Franz Ferdinand 

 

 1. Jacqueline
 2. Tell Her Tonight
 3. Take Me Out
 4. The Dark Of The Matinee
 5. Auf Achse
 6. Cheating On You
 7. This Fire
 8. Darts Of Pleasure 
 9. Michael
10. Come On Home
11. 40'
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以下、日本盤のボーナストラック
12. Van Tango
13. Shopping For Blood
14. All For You, Sophia
15. Wards So Leisured

 

  本作「フランツ・フェルディナンド」は、バンド名をタイトルにしたデビュー・アルバムである。雑誌「クロスビート」では、評論家の選ぶ2004年のベストアルバムに選出されたくらいだが、CDショップで試聴した人が、すぐさま本作を好感を持って受け止めるのか、甚だ怪しいように思える。人によっては、「マスメディアが生み出したハイプ」と切り捨てるかもしれない。だが、そこで本作から離れてしまうのは少々残念なことだ。実を言うと、本作には即効性はあまりないような気がする。むしろ何回か聴き続けることによって魅力を発見できるような作品だと思う。

 本作はUKニューウェーブの影響下に生まれたものであることは明らかだろう。実際、トーキング・ヘッズ、ギャング・オブ・フォー、ニュー・オーダー、ザ・キュアー、ザ・スミス、それこそ山のようなアーティストからの影響を感じることができる。だからといって、本作が「80年代の焼き直し」ではない。否定論者には、「焼き直し」にしか思えないのかもしれないが、ハウス、テクノ、そしてドラムンベース以降でしか生まれ得なかった作品であると思う。従って、90年代初頭のマンチェスターを中心とした動きとも、また異なる音楽性である。生楽器をベースとする点で両者は共通点を持つが(ドラムはサンプリングではないかと思えるのだが、謎)、90年代初頭のダンスロックが、微妙なリズムの揺らぎを核として成り立っていたのに対し、本作はリズムのめまぐるしい変化、各楽器のリズムの不統一さ(ポリリズムとまでは言えないであろう)が核となっている。

 歌詞にも触れておくことにする。ダンスの要素を重視している彼らだけあって、短いフレーズの繰り返しが目に付くのは当然として、他にも全体的な特徴があるのであるそれは、「視線」に関する言葉が頻出していることである。全11曲中、見ることに関係する単語が出てこないのはM6ただ1曲だけである(代表曲ともなったM3中の"cross-hair"も、ファインダー内の十字を表す単語であるようだ)。ここまで、執拗に繰り返されると少々気味が悪いが、どういうことなのだろうか。

 また、ボーナストラックのM15は、M10の替え歌になっているし、M10にはドイツ語の歌詞が含まれていること(ドイツ出身者がメンバーの中にいる)、M9はモロにゲイの歌であることも挙げておこう。

 

 M1は、つぶやきのようなボーカルで幕を開ける。アルバム全体の印象とは全く異なる出だしである。その後ギターリフを中心とするダンスロックになる。一定のリズムを刻んでいるようで、実はめまぐるしく変化しているリズムが特徴である。

 M2は、ロバート・スミス風の中性的ボーカルが聞ける曲だが、コーラスパートはいかにも軽薄そうな印象を与える作りになっている。この辺、ブラーからの影響もうかがえる。

 M3は前述であるが、彼らの代表曲と言えるだろう。2つの曲を合わせたもので、前半はアップテンポな曲であるが、50秒くらいから次第にテンポダウンして、ミディアムテンポになる。後半部は同じメロディ、歌詞の繰り返しだが、このフレーズの繰り返しというものは(ただし、ギター・フレーズは微妙に変化している)、呪術的な効果を生むと言われており、この曲もその一例であろう。

 M4も、M3と並ぶキャッチーな曲である。M3終了後にフェイドインしてくる形をとっており、DJ的な手法と言える。ダンス・ミュージックとしては常套的ではある。この曲は、キーボードによる効果音が面白い。テンポダウンしてまた元に戻るという形になっている。

 M5はニュー・オーダーからの影響がうかがえる曲。M4〜M6は機械的なドラミングであり、クレジットには無いが、サンプリングして作ったのではないか。

 M6はアルバム中最もUKパンク風な縦ノリのダンスロックに仕上がっている。コーラスが一寸ストーンズ風というのが、ミスマッチで可笑しい。

 M7は、2分23秒あたりからの、同じリフを繰り返しつつテンポダウンするという箇所と、3分過ぎの、マーチのようなドラミング+フィルインが入ってくるのが特徴である。

 M8は、彼らのデビュー・シングルだった曲である。他の曲に比べると、習作との印象がするのは否めない。ここはむしろ、M15に置き換えた方が良かったのではないか。

 M9は、イントロにおける変則的ギター・フレーズが注意を引く曲である。ゲイ嗜好が主人公であること(タイトルのマイケルは、主人公が見つけた美少年)もあって、なまめかしく唄うパートがあるのだが、個人的には吹き出してしまうことがあった。というのは、懐かしのライト・セッド・フレッドの「アイム・セクシー」を思い出したから。閑話休題。

 ボーカルスタイルについて批判的に書いてしまったが、決して悪い出来ではない。M3、M4と並んで耳に残る曲である。

 M10もキャッチーなメロディの曲である。ドラムは、4つ打ちかと思って聴いていると、フィルインが入り込んで来るので、油断がならない。

 M11は、リムショットしたドラムと単音ギターリフが特徴で、ジャズをダンスロックに転換したような曲である。 

 ボーナストラックについては、M15を除くと、個人的にはそれほど面白いものではなかった。厳しい見方だが、「○○のアウトテイク」レベルである。

 最後に本作のプロデューサが、トーレ・ヨハンセンであることは、結構驚きである。トーレ・ヨハンセンといえば、スエーデンのカーディガンズ、日本だとボニー・ピンク、カジヒデキあるいは原田知世のプロデューサとして知られており、ポップ・ソングのプロデューサとしては有名だが、こんな変則リズム満載のダンスロックをプロデュースすることは、考えにくいことだった。

 

(2005-2-13)

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