僕を勇気付ける」というフレーズが印象的だ。しかし、現実主義者やひねくれ者は、こんな歌詞を歓迎するはずないな。
曲が唐突に終わってしまうのは、一寸頂けない。後に「アビー・ロード」のB面で同様の志向がみられるが、「アビー・ロード」B面の場合、「ヒア・カムズ・ザ・サン」を除くと、殆どポール・マッカートニーの独壇場になっていて、そのポールが唐突に曲を終わらせてしまうという点が、ゴシップ・マスコミを喜ばせるという、ある種の「遊び」になっているのだが、この曲の場合、むしろバンドが上手く機能しているようなアレンジになっているのだから(実態は違ったとしてもである)、唐突なエンディングになどしてもらいたくない。
12. Time Of Season
M11に続いて、この曲もシングル向けである(事実シングルとしてヒットしている)。コーラスがリード・ボーカルの歌詞を繰り返すというのは、伝統的なポップ・ソングの手法だが、その一方で、オルガンの使い方は当時のサイケデリック時代を感じさせる。ポップ・ソングのお手本のようなアレンジである。
勝手な想像だが、ザ・ドアーズのデビューが1967年であることを考えると、このオルガン奏法は、レイ・マンザレクに触発されたのではないかと思う。
歌詞も伝統的なポップ・ソング、例えばモータウンだとかティン・パン・アレイあたりの手法に則ったものになっているようだ。
(2003-4-5)