The Hives "Your New Favorite Band"

 

01. Hate To Say I Told You So
02. Main Offender
03. Supply & Demand
04. Die, Allright!
05. Untutored Youth
06. Outsmarted
07. Mad Man
08. Here We Go Again
09. a.k.a I-D-I-O-T
10. Automatic Schmuck
11. Hail Hail Spit N' Drool
12. The Hives Are Law, You Are Crime

 

 ザ・ハイブスはスウェーデンのバンドで、活動歴はかれこれ10年近くになるそうである。最近まで日本では無名であったのだが、英国でアラン・マッギー主宰のポップトーン・レーベルと契約してから、まず英国でアルバム/シングルのヒットやNMEによる絶賛があり、その噂が日本にまで及んできたというわけであろう。

 そうは言っても、日本にもマニアは存在するわけだし、そういう人達からすれば、昨今のブームに対しては複雑な心境なのではないかと思う。かくいう筆者も、タワー・レコードのお薦めコーナーで最近知ったのであり、偉そうなことは言えないし、書けないのだが。

 ここで取り上げるCDは、"Your New Favorite Band"という編集アルバムである。和訳すれば、「貴方(達)の新しい最もお気に入りのバンド」なのだが、これはポップトーン側が付けたのだろう。どことなく、ストーンズの米国デビュー・アルバムのサブタイトルを連想させる(こちらは、「英国の最新ヒットメーカー」であった)。

 本作の音源は、彼らの1stアルバム、2ndアルバム、そして2枚のシングルから取られている。M1〜M4が2ndアルバム("Veni Vidi Vicious")、M8〜M11が1stアルバム("Burely Legal")、M5〜M7がM9のカップリング曲、M12がM1のカップリング曲である。それぞれ発表年度は2000年、1997年、1998年、2000年である。

 サウンドは、一言でいうならば、ガレージ風ロックンロールであるが、十年一日の如く何も変わらないバンド、ということではないようだ。1998年までの曲と2000年の曲とを聞き比べれば、明らかにサウンドの傾向は変化している。

 まず、1998年までの曲である。M5〜M11がそれに相当するのだが、全てスピード感に溢れた曲調であり、M5とM9を除くと、ロックンロールというよりは、ハードコア・パンクに近い。ただし、「近い」はあくまでも「近い」であって、ハードコアの本流とは言えないだろう。逆に、パンクは好きだけどハードコアまで行ってしまうと尻込みしてしまうような人ならば、このあたりの曲を気に入るように思える。

 また、得てしてパンキッシュなサウンドを特徴とするバンド、特に若手の場合、あまりにもアレンジが単調になってしまう傾向があるが(ある意味で仕方の無いことだが)、このバンドの場合、少々違うようだ。例えばM7であれば、ドラムのパターンが隠し味的に工夫されているし、M9のイントロはまるでエアロスミス風でもある(スウェーデンということで、アトミック・スイングを引き合いに出すなんてことはしない)。他にも、M5とM6のエンディングには奇妙なSEが入っていたりもするし、ボーカルの掛け合いというのも、ハードコアとは趣が異なり、どちらかというと、マージー・ビートを思わせる。

 次に、2000年の曲に話を移そう。M1〜M4とM12がこれに相当する。1998年までの曲と違い、勢いやスピード感、パンキッシュな感覚といったものは後退している。その代わりに台頭しているのが、パワー・コードを使った鋭いギターリフである。確かにコードそのものは、初期キンクスから頂いているような曲(M1,M2)、ディープ・パープルの"Smoke On The Water"のリフを数倍早くしたようなM4など、元ネタはすぐに割れてしまう。しかし一方で、ギターの音そのものは、前述の2バンドを始め、ハードロック系バンドが得意としたディストーション・サウンドとは異なり、USインディー・ロック系の音に近いく、60年代〜70年代のロック・サウンドに比べて一層攻撃的で鋭いものを感じる。とはいえ、それまでの彼らの音楽性からすれば、当然なのだろうが。

 また、ボーカル自体も、「メインストリートのならず者」の頃のミック・ジャガーを髣髴させるような勢いがあり、それはそれで魅力的だが、個人的にはM12のイントゥルメンタル曲に惹かれる。これもまた、元ネタはすぐに分かり、ガレージ・パンク的なロックンロールとレッド・ツェッペリンのある曲のリフ・パターンをくっつけた曲であるが、もしかしたら次作の予告編をも兼ねているかもしれない。すなわち、ガレージ・パンクから更に離れるということである。

 確かに、目新しい要素は殆ど無いと言って良いだろう。現時点では、ハードコア以降の世代が初期キンクスを再発見したという程度であり、そういう音楽性を持ったバンドが今まで非常に少なかったという点では、新しいと言えるのかもしれない(殆ど説得力が無いが)。例えばジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンなどと比べると、「無茶ぶり」が不足しているように聞き手に感じさせてしまう負い目があることも確かである。もっとも、両者の音楽に関するベクトルは別方向を向いているのであり(前述のドラム・パターンの工夫は一例である)、現時点で非常に近しい位置にいるだけのことと思われる。よって、両者は別の価値観で以ってそれぞれを評価すべきであろう。

 誉めているのか批判しているのか、ハッキリしない文章になってしまったが、前述の通り「今が旬」であることは間違い無いと思う。と同時に、次作品がどういう展開を見せるのかも楽しみであるが。

 最後に歌詞について触れておく。多くの歌詞が「俺は俺がやりたいように生きる」がテーマになっているようで、裏を返せば世間との軋轢を唄っているとも言える。北欧に対するイメージ、すなわち福祉大国は只の偏見、思い込みであったのだろうか。それとも、福祉大国は案外生きていくには辛い所なのだろうか。

 ところでこのバンドの場合、歌詞よりもまずタイトルで笑わせてくれるのが特徴である。象徴的なのがM9の「別名バカ」やM10の「自動式バカ者」あたりか。また、M5のように「正規の教育を受けていない若者」というタイトルもある。これなど、前述した福祉大国とのイメージに真っ向から対立するものである(これはこれで結構意味深な歌詞にも思える)。他にもM12の「ザ・ハイブスは法律であり、お前らは犯罪者だ」の大見得の切り方など、ギャグとしか思えない。 

 

 

 

(2002-5-3)

 

 

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