Boom Boom Satellites「Umbra」

 

01. sloughin' Blue
02. Ingrained
03. Brandnew Battering Ram
04. Your Realitys' A fantasy Is Killing Me
05. Ego
06. Looking Glass
07. Fogbound
08. Sinker
09. Solikoquy
10. Panacer

 

 ブンブンサテライツに関しては前作が発表された時に名前を知ったのだが、CDを買いそびれたままでいた。そして、結局本作が、初めて聴いた作品ということになる。

 ブンブンサテライツに関するパブリック・イメージというと、「ロックとダンスの垣根を超えたバンド」、あたりであろうか。例えば、プロジディーやケミカル・ブラザースなどと共通項を持っているということだ。確かに、ケミカル・ブラザースは、自宅で聴かれることを意識してはいるが、それ以上にクラブでかかることを重視しているように思える。それに対し、ブンブンサテライツの本作品は、自宅で聴かれることを願って制作されたように思える。しかも、ステレオの前に一人じっと座って聴くことがベストであると思う。

 本作を初めて聴いたのは、自宅であった。ただし、BGMのように聞き流していたのである。聞いた感想としては、「何これ」という程度であった。そして2回目もやはり同じようにBGM的に聞いてみたが、途中でCDプレーやを止めてしまった。しかし、3回目にステレオの前に座ってじっくりと聴いてみたところ、本作の良さが分かったような気がしたのである。そこで初めて気付いたのである。本作を聴くときの態度が問題であったのだと。

 これは、「初めて聞いた時は何とも思わなかったけれど、何回か聴くうちに好きになった」、という、結構一般的なエピソードの一つだと誤解されそうだが、断じてそうではない。実のところ、4回目以降でも、聞き流すと途中で飽きてしまう、というよりは最初から馴染めないのであるのに、座ってじっくりと聴くと、聴き通せるのである。蛇足ながら、車を運転中に聞くことにも不適な作品だと思う。

 レコード(もしくはCD)を聴くときの態度がどうのこうのと書くと、何か傲岸不遜のように思われるかもしれない。あたかもクラシック音楽マニアが初心者を馬鹿にするような態度、と受け取られる危険性もある。しかし、現在進行のポップ・ミュージックにおいて、音響派と呼ばれる作品群があるが、それらを運転中に聞いたり、喫茶店でBGMとして聞いたりしたときに、面白さが分かるとは思えないのである。本作に関してもそれと同じである。

 次に本作の特徴について述べる。サウンドの根幹は、ドラムとベースである。どちらも、打ち込みと生楽器両方を使っていると思えるが、ここは打ち込みでここは生楽器と識別することは困難である。どちらの楽器も迫力があるが、リズムへのこだわりは並々ならぬものが感じられる。ロックあるいはダンスのリズムが主流を占めてはいるが、それだけでなく、ジャズを大胆に導入しているのも聞き逃せない(M3)。この曲をマイルス・デイヴィスが聴いたらどう思ったであろうか(不可能だが)。逆にメロディにはあまり重きを置いていない。せいぜいM8M9でメロディらしきものを感じ取ることが出来る程度である。従って、ボーカルは肉声ではなくエフェクト処理が施されているのも、当然と言えるかもしれない。ただし、チャックDが参加したM4だけは別で、チャックDの肉声が聴ける。しかし、これはラップであってメロディを唄っているわけではない。その点は一貫性がある。話がそれるが、チャックDのラッピングはやはり素晴らしいと思う。

 その一方で、当然のことながら、電子音も多く使われてはいるのだが、音響派とは距離を置いた使い方であり、むしろ、控えめである。しかし、一見脇役のようでいて、主役に劣らない印象を聞き手に与えているように思う。

 また、管楽器やピアノを導入している点も重要であり、本作を、「単なる流行りの音楽」から逸脱させることに成功している。最も顕著な曲はM3M5であろう。M3は上記のようにモダン・ジャズ、そしてM5ではキング・クリムゾンやジェスロ・タルを思わせるような音を出している。こう書くと、まるで難解な音楽になっているように誤解される危険性があるが、しかしことは逆であって、かえって聴き易くなっている点に敬服する。

 結局、本作は音響派、ロックを本来的なプログレッシブ・ロックの精神のもとに融合したものと言えるのかもしれない(ジャズを取り入れるのは、プログレの手法の一つと見ることも出来る)。これを「ポストロック」として位置付けることも可能であるが、個人的には、ポストロックという言葉自体にまだ懐疑的なので、これは留保しておきたい。

 

 

(2001-4-22)

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