|
|
|
|
|
|
|
|
|
●投稿者・八渓●14年1月19日
『数学嫌いの人のための数学』 (小室直樹 東洋経済新報社)
数学の本質は、論理である。この一言に、著者の数学に対する思い入れが集約されている。そして数学は神の教え(神の論理)であるという主題も意表をつく。
「すべてのはじめにロゴスがあり、神はロゴスから天地を創造したもうた」とあるように、古代イスラエル人にとって、ロゴスとは神のことば、神そのものを指した。そして論理とはlogicといい、論争するための方法で、その語源がlogosにあった。
預言者の始祖、もっとも神に忠実なモーゼは、神との論争に全力を集中した。それがモーゼの最大の仕事だからだ。というのも、イスラエルの民は、ことあるごとに神に対する不平不満を並べ立てるからである。
モーゼがシナイ山で十戒をさずかる間、イスラエルの民は、金の子牛の像を作って、それを祭りあがめるという行為に興じた。神は契約に違反していると怒り、民を全員殺すという。モーゼはどうしても神を説得しなければならない。神の説得に失敗すると、イスラエルの民は皆殺しにされるからである。
預言者に対する神の命令は絶対であるが、論争であるから、相手が絶対者であっても、これを論破し説得することも可能である。論理の恐ろしさは神を論破して従わせることも可能な点にあった。まったくなんとすさまじい民族であることか。
こうしたことをふまえながら、『論理と数学との合体は、古代ギリシャにおいて実現される。これこそ実に、世界史における画期的大事件であり、数学の無限の発達を保証するものであった。
資本主義とともに発達を遂げることになる近代数学の神髄は、論理と一体化したことにあった』
今までにない観点から、数学を興味深く説きほぐしたおもしろい本だ。
『ホーキング、未来を語る』 (スティーヴン・ホーキング 佐藤勝彦訳 アーティストハウス)
骨子は量子宇宙論の最新の研究を、いかに数式なくして、わかりやすく解説できるか、にある。そのため、コンピュータグラフィックスを多用して、読者のイメージを喚起しやすい配慮がうれしい。
とはいっても、最先端の研究であることにかわりはなく、真空中でも量子的ゆらぎがあるというところから、仮想粒子というものまで登場してくることになる。この仮想粒子とは、正電荷と負電荷のペアの粒子で、これはどの場でもペアで誕生しては、しばらくすると、引きつけ合って消滅してしまう、そんな粒子なのだそうだ。
そこで、ブラックホールの近くでは、このペア粒子の負電荷のほうが、ブラックホールに落ち込んでいくと、もう一方の正電荷の粒子は、はるか遠くに飛んでいくことになって、あたかもブラックホールから、粒子が放出されているような現象となるのだそうだ。
ところが、このイメージでは、どうしても説明がむつかしくなるところがでてきて、1996年には、p-ブレーンというシートのようなを張り合わせて、ブラックホールができていると考える方法が考え出されてきた。
このシートは、なんと3次元だけでなく、7次元空間を通り抜けられるシートだそうで、こうなると急激に理解が困難になってくるのは、世界のトップレベルの頭脳の最新研究だけに仕方がないか。
まずは、概略だけでもふれることができたことに、満足しよう。
●投稿者・守口 徹
『背教者ユリアヌス』 (辻 邦生/中公文庫)
「背教者で知られるローマ皇帝ユリアヌスの生涯を綴った叙事詩。一頃流行ったスペクタクル映画を見るようなストーリーの面白さと、緑のヨーロッパから乾いたトルコ・シリアまでの自然描写の素晴らしさだけでも既に十分かもしれないが、主題は、被抑圧辺境一民族の異端宗教から国教へとのし上がるローマ時代のキリスト教と古来のギリシャ・ローマの宗教とのせめぎあい、そしてその中で苦闘する哲人皇帝の生涯である。
一気に読了後、背筋をぴんと伸ばされたような稀な経験をした。「クオ・ヴァディス」と読み合わせてみると更に面白い筈。」
●投稿者・八景
『だれが本を殺すのか』 (佐野眞一/プレジデント社)
本が売れない。出版社はもとより、取り次ぎも、書店もそろって沈没の危機が…。ミステリー顔負けの面白さで、出版不況の原因に迫る力作。
『カリスマ』上・下 (佐野眞一/新潮文庫)
フィリピンのルソン島中西部にあるリンガエン湾での戦闘は、戦いではなく、殺戮だったともいえる。13156名いた盟兵団全体の損耗率は86.9%、中内功が配属された部隊は532名中389名が戦死した。戦死率は73%に達した。
その後のフィリピン山岳地帯でのゲリラ線と、人肉までも食すると噂された飢餓体験、さらに捕虜生活は、中内の心の芯に人間ほど恐ろしいモノはないという人間不信を強烈に植え付けた。
死地から生還した中内功は、父親が開いていたサカエ薬局を手伝いながら、サッカリンなどを扱うブラックマーケットで儲け、価格破壊をスローガンにしたスーパーマーケットをチェーン展開して、バイイングパワーによる流通革命の道を、突っ走っていった。
いま、ダイエーは2兆5000億円とも3兆円ともいわれる有利子負債の重圧で、沈没寸前の巨船になっている。総従業員10万人、年間総売り上げ5兆円もの巨大企業となったダイエーは、はたして存続できるのか、それとも泡沫の夢として消えていくのか。
『「わからない」という方法』 (橋本治著/集英社新書)
暗記が大の苦手、じっと机にすわっていられない性格、しかし、興味あるものには、とことん勉強していくタイプの著者が、やむにやまれず、編み物をしながら勉強していたという、ウソのようなホントの話をきくにつけ、司令塔である頭脳にだけ仕事をまかせず、おぼえの悪い身体を巧みに使いこなしてこそ、本当の知恵がうまれてくるという内容には、なるほどとうなづかせるものがある。 |
|
|
|