The Hollies "The Breath That I Air"
(ベスト盤)
ザ・ホリーズについて書こうと思ったとき、何を選ぶべきか迷った。初めは特定のアルバムにしようとも思ったのだが、それでは私がホリーズ・マニアと思われてしまう。しかし、そんなことは無くて、ベスト盤1枚にアルバム2枚を持っている程度なのである。それならばベスト盤を取り上げた方が良いだろう、と思い直した結果、ここに挙げたベスト盤について書くことにした。
さて、ホリーズといえば、これまで「甘ったるい」という評価が多く、認知度と言う面から言っても、後塵を拝してきたような気がする。これは、彼等のシングルにカバーが多かったためかもしれない。せいぜい、第1期ブリティッシュ・インヴェイジョンの枠の中で「バス・ストップ」が取り上げられた程度である。
確かに、強烈な独創性があるバンドではないだろう。今回聞きなおしてみても、その時々の周囲の流れに沿ったかのような曲や演奏が多いように感じた。それでも、
(1)アラン・クラークとグレアム・ナッシュのハーモニー
(2)ベースがドラム以上にアレンジを支えていることが多い
の2点は、敢えて指摘しておきたい。特に(1)はまだしも、(2)は殆ど見向きもされないようなので。
でも、一番主張したかったことは、「ポップスで何が悪い」ということなのだろう。ポップスであっても、ホリーズは、決して使い捨ての安物ではないのだから。
さて、本作は1993年に発売されており、レコード・デビュー30周年の企画物である。どこにも表記が無いのだが、CD化に当たって、きちんとマスタリングしたような音質である。その点は良心的だと思う。でも、タイトルにもなった"The Breath That I Air"(邦題は「安らぎの世界」)を1曲目に持ってきたのは、ちょっと戴けない。タイトルにする分には構わないのだが。ここは、「バス・ストップ」を1曲目に持って来るべきだったろう。特に日本盤では、そうすべきであったと強く思う。
2. Bus Stop
グレアム・グールドマン作で、1966年に発表された。日本ではホリーズの作品としては最も有名な曲であることは間違い無い。イントロから音処理を施したギターで始まるが、ボーカルが入ってくると、アコースティック・ギターとドラムのコンビがリズム楽器として使われている。ホリーズ得意のハーモニーが聞けるし、ギターソロに関しても、音そのものやメロディが面白い。
歌詞は、「思い出の再現シーン早送り」のような内容だけあって、BGM(悪い意味ではない)として多用されそうな気がする。ところで、その中の一節、
"Someday my name and her's are going to be the same"
は、これからは、昔の習慣・制度になっていくのだろうな。
3. Just One Look
1964年の曲ということで、エレクトリック・ギターの音色は、当時らしい。クラークとナッシュがリード・ボーカルを取っているのは、彼等としては珍しいのではないか。コーラス・ワークを含め、ボーカルのスタイルはビートルズに近いが、ビートルズよりは白人ポップス寄りだと思う。
4. Yes, I Will
この曲も、ボーカル・スタイルもビートルズっぽい。メロディもビートルズとの共通性を感じる。ドラムもリンゴ・スターを連想するし。
この曲は、ベースがボトムをしっかり支えているので、しっかりした演奏に聞える。
5. Look Through Any Window
アップテンポの白人ポップスなのだが、イントロ、ギターソロから一気にサビメロに戻る構成ことなど、工夫されたものが多い。
6. He Ain't Heavy, He's My Brother
スローバラードであるためか、ホリーズとしては大仰にも聞える。
7. I Can't Let Go
この曲もクラークとナッシュのハーモニーが光っているが、他の曲と違って、荒々しくあまり洗練された感じは無い。 ベースは強烈である。
8. We're Through
ライナーノーツによれば、オリジナル作品としては初めてシングルらしい(1964年発表)。もしかしたら程度なのだが、デル・シャノンからの影響がみられる。この当時としては、ボーカルが中央に位置しているステレオ録音を今まで聴いたことが無かったのだが(技術的な問題として難しかったのだとか)、筆者が知らなかっただけか、再録なのか、後から加工したのか・・・・
9. Searchin'
2枚目のシングルで黒人グループのカバーということであるかして、R&B調であることは当然なのだろう。途中にラップ調のボーカルが入っていて、良い味を出している。クラークの声は喉をわざと潰した声を出していて、これもR&Bなのだなと思わせる。
10. Stay
これも黒人グループのカバーであるためか、クラークがしわがれ声で唄っている。 ベースの音はやはり強烈。
11. I'm Alive
右チャンネルからタンバリンの音が聞えるが、誰が叩いているのだろうか。それは置くとして、ギターにかけたエフェクトが面白い音を出している。ドラムはリンゴ・スター風か。
12. If I Needed Someone
ジョージ・ハリスン作。ビートルズ・バージョン(ラバー・ソウルに収録)よりも先に発表されている。噂では、この録音を聞いたハリスンが難色を示したらしいが、理由がよく分からない。確かにギターに一寸難ありだが、コーラスなどはよく出来ている(ビートルズ風だが)と思う。
13. Here I Go Again
ホワイトスネイクが米国で最も売ったシングルとは別物である。ドン・コヴェイやストーンズを匂わせるR&B調なのだが、やはりホリーズらしく白人ポップス的味付けになっている。
14. Stop, Stop, Stop
バンジョーによる中近東的な旋律が印象深い曲。ドラムの音は聞えず、ひたすらベースがリズム感を出しており、"Stop Stop"というサビの所でのみシンバルが聞える(デカイ音)。
16. Carrie Anne
この曲からイメージするのは、「南国」である。間奏部ではマリンバだかビブラフォンだかその類の楽器がスティール・ドラムと伴に使われており、曲のイメージを強めている。それにしても、ナッシュのハイトーン・ボーカルは強烈だ。
17.King Midas In Reverse
この曲を聞けば、誰しも"Sgt. Peppers"を思い浮かべてしまうだろう。アコースティック・ギターをメインに使ったアレンジや、メロトロンやストリングスを使ったサウンドは、どう考えても先のアルバムからの影響である。とはいえ、メロディなどは高い水準を保っている。なお、この当時のホリーズは、アルバム"Buttefly"でも同傾向のものを作っているが、この曲はそのアルバムには含まれていない。
18. Jennifer Eccles
前曲とは打って変って、いかにもホリーズらしい、メロディやコーラスを持った曲。ベースがリード楽器に近い役割を果たしていて、何回か聞いてみると、また別の面白みが感じられる。
歌詞の方もジェニファー・エクルズへの愛憎を歌にしているのだが、どこかコミカルである。 ところで、この曲のヴァースのメロディは、ポージーズの「ゴールデン・ブランダーズ」のサビメロとよく似ていると思う。まあ、ポージーズ自体がホリーズの影響を受けているところは周知の事実なんだけれども。
19. Listen To Me
ホリーズのカバー作品として最高だと思う。もちろん曲自体が良いのだろうけど。1stヴァースをバスドラだけで始めるというのも面白い試みである。だが、このシングルでの白眉は、2ndヴァースに尽きる。ここでのコーラス・ワークは絶品だ。ただ、歌詞はゴスペルの影響もあるのだろうが、一寸説教じみている気もする。
20. Sorry Suzanne
ナッシュ脱退後の初シングルだが、ナッシュがいないせいか、コーラスワークは今までと違った印象がある。どちらが良いかと言われても、それは好み次第ではないか。ちょっと、イントロは甘きに流れすぎた感があるが、それ以外は良いポップスだと思う。メロディの繋ぎのところで、Dsus4/Dというコード進行が入るが、これはきっとL⇔Rに影響を与えたと思う。
21. I Can't Tell The Bottom From The Top
エルトン・ジョンが参加しているのだが、作曲者をエルトン・ジョンだと吹聴したら、信じる人がいるに違いない。職人的ポップ・ソングとでもいうべきか。何故かボーカルが、「フェイス・ダンシズ」の頃のロジャー・ダルトリーを思い出させた。
22. Gasoline Alley Bred
カントリーっぽい出だしで始まるスローな曲。アルバムの最後に持って来るのが最適だと思う。
23. Hey Willy
ウィリーとはナッシュの愛称とのこと。歌詞はナッシュへの当て付けのようで、「君は良い奴だよ」とは唄っているのだが、殆どは嫌味にしか聞えないだろう。
クィーンとレッド・ツェッペリンを足してポップス化したような曲である。ギターのバッキングやソロはジミー・ペイジ風だし、ドラムでもジョン・ボーナム風のフィル・インが登場する。その一方で、ボーカルの発語やリズム感、テンポ・チェンジはクィーンを思わせる。ところが、鍵を握っている楽器はベースなのだから不思議である。
24. Long Cool Woman In A Black Dress
邦題は「喪服の女」で、全米では大ヒットしたらしいが英国ではそこそこのヒットだったらしい。一寸アメリカ南部のR&R風で、当時(1972)のストーンズに通じる所があるような気がする。ベースはひたすら高音弦を使っているようで、ジョン。・エントウィッスルを髣髴させる。実はゲストで演奏しているとか、そんなことありませんよねえ。
(2000-4-8)