Franger "Outer Space / Inner Space"

 

01. Outer Space / Inner Space
02. Galak
03. THe Men Who Fell From Earth
04. Inner Spacesuit
05. Le Dermier Comba
06. Unosietecero
07. It Ain't Rocket Science
08. Hirnflug
09. Bosco's Disposable Driver Attom
    
9曲目は日本盤でのボーナス・トラック 

 

 フランジャーは、アトム・ハート(断っておくが、「マザー」は付かない )とバーント・フリードマンという二人組のユニットである。二人ともドイツ人らしいが、国籍は音楽性に殆ど関係していないと思う。

 本作は、彼らにとって3枚目のアルバムである。彼らの過去の作品を聞いたことがないので、どのような音楽的基盤を持っているのか、本作以外に判断材料がないのだが、一番重要なのはジャズで、次が南米のラテン音楽であることは間違い無いだろう。そして、彼らにとって重要な「場」が、クラブであることも間違いなさそうだ。

 クラブ・ミュージックというと、機能性ばかりを追求した音楽のように捉えられがちかもしれない。実際、テレビで報道されるのは、トランスだとかそういった音楽が圧倒的である。しかしその一方で、ある種のテーマやコンセプトを念頭に置いたクラブ・ミュージックも存在するように思える。彼らフランジャーもそういった音楽を作っているユニットであろう。

 本作にもしもテーマがあるとすれば、それは「ポリリズム」であろう。ポリリズムは、以前からジャズやプログレッシブ・ロックで試みられてきたものだ。過去のアーティスト達は、高度な演奏力を身に付けることで、ポリリズムを表現してきたわけだが、生楽器の演奏にはどうしても制約がつきまとう。そこで最近は、プログラミングなどのテクノロジーを利用することによって、従来レベルのポリリズムを超えようとしているアーティストが出現している。エレクトロニカというジャンルは、昨年あたりからメジャーになってきたわけだが、その中に属すると目されるアーティストには、積極的にポリリズムを導入する人達がいる。例えば、アイスランド出身のムームなどが代表例だろう。

 そして本作である。一言で表せば、上でも触れているが、「ジャズおよび民俗音楽とエレクトロ・ミュージックの融合」であろう。こうやって言葉にすると難しそうに思えてしまうが、本作は実に聞き易い。ジャズに不慣れ(筆者だってそうだ)であっても、比較的すんなりと楽しむことが出来るし、エレクトロ・ミュージック、例えば音響派やエレクトロニカのとっつきにくさは、ここには殆ど無い。ところが、聞き込んでみると、複雑なリズム・アレンジが施されていることが分かってくると思う。

 これは非常に重要なことで、ポップ・ミュージックのポイントを押さえているとも言えるのである。例えば、ビートルズの曲、特に初期のものは、とっつき易くてAMラジオでも楽しめるのだが、CDを聞き返してみると、高度なコーラス・ワークや一風変わったギター・リフなどが使われていることが分かったりする。つまり、様々なレベルで楽しめる音楽であると言える。これが、本作にも当てはまるのである。アバンギャルドではなく、上手いブレンドがキー・ポイントと言えるであろう。 

 もう1点重要なことを挙げる。一般にプログラミング主体の音楽のことを、「無機質で味気ない」、「安っぽい」と言う人がいるが、そういう人にこそ本作を聞いて欲しいと思う。本作は決して、無機質な音、安っぽい音ではないのだから。

 確かに本作の制作過程はプログラミング主体であり、エレクトロニカ風の音も随所に聞けるが(特に曲の冒頭に多い)、そのような音を聞かせることが主目的な作品ではない。くどいようだが、曲の展開とポリリズムを聞かせることが、本作のテーマであるのだから。

 

 では、各曲毎に述べる。 

 M1は、ジャズをベースにして、それにエレクトロ・ミュージックを掛け合せた曲で、ジャズといっても千差万別なのだろうが、ここで聞けるのは、「お洒落な」という形容が合いそうだ。

 M2は、ゲーム音に始まり、中近東あるいはインド民俗音楽風リズムになって行く。曲が進むに連れ、次第に複雑化して行く。一方で、ビブラフォンの音はジャズっぽい。

 M3も、M2同様に電子音で始まるのだが、いきなり激しいドラミングになったりする。こういう曲は「エレクトロニック・ジャズ」とでも呼べばいいのだろうか。

 M4は、ボサノヴァにブレークビーツを掛け合わせた曲。ドラムはジャズ風だが。この曲は、5分過ぎになると、リズムが殆ど無く「音響」のパートへと展開されている。

 M5は、3パートからなる曲で、1、2番目のパートはジャズ(アップライト・ベースの音が良い)、3番目のパートがアフリカ民俗音楽風である。

 M6は、ブラジル音楽で始まり、いつの間にかポップなジャズになっている曲。ポップに聞こえるのだが、実はポリリズムが使われてもいるのである。

 M7は、比較的オーソドックスなジャズ風の曲。サックスはM1の変奏かもしれない。

 M8は、聞き流していると心地よい「エレクトロニック・ジャズ」だが、リズムは複雑である。

 M9は、ある曲のリミックス・バージョンということもあり、今までの曲とは雰囲気が異なる。確かにジャズの要素はあるのだが、基本はベースとパーカッション主体のダンス・ミュージックである。

 

 

(2002-1-4)

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