Pink Floyd "The Piper At The Gates Of Dawn"

 

1. Astronomy Domine
2. Lucifer Sam
3. Matilda Mother
4. Flaming
5. Pow R. Toc H.
6. Take Up Thy Stethoscope And Walk
7. Interstellar Overdrive
8. The Gnome
9. Chapter 24
10. Scarecrow
11. Bike

 ピンク・フロイドといえば、もちろん、ロジャー・ウォータースがリーダーシップを発揮してい時代が有名だし、プログレッシブ・ロック・バンドとしてのパブリック・イメージがあるのだが、英国のニュー・ウェーブを通過した後の世代にとっては、初期のシド・バレット時代の方が馴染み易いような気がする。かくいう筆者もその一人である。ということで、デビュー作の"The Piper At The Gates Of Dawn"(邦題「夜明けの口笛吹き」)を取り上げることにした。とはいえ、シド・バレットの世界に深く踏み込むことなど殆ど出来ていないのだが。

 まず、タイトルについてだが、「夜明けの門」、しかもそれが複数とはどういうことなのだろうか。「夜明けの門」という表現自体は、キリスト教圏の感覚ならば分からぬことは無い。例えば、聖書にも「広き門」や「狭き門」という言葉があるので、別段奇異ではない。しかし、わざわざ複数形にするという感覚は妙である。その上で、"piper"つまり笛を吹く人は単数なのである。「夜明けの門」が何個もあって、その前に一人の笛吹きが立っている。何とも理解しがたい。

 本作に収められているのは全11曲で、そのうち2曲(M5、M7)がインストゥルメンタル作品である。全曲がシド・バレットの作詞・作曲となっていることからして、シド・バレットがほぼ全権を握って制作されたのだろう。

 本作を聴くと、まず耳に入ってくるのは、インストゥルメンタル曲を除けば、シド・バレットのボーカルであろう。だが、そのスタイルは、ポップ・ミュージック的な歌唱ではなく、「語り」に近い。特に、童話を子供に朗読するようなスタイルである。しかし、それは歌詞と密接に結びついた、必然性あるものなのである。

 歌詞は、概ね3つの作風に分けられる。すなわち、
(1)ドラッグを連想させるような、目に映った光景を歌にしたもの(
M1、M4、M6)、
(2)童話のような物語(
M2、M3、M8、M9、M10)、
(3)ある種の誘惑ソング?(
M11
である。(1)に分類される曲では、発音を多少曖昧にした歌唱法と音処理が目立つし、一方(2)に分類される曲では、歌詞が明瞭に聞き取れるように唄っている。M2を(2)に分類するのは、”you”が歌詞に登場することから不適当かなとも思えるのだが、「その猫が何であるか、僕には説明できない」というフレーズがあることや、語り手が冷静(他人ごととも言える)であることから(2)に分類した。

 さて、(3)に分類したM11であるが、結局言いたいことは、
「君は僕の世界にぴったりの女の子だ/君が望むことなら何でもしてあげるよ」
が全てであるような気がする。しかし、そこに話を持っていく前に語っていることは、小学校低学年以下にしか通用しないような内容であり、ラブソングに分類するのは不適当であろう。むしろ、全てを統合するような意味合いがあるように思えてならないのである。すなわち、(1)は自分自身の体験であり、(2)は主として伝聞なのだが、自分が好んできた「物語」であり、M11において、「君にも僕の世界を見せてあげよう」ということになるのだろう。ここでの「君」とは、幼い女の子であると同時に、このレコードを買った人々だと思う。

 次に、アレンジについてだが、メインの楽器はエレクトリック・ギター(シド・バレット担当)とキーボード(リチャード・ライト担当)である。特に、エレクトリック・ギターは全編に渡って使われており、その音はワイルドである。特にM1、M2、M7がそうだ。中でもM2は全く古さを感じさせないし、かつポップである。今時のギター・バンドにも通じるところがあると思う。また、キーボード類もギターに負けじと多く使われている。特に、M4でのチェンバロ風の音、M6での狂ったような演奏などが印象深い。そしてM7ではSF映画に付きもののようなパイプオルガン風の音が使われている(これは宇宙をイメージした音であることは容易に想像が付くと思う)。他にもM5のように、普通のピアノが使われている割には風化しない曲もある。この曲は、後のフロイドの作風とも通じる(例えば「吹けよ風、呼べよ嵐」)ような気がする。

 一方、発表されたのが1967年だけあって、効果音もふんだんに使われている。M1でのモールス符号(これはギターを使ったのではないか?)、M5での動物の鳴き声、M7での逆回転テープ、M10での馬の足音(?)などである。

 最後に蛇足を。M9は、同年発表の「ザ・フー・セル・アウト」をすぐに連想するようなサウンドになっている。当時、ピート・タウンゼンドはしばしばフロイドのライブ・ステージに飛び入りしていたそうだ。タウンゼンドがフロイドから影響されたようにも思えるが、逆にベース(ロジャー・ウォータース担当)の音はジョン・エントウィッスル風でもある。

 

 

 

 

(2001-3-20)

 

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