R.E.M. "Reveal"

 

01. The Lifting
02. I've Been High
03. All The Way To Reno (You're Gonna Be A Star)
04. She Just Wants To Be
05. Disappear
06. Saturn Return
07. Beat A Drum
08. Imitation Of Life
09. Summer Turns To High
10. Chorus And The RIng
11. I'll Take The Rain
12. Beachball

 

 R.E.M.は結成21年になるベテランのロック・バンドである。この位のベテランとなると、アイデアが出尽くしてしまったりするため、新しいことに挑戦することは稀になってくる。もし、挑戦したとしても、結果としてしっくり行かなかったりすることが多い。R.E.M.に関しても、アルバム毎に新しいことに挑戦してはいるのだが、ここ何作かは、どうも上手く行っていないように(筆者は)思っていた。少数のマニアのみを相手にしているようにも思えた。

 ところが本作は、そういった問題(一部の人にとっては問題ではないかもしれない)をクリアした傑作に仕上がっているのである。個人的には、「アウト・オブ・タイム」や「オートマティック・フォー・ザ・ピープル」と同レベルの傑作的一枚だと断言したい。

 振りかえってみると、前作「アップ」の制作に入る前に、ドラマーのビリ・ベイリーが健康上の理由からバンドを脱退している。15年以上も一緒だったメンバーが抜けた場合、得てしてバンドのレベルは下がってしまうものだが、R.E.M.は、それを良い方向に転換した。すなわち、電子音響の導入やプログラミングによるパーカッションの導入である。しかし、「アップ」では、まだまだ実験段階であったのだろう。「アップ」発売当時に聞いたときには、「地味な作品」以外の感想は持ちようが無かった。

 ところが本作では、そういった実験的な部分が消化・克服されているのである。先に挙げた電子音響やプログラミングによるパーカッションが実に自然に聞こえてくるのだ。だが、そういう感覚にさせるのは、メロディの良さに負うところが大きいと思う。

 良いメロディと言っても、例えばポール・マッカートニーやブライアン・ウィルソンといった人達が作るメロディと、本作で聴けるメロディとの間には、かなりの隔たりがある。前者はあくまでもポップであり、流麗である。一方後者は、わざとひねってあったり、こちらの予想を裏切るようなメロディラインに持って行ったりしている。そのため、比較的地味に思えてしまう点もある。しかし、地味と言っても「アップ」のそれではない。「オートマティック・フォー・ザ・ピープル」といい勝負の地味さである。

 次はリズム面について述べる。上記の通りドラマーが脱退したこともあって、プログラミングによるパーカッションを導入している。それにより、8ビートの典型的なロック・ドラミングというパターンは非常に少ない。むしろ、最近の若手が積極的に使っているようなドラム・パターンが多用されているようだ。これは、テクノやブレークビーツを通過してしまった身としては、非常に肯定できる転身(?)である。

 3番目に、ストリングスの積極的な導入について述べる。「アウト・オブ・タイム」でも相当ストリングスを導入していたので、これが初めてというわけではない。しかし、「アウト・オブ・タイム」ではカントリーやトラッド・フォーク調の使い方であったのに対し、本作ではオーケストレーションのように使われている点が大きく異なる。普通、今回のような目的でストリングスを使うと、どうしても甘い方に流れがちだが、本作はそうなっていない。非常に抑制されている感じがする。それでこそ、R.E.M.だ、なんて言いたくもなるが。

 4番目は歌詞についてである。R.E.M.の歌詞は、昔からだが、隠喩が多用されており、非常に分かり難い。この点についてR.E.M.側は、「解釈は聞き手に任せる」という態度で一貫しているようだ。確かに、現代社会への批判・警鐘と取れるような歌詞もあるし(M1、M5、M8、M9、M10)、過去に決別し、未来を志向するような歌詞もある(M2、M4、M7、M12)。ラブソングと政治的な抵抗宣言のダブル・ミーニングではないかと思える歌詞もある(M11)。だが、そういった特定の解釈をするべきではないのかもしれない。むしろ、多義な解釈をしてみるべきだと思うのである(それが可能かどうかは別として)。

 なお、アルバム・タイトルの"Reveal"は、M2の序盤に登場する。この曲中では「啓示」の意味で使われているが、アルバム全体が「啓示」だ、などと大げさなことを主張する意図を、R.E.M.側が持っているわけでもないだろう。また、別の意味の「暴露」でもなさそうだ。

 

 それでは、各曲ごとに見て行く。

 M1が始まると、「アウト・オブ・タイム」や「オートマティック・フォー・ザ・ピープル」を思い出して嬉しくなる。何と言っても、サビのメロディは絶品だと思う。だが、単なる昔に戻りました的な曲ではない。シンセサイザーによる位相を微妙に変化させた音は、まさに今のものである。

 M2は、M1以上に積極的にエレクトロ・サウンドを導入している。モールス信号が打楽器とメロディ楽器の中間のように使われたり、TVゲームの音も入っている。これが昔だったら、非常に不自然に感じられたであろうが、今となっては当たり前のようにも思える。そして、ドラム・パターンもロックンロール的8ビートではない。テクノロジー主導の音楽により得られたものであることは明らかであろう。

 M3は、今までとは異なり、ギター主体のオーソドックスなロックである。変な効果音(SE)が入っていたりするが、これはそれほど重要ではないだろう。サビでもある"you're gonna be a star"のメロディは、かなり変である。

 M4は、アコースティック・ギターによるイントロで幕を開ける。本作中最もリリカルなメロディと言えるだろう。シングル・ノートのギター・プレイとストリングスの絡みが良い。

 M5は、最も混沌としたアレンジの曲に思える。打ち込み主体のせいなのかもしれない。メロディも地味だし、どうも変だ。しかし、これもR.E.M.らしいところである。

 M6は、ピアノと効果音にリリカルなメロディを乗せた曲である。この効果音は、最早音響派の作り出す「それ」と言っても差し支えないだろう。もう一点、スローテンポなのにドラムだけがアップテンポ(とはいえそれほどBPMが高いわけではないが)というアレンジも非常に面白い。

 M7では、ベースとバスドラのコンビネーションに唸らされる。これを90年代のダンス・ミュージックを経た若手バンドがやっているのなら、当然かもしれないが、ベテランバンドがやるとは。だが、不思議なのは、こういったことをベテランが試みると、若者に対する対抗意識ばかりが目立ってしまうものだが(例えばストーンズ)、この作品からはそういう意識があまり感じられないことである。

 M8は、先行シングルとなった曲で、ストリングスとギターにメジャー調のメロディを乗せた曲である。確かに、最もシングル向きではあろうし、「アウト・オブ・タイム」の感覚にも近い。だが、本作中では異色であることも忘れるべきではないだろう。

 M9は、シンセサイザーとギター主体のアレンジである。映画のBGMのようにも聞こえるが、およそポップとは言い難い。

 M10は、音響派のようなシンセサイザーとアコースティック・ギター主体のアレンジである。落雷の効果音が使われているが、これはわざと抑え気味にしてあるところがミソ。ピッコロを模した音も聴いていて楽しい。

 M11は、個人的には本作中の最高曲だと思う。アコースティック・ギターとピアノが使われているので、これも「アウト・オブ・タイム」を連想してしまうが、ストリングスの使い方は明らかに異なる。

 M12は、ホーンが良い味を出している曲。前半では打ち込みによるパーカッションが使われているのだが、途中で生ドラムに取って代わられる。これは正直言って少しだけ残念である。だが、生ドラムと打ち込みのシンクロという技法を用いなかったのは、彼らのひねくれ精神の表れかもしれないのだが。

 

 


 最後に蛇足を。R.E.M.は熱心な民主党支持者としても知られている。かつてR.E.M.がピークだった頃、アメリカの政権党は共和党だった。その後民主党政権になり、2001年になって再び共和党政権となっている。そういう時代にR.E.M.が再び傑作をものにしたのは、単なる偶然だろうか。

(2001-6-6)

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