君と歩いた青春
(1976年 『12ページの詩集』より)

太田裕美 / 作詞:伊勢正三

 この年の風の3rdアルバム『WINDLESS BLUE』にも入った「君と歩いた青春」。もう何年も風の「君と・・・・」しか聴いていなかった私だが、初めて聞いたのは太田裕美の歌声のそれだった。今日、10数年ぶりで風と太田裕美で聴き比べたら、やっぱり太田裕美のほうが懐かしかった。

 この曲は、男性が女性に失恋する曲である。仲間でいつも一緒に遊んでた中にいた一人の彼女に抜け駆けして付き合いだして、でも結局女性がどうしても帰るといってひとり故郷へ帰ってしまう。昔、みんなで一緒に過ごした故郷-――。
 男は「帰ったらあいつらと会うといいさ、また昔のようにみんなで楽しくやれるさ」と言う。歌詞のどこにも書いてないけれど、どうしても彼女はその仲間の中で紅一点だったと思ってた。私がそうだったから・・・。でも、そうじゃなかったのかもしれないなとも思う。男女複数のグループの中のアイドル的存在だったのかもしれない・・・。

 この曲を聴くと、私は高校・大学と紅一点で馬鹿をやってた時代を思い出す。女子生徒の中になじめず、高校では14人の中の紅一点、大学では18人の中の紅一点で、男子とわぁわぁやってた。みんなとうまくやっていくために自分の女性としての感情は打ち消してた。特に高校では、私が好意を持った子も、私に好意を持ってくれた子もいたけど、わざと気づかず普通に過ごしてた。大学ではいつも一緒にいた17人の先輩の中からではなく先輩達が連れて行ってくれた場所で知り合った他の大学の男性と交際して、その17人の先輩の厳しいチェックを受けた(無事、クリア(^^;.)・・・なんてことがあったなぁ。でも、この曲で思い出すのはあの頃の恋愛じゃなくて、みんなと楽しく過ごした思い出なのだ。お互いの思いを敢えて気がつかない振りしながら守った友情や、恋愛をした時にその相手が変なヤツじゃないかとチェックするほど心配してもらった兄貴みたいな先輩達との思い出・・・。お互いの夢を語り合うにはいくらでも時間を費やすことの出来た時代と信頼感。ほんとに、ケンカ早い人もいて、涙もろい人もいて・・・みんないい人だった。そして、私はみんなに恋愛じゃなくても大切に思ってもらったと思う、そして私もみんなを大切にしてた―--仲間として。

 ところで、なぜ、私は正やんの「君と歩いた・・・」ではなく、太田裕美なのか?

 この歌の最後のフレーズに「君はなぜ男に生まれて来なかったのか…」というのがある。それが、私には効いてしまっているのである。正やんの声では、愛を感じてしまうのである。失恋した男の気持ち。それが太田裕美の女性の声だと自分(つまり私自身)の言葉に聞こえるのである。いつも私はあの頃を思い出す時思っているのだ。「なんで私は男に生まれてこなかったのだろう・・・」って。私はずっとあの時代、自分はみんなと同じ「男」だって思ってた。女だけれどみんなと同じ「男」として思ってもらえると思っていた。同じ友情がそこにはあったと思ってた。すれ違う女性をみんなで「今の、何点?」って言いながら、身体測定があると男性が呼ばれてるのに「おい、行くぞ!」ってみんなの中で言われて・・・。でも、私だけは女だった。卒業後も私はみんなと一緒に馬鹿が出来ると思っていた。結婚してもみんなが集まるなら私も呼んでもらえると思ってた。でも、毎年、年賀状の季節になると「この前、みんなで集まった。今度はお前も来いよ」って内容が書かれているのに、その「今度」が来ない。私も「みんなに逢いたい。今度集まる時は声かけて」と書いているのに。結婚して家庭の主婦になった私は誘いにくいことは判っているのだけれど・・・。