どうやらモノに関する情報誌が、売れ行き好調とみえる。ここで言う「モノ」とは、家電、パソコン、AV機器、クルマなどである。
情報誌の場合、メーカーの広告を載せることが多いから、広告主に対する批判、悪口は、滅多なことでは載せないのが普通である。中には、提灯記事としか思えないものも見受けられる。
そんなことは私としても重々承知であるから、情報誌そのものを批判する気はない。
「雑誌の記事など当てにせず、自分の感覚を信じろ」
という意見があり、これはこれでもっともな意見だとは思うが、初心者にまで「情報誌を読むな」などと主張するのは、酷ではないかと思う。
上記の通り、情報誌に批判精神など本来期待すべきものではないが、つい最近出た、
「この冬注目! 厳選アイテム300」(日経BP社 発行)
という本(正確には雑誌の増刊号)には、
辛口徹底評価
という謳い文句が堂々とタイトルの上に掲げられていた。
そこで私も「そこまで言うのなら」という好奇心が沸き、買ってみた。そして中身を読んだところ、呆れる思いであった。
この冊子の一体どこが「辛口」なのだろうか?
正直言って、他の情報誌と大した差異があるわけでもなく、メーカーの提灯持ちの域を出ていないのである。そこで今回は、この冊子を俎上に上げることにした。
●そうは言っても・・・
この本の中で、唯一「辛口評価」であると思えるのが、「クルマ」の項目である。ただ、私自身がクルマに詳しくないので、本誌中の評価が妥当であるかまでは、判断しかねる。
●その他は軒並み・・・
[1]AV機器
◆テレビ
コーナーの冒頭でアナログ放送の終了時期について触れている点は評価できる。しかし、それならば何故、
デジタル放送用チューナ内蔵テレビが出てくるまでは、買い控えるのも手だ
と主張できないのだろうか? あるいは、「つなぎ」としてブラウン管TVの安いもの(例えば型落ち品)を買うという案だってある。TVが壊れた人ならともかく、何も無理して今の時期に豪華なテレビを買う必要など何処にもない。
更にもう一点。液晶テレビに対しては、視野角や追従性といった欠点を指摘しているのに、プラズマテレビに対しては、「大消費電力」という欠点を指摘していない。何故、こういう不公平な扱いをしたのだろう。
◆DVDレコーダーなど
コーナーの冒頭の文で、
待つよりも”買う”が正しい。(中略)「オススメはハイブリッドレコーダーだと本誌は断言する」と結論が出されている。
念のためだが。ハイブリッドレコーダーとは、ハードディスクとDVDレコーダーが一台にまとめられた機器である。この結論に対しては、「もしも買わねばならない状況であれば」という条件が付けば、私も異論はない。逆に言えば、慌てて買うべきものでもないような気がする。
私見はさておき、ページをめくってみると、次のように書かれている。
「現在店頭に並ぶハイブリッドレコーダーの機種は少ない」
機種が少ないというのに、「待つより買いだ」と主張しているのである。無茶としか思えない。もっと選択肢が拡がってからでも遅くはないと思うのだが。
なお、記録型DVDの規格違いによる優劣に関しては、サラッと流されている。ここまで読んだ者にとっては、驚きではなかったが。
[2]携帯電話
はっきり言って、NTTドコモ、Jフォン、au各社から出ている携帯電話の良い所を並べ立てた記事である。辛口と言えるのは、せいぜいFOMAに関する問題点を少しだけ指摘した点のみ。これとて、携帯電話についてある程度知っている人であれば、目新しい事柄ではない。
[3]パソコン
このコーナーは、パソコンを初めて買う人向けのようである。個人的には、2台目以降はBTOの方が良いと考えているが、BTOパソコンに言及されているのは、ホンのさわり程度である。しかも、
@AV系の機能が弱い。Aビギナーは上手なパーツ構成が出来ないのが難点だ。
といった、どちらかといえば否定的なニュアンスで書かれている。まあ、初心者に関してならば、当たっていると言えなくもないだろうが。
さて、ここからは少し話がずれる。この記事が明記していないにも関わらず、初心者向けであることは明らかである。だが、そうであるならばこそ、おかしな記述をしてはいけないだろう。だが、この本には実際おかしな記述がある。
カタログほどには変わらないパソコンのスペック差
意味不明な日本語である。スペックはカタログに書かれている数値であって、カタログでの記載値が実際と異なるのであれば、それはある種の「詐欺」である。例えば、カタログに「ペンティアム4の2GHz」に書かれているのに、実際には1.8GHzで動作しているのであれば、それは消費者に対する詐欺行為なのである。
もっとも、本文を読むと、そうではなくて、「カタログ記載値ほどには性能は変わらない」ことを言いたかったらしい。ならば、見出しの方もきちんとすべきであったろう。
では、ひとまず本文は正しいのかといえば、そうではない。どうやら、「CPUのクロックの差が性能差には直結しない」ことを主張しているが、当然である。パソコンの性能を決めるのはCPUだけではない。メモリのクロックや搭載容量によっても変わる。更に、ソフトを動かす際には、搭載OSにも影響を受ける。そういうことを抜きにして、ただ「カタログ値ほどには性能差は出ない」と説明するのは、非常にいい加減で不親切である。
●結局は・・・
本当は上記以外にも、デジカメなどが取り上げられているのだが、内容は似たり寄ったりなので、書くのをやめた。
結局、本誌は従来の情報誌のレベルから一歩も踏み出しておらず、「辛口徹底評価」との宣言には程遠い代物である。
なるほど、情報誌の役割は「情報を提供すること」であり、どれを買うか、あるいは買うのをやめるかは、全て読者の自己責任と言えるのかも知れない。しかし、情報を提供するといっても、
売る側に都合の良いことをだけを書き連ねたものは、「情報」としては不充分である。ましてや「辛口徹底評価」と謳っているのであれば、なおさらである。
(2002-12-8)
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