| ゴジラ×メカゴジラ |
キングレコード
KICA 586
2002年に公開されたゴジラシリーズ第26作目「ゴジラ×メカゴジラ」のサウンドトラック。
今作はゴジラの脅威に対し、人間側はゴジラのDNSを取り入れた戦闘機械「機龍」(メカゴジラ)を作り出して対抗します。ゴジラシリーズの醍醐味である迫力ある戦闘シーンはもちろん、主人公の家城茜(釈由美子)と、科学者湯原徳光(宅麻伸)の娘の沙羅(小野寺華那)の交流も見所です。
また、時間としてはわずかですが、「ゴジラ」の愛称で親しまれ、大リーグのヤンキース入りが決定した元巨人軍の松井秀喜選手も出演しています。
大島ミチルがゴジラシリーズの音楽を担当するのは、2000年公開の「ゴジラ×メガギラス」に続いて2回目となります。もちろん「×メガギラス」で聞かせてくれた大島版ゴジラのテーマは、本作でも十分に堪能することができます。
今回は、ゴジラシリーズ初となる海外録音。演奏は「極道の女たち」シリーズや「こむぎいろの天使」、「プライド 運命の瞬間」などの大島作品でも美しい演奏を聴かせてくれたモスクワ・インターナショナル・シンフォニック・オーケストラです。
「×メガギラス」の音楽を初めて聴いたときも、そのスケールの大きさに圧倒されましたが、今回の「×メカゴジラ」の音楽は、その「×メガギラス」が霞むほどのパワーを見せつけてくれました。
今となってみると、「×メガギラス」の音楽は、各々の曲はしっかりと作り込まれていましたが、それが有機的に連動されることが少なく、結果として、音楽的には完成度が高いものの映画音楽としてはやや堅さが残る作品となっていたように思います。しかし、今回は各登場人物のテーマがきちんと絡み合い、映画音楽としての完成度をより高めています。
また、前作はややメロディーが前面に出ていた感がしますが、今作ではメロディの印象と共に、シーンの本質、深層が丁寧に表現されています。特にヒューマンドラマのシーンで流れる音楽に、その傾向を顕著に感じることができます。
それでは、代表的な曲を個別に紹介していきます。
まず、オープニングのゴジラとの戦闘シーンなど、ゴジラ登場シーンで流れる「Gのテーマ」。「×メガギラス」でもおなじみの大島版ゴジラのテーマに懐かしさを感じます。2作目ということもあり、アレンジにも余裕が感じられるように思えます。
ゴジラの咆哮から続くタイトル画面の音楽は、「×メガギラス」よりもさらに勇壮でおどろおどろしい仕上がりになっています。タイトルが完成するまでの迫力あるCGアニメーションにも注目です。
沙羅の下校シーンで流れる「おかえり」は、テレビドラマで流れるようなほっとする曲。
「茜のテーマ」は、主人公家城茜のテーマ。他のテーマ曲に比べるとメロディパートでストリングスが多用され、躍動的ながらも美しさを感じる音楽は、まさに「戦う女性」のためのテーマ曲と言えるでしょう。
「機龍隊のテーマ」は、作品の要所要所で使われる、両ゴジラのテーマに続く第三のテーマともいえる曲です。五十嵐総理がメカゴジラの再度の出撃を許可するシーンで流れる、ファンファーレ調にアレンジされたテーマは感動的ですらあります。
「MGのテーマ」は高音のファンファーレから始まる勇壮な曲。同様のフレーズを繰り返し用いることにより、力強さと緊張感を両立させています。低音から盛り上がっていくゴジラのテーマとの対比が印象的でしょう。
「沙羅のテーマ」は、分厚いストリングスにより奏でられる物悲しいメロディーの曲。数ある音楽の中でも異質な存在ですが、それが作中の沙羅の立場となんとも合うように思います。
ゴジラ映画のメインシーンとも言える、ゴジラと敵方との戦闘シーンで使われる「激闘」は、「×メガギラス」の同様の曲と比較すると金管楽器が積極的に使われ、より迫力を増しています。メカゴジラが優勢になると、メカゴジラのテーマや機龍隊のテーマが取り入れられ、さらにテンションが高められていきます。
闘いが終わり去りゆくゴジラのテーマに、その背後に浮上するメカゴジラのテーマが重なる「浮上」は、まさに映画音楽の真骨頂と言えるでしょう。
映画の最後のシーンで茜がメカゴジラに敬礼する場面で流れる「敬礼っ!!」は、勝負の結果如何によらない後味のよさを見たものに与えてくれます。
「×メガギラス」から2年、テレビドラマの音楽を中心に傑作を送り出してきた大島ミチルですが、そこでの経験を元に、大きく成長した音楽を聴かせてくれました。本作において、伊福部昭をはじめとする、歴代のゴジラ音楽の作曲家たちと完全に肩を並べ、それを超えたと断言することができます。
作品の出来はもちろん、松井選手の大リーグ移籍などの話題などの影響もあり、スタートは上々の様子。また、海外でもかなり力を入れて上映されるとのことです。本作品を通じ、海外にも「Michiru Oshima」の名がもっと知れ渡ることを期待しています。