| レジェンド・オブ・クリスタニア〜はじまりの冒険者たち〜 |
「クリスタニア」とは、作家の水野良が手がける、マルティメディアに展開しているファンタジーのことです。小説はもちろん、テーブルトーク・ロールプレイングゲームやコンピュータゲーム、アニメ、ラジオドラマなど、ほとんどの分野を網羅しているといっても過言ではありません。
結界に閉ざされ、神獣という獣の姿をした神が治める世界クリスタニア。そこで行われることは周期によって定められ、繰り返される。しかし、時に結界を越えてクリスタニアに入り込むものもおり、周期にひずみが生じることがある……このような独特の世界観を、大島ミチルは見事に音楽にしました。
クリスタニア関係のCDは、合計で4枚発売されています。ラジオドラマのサントラが2枚、劇場版アニメーションのサントラが1枚、イメージアルバムが1枚となっています。発売元はすべてビクターエンタテインメントです。
切れのあるトランペットやサックス、艶やかなヴァイオリンや胡弓のソロ、ウクレレやマンドリンなどのギター系の楽器が主に使われ、全体的に澄んだ清涼な印象を感じることができる作品となっています。数曲のオーケストラを除けば、シンプルと言えるほどの小編成での演奏ですが、音楽的な密度は非常に高いでしょう。他の作曲家とは一線を画した、シャープで洗練された音楽を聞きたい人にお勧めです。
レジェンド・オブ・クリスタニア〜はじまりの冒険者たち〜 オリジナル・サウンドトラック VICL-480
文化放送系の電撃アワーで放送されたラジオドラマ「レジェンド・オブ・クリスタニア」のサウンドトラック。
この作品は、自分がはじめて大島ミチルの音楽と意識して聞いたものということもあり、思い出深い一枚です。それまで、いわゆる劇伴音楽と言うとせいぜいドラクエしか聞かなかった自分が、ラジオドラマを聞き、そのサントラを探すためにCDショップに行ったわけですから、やはり当時、強力なインパクトを受けたのだと思います。
聴き所はやはり、クリスタニアのメインテーマでもあるTrack2"誕生の時〜Astounding Days"でしょう。どこかで聴いたような懐かしさがありながら、確固としたオリジナリティを持っている曲です。
また、後述のサウンドトラックIIを含め、ジャケットに記載されている各曲に寄せられたコメントは、研ぎ澄まされた大島ミチルの感性を感じることができます。
作曲者などが書かれていない曲は、すべて作曲・編曲大島ミチル(以下の作品も同様)
レジェンド・オブ・クリスタニア〜はじまりの冒険者たち〜 オリジナル・サウンドトラックII VICL-518
この作品は、サウンドトラックIの音楽をさらに先鋭化させたものだと言うことができるでしょう。民族音楽的な雰囲気を持ちつつも、特定の地域の民族音楽を想起させず、それでいて「そこにある世界」の息吹を確かに感じることができます。これは、大島ミチルの音楽が、既存の音楽の単なる借り物ではなく、それを完全に消化し、新しい音楽世界の構築に成功しているゆえに可能なことでしょう。
Track3、5、10などは、はじめて聴いたときは結構とっつきにくい音楽だと思われるかもしれません。しかし、パーカッションと複雑に絡み合うメロディーでイマジネーションがかきたてられるようになれば、あなたも立派な大島ミチルファンです(笑)。
なお、サウンドトラックIに収録されている歌は、作、編曲とも他の作曲家によるものですが、サウンドトラックIIの挿入歌は、大島ミチルによる編曲となっています。Track11、"Lady Moon"のアレンジの美しさは、乾和代の歌声とあいまって、このドラマの結末を切なげに物語っているでしょう。また、Track7、"レードン〜Eternal Quest〜"の作詞は、クリスタニアの原作者である水野良が手がけています。
劇場版アニメーション「はじまりの冒険者たち〜レジェンド・オブ・クリスタニア〜」オリジナルサウンドトラック VICL-674
1995年に公開された、劇場版アニメ「レジェンド・オブ・クリスタニア」のサウンドトラック。ラジオドラマの音楽は、大島さん一人で手がけてますが、劇場版アニメの方は、佐橋俊彦氏との合作となっています。佐橋氏が担当された曲に関しては、一部でやや安易にシンセサイザーが使われているため(Track7"神殺しの竜王"の冒頭部分など)、アコースティックな曲が多い中で浮いてしまった感があるのが惜しまれますが、オーソドックスなオーケストラに関しては佐橋氏もその手腕を発揮し、全体としての統一感を保つのには成功しています。
クリスタニア・サウンドの特色である清涼感は保ちつつも、アクションシーンが入る映画という表現方法ゆえか、アップテンポな曲が多い作品です。
注目は、Track11"光が生まれた場所"とTrack13"祝福を願う日"の2曲でしょう。どちらも、メロディー、使用楽器、演奏すべてにおいて、ファンタジーという言葉を音楽で表すとこうなるという曲だと言えます。Track14"韻律ある混沌"も、ピアノソロながら、妖しくて美しい、非常に情報量の多い佳作です。
また、大島さんと関係はないですが、三重野瞳が歌うオープニングテーマ「遙かな祈り」(作曲は菅野よう子氏)も、とても神秘的で好きな曲です。
クリスタニア イメージ・アルバム VICL-8209
ラジオドラマのストーリーにとらわれず、クリスタニアの世界を音楽で表現したイメージアルバム。劇場版アニメーションの音楽よりも、ラジオドラマのそれに近い雰囲気を持っている作品です。
サントラがあるにも関わらず、このようなイメージアルバムが発売されるというのは、音楽が確固とした世界観を打ち立てていると評価されている証拠でしょう(この作品以外にも「僕の地球を守って」なんかは同じようにイメージアルバムが出ていますね)。
曲の題名は、クリスタニアの原作を知らないと理解できないかもしれませんが、それを抜きにしても十分楽しめる作品です。劇伴音楽の正しい楽しみ方ではないかもしれませんが、作品の枠を超えてイマジネーションを広げられるのも大島作品の楽しみの一つでしょう。
特に突出した曲はありませんが、オーケストラあり、スタジオミュージシャンによるアンサンブルありで様々な大島音楽を聴くことができる、一つ一つが珠玉の作品群です。