National Slyline " This = Everything"

 

01. Some Will Say
02. Reinkiller
03. A Million Circles
04. Day On The Beach
05. Morse Code
06. A Night At The Drugstore
07. Make It Stop
08. Cadence Of Water
09. The Lock
10. Grandstanding
11. Ghosts
12. Karolina U

 

 ナショナル・スカイラインは、アメリカのシカゴを本拠地として活動しているバンドであり、本作は2ndアルバムである。そうはいっても、メンバーのミュージシャンとしての経歴は10年以上になるようで、決して若手バンドというわけではない。

 日本盤CDの帯には、「ギターバンドとしての素晴らしい発展形」と記されている。本作のキャッチコピーを一つ挙げるとすれば、これはかなり的確なのではないかと思う。あまりにも曖昧だが、これはこれで仕方が無い。とにかく本作は、実験的要素を多分に含みながらも、ポップであることが維持されているという点で、何度も聴きたくなるようなアルバムだと思う。

 では、より詳しく述べて行くことにする。本作の日本盤は全12曲から構成されており、最後の2曲がボーナストラックである。他の10曲については、前半(M1〜M6)と後半(M7〜M10)とで、聴いたときに相当異なった印象を受けた。そうはいっても、全く別のバンドの曲という印象ではない。異なった音楽性が、前半と後半でくっきりと分かれているということである。 

 まず、CDの前半について述べる。ここでは、ダンス・ビートが大胆に導入されている。プログラミング主体のパーカッションと、恐らくはサンプラーを使った、ギター・ループが多用されている。ギター・ループといっても、ここで聞けるのは、アルペジオ奏法であるというのが、筆者には非常に面白く感じられた。というのも、ダンス・ビートにマッチするギター・サウンドといえば、シングルノートやアルペジオではなくて、コード・カッティングであるというのが、暗黙の了解事項のようになっていたからである。もちろん、コード・カッティングにはもう飽きた、と主張したいのではない。単に、アルペジオが新鮮に感じられただけのことである。そして、パーカッションの刻む比較的早いリズムに対して(M4は例外)、割合ゆったりしたギターの符割りという対比が、「新鮮な印象」を強めている。 

 他にもM5のように、音響派、エレクトロニカからの影響を受けたサウンドになっている曲もある。しかし、そういったサウンドは得てしてとっつきにくい印象を聞き手に与えてしまうものだが、本作からは、とっつきにくさを感じる人は少ないと思う。その原因は、恐らくボーカルとメロディにあると思う。 

 本作で聴けるメロディは、ギターの音よりも更にゆったりとしている。バックの音がなければ、スロー・バラードと呼べるくらいのテンポである。ただし、本作は決して「歌もの」の類ではない(ボーナストラックのM11は除外する)。何故なら、メロディの展開で聞き手をうならせるような作りになっていないからである。どちらかといえば、フレーズ単位で光るようなメロディ・ラインと評すべきだろう。当然、カラオケで唄われるような類でないことも確かである。それでもM3には、サビらしきメロディがあることにはあるが、自己主張が強いわけではない。 

 それはボーカリストの歌唱法に関しても同様である。感情過多になるわけでもなく、無機質さを前面に出している(ダンス・ミュージック界では、当然の如く使われてきた手法である)わけでもない。両者の中道を真直ぐ行くようなスタイルである。「静かに燃える感情を表現する」と言ってもいいかもしれない。似たようなスタイルを持った人を挙げるとすれば、ピーター・ガブリエルが相当するかもしれない。そういえば、ハスキーな声質はよく似ているし、また、ガブリエルもリズムに凝りまくるアーティストである。 

 

 次に後半について述べる。こちらは、前半と異なり生楽器主体の演奏である。ダンスビートはM9以外では導入されていない。M9にしても、ダンスビートの影響を受けたロック・ドラミングという表現の方が適切である。また、前半がダンスビートという括りが出来るのに対し、後半はバラバラである(ただし、寄せ集めの印象は無い。アルバムとして聴ける)。M7はピアノ主体のインストゥルメンタル曲で、まるでデモ・テープのような趣がある(ザ・フーの「愛の支配」を思わせるような音階を使っている)。M8はアコースティック・ギター中心のアレンジが施されているが、コード・チェンジ時の摩擦音をわざわざ増幅している。M9は、ディストーションの掛かったギターによる、コード・カッティングと、(前述したが)ダンスビートの影響を受けたロック・ドラミングが主体である。M10は、女性ボーカルと単音弾きギターに、異様なほどの単調なドラムが加わるというアレンジである。 

  

 3番目に、ボーナストラックについて述べる。この2曲もまた大変面白い。こういうボーナストラックならば歓迎する。 

 M11は、メイントラックと異なり、「歌もの」と呼んでも良さそうな曲である。とはいっても、バックに流れる電子音響やパーカッションは、本作の前半部と多分にオーバーラップする。 

 一方M12は、単独で12分を超える曲である。前半は、シンセサイザーのループや、緩やかな水の流れのような音響、ゆったりとしたボーカル・メロディといった、これまた前半部とオーバーラップするアイデアが使われている。後半はイオンストゥルメンタル・パートで、ギター・バンドという印象が強くなっている。 

 

 最後に歌詞について、少しだけ述べておく。歌詞は基本的にラブソングであり、極めて個人的な内容になっている。ただし、熱烈な求愛という感覚は全く読み取れない。やはり、作者が既に若くは無いのだろうな、と想像してしまうのである。例えば、「僕らの子供」というフレーズが登場するのも、同様である。 

 

(2002-6-15)

 

 

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