Selection
1. Beautiful Deliah
2. So Mystifying
3. Just Can't Go To Sleep
4. Long Tall Shorty
5. I Took my Baby Home
6. I'm A Lover Not A Fighter
7. You Really Got Me
8. Cadillac
9. Bald Headed Woman
10. Revenge
11.Too Much Monkey Business
12. I've Been Driving On Bald Mountain
13. Stop Your Sobbing
14. Got Love If You Want It
"The Kinks"は、ザ・キンクスの1stアルバムで、1964年10月に発表されている。この当時だとモノラル・ミックスが通常であり、当然本作もモノラル仕様で発売されたのだが、後にステレオ・ミックス盤が発売されたらしい。しかし、何故かステレオ盤でも"You Really Got Me"だけはモノラル・ミックスなのである。この変則的事態は何故なのだろうか。
60年代半ばまでの英国では、デビュー・アルバムというのは、カバーや専業作曲家による曲を中心とすることが通常であったようだ。ビートルズのように、1stからいきなりオリジナル作品中心で構成することは異例中の異例であろう(デイヴ・クラーク・ファイブもそうかもしれない)。本作も例に漏れず、全14曲中6曲がレイ・デイヴィスの作品で、他はカバーが6曲、残り2曲がプロデューサーだったシェル・タルミーの作品である。つまり、オリジナルとカバーとの比率は大体50%ということだ。これは、"You Really Got Me"が大ヒットしたことで、急遽発売が決定したため、レイの曲が揃わなかったことが第1の原因であろう。また、レコード会社側も、シングルヒット1曲では、全面的にレイの作曲能力を信用することは出来ないと判断したのかもしれない。なお、前記のシェル・タルミー作品に関しては、恐らくプロデューサーが印税を多く受け取りたいがために収められたのだろう。
本作を通して聴くと、その後のキンクスの傑作群を聴いてしまった身では、どうしてもアルバムとしての構成の弱さを感じてしまう。曲の並べ方にしてもそうだ。もちろん、1stアルバムなのだから、そんなことで批判すべきではないが。しかし、懐に余1裕の無い人に勧めてもいいアルバムでは無いと思う。
最初に、カバー作品について述べる。キンクスも当時の多くの英国バンドと同様にR&Bやブルースのコピーから音楽活動を始めている。従って、本作中のカバー作品もR&Bやブルースである。M1、M11のチャック・ベリー、M8のボ・ディドリーといった、当時の英国バンドにとっては当然ともいえる人達の作品が取り上げられているが、チャック・ベリー作品の場合、それほど有名な曲ではない点がキンクスらしいのかもしれない。特に、M11のようなラブソングではない作品を取り上げるあたりには、その後のキンクスへのつながりが見られるような気もする。
また、その他の作品、M14のスリム・ハーポにしても、ジョン・リー・フッカーやマディ・ウォーターズといった、いかにも黒人ミュージシャンではなく、どちらかといえば白人に近い歌唱法、センスのミュージシャンの作品を取り上げていることも興味深いことである。また、M4のドン・コヴェイのカバーにしても、R&Bというよりはソウルに近い、洗練されたスタイルに仕上がっているのだ。
レイのオリジナル作品について述べよう。いの一番に取り上げるべきは、文句無くM7である。この曲がロック史上においていかに重要であるかは、これまでにも言い尽くされてきた。デイヴ・デイヴィスの歪んだギター・サウンドは、元祖ハードロックとして未だに輝きを失っていないと思う。例えばヴァン・ヘイレンによるカバーと比較しても、攻撃性という点ではキンクスの方が上だと思う。
次は、プリテンダーズがカバーしたことで有名になったとされる、M13である。リズムという点で、M4で取り上げたドン・コヴェイの影響を受けているのかなとも思えるが、確かなことは分からない。ただ、ジェントルなメロディは後のキンクスに直接つながっていることは確実だと思う。
3番目は、レイの習作とも言えるインスト作品のM10である。当時としては暴力的なサウンドやノリがある。初期ザ・フーは、この路線を受け継いでいると言えよう。
歌詞については、まだ単純なラブソングである。とはいえ、例えば、M7は非常に熱烈な求愛の歌詞だが、これはこれで攻撃的サウンドとの相性は良いし、そういう直接的な表現は20年後のパンクスにも見られたことである。ありきたりな言い方をすれば、初期衝動である。一方M5などは、これがレイの作品かと思えるような安っぽい歌詞であり、少々残念だ。
サウンド面については、M7やM10を除くと、まだまだ模倣の域を出てはいない。M7にしても、ドラムはオーソドックスで、リズムを何とかキープしています程度である。これは経験不足のためであり、こういった課題は2nd以降でクリアされて行くので、あげつらうことはしないでおく。
1.Look For Me Baby
2. Got My Feet On The Ground
3. Nothin' In The World Can Stop Me Worryin' 'bout That Girl
4. Naggin' Woman
5. Wonder Where My Baby Is
6. Tired Of Waiting For You
7. Dancing In The Street
8. Don't Ever Change
9. Come On Now
10. So Long
11. You Shouldn't Be Sad
12. Something Better Beginning
"Kinda Kinks"は、ザ・キンクスの2ndアルバムで、65年2月に発表されている。前作から4ヶ月のインターバルしか置いていないのだが、当時の発売間隔としては、それほど異常ではない。アルバムがシングルよりも格下であり、売れれば儲けモノ程度に思われていた時代の産物なのだから。しかし、そんな短いインターバルで制作すれば、出来もそれほど良くはならないことも、ある意味当然である。
さて、本作はどうだろうか。曲の並べ方一つ取っても、スローな曲とアップテンポな曲を交互に並べるという工夫がなされている。ただ一点、シングルヒットした曲をA面最後に配置したのは、やはりアルバム軽視であるといえるが。また、デイヴのコード・カッティング、ピートのベース、ミックのドラム、一つ一つに成果が見られる、前作から格段の進歩を遂げていると言えよう。
楽曲についても、前作ではオリジナル曲においても、R&B、ブルースのコピーのレベルであったのに対し(もちろん、"You Really Got Me"、"Stop Your Sobbing"は違うが)、本作ではフォークの要素が加わり(M3、M10)、特にスローな曲でのレベルアップがみられる。確かに、若さゆえの爆発という面は後退しているが、それによってバンドの個性が、はっきりと見えてきたとも言える。レイのボーカルは鼻声で押しの強さが無いことが、R&Bを唄う上でもう一つ本家に迫れない要因となっていたが、本作では「本家に追い付く」ことは放棄された感がある。しかし、これで良かったのである。
これは歌詞についても同様である。3rd以降になるともっと劇的に変化するし、それらに比べれば他愛ないのだが、ありきたりのラブソングを脱しようと試みているのである。確かに、ラブソングが大勢を占めていることには変わりないし、"you and me"ソングが主流なのだが、孤独感や不信感を込めた歌詞が登場している(M2、M3、M6、M12)。また、過去を振り返るという、後のキンクスにおける重要なテーマが現れた歌詞もある(M8、M10)。
収録曲のうち、興味深いと思える曲を取り上げてみる。まず、M3はアコースティックギターをメインにしたフォーク+ブルース調の曲であり、レイのソロという印象がある。続くM4(カバー作品)では、デイヴがボーカルを取っているが、こちらはデイヴのソロという印象が強い。2ndにして既にバンドではなくソロとしての指向性が顔を出しているのである。
M6はシングルとしても大ヒットを記録した曲で、ギターはキンキー・サウンドと呼ばれる、歪んだ音を出しているのだが、穏やかなメロディを持っており、本作を通り越して、キンクスの楽曲でも最高の部類に属すると思える。「君の好きなようにすればいい/でも僕をこれ以上待たせないでくれ」という歌詞は、タイトルともあいまって、別れ話なのか、懐柔策なのか、一寸意味深である。ミックのドラミングも、フィルインを入れたりして、ようやく開花した感がある。これは、続くM7(モータウンの有名な曲のカバー)についても同様である。この曲では、ミック以上にデイヴのコード・カッティングが素晴らしいが。
M8、M12は、ストーンズがカバーしたアーサー・アレクサンダーの"You Better Move On"に一寸雰囲気が似ているのだが、ストーンズがこの手の作品を取り上げると、ミック・ジャガーの我の強い声のせいか、違和感を感じることが多いのに対して、キンクスの場合、すんなりと溶けこめるような気がする。
逆に、M11のような流麗とは言えないメロディの曲もある。アルバムの他の曲に比べて、無理して作ったような感がある。歌詞も同様で、「恋に落ちて未来はハッピー」というのは無理に無理を重ねているようにしか受け取れない。蛇足だが、日本のGSがカバーするのに適しているような気がする。
(2000-11-19