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私の思い出に残っている本を選び出すのはとても楽しい作業でしたが、選び出した本の多くは 数十年前に読んで、今となれば ただ面白かった、あるいはくだらなかった という印象だけが鮮明に残っているだけで、具体的な内容をおぼえていることは まれです。
従って 以下はその本に関する漠然とした感想であり 細部の記述があっても信用しないで下さい。 というのが 一番目のおことわり。
選ぶ基準は 我が家に存在している本の中で、良い印象(面白かった、楽しかった、役に立った)
あるいは悪い印象(くだらなかった)のものを 1人の作者につき1冊としました。好きな作者の本は全部選びたいのですが、1冊にしました。これが二番目のおことわり。
それから 取り上げた本の順番は何にも意味はありません。
では:
『エラリー・クイーンの冒険』(訳-井上勇/東京創元社/昭和33年11月5日発行/270円)
11の短編集。提示されたいろいろの証拠・状況から名探偵エラリー・クイーン氏が見事に解いていく。シャーロック・ホームズと同じような物語形式だが、全体の雰囲気が明るく・洒落ているのが良い。国産の推理小説のほとんどは 雰囲気が暗く、それだけで読む気を失ってしまいます。
(この本にはちょうど40年前の日付が書いてあり 中学生のとき読んだことがわかる。そして巻末のシリーズ紹介の国名シリーズ(ローマ帽子…)10冊のうち9冊に読んだしるしがつけてあった。その当時エラリー・クイーンに夢中だった。)
『ちょっとピンぼけ』(ロバート・キャパ/訳-川添浩史/井上清一/文春文庫/1979年5月25日/280円)
心のあたたかさがにじみ出ている著者の顔写真 そして 米兵にワインを振舞うフランス人の写真を見ただけで 読んでみたくなる本です。しかも 彼は 斃れゆく瞬間の民兵を撮り、自身も地雷で死亡した。
『小説世界のロビンソン』(小林信彦/新潮文庫/平成4年8月25日/560円)
小林信彦の評論なら何でもよかったのですが、たまたまこの本を選びました。読書・映画・喜劇役者・ショウ・ミュージカルなどについての評論は 非常に面白いし、納得できるのです。小林信彦に勧められると つい手が出てしまうのです。この点は後で紹介する予定の吉田秀和の音楽評論と通ずるものがあるように思います。
しかし 小林信彦が評論の中でほめている「トム・ジョーンズ」、「マルクス兄弟」の映画、そして小林信彦の小説が 私にはちっとも面白くないのです。
『女たちは泥棒』(半村良/文春文庫/1980年10月25日/380円)
こういう楽しいお話は日本人には なかなか書けないのではないか と思います。伝奇小説もいいけれど こういう本をもっと書いてほしいと思います。
私は本の中身の見当をつけるときに、パラパラとめくって 「…」(会話)の多い本は中身が薄いと判断します。しかし この本の場合は 「…」は多いですが、例外。
『吉原御免状』(隆慶一郎/新潮文庫/平成3年9月15日/480円)
スケールの大きい うそ の何と楽しいことか。そして生き方の理想がその中に込められているから読者を感動させるのだと思います。
細部の事実だけを 毎週1時間弱、1年間に亘って あきることなくつくり続け見続ける、 そして何十年となく繰り返す。ここに感動があるのでしょうか。
『 経済学誕生』(飯田経夫/ちくま文芸文庫/1996年12月10日/880円)
経済学とは何をするものだろう、という疑問を常々持っていました。この本を読んだら ある程度の理解はできたような気がします。その理解(誤解)の内容をチョット:
経済は現実の多数の人間の動きですから 大変に複雑なものです。その複雑な動きを予言しようとする経済学では、論理的考察を進めることができるように 現実の経済の世界を抽象化したあるモデルを想定せざるをえません。このモデルは現実の世界を完全には反映していませんので、予言は必ず破綻するということです。
『サザエさん』(長谷川町子/朝日新聞社/1994年10月20日/500円)
残念ながら姉妹社で全部そろえていなかったので、これで揃えるつもりです。
『興奮』(ディック・フランシス/訳-菊池光/ハヤカワ・ミステリ文庫/昭和60年9月30日/420円)
ディック・フランシスの競馬シリーズはどれも素晴らしい。主人公の勇気・自立心・克己心・不屈の魂。これからもできるだけ沢山書き続けてほしい。ひとつだけ文句:読んだか読んでないか題名だけでは判らないこと。
『ハンニバル』上・下(トマス・ハリス/訳-高見浩/新潮文庫/平成12年4月10日/705・743円)
全編 大げさな道具だてと内容の空虚さで いただけない。特に最後の気持ち悪さは最悪。
『幽霊列車』(赤川次郎/文春文庫/1981年8月25日/360円)
奇妙な味のある物語が5話入っています。一番有名な「幽霊列車」はテレビドラマにもなって こちらも面白かったように記憶しています。殿山泰司が出演していました。
『.紙つぶて(全)』(谷沢永一/文春文庫/1986年3月25日/?円)
博覧強記とはこの人のことを指す言葉だと思いました。私の知らない書物に関する評価が次から次へと止めどもなく披露されます。概算で500冊の書物を扱っています。
『アメリカ50州を読む地図』(浅井信雄/新潮文庫/平成10年5月1日/476円)
アメリカのすべての州それぞれの特色・基礎データなどがコンパクトにまとめられた、有益で面白い読み物です。アメリカへ赴任する友人に贈呈し喜ばれました。
『音楽の基礎』(芥川也寸志/岩波新書/1971年11月25日/?円)
「すべての音は、発せられた瞬間から、…・、静寂へと向かう。連続性の音であっても、その響きはただちに減衰する。音は、終局的に静寂には克つことができない。…静寂は、これらの意味において音楽の基礎である。」
『ナイン・テイラーズ』(D.L.セイヤーズ/訳-門野集/集英社文庫/1999年4月20日/860円)
ミステリー史上に輝く傑作だそうで、期待したが、とても退屈でした。
ほぼ同時に他の文庫でも刊行されたので、比べてみたら 訳文は こちらの方が断然優れていると思いました。
『.高慢と偏見』上・下(ジェーン・オースティン/訳-富田彬/岩波文庫/昭和40年10月20日/上下ともに★★★)
田舎の家庭生活を溌剌と明るく描いた楽しい小説。
『升田将棋勝局集』(升田幸三/講談社文庫/昭和58年2月15日/420円)
このシリーズは10冊くらい出ていますが、升田将棋が一番面白いとおもいます。他の人には考えつかない ねらい、構想で主導権を握っていく。そういう面白さが へたくそ将棋の私にもちょっとは分かるような気がします。
『私の好きな曲』(吉田秀和/新潮文庫/昭和60年4月25日/480円)
傑作「LP300選」(新潮文庫)にしようと思ったのですが、見当たらなかったのでこの本にしました。吉田秀和の評論(主に音楽)ならどの本でも素晴らしいと思います。
どの道でも一流の人の手法は 細部を具体的に論じ そこから全体が見えてくる ということでしょうか。吉田秀和の場合は さらに 深く幅広い教養と音楽への愛が心を揺さぶります。
『誰かが見ている』(メアリ・H・クラーク/訳-中野圭二/新潮文庫/昭和54年1月30日/360円)
まさに「近来出色の大型サスペンス」でした。この作者 次の作品までは良かったが、それ以後パワーががっくりと落ちました。残念です。
『.新約聖書 福音書』(訳-塚本虎二/岩波文庫/昭和41年10月30日/★★★★)
聖書には独特の言い回しと省略があり、それが聖書の権威の源泉の一部となっているのではないでしょうか。ただし 聖書そのものか日本語訳からきたものかは 私にはわかりません。
この本は 普通の言葉遣い・省略個所の補填・具体的指示語の挿入など 従来の聖書とは異なる画期的な訳本です。
『.物理学とは何だろうか』上・下(朝永振一郎/岩波新書/1979年5月21日/320・320円)
吉田秀和のところで言った 細部を具体的に論じ そこから全体が見えてくる 代表的な一人が朝永振一郎だと思います。難しい量子力学を具体的に分かりやすく解きほぐした教科書「量子力学」(みすず書房)はまさに名著だと思います。
『酒呑みの自己弁護』(山口瞳/新潮社/昭和48年10月20日/750円)
挿絵が山藤章二のため余計、気に入った本です。
『.断腸亭日乗』(永井荷風/岩波文庫/1988年5月10日/600・600円)
ほとんどが日常の行動を記述してあるだけなのに 何故面白いのだろうか。
『樅ノ木は残った』上・下(山本周五郎/新潮文庫/昭和50年6月10日/360・400円)
断章(無名のスパイと無名の殿様の不気味な対話)を時折挿入するという実験的手法が非常に印象的。
『のり平のパーッといきましょう』(聞き書き-小田豊二/小学館/1999年5月10日/2000円)
この本は面白い上に 勉強になります。例えば 助六寿司・田楽・蒲焼の謂われ、花火の鍵屋・玉屋……。
さらに 「雲の上団五郎一座」 玄冶店のシーンが見開き2ページにでています。
『百舌の叫ぶ夜』(逢坂剛/集英社文庫/1990年7月25日/590円)
上質のサスペンスだとは思う。この本は少ない方だが、日本の娯楽作品はどうして、会話文が多いのでしょうか。手っ取り早く状況を説明するには 会話文がもってこいだからでしょうか。
『消されかけた男』(B.フリーマントル/訳-稲葉明雄/新潮文庫/昭和54年4月26日/360円)
この本も会話文が多いが、気にならない。会話文を使う必然性があるからか。話の構成・文章の緊迫力などプロの作品です。日本の娯楽作品と何と大きな違いがあることか。
『.志ん生一代』上・下(結城昌治/朝日新聞社の文庫/昭和55年10月20日/400+440円)
心を込めて描いた志ん生の半生。
『日本社会の歴史』上(網野善彦/岩波新書/1998年3月23日/640円)
「歴史を社会から捉え直す」 ことに成功したとは言えないと思います。何がねらいなのかわからないまま 66ページまで読んで中断しています。上中下 3冊読んでから感想を言う必要がありますね。いずれそのうちに。
『洋・邦 名画ベスト150中・上級篇』(編-文藝春秋/文春文庫/1992年11月10日/500円)
ほとんどは見たことのない映画でした。チャンスがあれば見てみたいと思わせる熱気が感じられます。
『魂・世界および神』第1部/第2部(ハインツ・ハイムゼート/訳-山形欽一/晃洋書房/1996年1月20日/1999年3月20日/3500円・4200円)
カントの「純粋理性批判」の超越論的弁証論への注釈書です。哲学の門外漢にはさっぱり分からないので、まず カントの問題意識が何なのかを知るために「イマヌエル・カント」(O.ヘッフェ、訳-藪木栄夫、法政大学出版局、1995年5月30日、3605円)を読みました。さらにカントについて知るために「カント入門」(石川文康、ちくま新書、1999年3月10日、660円)を読んでいるところです。次は「純粋理性批判」本文を読み、その後ようやく本書にたどりつく計画です。10年ほどかかりそうです。
くにあき 会社員 54歳 東京都生まれ
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