クァルテット・ラヴェルコンサート&オフ会レポート

 2002年12月4日、東京の紀尾井ホールにて、弦楽四重奏として世界的に高い評価を得ているクァルテット・ラヴェルのコンサートが催されました。
 このコンサートには、編曲、司会として大島ミチルさん、ゲストとして雅楽師の東儀秀樹さんも出演されました。
 私もコンサートに行ってきましたので、その内容をレポートしたいと思います。
 また、コンサートの後、大島さんにもご参加いただいてオフ会を開催いたしましたので、その様子も併せてご報告させていただきます。

 最初に白状しますが、私はこれまでクラシックのコンサートに行ったことがほとんどありません。クラシックの知識自体も、学校で習ったものに毛が生えた程度でしょうか。
 東儀秀樹さんに関しても、「I am with you」などの作品で大島さんと一緒にお仕事をされているということは知っていましたが、実際に作品を聞くのは実は当日が初めてでした。
 きちんとクラシックの教養を持っている方や、東儀秀樹さんの熱心なファンから見れば、とんでもない人間ですね(^^;)。
 とはいえ、音楽は国境や言葉の壁を越えるという言葉があるように、素晴らしい音楽であれば知識がなくても必ずや心に伝わるはず、という期待を胸に開演を待ちます。

 開演から間もなく、クァルテット・ラヴェルの4人が登場。
 最初の曲目は、ピアソラ作曲の「タンゴのための4人」です。
 たった4つの楽器であるにもかかわらず、フルオーケストラに引けをとらない音の厚みと存在感にまず感心させられました。これはオフ会の際大島さんからお伺いした話ですが、クァルテット・ラヴェルのメンバーは、日本人の演奏家に比べるとさほど高価な楽器は使っていないとの事(とはいえ数百万円はするものですが)。それにも関わらず、あれだけの音を出せるのは、彼らの技量が非常に高いという証明でしょう。
 2曲目は、クァルテット・ラヴェルの命名の元にもなったラヴェル作曲「弦楽四重奏曲 1、2楽章」。私と同じ人間の頭の中から、ここまで複雑でありながら筋の通った曲が作れるのを見せつけられると、自分にもまだまだ隠された可能性があるような気分にさせられるから不思議です。弦楽四重奏曲の中でも非常に高い難易度を誇る曲だけに、作曲したラヴェルの才能はもとより、それを難なく(もちろん血のにじむような訓練の賜物でしょう)演奏してしまうクァルテット・ラヴェルの力量は、クラシック素人の私にもひしひしと伝わってきます。
 3曲目〜5曲目は、いずれも大島さんのアレンジで、サン=サーンスの「白鳥」、ビゼーの「カルメン」、サティの「ジュ・トゥ・ブ(あなたが欲しい)」。これらはCMなどで良く使われる曲のため、クラシックに詳しくない私にもお馴染みのメロディーです。ラヴェルの作品に比べシンプルながらも美しい大島さんらしいアレンジを聞くことができました。
 6曲目はドビュッシー作曲の「弦楽四重奏2楽章」。弦楽四重奏では、ラヴェルとよく対比される作曲家ですね。こちらの曲も、ラヴェルに負けず劣らずクラシックらしい格調高い作品でした。
 大島さんは演奏の合間にステージに登場され、曲の解説やクァルテット・ラヴェルのメンバーの紹介をされていました。最初は緊張気味でしたが、第2部ではだいぶリラックスされ、冗談も交えながら司会進行をされたいたのが印象的でした。

 休憩を挟んで7曲目の「優しい気持ち」。これは東儀秀樹さんの作曲を大島さんが弦楽四重奏としてアレンジしたものです。
 この曲の後、いよいよ東儀秀樹さんが登場。コンサート前日にベストドレッサー賞に選ばれただけあり、ジャケット姿がびしっと決まっていました。男の目から見ても格好いいですね(笑)。もちろん、手にはご自分のパートである篳篥をお持ちです。
 テレビで雅楽の演奏風景が放送された時など、過去にもどこかで篳篥の音を耳にしたことはあったと思いますが、実際の楽器を目にすること、そして生演奏を聞くのは今回が初めてです。
 篳篥は、両手の中にすっぽり納まりそうな小さな縦笛でした。小学校の音楽の授業でおなじみのソプラノリコーダーよりも小さいのではないでしょうか。このような小さな楽器から、一体どんな音が鳴るのか、期待に胸が高鳴ります。
 8曲目は、大島さんの編曲でバッハの「G線上のアリア」。
 弦楽器のみの小節がしばらく続いた後、東儀さんが口に篳篥を持っていくと、どこか懐かしい、しかし新鮮な音色が弦の音に重なります。
 篳篥の音色を表現すると、トランペットとサックスを足して2で割った感じでしょうか。木管楽器であるため、音の出方はサックスに近いのですが、音色はサックスよりもきらびやかで、金管楽器のような印象があります。
 なによりも、あの小さな楽器の中から、大きく、そして力強い音が出るのが非常に不思議で、最初はただただその音色に聞き入っていました。
 9曲目の「越天楽幻想曲」および10曲目の「午後の汀」は、東儀さんの作曲、大島さんの編曲。
 これらの2曲は、弦楽器のみで表現するのであれば、胡弓を入れたくなるようなオリエンタルなメロディーですが、そこに篳篥が入ることにより、音楽が絶妙なバランスで成り立っていました。篳篥という楽器は、数千年の歴史を持つにもかかわらず、時には近未来的に聞こえることもあり、非常に奥の深いものを感じさせます。
 最後の曲目は、「南仏の風」という名の小組曲です(以前は「フランス組曲」という題名で呼ばれていた作品です。バッハのフランス組曲と重なるため、題名が変更されたとの事)。
 「南仏の風」は、5つの楽章で構成されています。いずれも短い楽曲ながら、楽章のタイトル通りのイメージを持った曲ばかりで、情景が目に浮かぶようです。前の2曲とはうって変わって題名の通り、小粋で西洋的なフレーズを持っています。
 前2曲が、弦楽四重奏の演奏に篳篥が加わることにより、東洋的なメロディを違和感なく仕上げていたのに対し、この「南仏の風」は、篳篥が無国籍風の響きを持つことにより、エレガンスな中にも新しさを感じることができました。

 アンコールは二本立て。まずはクァルテット・ラヴェルのみで「金曜日」という名前の曲ともう1曲(このあたりの詳細は忘れてしまいました、すいません^^;)。
 その後、今度は東儀さんを含めて「ホワイト・クリスマス」。 ロマンティックで暖かい篳篥の音色がとても印象的でした。
 当日の朝はあいにくの雨でしたが、素晴らしい音楽が雨雲を吹き飛ばしたのか、コンサート終了後にはすっかり晴れ上がり、空には星も見えていました。

 最初に書いたとおり、あまり音楽に詳しくない状態でコンサートを聞きましたが、十分楽しむことができました。
 なりよりも素晴らしい演奏を聞くことにより、彼らのプロ意識、前向きなエネルギーを分け与えられたような気がします。
 東儀さんの作品の編曲などを大島さんが担当されるというのもいいですが、逆に大島さんが作曲された劇伴音楽のパートの一つとして、東儀さんが篳篥を演奏する、というのも是非聞いてみたいと思います。
 また、紀尾井ホールの音響も素晴らしく、気持ちよく演奏を楽しむことができた、ということも最後に付記しておきます。


 コンサート後、大島さんの公式サイトの常連の方々を交えてオフ会を開催しました。
 当日はKAZ@hayさん、大阪太郎さん、臼井さん、ムーミン谷のプーさん、miniraさん、おだんごさんに加え、コンサートの後片付けでお忙しい中、大島さんにもご参加いただけました。
 大島さんと言えば、その音楽性とスケールの大きさに関しては日本の作曲家の中でも五指に入ると考えています。私のようなどこにでも転がっていそうなサラリーマン(←書いててちょっと情けなくなったかも^^;)から見ると雲の上にいらっしゃるような方ですが、実際にお会いしてお話すると、良い意味で凄さを感じさせない方でした。しかし、同時にお話の隅々で、鋭い視点と感性をお持ちであるということも窺い知ることもできました。
 仕事の中で携わった演奏家や芸能人の方たちの情熱、逆に日本において音楽が軽視されている現状(主催者やホールを貸す側に「演奏をする場を提供してあげているのだ」という意識がある)など……実際に音楽業界でお仕事をされている方ならではのお話を聞くことができ、好奇心が満たされると共に非常に勉強になりました。当日サントラが発売されたゴジラ×メカゴジラの制作にまつわる話(本当に制作者の苦労がしのばれます)もたくさん聞くことができました。

 お忙しい所オフ会にご参加いただいた方々には、改めてお礼を申し上げます。
 2003年にも関東・関西でオフ会を開催しようという話もちらほらとありますので、12月4日のオフ会に参加できなかった方も、その際にお会いできることを願っています。

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