不勉強なのか傲慢なのか 

 まずは、2月116日付けの読売新聞の記事から引用する。

 宇宙科学研究所が約6億円をかけ開発した衛星「DASH」の国産ロケット「H2A」2号機からの分離失敗で、同研究所は15日、原因が製造会社による図面の写し間違いだったと発表した。ロケット側には問題はなかったと結論付けた。

 同研究所の調査によると、衛星を設計したNECが、基本設計図から製造用の図面を作る際、信号を伝える配線のうち2本の接続先を間違って写していた。この配線は、ロケット側から送られた衛星の分離信号を伝えるものだったため、DASHはH2Aから分離できなかった。  

 

 さて、この記事を読んでも分からないのは、 「衛星の開発チームが設計に使っていたツール のことである。まさか今時手書き図面なんてことはないと思うのだが。

 では、この開発チームがCADを使っていたとしよう。しかし、 記事によれば、基本設計図と製造用という2種類の図面が存在し、しかも写し換えの時にミスが発生したことになっている。 別の図面に写し換える際に人間が介在すれば、そこにミスが発生する確率が高くなることくらい、関係者ならば分かっているはずだ。

 よって通常は、仮に2種類の図面が必要であったとしても、コンピュータを使って自動変換するはずである。 仮に、そういったCADシステムが構築されていなかったとしたら、それを構築してから開発に着手するのが、 まっとうな手順 というものだろう。

 これが、どこの馬の骨か分からぬチームであり、失敗しても大した痛手にならない開発ならば、私としてもこんなことを主張するつもりはない。しかし、件のチームはNECである。NECといえば、LSIのトップクラス・メーカである。CADにおける自動化が出来ない会社ではない。
 同時に、衛星開発には相当の投資が必要だし、失敗は本来許されないはずである。

 さて、ここまでは開発者たるNECへの疑問あるいは批判である。ここからは、記事を載せた読売新聞側を批判する。

 上に私は、「この記事を読んでも分からないのは」と書いた。そうなのである。この記事を読んでも、設計図が手書きなのかCADを使っているのか、一切が明らかにされていないのである。

 現代の電気設計に疎い人がこの記事を読んだ場合、まるで古の手法よろしく、「手書きで設計しているんだな」と思ってしまうであろう。逆に、そのあたりにある程度通じている人であれば、「えーっ、奴さん達、CADによる自動化ツールも作れないレベルなのかよ」、と思ってしまうこともあるかもしれない。
 なお、ここでは「ある程度」というのがミソである。詳しい人ならば、真っ先に記事の不備を不満に思うことであろう。

 結局、この記事を書いた記者および編集部は、電気CADのことに疎いのではないか、と私は思うのだが、真相はどうなのだろう。仮にそうだったとすれば、トンでもないことである。もっとその辺の事情に明るい人に記事を書いてもらわねばならない。

 逆に編集部が、「そこまで専門的な内容に触れても、読者からすれば分からないし、興味を引くことも無いだろう 、と判断したとすれば、それはそれでトンでもないことである。小学生新聞じゃあるまいし、勝手に読者のレベルを想定するのは、私は間違いだと思う。

 とはいえ、経済関係の記事だと、相当専門的な用語が使われていることも多いのだし、 これはやはり、記者の不勉強だと思わざるを得ないのである。

 

 

 

 

 

(2002-2-16)

⇒このページのトップに戻る

⇒コーナーのトップに戻る