NHKは「タレント好感度」なる調査を毎年実施している。NHKという一団体による調査であるにも関わらず、民放や新聞(それも一般紙まで)がこぞって取り上げるところなど、まるで紅白にも匹敵するようなイベントに仕立てられた感もある。まず、そういうマスコミ業界の姿勢自体、私は大嫌いだ。そればかりでなく、こういった調査は問題を孕んでいると思う。
もっとも、この好感度調査が、TV視聴率や芸能人のギャラに結び付かないのであれば、別段構わないとは思う。単なる「お遊び」として片付ければ済む話だ。しかし、マスコミの騒ぎぶりを横目で見ると、単なるお遊びで片付けられそうにもない。
そもそも好感度というのは、タレントの能力のホンの一部、しかも本分から外れた能力であるということである。この調査では、何故だかお笑い芸人が上位にランクされることが多いのだが、「笑い」という芸は必ずしも好感を持たれるわけではない。例えば、ブラック・ユーモアの類は、本質的に少数の人にしか受けない「笑い」である。
また、俳優であるならば、敵役としての演技力が光る人がいたとしても、それは好感度を上げる材料にはならない。これは主役を張るような俳優にとっても同様であって、たとえ主役であっても、それが悪人だったり異常人格者が続けば、やはり好感度は上がりづらいだろう。
だが、ここに一つ手段があって、それは「トーク番組に積極的に出演する」ということである。トーク番組で人柄の良さとか軽妙な話術を売っておけば、好感度タレントの上位にランクされる可能性も出てくるわけだ。もっとも、悪役専門俳優がそんなことをしては、ドラマの方に支障をきたす(悪役は視聴者にとって憎らしく思えるからこそ存在意義がある)。ということは、プロ意識が強い俳優であれば、そんなことまでして好感度を持たれたいとは思わないのだろう。
逆に、「本分の能力が低い芸能人こそ、好感度が上がり易い」、という倒錯した状況を生み出しているとも言える。それは、芸能界にとっても、視聴者・観衆にとっても不幸であろう。そこまで断じなくとも、「程々またはそれ以下の能力がもてはやされる」危険性は否定できないと思う。
次に、このような調査結果を受け取る側から見てみよう。元々、芸能人を評価する場合、様々な観点があったはずである。例えば、「存在感」、「凄み」、「ルックス」、「声」などである。然るにこの調査では、そういった切り口はばっさり捨てられ、「好感が持てる」というただ一点のみから評価されてしまう。また、回答者は確かにごく一部に過ぎないのだが、調査結果がマスメディアを通じて公表されると、「大衆の意見」、「多数の意見」にすり替わってしまう。こういう風潮に慣らされると、様々な観点で以って芸能人を見ることが難しくなって行く。それがまた、「程々の能力」を持つ芸能人をもてはやすことに拍車をかける。というふうに、悪循環が形成されるように思えてしまうのである。
しかし、こういった調査を実施しているNHKの真意はどこにあるのだろうか。
一般大衆というものは、様々な点から人を見ることが出来ない、
と馬鹿にしているのだろうか。それとも、
一般大衆が賢くなってもらっては迷惑千万。もっと単純に物事を判断するように教化すべき、
と考えているのか。
いや、悪いのはNHKよりもそれを騒ぎ立てる他のマスコミである。少なくとも、NHKには調査をする自由がある。その結果を何やら価値があるかの如く扱う方が問題だと思う。
いずれにせよ、現代の若者を「何でも誉めるときは『可愛い』で済ませる」といって批判する資格など、マスコミ業界には無いと思う。最近は「可愛い」ではなくて、「癒し」なのかもしれないけど。
(2002-5-19)
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