The Beta Band "Hot Shot U"
01. Squares
02. Al Sharp
03. Human Being
04. Gone
05. Dragon
06. Broke
07. Quiet
08. Alleged
09. Life
10. Eclipse
11. Won
11曲めは日本盤のボーナス・トラック
ザ・ベータ・バンドは1997年頃がら活動を始めた英国のバンドである。何枚かのシングルを出した後、1stアルバムとして「ザ・ベータ・バンド」を1999年に発表し、今回2ndアルバムとして「ホット・ショッツU」を発表した。ちなみに、「ホット・ショット」には、「やり手、直通急行、至急便、消防官、最新ニュース」、といった意味があるが、「U」にはどのような意味があるのだろうか。
本作を聴く前に、1stアルバムを聞いた人もそれなりにいると思うが、その人達はどのように感じたのだろうか。1曲目を聞いただけで面食らった人もいるだろうし、逆に面白いと思った人もいるだろう。筆者は、といえば、その中間あたりに位置するような気がする。確かに、無茶とも言える曲調の展開は面白い、とは思ったが、繰り返して聞きたいとは思わなかったのである。必然性の無さを感じていたからかもしれない。それに、この手の音楽ならば、ベックという先人がいるし・・・。ということで、本作を聴くまで、1stを聴くことはあまり無かったというのが、正直なところである。
さて、本作である。1stがあれこれ模索していた段階のアルバムだとすれば、2ndである本作は、かなりの完成度を持ったアルバムであるといえるだろう。対象の絞込みが出来ているからだ。それは、ボーカル・メロディとバックの「音」の2点である。歌詞については、歌詞カードも対訳も無いので、どうなのか分からない(聞き取りが出来ればいいのだが)。
ボーカル・メロディについては、1stの時は大したことなかったというのではない。2ndに至る萌芽は既に現れている。しかし、残念ながらアレンジなどの他の要素が、その要素を殺しがちだったような気がしてならない。これは。メンバーがまだメロディについて自覚的でなかったことを推測させる。
ところが本作では、見事にボーカル・メロディの良さが前面に押し出されている。特に、アカペラ調のコーラス・ワークが素晴らしい(バック・グラウンドはケルト民族のフォークにあるような気がする)。クィーンやビーチ・ボーイズ(正確にはブライアン・ウィルソンと書くべきか)といったバンドと比べても、決して引けを取らない出来のように思える(これも正確には、クィーンがビーチ・ボーイズの影響を多大に受けているのであるが)。ただし、クィーンと異なり、カリスマ性だとかナルシシズムといった要素は、ザ・ベータ・バンドの曲からは感じられない。これは、彼らが90年代後半に登場したバンドだから、という点が多分にあるとは思うが。
また、ザ・ベータ・バンドは、いわゆる「歌ものバンド」でもない。「歌ものバンド」の作るメロディは、各フレーズごとのメロディの良さよりも、如何にしてメロディを展開し、「サビ」に持って行くかが、かなりのウェイトを占めている。しかし、ザ・ベータ・バンドの場合、同じフレーズを繰り返しただけで、インスト・パートに移ってしまうという構成の曲が多々あるし、インスト・パートの方がボーカル・パートより長い曲も多い。
一方、バックの「音」についてである。何よりも目立つのは、サンプラー、シンセサイザーなどを使ったプログラミングによる「加工音」である。90年代半ば以降、音響派やエレクトロニカといったジャンルが、サンプラーの普及により台頭してきたが、本作はそれらと非常に接近したものと位置付けることも出来る。しかし、音響派やエレクトロニカに属するアーティスト達は、ンボーカルそのものを重視していないし、エフェクトをかけたりして極端に歪ませた声に加工するのが常套である。故に、ザ・ベータ・バンドをそういった人達と一括りにすることは出来ない。
であるからして、彼らはギター、ドラム、ハモンド・オルガンやピアノといった最早古典的とも言える楽器類を軽視していないことも、当然なのかもしれない。とはいえ、ここで勘違いしてはならないのは、彼らは、そういった楽器類の不完全さを、重要視しているのでは無いということである。本作で聴けるそれら楽器の音は、非常にまとまったものだ。むしろ、電子楽器の作り出す音の方が、実験的だし、ある種不完全さを感じさせている。このあたりは、ベックあるいは、ジョン・スペンサーといった人達との微妙な相違点なのだろう。
結局、ザ・ベータ・バンドをどこかの一ジャンルに押し込めること自体が間違いだと思う。彼らの音楽の基盤には、民族音楽(ケルティック・フォーク、中近東、アフリカンなど)、音響派(M2)、アンビエント(M1)、ダンス(M6〜M8)、R&B(M8〜M10)、ロック(M7)、ヒップホップ(M2)、ジャズ(M3、M5)といった多様なものがある。一般には、ロックに愛想を尽かして音響派などに走る傾向が見られるが、彼らにとっては、それらのどれもが等価値であるような気がする。
なお、M11に関しては、他の曲と異なりラップが入っている。どうも、アルバム単位としての狙いや構成をぶち壊しているような気がしてならない。
CDの中ジャケットを取り出して見ると、筆者の如きザ・フーの大ファンにとっては、とても楽しい「遊び」が隠されている。中ジャケットの片側は、どこかの部屋の写真なのだが、ベース・ギターの右下あたりには、ザ・フーの「フー・アー・ユー」のレコード・ジャケットが写っている。しかも、キース・ムーンの顔が何者かと差し替えられている。一方、左側の壁の上方には、ピート・タウンゼンドのソロ作品である、「エンプティ・グラス」のレコード・ジャケットが、これまた顔の部分が差し替えられて写っている。
(2001-9-22)