「愛という名のもとに」 

1992.1.9〜3.26(フジテレビ)  全12回

脚本        野島伸司

企画        山田良明

プロデュース   大多 亮

音楽        日向敏文

主題歌      浜田省吾/悲しみは雪のように

出演       鈴木保奈美(貴子)   唐沢寿明(健吾)   江口洋介(時男)  洞口依子(則子)   中野英雄(篤)    石橋保(純)    中島宏海(尚美)    竜雷太   瀬能あづさ   加糖善博   森本レオ  佐藤オリエ  深津絵里   ルビー・モレノ

 

第1回   「青春の絆」

大学のボート部の仲間7人はいつも同じ時を過ごしていた。貴子たち6人は三年ぶりに会ったものの、学生時代のノリはなく、少し淋しい思いもする。そんなときに、もう一人の仲間、時男がアメリカから帰国した。

貴子は健吾にプロポーズされ、親に紹介する。健吾の父は代議士。父は婚約者を決めていた。焦る健吾は貴子に「教師をやめてほしい」と頼むが、貴子は健吾の身勝手さを不審に思う。

尚美は不倫相手とうまくいかず、貴子に相談をしたいが、機会を得られない。思い悩んだ尚美は自殺を図る。尚美のマンションを訪れた時男はガスの臭いを感じ、部屋に入り助ける。そして、病院にみんなが集まった。

「こんなことになる前に相談してくれれば・・・」「話せるようなことでもないんだろ」「まあ、プライベートなことだもんな」

時男は怒る。「尚美は聞いてほしかったんじゃねえのか?おまえら、おかしいぞ。変にじじくさくなりやがって、妙にすかしやがって・・・どうしたんだよ!」

「いつまでもガキじゃいられないんだよ」健吾がからむ。

「俺はおまえらに会いたいから帰ってきたんだ。今の世の中で信じられるものって、仲間とか、そういうものじゃねえのかよ!」

第2回   「夢を追って」

貴子は尚美の不倫相手にどういうつもりかを問う。「じゃあ、奥さんとも離婚しないし、尚美とも別れないっていうんですか。結局自分のことしか考えてかいじゃないですか」「人間って、その程度のものじゃないてすか」「違うわ、お互いに尊重して、想い合って生きていくものなんじゃないですか!」

「やすらげない」「妻とよく似ているよ、君は・・・」貴子は黙ってしまった。

篤は健吾の父親の株を預からせてほしいと頼みに行くが断わられ「見下してるさ、おまえは昔っから俺のこと見下してんだよ!」と怒鳴る。ショックを受ける健吾。

時男は尚美の不倫相手をゆすり百万を手にし、テレクラの事務所を借りた。尚美の快気祝で集まった7人だが、尚美は時男を責める。貴子は健吾の結婚相手と名乗る女性と合ったばかりで不信感をぬぐいきれない。いやなムードの帰り道、則子は純の小説を出版社に持ち込むことを話す。「ずるいかもしれないけど、純の夢にのっかりたいなって・・・」「乗った、俺もそいつに乗るぞ」時男がいうと次々にみんなが・・・

翌日、出版社にもちこんだ小説に対し「才能がない」と言われ荒れる純。またみんなが集まってきた。「俺は誰でもない、俺は他の誰だっていいんだ、今日がきのうでも明日でもかわんねえ、そういうつまんない人間なんだよ」そして原稿を噴水に投げる。貴子は噴水に入った。「これは純だけの夢じゃないから・・・」時男、健吾、次々と入っていく。みんな笑顔で・・・「もう1回、書きなよ」「つまんなくなんかないって」はしゃぐ仲間たち。

第3回   「隠された青春の日々」

時男の事務所がオープンし、見にこいと誘われた純。テープの女性のあえぎ声を聞いた純は、その晩則子と寝てしまう。

会社を辞めさせられそうな篤は、再度健吾に頼みに行く。「ひとつだけ条件がある。俺はおまえを見下したりしたことはないぞ。仲間を見下したりしないぞ、2度といわないでくれ。」

帰宅した貴子は、母親の再婚相手を紹介される。すでに妹は知っているようであった。仲良く話している三人の様子が絶えられない。

貴子がいない、と母親からの連絡を受けた健吾は、その場にいた時男と昔の川原に行く。「よくここがわかったわね」二人に慰められる貴子。「来てくれてありがとう。ちゃんと帰って、お母さんともう一度話すから」

どれだけ歩いたら人として認めてもらえるのだろう

いくつの海を越えたら白い鳩は砂地で安らげるのか

友よ、その答えは風にふかれている

人はどんな時に優しさを感じるのだろう

それは自分が悲しいときにきてくれる彼らに対して

それは彼らの苦しいときにそばにいてあげられる自分に対して・・・

第4回   「涙あふれて」

健吾の父と会い、「教師は辞めるつもりです」と言う貴子。気に入られたと思ったのも束の間、後に秘書が断わりに来る。教師を辞めるかどうかを真剣に悩んでいた自分が滑稽にも思えた。

そんな時、時男は使っていた女子高生が売春して、強制売春の容疑でつかまってしまう。健吾と貴子はすぐに出向く。時男に、「人間のくず」と言う刑事にくってかかる貴子。「他人を学歴や家庭環境や表面的なことで判断して、くずだとか言ってほしくないわ。訂正して下さい。」叫ぶしかない貴子。警察署の前では、友がみんな待っていた。

「足下を誰かにすくわれたように、ふいに自分の進むべき道が見えなくなってしまう。ぽつんと空いている教室の空席のようだ。小さなもやが心の隅にかかって消えない・・・」

第5回  「決心」

篤に別の会社を紹介するぞ、と話す健吾に、篤はもう少しがんばってみる、と言う。しかし、篤の状況はかなり厳しいものだった。上司のいびりは更にエスカレートする。

「私、できちゃったの」と則子はみんなに妊娠を告げる。純は複雑さを隠せない。「どっちだっていいよ。ノリの好きにすればいいよ・・・」

教師を続けたいということを健吾に切り出す。父の前でも「やめる」と言った貴子に「なぜ今更」と疑問をもつ。「私には政治家の奥さんは向いてないの」「俺に秘書を辞めろというのか、ガキの頃からの夢を捨てろというのか。」秘書のことを知らない健吾は、貴子の苦しみが分からない。涙ぐむ貴子。

健吾の誠実さを思い夜道を歩く貴子に暴漢が襲い掛かる。サングラスから覗いた顔はクラスの平岡だ。不登校気味になった平岡は、トップだった成績もかなり落ち込んでいた。ショックを受ける貴子。

「子供の頃、お父さんと見たあの時の雪を思い出していた。白くひんやりとしたあの綿帽子たちが、きっと今の私を隠してくれる・・・」

第6回  「見失った道で」

教え子に襲われたショックで仕事を休む貴子。

則子は子供をおろす決心をし、貴子と尚美のつきそいで病院に行く。しかし、怖くなり貴子に泣きつく。貴子は尚美にみんなを呼ぶように言い、手術室にたてこもる。かけつけた健吾以外の男性たち。叫ぶ貴子。「ずっと傷が残るのは女だけじゃない!」「男の尺度で女を見ないで。力や体力でねじ伏せて、その場その場の感情だけで!」貴子の脳裏には、生徒平岡の暴行が浮かぶ・・・「女は男の性のはけ口じゃないのよ!」

純は則子に「結婚しよう」と話す。

健吾は父親に貴子の母親に会ってほしいと切り出す。「彼女から聞いていないのか?」と言う父の言葉にどういうことかを聞く。「彼女では選挙は戦えないということだ」「僕は貴子と結婚します!これは先生の言うことでも聞けません」「本末転倒するな!政治家になるのがおまえの夢ではなかったのか!」「彼女と結婚したいならそうすればいい。そのかわり政治家になることは諦めるんだ」「だがこれだけは覚悟しろ。彼女と結婚しても、いつかおまえは後悔することになる。そして、夢を諦めたのは彼女のせいだと考えてしまうんだ。おまえは愛する女をそういう目で見てしまうことになるんだ。失ったものが大きければ大きいほど・・・」健吾は何も言い返すことができず、涙があふれた。

「レガッタ」に呼ばれてやってきた健吾。時男は「おまえらの方こそ、どうなってるんだよ」と切り出す。「俺は政治家になる夢を捨てられない・・・」「どういう意味だ?貴子と結婚しないってのか?」「ふざけんなよ」時男は健吾の胸倉をつかむ。「殴りたければ殴れ」時男は無我夢中で殴りつづけた。「結婚しろよ、貴子と結婚しろよ」「俺は、俺はおまえだからななあ・・・」「もうやめて!」貴子が叫ぶ。それぞれの思いが渦巻く・・・

「自分たちが今いる場所はどこなのか、誰も教えてくれなかった」

第7回  「風に吹かれて」

貴子の母は健吾に会いに行く。「申し訳ありません」と頭を下げるしかできない健吾だった。一方貴子は、母親の再婚相手に会いに行く。「母を幸せにしてあげて下さい」

週末二人は会って話す。「勘違いしないでほしいの。健吾と結婚をしてそのままアシストをするような人生を送っていたら、きっと私後悔したと思うの。そういう人生に慣れていきながら、きっとどこか後悔したと思うの・・・」「だから、私と健吾の別れって、お互いに決して後ろ向きじゃないと思うの」

どこまでも似ている二人であった。「それでも仲間ではいられるわ」「ああ、最高の友達だ」「どれだけ歩いたら・・・」あの詩を読む二人。バックには浜田省吾の「愛という名のもとに」が流れる・・・

貴子は時男につきあってもらい、生徒の平岡の家に行く。門前払いにあうが、時男が力づくで平岡を部屋から出した。貴子は穏やかに語りかける。そして、自分のことを話し出す。「私が泣いたり、笑ったり思っていること素直に伝えられたら・・・人に弱いところ見せたくなくて・・・けど、やっぱり人間は弱いから、一人じゃ歩けない時もあって・・・」「あなたの苦しい時のサインを見逃してしまった私は、教師として失格だったと思う。けど、もう一度チャンスを下さい。大げさなことはできないけど、気持ちを分かり合っていきたい・・・教師としてではなく、巡り合えた、一人の人間として・・・」

そして、翌日の教室には、平岡の姿があった。時男に喜びの電話をかける貴子。「俺さあ、お前の言うように、ちょっとまじめに働いてみようかと思ってさ」「そしたらさあ・・・一緒に暮らさないか」

「何かが少しずつ変わっていくようだ。私たち仲間の中でも、見えるもの、見えないもの、両方が・・・」

第8回   「君が人生の時」

それぞれの人生が新たに動き始めた。時男は医療機器販売会社の営業に就職する。しかし醜い現実を目の当たりにし失望する。これがちゃんと働くということか・・・?ばかばかしい気分であった。

健吾に部屋の荷物を取りに行きたい、と電話をかける。その時、部屋には婚約者の美和がいた。「この部屋、少し模様替えしていいでしょ?」

時男の就職祝いにみんなが集まる。篤は通っているバーの女性JJを連れて現れた。時男がやってくる。貴子は会社に電話して、辞めたことを責める。「どうして、そうこらえ性がないのよ」

純は則子の両親に会いに行く。しかし、親は憮然としたままであった。父親が言う。「本来なら、酒でも出して乾杯したいところなんだ。それがいきなり・・・悪いけど、そんな気分にはなれん・・・」則子は純にあれこれとこれからの話をする。純は絶えられない。「もう、うんざりだ」

荷物を取りに来た健吾の部屋は少し変わっていた。二人で買ったみかん色のカーテンもない。すぐに婚約者だと分かった。

生徒たちに仲間を作ってあげたい、そう話す貴子。「俺たちは楽しいだけじゃなかった。厳しい練習で泣いてしまう奴もいた。苦しくて歯をくいしばって、泥だらけになって・・・そこを一緒に過ごしたから、仲間になれたんだよ」「少なくとも、暖房の入った部屋の中で語り合う、若者の広場ではなかったはずだ」

貴子は時男の所に行く。「お金、立て替えてあげるから、小さいアパート借りよう」「一緒には住めないけど、ちょくちょくきてあげるから」「いいのか?俺は健吾と違って・・・」「時男は時男でいいじゃない」「部屋が決まったら、真っ先に買いたいものがあるの。夕日みたいなみかん色のカーテン」そう言って、にっこり笑う。

クラスでマラソンの提案をする貴子。練習にきたのは一人だけ。貴子は走り始めた。

「誰に認めてほしいのか。一体私は誰に・・・その声を否定しながら、冷たいアスファルトを踏みしめていた。」

第9回  「いつわりの日々」

健吾は時男のアパートに引っ越し祝いにやってきた。そこで見たのはみかん色のカーテン。「貴子が選んだんだ。」「健吾、俺は大学の時からお前が気に入らなかったよ。けど、いま考えてみると、そいつは俺のやっかみだったのかもしれねえな。生まれつきのボンボンでよ。頭も切れる、統率力もある、絵に描いたようなエリートだったからな
お前は俺のコンプレックスだった・・・唯一、認めた男だ」健吾は同じ思いを言おうとしたが言葉にならなかった。「時男、貴子を幸せにしてやってくれ」

貴子は尚美に純と会ってるのか、と問い責める。そして、逆に自分はどうなのか、寂しいから時男といるんじゃないのか、まだ心は健吾にあるのに、と言われてしまう。その晩、貴子と時男は一夜を共にする。

篤は会社の金を、母親の手術代がいると話していたJJに渡してしまう。

則子が出血し、流産しかかる。その時、純は尚美のところにいた。「こんな時にどこにいたんだ」純を殴る健吾。尚美は言う。「健吾には私たちの気持ちはわからない。誰かに寄り添っていないと生きていけないのよ!健吾みたいに強くないのよ!」

寂しそうな健吾の笑顔。そこに時男がやってくる。貴子は健吾の姿を見送るしかない・・・

「凍りついたように動けなかった。自分の体が二つに引き裂かれた」

第10回   「友よ」

篤はJJとの結婚を考えていることを貴子に話す。「初めてなんだよ、守ってやりたいって思ったの」

「貴子と健吾は、マジで結婚してほしかったよ」「あいつ、学生の頃から、俺のこと、チョロって呼んだことないんだ」

健吾はゴルフ場開発の件で、父に不信感を抱く。「人間は神じゃない。正義を振りかざすのもいいが、周囲の人間にとっては、それは時に暴力になる。」言い返せない健吾。

尚美は五郎をレガッタに呼び出し、別れを告げる。

JJにプロポーズしようと出向いた篤は、騙されていたことを知り、ショックを受ける。課長に金を使い込んだことを知られてしまう。「もうニ度と俺の前をチョロチョロしねえでくれると思うとよ、ほんと、心からお礼をいいてえんだよ。」「俺は・・・俺はチョロじゃねえ!」杉本の頭を無我夢中でデスクに打ち付け、気かつくと杉本は血を出して倒れてしまった。警備員がやってきて、逃げ出す篤。貴子に電話をするが声はでない。則子の病室に行った。「聞いたわよ、結婚するんだってね」「思いきって言えばよかったのに、学生の頃からずっと好きだったって」「あたしたちってさあ、仲間の中じゃ、将棋の歩みたいだって、よく二人でいじけてたよね。貴子が要の王将で、健吾と時男が飛車角。純と尚美は金と銀なんてね」「あたしとチョロは、いつもその周りにくっついてる歩みたいなもんだって」「ノリはもう違うさ・・・」「俺だけだよ、いつまでも歩のまんまなのは・・・」そして、篤は姿を消した。

警察から連絡が入り、みんなで篤を探す。貴子に電話が入る。「みんな心配してるのよ。会社の上司の人なら大丈夫よ。命に別状ないって」「卒業して社会に出るのが怖かった。けど、今は社会に出るのが怖い」「貴子・・・俺ずっと、貴子のこと・・・好きだったんだ」そして電話は切れた・・・

電話は遠かった。もしかして・・・みんなでボートの練習場に出向く。ガレージを開けた。そこには、首を吊った篤の姿があった・・・

第11回  「生きる」

鹿児島から駆けつけた篤の両親。母親は篤に代ってひとりひとりにお礼を言う。「あなたたちに会ってこの子は変わったんです。」「つらいだけじゃなかったんです。楽しいことやうれしいことがたくさんあったんです。私には分かります。この子、優しい顔をして・・・笑ってるように見えますから・・・」

JJもやってきた。時男が呼んだのだ。線香の一本もあげにきてくれ、と。ただただ、JJは涙を落とす・・・

妹に走るのをやめたの、と聞かれる貴子は「無意味かもしれない、て思っただけ」と答える。母が静かに語り始める。「がんばらなきゃ、て思ったから。お父さんが死んだこと、無意味なことにしたくなかったから」「人のすることに無意味なことなんかないって、お母さん思うけどな」「お父さんが酔うといつも言ってたことがあるの。人生は小さな箱を開けるようなものだって。それを開けるとまた箱があって、開けても開けても中には箱があるだけなんだって。ひょっとしたら結局その箱の中には何にも入ってないかもしれない。でも、諦めて開けるのをやめてしまった者は、もう2度とその中を知ることはない」

篤の死を無意味なことにはしない、貴子はそう思った。ノリも一人で子供を産む決心をする。純には生きがいを見つけてほしい、と言う。「あたし、泣き虫ノリは返上するの」

貴子はクラスで語り始める。仲間の自殺について話し、一度でいいから高速のインターに降りて、みんなで走ろう、と。つらい時に支えてくれるのは仲間だと・・・そして、四人の生徒が賛同してくれた。

その日の夕刊のトップは健吾の父の収賄容疑の記事だった。健吾が告発したのだ。「汚れた世界に迎合したんだ!」そう苦しむ健吾がしたことであった。

第12回   「私達の望むものは」

告発から数日後、行方の分からない健吾から貴子に電話が入る。「今度のようなことは親父だけじゃない、ほとんどの政治家がもっと露骨にやっている。けど、俺は、今でも自分のしたことがよかったかどうか分からないんだ・・・」「だから、せめて貴子の口から言ってくれないか・・・頼む」「私、世界中の誰にでも言える。健吾は正しいって」

みんなは健吾のマンションで帰りを待ち、暖かく健吾を迎えた。

時男は篤の母親が言った言葉が忘れられない。「大きな鳥のようにふわふわ自由なお人だって・・・」今の自分は羽がない。パチンコ店もやめた。貴子に健吾ともぐりの勝負をしたときのことを話す。「あの時、俺はわざと負けたんだ。この狭い国を出たくてたまらなかったからな。」「要するに、俺は貴子・・・お前より自分自身を選んだんだ。自分の小さな箱の中身を知るために・・・」

尚美は五郎に言う。「あなたを自分から嫌いにならなきゃだめみたい。だからそれまであなたと別れない。」「ずっと嫌いにならなかったらどうするんだ?」「あなたが死ぬときは奥さんが看取ると思うけど、最後に想うのは私であってほしい・・・」五郎は黙ってうなづいた。

時男は健吾を川原に呼び出す。お互いにコンプレックスだったと話す。お互いを認め合っている二人。そして時男は言う。「貴子は・・・」しかし言葉にならなかった。「俺は俺でありたい。ずっと俺でいたいんだ」

貴子は終業式に走ろうとすると、教頭から注意を受ける。しかし四人でも走るものがいたら、走るのだ。すると待ち構えていたのは、クラス全員の生徒だった。「一日です。たった一日だけ、インターチェンジで降りて見たくなったんです」「僕達は生徒として藤木先生と走るんじゃないんです。人間としてなんです」平岡はあの時の言葉をしっかり受けとめていた。「巡り合えた一人の人間として」そして、生徒達と共に走る貴子。

その報告に時男のアパートに行くと、荷物はなかった。ミカン色のカーテンだけが残っていた。

時男が去り、健吾も神戸に就職。そして、半年後。

則子が出産した。その頃純はリハビリセンターにいた。福祉のボランティアを始めたのだ。かかわっていた少女がようやく言葉を発した。生きがいがみつかった。自信をもってノリに会いに行く。「今日から親父だ」

貴子はボートの練習の河川敷を歩いた。ボート部のトレーニングの先頭には健吾がいた。「大会前の臨時コーチを頼まれたんだ」「何年、何十年か先には立候補するつもりだ。地盤も金もないけどな」「その時はみんなで応援に行くわ」「時男から手紙がきたの」手紙を見せる貴子。アルゼンチンでダイヤモンドを掘り、一攫千金を狙っているのだと言う。最後の文字が目に付いた。「愛という名のもとに・・・か」「今、あの団地に一人らしいな。寂しくないか?」「大丈夫、私強いから」以前母親から言われた。「心許せる人の前では泣いていいのよ。泣いて、自分が生きてるって周りに知らせるの」しかし、素直にはなれない。「前に言ったこと訂正するよ。俺も男と女の友情はあると思う」

並木道を歩く貴子。どうしようもない孤独感に襲われ涙がこぼれた。「どうしたんだ?」仲間の声がする。みんなが貴子を呼ぶ。時男、則子、純、尚美、篤もいる。そして健吾。「俺達に話してみろよ」「私、本当はそんなに強くないの。本当は一人じゃ寂しいの」「大丈夫だよ。お前は一人じゃないんだ」「いつも私達がついてる」「いつまでも変わらない仲間だ」

貴子は歩き出す。

どれだけ歩いたら人として認めてもらえるのだろう

いくつの海を越えたら白い鳩は砂地で安らげるのか

友よ、その答えは風に吹かれている

「私はできればすみれの花のようになりたい。誰かが倒れそうなとき、誰かが泣き出しそうなとき、そっと、そっと、支え合う。私達はすみれの花になりたい」

The end

 

久しぶりに見ました。浜田省吾の曲が聴きたくなってかけています。主題歌は「新しい曲を」という依頼だったそうですが、台本を読んで、すぐにこの曲を思い出したそうです。コンサート・ツアーの最中に母が危篤になり、生死の境をさまよったときの深い絶望と悲しみ、そして、同じくらいの優しい気持ちを感じて、その気持ちを歌にしたそうです。浜田省吾さんのそんな気持ちが、この話にぴったりと合ったのですね。

7人の友情をいろんな葛藤を描きながらいろんな視点から描いていました。正しくありたい、そう願う貴子と健吾。あまりにも似すぎてお互いが分かりすぎて分からなくなったり・・・

男女間の友情はあるのか、そんな問いかけもありました。貴子と健吾の間は本当の友情になったのか、それはまだ分からない。きっとお互い、まだ好きであろう。しかし、結婚というカタチにならなくとも、お互いを思い合い、いたわり合う心は強い。別れのない関係とも言えるかもしれない。もしかしたら、これもひとつの愛のカタチなのだろう。だから「愛という名のもとに」という題に結びついていく。

支え合う仲間の存在の必要性を説く貴子。生徒達と一緒に成長しようとする貴子。「巡り合えた一人の人間として」向き合おうとする。

そう、巡り合えた人間同志、さらにその中で深くかかわるのは本当に一握り。出逢いを大切にしたいものです。