Elbow "Cast Of Thousands"
01. Ribcage
02. Fallen Angel
03. Fugitive Motel
04. Snooks (Progeress Report)
05. Switching Off
06. Not A Job
07. I've Got Your Number
08. Buttons And Zips
09. Crawling With Idiot
10. Grace Under Pressure
11. Flying Dream 143
12. Whisper Grass
13. Brave New Shave
(M12, M13は日本盤でのボーナストラック)
本作「キャスト・オブ・サ
ウザンズ」 (何千もの使途という意味だろう
か)は、エルボーにとって2枚目のアルバムになる。前作「アスリープ・インザ・バッグ」が発表されたのが2000年の春であるから、およそ2年4ヶ月ぶり
ということになる。
その間に伝わってきたニュースというと、ライブツアー以外では、今年の春くらいに、「アスリープ・インザ・バッグ」というシングルが発売されるというも
のがあったくらいである。シングルの話は立ち消えとなり、前作を非常に好んだ者としては、本作発表のニュースを聞くまでは苛立ちと諦めの間で揺れ動いてい
たのである。新人バンドが2年以上に渡り、1枚もCDを制作しないというのは、決していいことではなく(ストーン・ローゼズ、エラスティカのように、バン
ドが機能しなくなる例もある)、どちらかというと、「もうエルボーは新作を出せないのではないか」と思っていたこともあった。
だが、本作を初めて聴いた時点で、そういった苛立ちや不安は何処かへ行ってしまった。1stも良
かったが、本作はそれを上回る出来である。前作発表時には、英国プログレッシブ・ロックとの共通点ばかりが指摘されたことがあったが、本作が「プログレ」
という切り口だけで論評されることは、まずないであろう。ただし、「プログレッシブ」な要素が本作において後退しているわけではないことは、強く主張して
おきたい。むしろ、実験的要素は前作以上であると言えよう。
本作における音楽的
バックグラウンドは、M1
やM2でのエレクトロニカ、M1でのゴスペル、M4でのボ・ディドリー風ビート、M7におけるジャズ、M10でのアフリカン、
M11での昔のハリウッド映画のサントラ、M12での60年代サイケデリック・ロックなど、非常に多彩である。もちろん、そういった「要
素」に分解して行
くことも、本作を聴くことの楽しみではある。また、本作でのメロディラインだって素晴らしい。だが、それ以上に要素を纏め上げた、トータルとしての
アレン
ジの見事さに注目すべきだと思う。例えば、M3がその代表かと思
う。ここでは、「特定の楽
器の音色の良さ、特定のフレーズの良さよりも、全体とし
てのオーケストレーションに力点が置かれている」のである。
更に、本作における
重要な特徴は、イメージが上手く音像化されている点である。例えば、M4やM10では「祝祭」が、M5では「太陽光」と
いうイメージを音に変換しているよ
うに聴こえる。
現在の英国におい
て、エルボーと共通点を見出せるアーティストは少ない。筆者の知る限りでは、ピーター・ガブリエルが唯一挙げられるくらいである(実際、エルボーのボーカ
ルの声質はピーターに似ている)。ライナーノーツには、ビヨークやスピリチャライズドの名が挙げられているが、これらは
未聴なので何とも言い難い。他には、エレクトロニック・サウンドをふんだ
んに取り入れながらも、アナログ的サウンドにしか聴こえないという点では、レディオヘッドの最新作「ヘイル・トゥー・ザ・シーフ」位か。し
かし、レディオヘッドからは、「祝祭」というイメージは伝わって来ないので、一括りにするのもかなり問題である。
他に、穏やかなボーカルスタイルという点では、コールドプレイやトラヴィスが挙げられるだろうが、この両バンドは、実験的要素よりも
「歌そのもの」を重視しているバンドだ。そういったこと故、本作が爆発的セールス
を上げられるとは思えないが、こういった力作は(ある程度は)売れて欲しいものである。
最後に、歌詞について述べる。前作においては、「エニイ・デイ・ナウ」に代表されるように、「ここ
から今すぐにでも出て行きたい」という、いかにもマンチェスター出身バンドらしいテーマが歌詞になっていたのだが、本作においても、その点ではあまり変化
がないような気がする。M1〜M8
は全て「過去との決別」がテーマになっていると言っても、過言ではないだろう。
だが、前作に比べるとストレートな物言いは減っており、歌詞カードをじっくり読まないと、意味が分からないような作りになっている(読んでも分からない歌
詞もある。例えば、M8には7人もの人物が登場するが、特に何かの主張が込められてはいないようだ)。
なお、アルバム・タイトルからして、本作を宗教がモチーフになったアルバムのように捉えられる可能
性があるかもしれない。だが、宗教というものが、神の存在を前提としたものだと限定した場合、本作において多少なりとも宗教と関係があるのは、M1、M2、M5の3曲
であろう。
(2003-9-27)