石井一孝 アコースティックコンサート'04−Woody SessionII− レポート

 2004年2月1日、半蔵門の東京FMホールで、舞台俳優でありシンガーソングライターでもある石井一孝さんの「アコースティックコンサート'04−Woody SessionII−」が行われました。大島さんが編曲、ピアノ演奏で参加されたこのコンサートは、2003年8月に続いて2回目となります。
 前回に続いて、コンサートを観に行きましたので、その様子をレポートします。

 前回の「Woody Session」も、とても意欲的なコンサートでしたが、今回はそれにも増して、新しい試みが多く取り入れられていました。
 まず、ゲストの顔ぶれが素晴らしい! 前回に続けてヴァイオリンを担当された篠崎正嗣さんに加え、ベースに渡辺等さん、ギターに加藤みちあきさん、パーカッションに菅原裕紀さんを迎えた編成です。
 渡辺等さんと言えば、大島作品では篠崎正嗣さんと並んで「常連」と呼んでもよいミュージシャンでしょう。ベースをはじめとして、マンドリン、ブズーキといったマイナーな楽器まで、ギター系楽器を巧みに演奏され、往年の大島音楽の特色である「無国籍風民族音楽」を完成させた立役者の一人と言えます。
 加藤みちあきさんは、おおたか静流さん(大島さん関係では「大英博物館」のヴォーカル曲やNHK時代劇「とおりゃんせ」の主題歌「水の恋歌」などを歌われています)と組んだユニット「dido」でリリースした作品が印象に残っています。非常にイマジネーション豊かな音楽を作られる方ではないでしょうか。
 菅原裕紀さんは、川井郁子さんや宗次郎さんなどの作品で、大島さんと一緒にお仕事をされたことがあるミュージシャンです。サザンオールスターズ、井上陽水、服部隆之、久石譲(いずれも敬称略)など、ポップスから映像音楽まで、多くのミュージシャンの作品に参加している実力派です。このコンサートでは、裸足で演奏するという熱演ぶりを披露してくれました。

 そして、今回のゲストボーカルは、森口博子さんです。
 実は初めて森口さんを知ったのは、「Falcom Special Box」(日本ファルコムという、パソコンゲームを作っている会社のゲームミュージックをボーカルアレンジした作品です)というCDだった、というのはコンサートに見に来た人の中では私ぐらいではないでしょうか(笑)。
 コンサート後に改めてそのCDを聞いてみましたが、他の歌手に比べて抜群に歌唱力が高いですね。
 もちろん実際には、数々のオリジナルアルバムをリリースされています。最近ではNHKの朝の連続テレビ小説「てるてる家族」にも出演されていますね。
 コンサートでは、代表作のひとつである「明日風に吹かれて」を歌われました。力強い大島さんのピアノの伴奏も印象的な曲でした。

 今回演奏された曲は、ミュージカルナンバーを中心に多岐に渡ります。
 あやふやな記憶を元にしているので、多少順番が前後したりし、抜け落ちている部分がありますが、主な曲の紹介を。
 石井さんと森口さんのデュエットは、ミュージカル「グッバイ・ガール」より選曲。ひょんなことからアパートメントの同じ部屋住むことになってしまった男女のケンカを演じる曲ですが、石井さん本人曰く「説明マニア」ぶりを発揮して、その背景をとても詳細に説明してくれました。これまでミュージカル経験がない森口さんにとっては、ファースト・オブ・ミュージカルとも言える舞台ですが、初めてだとはとても思えないほど、堂々と演じられていました。ちなみに日本語の作詞は石井さんによるものです。テンポのよい語り口はさすがですね。
 石井さんの演劇デビュー作である「ミス・サイゴン」より「Why, God, Why」。サイゴンの売春婦を心より愛してしまったアメリカ兵士の心情を歌い上げる作品です。
 「ジキルとハイド」より「ファースト・トランスレーション」(これは前回のコンサートでも演奏されたかも)。文字通り、善悪を分離する薬を飲んだジキル博士に、ハイドの人格が芽生えるシーンで歌われる曲です。石井さんの歌唱、アレンジともに、前半の抑え気味の不気味な状態から、後半の噴出するような激しい演奏が展開するダイナミックな作品です。特に篠崎さんのヴァイオリンの演奏がいい味を出していました。
 シンガーソングライターとしての石井さんの作品としては、セカンドCDから「月の水」。石井さんの弾き語りでしんみりと聞かせてくれました。歌詞もいいですね。「グッバイ・ガール」の日本語訳もそうですが、本当に多才な方だと思います。
 そしてロックバンド、クイーンのナンバー。ロックミュージックを今回の編成向けに編曲するのは大変な作業だったと思いますが、それぞれの楽器の持ち味を生かし、うまく当日の楽器編成に溶け込ませることに成功していたと思います。

 もちろん、大島さんの作品も演奏されました。今回は、1月より放送が始まった「NHKスペシャル データマップ63億人の地図」メインテーマ。絶妙な選曲といえるのではないでしょうか。
 大島さんのピアノの演奏に、ベースとヴァイオリンが重なり、曲の厚みが増していく展開は、暖かいメロディーラインと共に、心地よく聴くことができました。

 前回あった篠崎さんのヴァイオリンプレイ、大島さんの即興作曲は今回も健在です。
 今回の篠崎さんのヴァイオリンプレイは、「SPレコードのシミュレート」。手回し式のレコードプレイヤー(蓄音機と言った方がいいかも)の演奏を、ヴァイオリンのみで再現したものです。レコードの針飛びはもちろん、レコードプレイヤーの速度が落ち、音楽のテンポ、音程が落ちる所まで表現されていました。単音ではなく、完成された曲を演奏しながら、テンポ、ピッチを変化させるのは、ヴァイオリンを意のままに操ることができなければ不可能でしょう。演奏の後、篠崎さんが「世界でこれができるのは私だけ」と言っていましたが、その言葉に偽りなしだと思います。
 大島さんの即興作曲は、石井さんのリクエストによる「レ・ミゼラブルを観ているときに、途中でトイレに行きたくなってしまった!間に合うか?」というテーマを元に即興で作曲、演奏。石井さんの演技に合わせて演奏されましたが、即興作曲であるにも関わらず動きとぴったりで、たっぷり笑わせてもらいました。
 ちなみに、昼の部のテーマは「会社の残業が長引いて、ミュージカルに遅刻しそう!」。こういったアイデアが出てしまうのが、このコンサートのすごいところだと思います。

 最後は石井さんと森口さんのデュエットで「上を向いて歩こう」。歌の中にミュージカル風の挨拶を取り入れるという、なかなか粋な演出をしてくれました。ここまででもうお腹いっぱい、という感じですが、アンコールは石井さんのオリジナル曲から「雪に咲く繻子の花」と、石井さんの代表作である「レ・ミゼラブル」から「ブリング・ヒム・ホープ」という豪華2曲立て。そのサービス精神に拍手です!

 コンサートというと、間にトークを挟みつつ持ち歌を歌う……という形式が一般的ですが、「Woody Session」では、石井さんを始めとして、出演者全員が新しいことに挑戦しようという姿勢を強く感じました。ミュージカルの知識を持っていればより楽しめることには違いないですが、ミュージカルを知らない人でも十分楽しめる内容に仕上がっていたと思います。

 気が早いですが、3回目の「Woody Session」にも期待しています。今回は地方から来られた方も多かったので、次回は東京以外の場所で開催できるといいですね。

P.S.当日の正確な曲目については、石井一孝ファンクラブ公認ホームページ「石井一孝 ENCUENTRO」で紹介されています。その情報を参考にすれば、もう少しきちんとしたレポートが書けると思いますが、あくまで自分の耳で聞いた感想を書くのが重要ですので。ただ、明らかな曲名の間違い(特に英語の題名がぼろぼろ……)は恥ずかしいので、その部分のみ同ホームページの情報を元に修正させていただきました(^^;)。「石井一孝 ENCUENTR」管理人の方には、この場を借りてお礼申し上げます。

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