その記事には、演歌復興のかぎを握る要因として、
@今のマーケットが中高校生中心のため、
A30代以上にとっては、聞くべき音楽が無い、何を聞いていいのか分からない、という状況にある、
と書かれていた。@については頷けなくはないものの、問題点を取り違えている。Aについては、「あーまたか」としか思えなかったし、そういった不満の反動が何故演歌復興につながるのかについては、論拠不在である(この記事を書いた記者の願望かと勘ぐられても仕方が無いほどだ)。とはいえ、以前だったらここは「40代以上」となっていたはずだが、とうとう「30代以上」になったのか、という点では新味はある。それとも、「30代」は大人の象徴として使われているだけなのかもしれない。
ともかく、ここ何年かこういった粗雑な意見が横行しているので、これに対して自分なりの意見を述べておく。ただし、これが世間で役に立つとか立たないとか、そういうことについては考えていない。
[1]歴史的事実の無視
@についてである。この手の発言がなされる場合、大衆音楽が、主として10代をターゲットとして成立してきたという歴史的事実を無視していることが殆どである。プレスリーにまず熱狂したのは、どのような人たちであったのか。ビートルズのあるアルバムに「4人はアイドル」という邦題が付いているのは何故か。はたまた彼らの上の世代は、初めから彼らを歓迎したのか。そういうことを一切無視して不満を言っても、説得力がないだろう。また、この手の愚痴をこぼす人は、10代の頃から、自分の親にも受け入られるような音楽が必要だと考えていたのだろうか。自分が年を取ったからといって、自分向けの音楽を供給せよと要求するのは、エゴイズムの域を出ていない。(ここでは英米のミュージシャンを引き合いに出したが、昔の日本の歌手だって、若い頃は結構非難されたらしい)。
つまり、レコード会社の側から見れば、ここ何十年に渡って、同じこと、すなわち10代を相手にした市場を形成するという作業を続けてきたに過ぎないとも言える。この点を把握した上で、「もういい加減、そこから脱却すべきだ」と主張すべきである。
むしろ問題なのは、マスメディアであり、それを受け取る側なのだろう。これについては改めて書くとする。
[2]怠慢
Aについてであるが、まずは一旦問題を分けて考えるべきである。すなわち、聞くべき音楽が無いことと何を聞いていいのか分からないことは別の話なのである。
前者については、本当に30代以上の鑑賞に耐えられる新作が現在生まれていないのだろうか、と反論したくなる。チャートの上位に顔を出す曲からそれほどではないものまで、ある程度の数を試聴した上での物言いであろうか。私にはとてもそうは思えない。恐らくは、テレビでよく話題になる曲だけを知っているに過ぎないか、でなければ他者からの受け売りのような気がする。いや、昔の曲の方が良いという意見はあっていいのである。だが、それならば昔の曲を聞き続ければ済むことだし、現にそうしている人も少なからずいるようだ(ネット上の掲示板を見る限りは)。だが、そういう人は殊更に愚痴をこぼしたりしない傾向にあるような気がする(充足しているのだから当然といえば当然だが)。
結局、問題点は後者に集約されるのであろう。要は情報の不足ということだ。これは確かに問題だと私も思う。まずはマスメディアの在り方であるが([1]に述べたように今回は省略する)、もう一点、特に家族持ちにとっては、自分の為にお金を使えないことが多いということも指摘しておかねばならないだろう。
[3]30代の最大公約数
あの記事に関して真っ先に納得行かないのが、Aの不満が演歌復興につながる(つながりそうだ)と推測している点である。おそらく、記者は根本的なところで間違いを犯している。それは、今の30代以上にとって演歌が最大公約数である、という思い込みである。なるほど、年を重ねるに従って音楽の嗜好が変化していくことは有り得る。だが、ポップスやロックから演歌に嗜好が変わるのは、いたとしても極く少数であろうし、その場合「復興」とは呼べない。堀内孝雄の場合は、元からそういう嗜好があっただけのことである。
[4]ステレオタイプ
ここまでに述べた反論は、よく考えてみると枝葉に属するもののような気がする。根幹的な問題は、30代以上をステレオタイプに扱っている点なのである。音楽的嗜好がみな似通っているわけもないし、そうでない方が健全だろう。それを大人だの子供だのと一括りにして論じること自体にまず疑念を抱くべきである。そもそも、ポップ・ミュージックは、そういった括りに違和感を持つもの同士がコミニュケートするものとして発展して来たのではなかったか。確かに、「一人勝ちの時代」がもう来ているのかもしれないが、それを良しとするようでは、未来に何も望めないだろう。
(2001-1-5)
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