The Chemical Brothers "Exit Planet Dust"

 

  1. Leave Home
  2. In Dust We Trust
  3. Song To The Siren
  4. Three Little Birdies Down Beats
  5. Fuck Up Beats
  6. Chemical Beats
  7. Chico's Groove
  8. One Too Many Mornings
  9. Life Is Sweet
 10. Playground For A Wedgeless Firm
 11. Alive Alone
 

 

 ケミカル・ブラザースは、ロックとテクノの壁を撤去したユニットとして、一般に認知されていると思う。彼らが有名になったのは、シャーラタンズなどのリミックス作業においてであるが、本作"Exit Planet Dust"(邦題「さらばダスト惑星」)の発表(1995年)により、ロックとテクノとの間の壁が消滅し始めたと言っていいであろう。実際には、次作の"Dig Your Own Hole"(1997年発表)によって、壁の撤去が完成したと考えるべきであるが。もちろん、それまでにも、ニュー・オーダーを初めとするマンチェスター界隈出身のバンドやジーザス・ジョーンズなどは、ロックにダンス・ミュージックの手法を取り入れたりしていたのだが、ロックファンは、あくまでも、「メロディのある音楽であるならば」という限定付きで、そういう音楽を受け容れていたような記憶がある。だからこそ、シェイメンは、例外としてロックファンに受け入れられたハウス系のバンドだったのであろう。

 だが、ケミカル・ブラザースが登場するに及んで、メロディや歌詞のないテクノが、ロック・ファンの間にも認知されたのである。だが、それは何故なのであろうか。一つには、彼らの音楽の持つ破壊力であろう。特にドラムの音がやたらとデカイ。これは他のテクノ系の音にはあまりみられない特徴である。

 しかし、取っ掛かりとしてはそうであったとしても、それだけでは、これほどまでにロックファンに受け容れられることは無かったと思う。それよりも、彼らの作り出す音に、あまりテクノ臭が感じられなかったことが最大の原因であるのではないだろうか。今回久々に聞き返してみて、そう思った。彼らの音楽の特徴は、ドラムとベースにあり、電子音はあくまでも副次的な存在なのだが、このドラムとベースの音が、デジタル的ではなく、むしろアナログ的なのである。多分、完全な打ち込みではなく、自分達で実際に演奏した音をサンプラーなどを使ってループにしているのだろう。

 従って、ケミカル・ブラザースは、テクノ界の異端児とも言えるのである。なるほど、DJとしてのキャリアを積んでいるし、ダンス・ミュージックへの傾倒も強いようだが、根っこには伝統的なポップ・ミュージックが存在している。

 

 では、本作の紹介に移る。本作は全11曲から成るが、M1〜M6とM7〜M11とでは、聞いたときの印象が大きく異なる。アナログ・レコードであれば、それぞれA面、B面に分けられたであろう。そういう意味では、アナログ盤があればいいのにと思う(あったかもしれないが、限定生産だと思う)。

 前半すなわちM1〜M6は、明らかにダンス・フロアを意識して制作されている。M1でBPM高めのブレーク・ビーツを聞かせた後、M2からM6まで曲間が途切れることなく音楽が続いて行く。つまり、M1はイントロである。ただし、「ウォーム・アップ」ではない。一気に気分を高揚させるためであろう、破壊的なドラムとベースが鳴っている。何度も繰り返されるテンポ・ダウンが特徴である。

 M2は、イントロからザ・フーの"I Can See For Miles"のりフが聞けるが、それよりもM1以上の高BPMが特徴である。この曲もドラムとベースが攻撃的だが、M1ほどではない。

 M3は、中近東の旋律のような女性ボーカルに続いて、ひたすらドラムがたたかれている曲である。ただし、ドラムは2キットしかないようだ。

 M4は、本作中最も機械的なサウンドに仕上がっている。ドラムも極めて機械的であり、テクノに対してよく使われる言葉である、「四つ打ち」に近い。ただし、本来「四つ打ち」とは4拍が均等に入ることを意味するが、この曲では1、3拍にアクセントがあったりする(すべてそうではない)。

 M5は、彼らなりのドラムン・ベースと言えるかもしれない。もっとも、本作の発表当時、ドラムンベースはまだアンダーグラウンドのサウンドであったはずだが。

 M6は、ベース音が目立つ曲で、1拍めにバスドラ、2拍〜4拍めをカウベルのようなものが打ち鳴らされている。更に3拍めにやや遅れてバスドラが弱めに叩かれるといった、変則ビートが特徴である。男性の掛け声らしきものが1拍めにバスドラと同時に入ってくるのも特徴である。恐らく、ビッグビートの先駆けであろう。

 続いて、後半のM7〜M11である。こちらでも高速ブレークビーツが使われている箇所はあるが、全体としてはダンス・フロア向けとは言えない。どちらかというと、現代R&Bやポップスをテクノ風にアレンジしたような印象がある。メロディが聞ける箇所もある。

 M7では、電子音がふんだんに使われ、まるで、SF映画の音楽のようである。その他。パーカッションは現代R&B風、ベースはジャズの雰囲気がある。いずれにしても、前半とは打って変わり、穏やかである。

 そして、M8も穏やかなサウンドである。その前面で迫力あるドラムが鳴っている。しかし、攻撃的な感じがしないのは、女性のボイスの透明感ゆえであろう。アンビエント・テクノをケミカル・ブラザースが作ると、こうなってしまうのだろうか。

 M9は、高速ブレークビーツが再登場する。相変わらずドラムの音はデカイ。ボーカルを務めているのは、シャーラタンズのティム・バージェスで、作曲にも関わっているらしい。歌メロは、いかにもシャーラタンズ節といったところである。

 M10は、電子音と8ビートのドラムによって構成された曲で、ブレーク(ドラムが鳴り止む)ところが頻繁に出てくる。エンディングはアンビエント・テクノに近い。

 M11は、壮大なシンセイサイザーの音とベス・オートンが唄っているのが特徴の曲。なぜだか、この歌メロもシャーラタンズ風である。ベス・オートンの声は少しだけかすれていて、フォーク歌手っぽい(あくまでも個人的な意見)。

 

(2000-1-28)

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