わが国で区分所有の共同住宅、いわゆるマンションが本格的につくられるようになってからほぼ40年になります。マンションのストックは約400万戸であり、年間10〜20万戸が新規に供給されています。こうしてマンションはフローでもストックでも、もはや都市の主流な住宅となっています。マンションといえば、マンション間題、マンショントラブルという言葉を想像されることが多いのではないでしょうか。マンションについては、建設、分譲、そして入居後の管理と、実に様々な問題が次から次へと生じていました。そこに新しい「マンション管理の適正化の推進に関する法律(以下、マンション管理適正化法と呼ぶ)」が施行されました。ここでは、こうした新しい法律が生まれた背景とともに、マンション管理の基本的な仕組みを説明します。
マンションとは
 ここでいうマンションとは区分所有している共同住宅をいいます。いわゆる分譲マンションと呼ばれるものです。マンション管理適正化法では「二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるもの並びにその敷地及び附属施設」と定義しています。

マンション管理の基本的なしくみ

表1 管理組合とは
専有部分・共有部分

一つ一つの住戸:「専有部分」→各住戸で管理する。
廊下や階段、エレベーター、建物の外壁、屋上等は「共用部分」→所有者全員が共同で管理する。

区分所有者

一つ一つの住戸を買った人。各住戸の所有者。

区分所有法(建物の区分所有等に関する法律) 区分所有している建物並びにその敷地、付属施設の権利関係や管理等に関する法律。第3条:区分所有者は全員で建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、および管理者を置くことができる。
管理組合(名称は何でもよい)

区分所有者により構成される。(不在所有者も含まれる)

マンションの専有部分と共用部分
 マンションでは、一つひとつの住戸部分がそれぞれの所有者(区分所有者)により所有されます。こうした1件1件の住戸部分を「専有部分」といいます。専有部分は基本的にはその住戸の所有者が管理することになります。その他に皆で使います廊下、階段、エレベーター、建物の外壁や屋上、共用施設の駐車場、駐輪場、集会所などを「共用部分」といいます。共用部分は区分所有者全員が共同で管理を行うことになります。
区分所有法と管理組合

そのために管理組合が必要になります。「管理組合をつくりなさい。そこに区分所有者全員が入りなさい。入ることになっています。」とは、区分所有法という法律により決められています(区分所有法第3条)。この法律の正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」です。この法律は、マンションだけを対象としたものではなく、どんな建物でも区分所有した場合に適用されます。区分所有した場合の最低限の管理ルールを法律で決めておきましょうということで昭和37年に生まれたものです。
区分所有法第3条は、「マンションを買った人は全員管理組合に入ってください。構成員ですよ。そして建物を区分所有している場合は、管理を行うための団体(管理組合)というものが当然成立していますよ」という意味になります。

マンション管理の基本3本柱
 管理組合が法律で当然成立していると考えられますが、実際に管理組合が活動を行うにはそれなりの道具がいります。そこでまずマンション管理の基本3本柱として管理規約、集会、管理者について説明します。
-管理規約

表2 管理規約

マンション内のルール、マンション内の憲法とも言われる。

建物並またはその敷地もしくは付属施設の管理または使用に関する区分所有者相互間の事項はこの法律の定めるものおほか、規約で定めることができる。(区分所有法第30条)
標準管理規約(平成9年に全面的に改正)
単棟型・団地型・複合用途型(店舗付きなど)
区分所有法と規約の関係は?
管理規約に区分所有法の規定に反するような条項を入れてもその部分は無効

マンションの管理を進める基本はまず区分所有法です。この法律をベースにし、各マンションでルールを決めることができます。これが管理規約です。マンションは持家ではありますが、何でもかんでも各自が自由に使えるわけではありません。一つの建物で皆がお互いに気持ちよく暮らすにはルールが必要になります。例えば「住戸を事務所に使ってはだめですよ」とか、「犬や猫などのペットを飼わないでください」とか、「ペットを飼う場合にはこういう条件を守ってください」とか、「建物全体の修繕費用の負担はこうしましょう」ということを決めておくものです。管理規約はマンションの憲法ともいわれ、そこを買った人やそこに住む人々の利用や管理の仕方のルールを決めたものです。
管理規約の標準版として、1棟用の単棟型、複数棟用の団地型、店舗がある場合の複合用途型の3種類があります。

-集会(総会)

表3 集会(総会):管理組合の最高の意思決定機関

集会での決議は管理規約と同一の効力がある。いわば、国会における議会のようなものである。マンションでは区分所有者全員が議決権を持つ直接民主制をとる。重要なことは区分所有法で決議の方法が決まっている。
特別決議事項
区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による決議(ただし区分所有者の定数は規約で過半数まで減ずることができる。) 共用部分の変更
共有敷地・付属施設の変更
区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による決議

規約の設定・変更・廃止
管理組合の法人化
管理組合法人の解散
団地規約の承認
義務違反者に対する使用禁止・競売・引き渡しの訴えの提起
大規模建物の滅失の復旧

区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数による決議 建替え

普通決議事項

区分所有者及び議決権の各過半数による決議

規約で別の決議方法も可能となる規約で定めることができるものもある

特別決議事項は集会以外で決めることはできない
普通決議事項のなかでも義務違反者に対する差止請求の訴訟、提起などは集会で決める
 マンションで大切なことは管理組合の集会、区分所有者の皆さんが集まる集会で方針を決めなければなりません。そして集会で決まったことは規約に書いてあることと同じ効力を持ちます。そのため区分所有者は全員集会に参加する権利を持ち、議決権を持ち、直接その決定にかかわります。このようにマンションでは直接民主制の形がとられます。
 集会でどのようなことを決めるのか、その内容により区分所有法で決議の方法が決まっています。「普通決議」「特別決議」といわれるものです。マンションの管理の大きな方針に関わること、例えば「共用部分を変更する」とか、「敷地や附属の施設を変更する」のは、必ず集会で決めることになります。これが特別決議になります。さらに「規約を変える」「法人にする」「法人を解散する」等々、こういったことは特別決議のなかでも、区分所有者と議決権の4分の3以上の多数による集会の決議が必要になります。建て替えに関しては、5分の4以上の多数による集会の決議が必要です。ですから、勝手に「過半数でいいよ」などと決めても有効ではありません。大事なことは集会で決めること、そして勝手に規約のなかで都合のいいことを決めても、区分所有法と矛盾する点は有効ではありません。
 そのためマンションでは、最低年1回は「総会」という形で集会を開きます。全員の区分所有者が参加できるものです。事業報告、会計報告をはじめ、次年度の事業計画・予算案を審議し、役員の交代などを総会で決めます。臨時に集まる必要がある場合には、臨時総会を開きます。
-管理者
表4 管理者:管理の最高責任者
区分所有法第25、26条に管理者について規定
26条に管理者の権限
管理者は、共用部分並びに第21条に規定する場合における当該建物の敷地及び付属施設を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
管理者はその職務に関し、区分所有者を代理する。
 規約、集会はマンション管理の重要なものですが、もう一つ重要なものとして「管理者」があります。管理者とはそのマンションの管理の最高責任者です。区分所有者が集会で管理者を誰にするかを決めます。管理者とは、管理組合の業務を統括する役割を担う人です。区分所有者以外の人や法人がなってもいいのですが、マンション管理の直接民主主義の考え方に基づきますと、区分所有者の代表がよいでしょう。

理事会

 マンションでは区分所有者のなかから役員として理事と監事を選びます。理事の方々で理事会を構成し、理事長が選出されます。これは区分所有法で定められているわけではありませんが、いつもいつも区分所有者全員が集まり、ものごとを決めていてはなかなか前に進みません。そこで区分所有者の代表を選び、総会で決めたことをより具体的に進めるための相談をする、総会で審議する案を作るなどを行います。これが理事会の役割で、管理組合の執行機関です。監事も組合員のなかから選ばれ、監査機関になります。さきほどの管理者には、理事の長、理事長がなることが望ましいと考えられます。ヨーロッパ諸国ではプロが管理を行う「管理者方式」がとれているのに比べ、わが国では「理事会」がとても重要な役割を担っていることから「理事会方式」とも呼ばれています。

管理会社・管理員の仕事
 マンションの管理組合の役割についてみてきました。実際にこれだけの仕事、建物のメンテナンスから実にさまざまなことを全て、管理組合の区分所有者の人のみでやっていけるものでしょうか。管理組合の役員の人も輪番・順番で毎年入れ替わることが多くなっています。そこで実際にはわが国の8〜9割のマンションで管理会社に管理業務を委託しています。管理会社、そして現地では管理員が管理組合活動をサポートすることになります。管理組合が管理会社に業務委託をする上で管理委託契約書をかわします。しかし、こうした契約関係が明確でないことから管理組合と管理会社のトラブルが多くなっていました。
表5 管理会社の業務(標準管理委託契約書より)
業務名 業務内容
1.事務管理業務
 出納業務

管理費等の収納・保管
電気代などの共用部分水道光熱費の精算
再委託業者への支払い
帳簿の管理など

 会計業務 管理組合の予算・決算案の作成補助
管理組合会計の収支状況の報告など
 管理運営業務

補修工事や設備点検業務の再委託に関する業務防火管理業務の補助 
施設運営の補助 
保険など各種契約の代行 
大規模修繕計画立案の補助 
総会・理事会運営の補助 
通知事項の伝達等

2.管理員業務
 (窓口業務)

受付
点検 
立会い 
報告連絡 
管理補助

3.清掃業務

建物部分・屋外部分の清掃

4.設備管理業務

建物・屋外外観点検 
特殊建築物法定検査 
エレベーターの保守点検・法定点検 
電気設備
(変電設備等)保守点検・外観点検・定期検査 
給排水衛生設備外観点検・作動点検・清掃・整備テレビ共聴設備点検・調整消防・防災設備の保守点検・法定点検、整備 など

管理に必要な費用-管理費と修繕積立金

マンションの共同管理のための費用として、管理費と修繕積立金があります。管理費は管理会社に業務を委託する費用やエレベーターの保守点検代、管理員を雇用する等の費用で、賃貸の場合は共益費と呼んでいるものになります。
一方、修繕積立金とは将来の修繕に備えての貯金です。マンションの場合は、建物のメンテナンスを計画的に進めていくためにこのような費用が必要です。大規模な修繕をしようと思っても費用が足りないと、一時金を集めるなどが必要になりますが、費用負担できない人があらわれたりします。そのため、どうしても修繕は遅れがちになり、適切な時に適正な修繕を実施できなくなります。そこで、多くのマンションでは適切な時に適正な修繕を実施するために費用を貯金するようにしています。

表6 管理費用

管理費に含まれるものには以下のものがある。(標準管理規約第26条より)
1.管理員()人件費
2.公租公課
3.共用設備の保守維持費・運転費 
  共用部分にかかわる水道光熱費、エレベーター・電気・防火・給排水.設備等の保守点検の費用等 
4.備品費、通信費及び事務費 
5.共用部分等に係る火災保険料及び損害保険料 
6.経常的な補修費、軽微な損害箇所の補修費 
7.清掃費、消毒費、ごみ処理費 
8.管理委託費 
9.管理組合の運営に関する費用 
10.その他

修繕積立金

マンション管理適正化法の施行
 さて、こうした状況の中で生まれてきたのがマンション管理適正化法です。
国の責任が明確に
 第一に国のマンション管理への関与がはっきりしました。2001年1月6日より国土交通省の中に、マンション管理対策室というマンション管理担当の部署ができました。そして法の第3条に書いてありますように「マンション管理をこういうふうに進めてください」という趣旨で、マンションの管理の適正化に関する指針(マンション管理適正化指針)を国が定めました。管理組合の人が管理を進める上のガイドラインです。
区分所有者.管理組合の管理責任が.明確に
 第二に、マンションを買った人・区分所有者、そしてその集まりである管理組合にマンション管理の責任があるということが、はっきりと法律の中で位置付けられました。法第4条です。「管理組合はマンション管理適正化指針の定めるところに留意してマンションを適正に管理するように努めなければならない」と管理組合の責任が明確になり、「マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関し、管理組合の一員としての役割を適切に果たすように努めなければならない」と区分所有者の役割も明確になりました。
地方公共団体の責任が明確に
 第三に、法第5条で、「国及び地方公共団体は、マンションの管理の適正化に資するために、管理組合又はマンションの所有者等の求めに応じ、必要な情報及び資料の提供その他の措置を講じるように努めなければならない」とあり、地方公共団体の役割も明確になりました。そのため、地方公共団体ではマンション管理の相談窓口等を設けることになります。
マンション管理士
 第四に、新しい国家資格も生まれました。マンション管理士という資格です。マンション管理には幅広い知識が必要で、そのための専門家が強く求められていました。またマンションの管理問題は個別性が高く、マンション居住者が行政の相談窓口に行き一般的な回答を得ても実際のマンションではなかなか適応できないことも多くあります。
 そこで、誰か専門家がマンション居住者と一緒に考え、行動するなど、より一層専門的な立場からの個別マンションに対するアドバイザーが求められていました。マンション管理士とはこのような背景のもとで「専門的知識をもって管理組合の運営その他マンションの管理に関し、管理組合の管理者又はマンションの区分所有者等の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業務とする者」です。
 つまり、現時点ではあくまで、管理組合からの依頼により管理組合の活動を支援するものであり、マンション管理士が管理組合に代り管理を行うことが想定されたものではありません。尚、現在のところマンション管理士とは、「名称独占資格」であります。
管理会社の登録制度
 第五に、マンションの管理会社の登録制度です。
 今までは、特にマンションの管理会社をするための資格や条件などはありませんでしたが、これからは管理会社は国に登録することになりました。管理会社は管理組合から管理業務の委託を受ける場合に、事前に説明会を開きます。そして契約した内容を書面で渡します。その後委託を受けている業務をこのようにやっていますという報告を管理組合にします。いままで委託契約のトラブルが多く、管理組合の人も管理会社に何を委託しているかよく理解していない等からのトラブルが多くあり、こうした制度がつくられました。契約の説明や報告等を行うのは管理業務主任者です。登録した管理会社は、管理組合から預かりましたお金、管理費や修繕積立金の口座は管理組合の名義とする、通帳と印鑑は一緒に持たないなどを実施します。これは、以前に管理会社が管理組合から預かったお金の口座名義を管理会社としていた際に、管理会社が倒産して、その費用が管理組合に戻ってこないことがあったからです。
分譲会社の責任
 最後に分譲会社も管理にかかわる責任として、マンションを造って完成しましたら、管理組合に設計に関する図書(付近見取り図、配置図、仕様書、各階平面図、2面以上の立面図、断面図・かなばかり図、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図、構造計算書)を引き渡してくださいということになりました。
さいごに
 こうした法律ができ、マンション管理の重要性があらためて確認されました。管理組合の主体性とともに、その関係者への期待も大きくなるでしょう。つまり不動産をつくること、流通すること、さらに管理が重要な時代になったということです。
 また不動産はフローからストックの時代ともいわれ、今後中古住宅の市場活性化として、中古マンションの取引もますます重要になってきます。
 マンション管理適正化指針でも、マンション購入にあたり、「マンションを購入しようとするものは、管理の重要性を認識し、売買契約だけでなく、管理規約、使用細則、管理委託契約、長期修繕計画等を留意すること」となっています。国では今後マンション管理の履歴情報をストックし、その開示による取引を検討しており、今後ますますマンション売買における管理の正確な情報を伝えることが求められることになります。