世間知らずな多数派?

   
  3月29日付けのアサヒ・コムに載った記事から引用する。記事の見出しは、
田中さん効果? 子供に望む職業に『エンジニア』上昇
である。

 この記事は、ランドセルなどの合成皮革大手のクラレが新(小学)1年生と親の計8000人にアンケート調査を実施した結果の一部を紹介しており、それは以下の通りである。
 
(1)男の子の親が将来子供になって欲しい職業として、エンジニアを挙げた人が、前年の6位から4位に上昇した。

(2)男の子がなりたい職業でも大学教授が18位から13位に上昇した。

(3)男の子の親が将来子供になって欲しい職業は例年、トップが公務員で、以下スポーツ選手、医師、会社員と続いてきたが、今年はエンジニアが会社員を抜いた。

(4)男の子自身の1位はスポーツ選手。

(5)女の子のなりたい1位はパン・ケーキ屋さん、親がなってほしいトップは看護師だった。

 エンジニアの端くれの私としては、この記事を読んで、回答者のあまりの実態知らずさに驚愕してしまった。もちろん、子供が職業についてあまり知らないのは当然なので、変な結果が出てきても仕方のないことである。問題は親の方である。

 まず、(3)から俎上に乗せよう。この調査では、会社員とエンジニアが別の職業にされているのだが、会社員でないエンジニアという者が存在するのだろうか? 否、殆ど存在しないと言って差し支えあるまい。例外はベンチャー企業の出資者兼エンジニアくらいである。大勢としては、エンジニアは会社員の部分集合なのである。

 更に、子供になって欲しい職業のトップが、ずっと公務員であるというのも、何だか変ではないか。 小泉内閣の掲げる「構造改革」は、公務員を減らす政策であり、小泉内閣の支持率は(だいぶ落ちたとはいえ)高い。結局、
「構造改革の行き着く先など、多くの人は意識していない」
としか考えようがないではないか。

 次は(1)である。(3)を見る限り、親は子供に高収入な職業に就いて欲しいのだろう(公務員を除く)。それは気持ちとして分かる。だが、その意に反して、エンジニアは高収入ではないのである。かの田中耕一氏とて、ノーベル賞を獲るまでは、さほど高収入だったわけではないだろう。こんなことは、世間の常識(コモンセンス)だと思っていたが(常識という言葉は嫌いだが、他に適当な表現が見当たらない)、どうも違ったらしい。

 3番目は(5)の後半である。看護師が肉体的にも精神的にも非常に辛い職業であることは、これまた世間の常識だとばかり思っていたのだが、これも違っていたらしい。もっとも、子供には大変な職業に就いて欲しいと願う親が多ければ、話は別だが、そんなことはありえないと思う。

 
 有効回答数や順位付けに有意性があるのか、この調査結果からは分からないので、断言するのは早急かもしれない。だが、敢えて言わせてもらうと、この調査結果を見て思うのは、
いかに多くの人が職業の実態について無知か
ということである。だが、多数派によって世の中のしくみを決められるのが ”民主主義”である。考えてみれば、恐ろしいことでもある(だからといって、独裁体制がいいということにはならないが)。
 
 
 
 
 
 

  

(2003-4-6)

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