Mountain Trekking編

第10日目('97.5.16)
ラグガードからベニー、
そしてトラックでニューブリッジを経てポカラへ

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 AM6:30起床。今日はいよいよポカラへ帰る。山の中の生活はきつかったが楽しかった。これだけ自然と一緒になれたことは今までもそう無い。ポカラのあの喧噪(山と比べると喧噪に思えてしまう)を思い出すと戻りたくないが、ポカラに帰った後はラフティングをすることにしている。山の次は、川とお友達になるのだ。予定では、ベニーまで1時間歩き、その後車に乗ってポカラまで行く極めて簡単なもの。朝食には、チャパティー2枚を頼み、最後の魚缶を挟んでサンドウィッチにして食べた。吊り橋には荷物を運んだ馬達がもう渡っていく。下では、馬に荷物をくくりつけ、言うことを聞かない馬は叩かれている。朝起きた頃に雨が降り出したが、降ったのはたった5分だけ。その後晴れ、太陽はいつものようにぐんぐん昇っていく。今日もまた暑くなりそうだ。
 AM8:00RAHUGHATに別れを告げ、歩き始めた。道はからからの砂地で足が取られる。でも、RAHUGHAT(905m)→BENI(800m)で、階段もなくだらだら下るだけの道。ここに来る途中にも何度か見たベニーにあるらしいYETI GUEST HOUSEの看板もベニーまで後僅かであることを示している。途中、河岸段丘の広々とした中で、馬が放されているところを通る。彼らは、今は楽そうだが、途中何度もであった荷物運び馬のように、ガソリン10kgほども背負わされ、ジョムソンまで行くのだろうか。
 AM8:45ベニーにはいる。10日ぶりに車を見る。村と言うよりは町である。とても賑わっている。ほこりが舞い騒々しい。RAHUGHATに泊まったのは正解だった。人混みを通り抜ける。あまりに人が多く、もうすれ違う人々に"ナマステ"と言っていられない。町を通り抜けたところで少年に教えられ、左の小路に入り吊り橋に出る。一度に何十人もの人が渡っている吊り橋を始めてみた。吊り橋を渡ると小集落があり、中央に広場がある。そしてその端に、かなりくたびれた2台のトラックが停まっている。身なりの良い一人のネパール人紳士に尋ねると、これがポカラへの中継地であるバグルーンへ行くトラックだという。だが、ドライバーはおらず、いつ出発するか誰も知らず、誰も乗っていない。私たちは、近くの茶屋に入りコーラを飲んで待つことにした。1本20ルピーで、ABCで60か80ルピーだったことを思い、平地に来たと実感する。
 待つほどに、さっきの紳士がやってきて、どうやら様子がおかしいという。選挙のためバスが出ないようなことを言っている。明日が選挙なのだそうだが、このため今日は全てがいつも通り行かないらしい。紳士は、バスのドライバーが戻ってこないので、歩いてバグルーンまで行くという。待っていた他の人たちも歩き出す。私たちも歩いていこうと、追加注文していたコーラを飲み干し、50ルピーを支払いお釣りを待っていると、10ルピーのビスケットがお金の代わりに戻ってくる。貨幣価値より実物価値の方が高いのだろうか。
 深く考えないことにして、荷物を背負い込むと、一人の男が小走りに駆けてきて、トラックの運転席に乗り込み、けたたましいクラクション音をたてる。どうやらバスが出るらしい。人々が戻ってくる。最初は半信半疑でゆっくり戻ってくるが、バスが出るらしいことが判ると、荷物を荷台に投げ込み席取りをする。しかし、うるさい。そこまでしなくてもいいのにと思うが、びーびーびーびーと耳をつんざく様な音を鳴らし続ける。これがネパールだ。全てがアラブのような"インシュアラー"、すなわち神のみぞ知っているのである。私たちも荷台に乗り込み、先程の紳士もしばらく立ち止まって状況を見ていたが、戻ってくる。待っていた人々が乗り込み、自分の場所を確保する。それほど混んでいない。紳士は、荷台に座ってズボンが汚れるのを気にしているので、青いビニール袋を貸す。私たちは、真ん中あたりの荷台の縁に腰をかける。荷台の扉を閉め、発車の準備が完了したように見えるが、クラクションを鳴らし続けるだけでなかなか動き出さない。
 AM9:20出発。道幅=トラックの幅で、道は日本の建設中の方がはるかに良い。その道を乱暴に(そう感じるだけか)走る。しかし、追いかけてきた人を乗せたり、何の理由か判らないがよく止まり、なかなか前に進まない。進んでもゆっくりで横に揺れている方が大きく歩いた方がまし。前後左右上下の揺れが激しく、必死に縁に掴まっていたkanaも中へ座り込む。いたるところで止まり、人を乗せ、激しく揺れ、ほこりを吹き上げながらのんびりと進む。人が増えるにつれ、最初に確保していた客のスペースも狭められてきた。やがて、前方に、こちらに向かっている車が泥にスタックしているのが見える。わたしたちのもスタックするかと心配したが轟然と激しいエンジン音をたてて見事に抜け出た。それにしても、スタックしたトラックの上にはたくさんの人が乗っているが、誰一人として降りて押そうとしなかった。彼らが降りて押せば抜け出せるような気がするのだが、降りて座り場所を失うのをおそれたのか。
 しばらく、トラブルもなく進む。暑くてほこりが口、目、鼻、耳に入ってくるのでみんなハンカチやスカーフ、タオルで覆っている。折角順調に進んでいると思っていたのに、また、ある集落の前で停まる。白いシャツに白いスラックス、ヘアセットばっちりのネパール人伊達者運転手が降りていく。大きな瓜をもらって食べている。水分補給か。乗客を炎天下にほったらかしにして、家の中で瓜を頬ばっている。15分ほど止まり、吹く風もなく話す言葉もなくぐったりしていたところ、運転手が戻ってきて出発。相変わらずの揺れとほこりとスピードで道はいっこうによくならない。対向車とすれ違うと下は崖しか見えない。おそろしい。
 そうしていると、10kg位の米が入った白い袋が山積みにされているところを通る。そして、止まる。その袋の持ち主はトラックに乗せるように運転手と交渉している。この袋の山と持ち主達が乗るスペースはどこにもない。交渉の結果乗せることになったらしい。今まで乗っていた人たちは立ち上がり、前の方につめたり降りたりし、そして持ち主がこの袋の山を積み込む。そして、私たちは、これらの袋の上に座る。座るといっても決して平らではなく、足はひん曲がった状態でどこかにつっこみ、滑り落ちるお尻を手で支え、全身の筋肉をこわばらせる。この頃には、このトラックによる移動が決して楽なものではないということを悟っている。歩くのと同じくらいの体力を使うのではないか、歩く方が崖から落ちる心配が無く安全でいいかもしれないとも思う。
 例の紳士が"any problem?"と心配して聞いてくる。とくにトラブルではないので、"no.thank you."と答えじっと耐える。そのうち道は急激に下り、川原へと行く。そして川に着く。そして川の中を進み、向こう岸に行く。川には大きな石がごろごろとしているが、激しいエンジン音をたてて進む。日本ではとっくに廃車になっていておんぼろに見えるこのトラックは案外馬力があり、トラブルもなく川を超えた。しかし、雨期で水量が増えた場合にはどうするのだろう。船でも渡すのだろうか。そして、川を渡り少し行くと、目の前に立派な橋が見えてきた。吊り橋ではない。これを彼らはニューブリッジと呼んでいる。そこには、バスやタクシーが停まっている。ここからは舗装道路である。トレッキングにはいる前にポカラからフェディーまで乗ったタクシーの運転手が"ニューブリッジまで行くのか"と聞いてたが、この場所のことを言っていたのだ。山の中の同じくニューブリッジという地名を前にして、どう考えてもここまで車がこれるはずはないと言っていたのだった。この橋までもうすぐというところで運転手らはまた休憩を取り、数名の乗客が降りて橋へ向かって歩き始める。再スタート後、この橋を通過し、突然別の車のように勢力を増して、15分後、AM11:30バグルーンに着いた。
 わずか14,5kmの道のりを2時間かけて移動したことになる。歩いて3時間といっていたから、50分ほど早く着いたことになる。複雑な気分である。ただ言えるのは、3時間歩いたよりも二人ともげっそりしていたということである。バグルーンに着くと、先程の紳士がポカラへ行くのか聞いてきて、更に一緒に食事を食べないかと言ってきた。彼と話をしたいのは山々だったが、早くポカラについて旅行代理店を回り、明日以降のラフティングの予約をしたかったので、早くポカラに行きたいといって断った。すると、彼は、私たちをチケット売場まで連れていってくれて、チケットを代わりに購入してくれ(チケット一人36ルピー)、その上、バスに乗り込み席まで教えてくれた。何という親切な人だろう。チケット売場もバスも到着場所からは離れていてそれとはわかりにくいので、非常に助かった。丁寧にお礼を言って別れた。彼はこれからおいしいダルバートを食べると言ってにこにこして歩いていった。

 バスはAM12:00出発。ローカルバスで背もたれは垂直、前は狭い。しかし、さっきのトラックに比べて数段楽。15分ほどで先程のニューブリッジに到着し、ベニーから来るトラックを待っている。やがて、家具の間に人々を乗せたトラックが到着。そのトラックはベニーに停まっていたもう一台だった。あの家具は途中の村で道ばたに並べられていたのを覚えている。私たちのトラックの方がまだよかったのかもしれない。数人が降りて、こちらのバスに乗り込んでくる。その中には、昨日出会ったダイエット中ガールズと、隣の部屋に泊まったイギリス人女性もいた。彼女たちも無事席を確保し、ダイエットガールズは3人掛けにすっぽりはまっていたが、とにかく無事に出発した。道は舗装してあるものの、上り、下り、ヘアピンカーブし、決して快適ではない。かつ、暑い。


ポカラの町
 右に左に崖を見ながらぐんぐん走り、PM1:00KUSMA着。この辺から人が混んできて、研治のバックパックを膝に乗せなくてはならなくなる。加奈恵は本当によく寝る。  PM2:00PAYAPUL着。ここで降りて一休み。ここが、ビレタンティ、チャンドラコットへの入り口だ。"魚が一杯ね。どこから来たの?"と流暢な日本語で声をかけられる。振り向くと現地人ガイドのよう。私たちが、魚の絵のTシャツを着ているためだ。"オーシャンから"と応える。また、違う方向から"タトパニで会ったジャパニだ!"と今度は英語で話しかけられる。タトパニで会ったおしゃれなガイドだった。スプライトを飲みながら下を見ると、荷を積んだ馬達がビレタンティへと向かっていく。かわいそうにと思いながら、またあの山の景色を見たいと思う。
 クラクションが鳴らされ、再びバスが出発する。相変わらず、上下左右に揺れ、ヘアピンカーブの繰り返し。KHAREを過ぎ、NAUDARAへ登ると、ベワ湖が見えポカラの町が見える。道は尾根を超え、ダンプスサイドに行き、我々が登り始めた道が見える。随分色々なことがあったなあと感慨にふける。つらそうなことばかり言っていたけど、生きているという実感があり、景色もきれいで、人とのふれあいもあり本当に楽しかった。そして、二人がお互いを思いやり、こんなに一生懸命歩き、一生懸命楽しめたのが何よりもよかった。ヘアピンを繰り返しながらどんどん下ったが、ダンプスとノーダラの間の道になってようやく直線になる。そして、PM3:30ポカラ着。我々はここにトレッキングを終えた。
  バスはポカラのバスターミナルに着いたので、私たちはイギリス人女性と一人20ルピーでタクシーと交渉し、レイクサイドへ行く。彼女は、アンナプルナサーキット(一周)をやっていたそうだ。途中出会った仲間で一緒に行動していたが、トロン峠越えの際にはぐれてしまった上、膝も痛めてしまっていた。彼女は、WELCOME GUEST HOUSE へ行き、私たちは荷物を背負ったままラフティングのエージェントを探した

ラフティング
。3箇所で聞いた結果、トリスリ川で3日間、1日14ドルのツアーに決める。各国を旅しすっかり板に付いた値切り交渉のお陰で、ツアーで集まった人達の中で一番安く、グッド・ディールであった。ちなみにノーマルでは20〜30ドルらしい。TEMPLE VILLA(トレッキング前に泊まっていたレイクサイドのホテルで、1日12ドル。大理石のお風呂もある。)で預かってもらっていた荷物を取り、チョムロンのバート氏が紹介してくれたダムサイドのGARDEN HOTELにチェックイン。1日150(400円程度)ルピーだ。トレッキング前とは大違いの安さ。山での生活を通して、すっかり金銭感覚が変わってしまった。
 このホテルのディニー君(姓は同じくバート)は、バート氏の書いたメッセージを読んでとても喜んでくれ、非常に親切にしてくれた。庭にパパイヤがなっているのを見つけると、喜んで取ってくれた。kenがナイフでむいてくれて食べたが、食べ頃よりは早く、まだ甘みが薄かったが、新鮮でみずみずしくて非常においしかった。今日もいろいろあり、疲れていたので、シャワーを浴びてさっぱりした。山の中とは違い、熱くたっぷりのお湯がシャワーからあふれ出てきて、ほこりと汗まみれの体がきれいになり生き返るようだった。
 体をすっきりさせて、二人のバート君がかつて一緒に働いていたGERMAN BAKARY(ネパールの主要地にあり、一種のチェーン店になっている) で夕食を取る。kenラザニアとライス、kanaチーズマカロニ。久々のラッシーのおいしさにkana感激ひとしお。ホテルに戻ると、モスキートマットを持ってきてくれて部屋にセットし、ロビーでディニー君ともう一人のネパール人と4人でホテルに飾ってある山の写真を見ながら語り合った。そして、早めにベッドに入り、夢も見ず、途中で起きず、ひたすらぐっすりと寝た。
 以上が、ken&kanaのトレッキング物語。人に感動を伝えるというよりは、その時その時にあったこと思ったことを率直に書いた。よって、自分たちの瞼にその光景が浮かべばいいという自分勝手な文章となっている。読み返してみて、ますますネパールが好きになり、自然を求め、そして人との無邪気なふれあいに感謝する。私達は単なる旅行者に過ぎないが、土地を訪れ見るだけでなく、その土地や土地の人々と同じ呼吸をし、時に心を通わせながら旅を続けていきたいと思う。

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