Number Girl  「Sappukei」

 

  1. Brutal Number Girl
  2. Zegen vs Undercover
  3. Sasu-You
  4. Urban Guitar Sayonara
  5. Abstract Truth
  6. Tatto あり
  7. Sappukei
  8. U-REI
  9. Yaruse Nakio の Beat
 10. Tranpoline Girl
 11. Brutal Man

 

 ナンバーガールは、メジャー・デビューして約1年のバンドであるが、その間にスタジオアルバム、ライブアルバムを一枚ずつ発表しており、本作"Sappukei"(殺風景)が3枚目となる。作詞・作曲とも全てをボーカルの向井秀徳が担当している。本作は。既に音楽誌を中心に絶賛されているのだが、確かに傑作だと思う。

   彼等を強いてジャンル分けすれば、ハードコアに入るのだろう。ハードコア系バンドの場合、縦ノリのスピード感と轟音のセットが魅力とされるが、これは非常に危険な一面を持ち合わせている。その1つは、「飽きられ易い」ということだろう。新人ならば「初期衝動」といった言葉で賞賛されはするが、あっという間にマンネリへとつながる可能性を多分に孕んでいる。そこで、考えられる打開策は、(1)そのままのスタイルを保ち続ける、(2)アコースティック・サウンドを取り入れる、(3)全く別の音楽に走る、などであろうか。ところが本作は、上記のパターンに収まらずに単調さから抜け出すことにせいこうしているのである。それは、ハードコア的な鋭さを温存しながら、押しの強さだけではなく、「引き」を加味することで曲全体にうねりを出していることであると思う。今後ナンバーガールがどういった方向に進むのか、予断を書くのは適当とは思えないが、M4、M7、M9などはそのヒントになるのかもしれない。

 実は、筆者は彼等の1枚目のアルバムは聞いていない。シングルのプロモーション・ビデオを見ただけなのだが、その時はあまり馴染めなかったのである。喚いているようなボーカルのせいだったのだろう。そういう印象が変わったのは、本作発売前に先行シングル・カットされたM6を聞いてからである。この曲では、絶叫ボーカルではなく、一寸とぼけたような「引き」の良さを感じたのだ。もちろん、ハードコア大好きの人が聞いたら逆にがっかりしたかもしれないのだが。

 つまり、ナンバーガールは単なるハードコアバンドの新参者とは位置付けられないのである。彼等の場合、確かにピクシーズからの影響が大であるが、その単なる焼き直しではなく、90年代初期の英国で顕著であったグルーブ感をも内包している。それは、押しまくる、叩きまくるというのではなく、「押し引き」と言い換えても良いだろう。特に、ベースが中心のアレンジがなされているM4、M8、M10では、それがよく分かると思う。

 次にドラムは、M2、M8、M9、M11で聞けるように、フィルイン多用の縦ノリのドラミングが中心であるが、それはそれで非常に魅力的であるのだが(特にM9のドラミングは必聴)、M6やM7のようにハイハットを効果的に使ったものや、M2のようにシンバル・レガートを多用したものがあり、単調に陥らない工夫がなされている。

 ギターは、M1で重たく鋭いギター・リフが聴けるために、全編をこのサウンドが続くのかと思うと、裏切られる。M2、M10ではアルペジオを披露しているし、M7のようなトーン中心の演奏もあるし、M9はUKギター・ロックの雰囲気を漂わせている。ただし、そういった曲においても一音一音は太い。また、特に興味深いのがM11で、この曲は本作中最も縦ノリの度合いが高く、いわゆるパンキッシュな曲なのだが、ギターを前面に出さず、一歩下がったところでエッジの鋭いトーンを聴かせている。

 更に、M4ではピアノやサックスが使われるなど、アレンジ面での工夫が至る所で聴ける。つまり、以上に挙げた各楽器の鳴らし方も素晴らしいのだが、何よりもバンドとしてのアンサンブルとしての良さが光っているのである。こういった、単調とかけ離れたアレンジは、プロデューサーが腕によるものなのか、バンドメンバーのアイデアなのか不明であるが。ちなみにプロデューサーはマーキュリー・レヴのデイヴ・フリッドマンである。

 もう一点、メロディ・ラインも独特のものがある。注意して聴いてみると、ポップなメロディがそこかしこに登場している。それをオトボケ混じりの歌唱法によって崩しているとも言える。これはM5やM6において顕著である。

 最後に歌詞について触れておく。タイトル自体もユニークであるが、それ以上に歌詞中の言葉遣いも相当ユニークである。形式的には、ストーリーを語るとかメッセージを送るといったものではなく、頭に浮かんだ言葉をそのまま連ねているような印象がある。それは、体言止めや脚韻が多用されているからだと思う。また、ボーカル・スタイルからは歌詞を重視していないようにも思えるが、決して上っ面を撫でるだけの「言葉の並べ立て的」な歌詞ではないようだ。一連の歌詞には、自己の無力感や、傍観者でしか存在し得ないという無力感、現実感の乏しさが感じられる。だがその一方で、M5における「先生、安直な答えを出してもらっちゃ困る」という歌詞からは、単なる現実逃避ではなく、現状の混沌とした状態を受け入れるようとする意志も読み取れる。それは以下の例を考えれば、(少しではあるが)見えてくることであろう。すなわち、TVによく登場する「コメンテイター」がすぐに処方箋を出すのは、ある意味現実逃避でしかないということだ。既存の解決法が上手く行かないから問題化しているのであって、そこに逃げ込んでいるという見方も出来るのである。

 

(2000-8-27)

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