My Bloody Valentine "Loveless"

 

01. Only Shallow
02. Loomer
03. Touched
04. To Here Knows When
05. When You Sleep
06. I Only Said
07. Come In Alone
08. Sometimes
09. Blown A Wish
10. What You Want
11. Soon

 

 マイ・ブラディ・ヴァレンタイン(以下MBV)の「ラブレス」(邦題ば愛なき世界)は、1991年に発表された、彼らの2枚目のアルバムである。当時は、英国のロック・バンドが久々に活気を取り戻していた時期であり、MBVと割合似たような音楽性を持つバンドは、「シューゲイザー」だの「ハッピー・ヴァレー」などと呼ばれたりもした(後者の名付け親はNME)。言われた本人達は相当怒っていたようだが、そういったバンドは、主にノイズ・ギターと浮遊感のあるボーカルを特徴としていたことにおいては、共通点があると思う。

 そういったシューゲイザー系統のバンドのルーツとなるのが、ジーザス・アンド・メリー・チェイン(以下JAMC)であり、MBVであろう。実際、MBVがクリエーション・レーベルに移籍した理由も、JAMCが在籍していたから、という話を聞いたことがある。

 だが、この両バンドには、音楽的な共通点は殆ど感じられない。メJAMCがドラム・マシーンによる無機質なビートを基調とし(初期には名ばかりのドラマーがいたが)、暴力的なノイズ・ギターとポップなメロディをそれに乗せていた。一方、MBVには、ダンス・ミュージックの影響が強くみられるし、ギターは確かにノイジーではあるが、陶酔的、甘美的である。これは、ソニック・ユースともまた異なるものである。それがシンセサイザーと絡み、オーケストラ的なアンサンブルとなっている。また、ボーカルに関しても、JAMCのそれは、歌詞をはっきり伝えようとし、かつメロディを重視しているのに対し(とはいえ、上手い歌手ではないが)、MBVは、歌詞を伝えることなど、はなから放棄しているし、メロディさえも聞き手に伝わることを目論んでいないようだ。いわば、音響楽器の一つとしてしか、ボーカルを捉えていないのである。

 以上で、実は本作のおおまかな特徴は述べてしまったと思える。本作は、もしも60年代後半〜70年代前半のロック史を知らない人にしてみれば、「こんなのロックじゃない」と言われる可能性があるし、逆に、60年代後半〜70年代前半のロックを経験した人にとっては、「プログレの隔世遺伝の一種」として捉えられ得る作品であると思う。

 その後MBVはアイランド・レーベルに移籍するが、一枚も作品を出さずに10年が経過した。聞き手としては残念極まりないが、仕方あるまい。そして恐らく、この先もMBVとして作品を発表することはないだろう。

 それでは、各曲について述べる。

 M1は、ノイジーなぎたーによるキャッチーなリフと、ベーシストのビリンダ・ブッチャーによる甘美なボーカル・メロディとが交互に繰り返される曲。ボーカル・メロディはスローであるが故に浮遊感に富んでおり、上記のリフ・パートとのコントラストがいい。敢えて難を挙げれば、ドラムスにパワーが足りない。

 3分50秒から後は、今の音響派に通じるような印象があるが、やはり時代性なのか、かなり親しみ易いと言えるだろう。

 M2は、M1から間髪を開けずに始まる。このように曲間とフレーズとがずれているような構成の曲は、例えばレディオヘッドの「キッドA」にも見られるが、本作はその先行的試みとも言えるだろう。

 M3は、シンセイサイザーによるストリングス風の音が主体のアレンジになっている。既に述べたことであるが、この曲を聴けば、ノイズ・ギターが暴力性の表現ではなく、音響楽器として存在していることが分かってもらえるのではないか。リズム隊はここにはいないが、それで正解だろう。

 M4は、M3と同様に、ストリングスを模したシンセサイザーとノイズ・ギターによって構成された曲である。ノイズの洪水というよりは、「波」に近い。

 M5は、M4の終盤からの続きになっている(M2と同じ)が、ポップな出だしである。やはり、シンセサイザーが使われているが、どちらかというと、ギター・ポップである。

 M6は、本作中では異色と言える、ラウドなギターが特徴の曲。ノイズではなく、ディストーションと言うべきで、波のようにうねっている。ドラムは、ダンスビートの影響が感じられる。

 M7は、M1に近い雰囲気の曲。ノイズ・ギターとボーカルの絡みが良い。

 M8は、これまた本作中では異色の出来である。アコースティック・ギターが使われているのである。ただし、パーカッション楽器として使われているのだが。

 メロディはノスタルジックな雰囲気を持っており、もしかしたら、本作中でもかなり早くから出来ていた曲かもしれない。

 M9は、殆どサンプラーの力によって成り立っているアレンジと言っても過言ではあるまい。バッキング・ボーカルもギターも、明からにサンプラーで作ったループを使用している。

 M10は、恐らく本作中最もキャッチーな曲だろう。極く普通の8ビートであり、ポップ・ミュージックのフォーマットに則った曲と言える。だが、エンディングに至ると、普通のポップ・ミュージックから逸脱してしまう。

 M11は、まさにエンディングにふさわしい曲と言える。ダンス・ビートを大胆に導入しつつ、ノイズ・ギター(TVのハレーションに近い印象を与える)や消え入るような繊細なボーカルが、まさにMBV以外の何物でもないことを証明している。

 

 

(2001-8-26)

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