Travis "The Man Who"
トラヴィスは英国グラスゴー出身のバンドであり、"The
Man Who"は彼等の2枚目のアルバムになる。発売されてからかれこれ1年がたとうとしているが、本国ではいまだにチャートの上位にいる。特に今年に入ってからはトップ5から下がったことが無いくらい、支持され続けている。
ところが、日本や米国では殆ど話題にも上らない。日本では洋楽誌が取り上げているくらいである(熱心とは言えないが)。このアルバムが、英国以外では受け入られないような内容であるならば致し方無いが、そうではない。メロディもポップだし、歌詞も英国人にしか分からない類のものではない。何故なのだろうか。
(アメリカの場合、そもそも発売されていないかもしれないが)
さて、本作を一言で表すと、「歌もの」となるのだろう。作詞・作曲者のフラン・ヒーリー自身も、「僕はミュージックではなくソングを作る」と答えているのだから。全てはメロディとそれを唄うボーカルに注力されている。アレンジ(プロデューサーは、90年代末においてその分野の代表者といえるナイジェル・ゴドリッチが担当)も、ボーカルを際立たせるために作られていると言って良いだろう。
それと同等に重要なのは、非常に個人的な歌が集められていることだろう。「僕と君」以外には他者が存在しない世界。こう書くとまるで子供の書いた詞のようだが、殆どの曲において、子供の視点から書かれているのだから当然だろう。この点について、幾つか例を挙げてみることにする。
(1)M1"Writing To Reach You"では、何も変わらない日常が冒頭で唄
われているが、これなどまさに子供の感覚である。(いわゆる)大人なら、
それを当然のこととして受けとめるから、わざわざ曲にしないだろう。
(2)M6 "Turn" は、外の世界に出たいと思う人の視点から書かれてい
る。"turn"は方向を変えるという意味だろうが、ここでは社会を変革すると
いうことではなく、自分自身を変えたいというニュアンスが込められてい
る。これもやはり子供の感覚である。
本作のメロディはどれをとっても素晴らしい出来映えであるが、その中でも個人的に気に入った2曲を以下に挙げておく。
M1 "Writing To Reach
You"
イントロのギターとドラムはオアシスの「ワンダーウォール」との類似性を思い出させる が、兎にも角にも本作の世界に引きずり込まれるような力がある。
M4
"Drift Wood"
エレクトリック・ギターの音色が良い。
本作はいわゆる「新しいポップ・ミュージック」ではない。従って、現在の主流からは遠く離れた地点に立っているアルバムである。だからと言って、価値が無いとは言えないだろう。第一、最先端の音楽なんて、そう易々と大衆が触れられるはずが無いではないか。
(それをいいことに、5年前に存在していたスタイルを借りてきて、「最先端」と詐称する輩とその取り巻きがいるようだが)
さて、本作を聞いて容易に類似点が挙げられそうなのが、やはり同郷のティーンエイジ・ファンクラブだろう。ティーンエイジ・ファンクラブの場合、サウンドは結構変遷をたどっているが、ポップなメロディへのこだわりや社会性を敢えて排除した歌詞を書くという姿勢は一貫しているようだ。そこらあたりがトラヴィスとの共通性になると言える。もっとも、トラヴィスの場合まだ2作目であるから、今後どの方向に向かうのか全くわからない。
(2000-4-1)