オケピ!
 
これはあたしの創作ではなく、ファンのサイトから拾ってきた感想を含んでいます。
舞台を1回見ただけで、こんなに覚えているはずがありません。
人様の伝言板に書かれた記述を無断借用するなど、もってのほか。
でも、まあ、ちょっとくらいなら……(^^;)。


M1 M2 M3 M4 M5 M6 M7 M8 M9 M10 M11 M12 M13 M14 M15 M16 M17


開演前アナウンス(三谷)「携帯電話は必ずお切りください。今回は絶対に許しません。さすがの僕も今度という今度は堪忍袋の緒を……緩めます。ステージそでの2列目右に座っている、ノースリーブの女性が私です」


◇M1「オケピ!」

 それはオケピ〜。

 劇中劇で「この花は私です。やっときれいに咲いたのです」というセリフがある。小林聡美さん本人の声だそうだ。三谷ファンなら誰でも知っている『やっぱり猫が好き』にあったパロディで、桜田淳子の物真似。プレビューの少し前にスタジオ録音したものだそう。

上では、ロマンチックな恋物語
ヒロインは夢を語り、愛を語る
ときめく胸の鼓動に甘い囁き
きらめくこの世界、きらめく夢
ところが(こちらは)狭くて薄暗い穴の中
ひしめく(やつらは)生活に追われた音楽家
上はきらびやかなステージ
ここは暗いイメージ
上は甘い甘いロマンス
ここは修羅場です
それがオケピ、それがオケピ
人生で起こることは、すべてここでも起こる
それがオケピ、それがオケピ

こんな話を知っていますか
白鳥は優雅に泳いでいるようで、水の中では足をバタバタ
(オケピ)
つまり僕らは白鳥の足
華やかな世界の下、ひそかに汗を流す
この穴ぐらの中で
(オケピ)
皆さん誤解してませんか
オーケストラピットのミュージシャンたちは
みんなタキシードを着てるって
(オケピ)
実際はこのとおり
ティーシャツでフランス料理を作っても
味に変わりがないのと同じ
(オケピ)

熱い拍手鳴り響いても
(今日は客も少ない)
この穴には届きはしない
(早く帰りたい)
それがオケピ、それがオケピ
人生で起こることは、すべてここでも起こる
それがオケピ、それがオケピ
それがオケピ、それがオケピ
アーーーーーー
オケピ


◇M2「彼らは、それぞれの問題を抱えて演奏する」

 携帯電話の番号を必死で覚えている小林隆が健気。「くーさい、くさい」の宮地雅子、《動物臭(どうぶつしゅう)》という言葉が結構、ツボ。

序曲。
彼らはそれぞれの問題を抱えて、演奏する。

ああ母さん、今僕は ミュージカルのオケピに立っています
うまく出来るかわかりません ミスをするかもしれません
今はとにかくやるだけです
ああ母さん

気持ちが悪い むかむかするぜ
酒が抜けない 俺もトシだな
今夜は適当にやっとく

えー、今夜の予定は
十時にここを出て、十一時にうちへ帰り、寝るのが十二時
いつもどおりだね。
こうしてなんでもない一日が過ぎたとしても 僕は満足さ
それが人生

鼻が痒いのです、なぜか
鼻が痒いのです、なぜか
気になって気になって 演奏どころじゃない

一人三千円
だけどちょっと待って
お酒を飲んだ人と飲まない人がいるのに
飲んだ人は 三千八百円にしましょ
飲まない人は 二千二百円にしましょ
そう決めたわ これでいきましょ

毎日会える喜び
あなたのハープになりたい
その白い指で触れて欲しい
そのひとみ僕のものだよ

ああまた私を見ているわ 見て笑ってるわ
私はあなたが好きじゃない すべてはあなたの思い込み
結婚なんて冗談じゃないわよ

ブラックホール
それは宇宙の果て
こうしている間も宇宙は膨らみ
やがて終わりを迎える時
いったい何をすればいいのか

バナナをずーっほっておくと、何で黒くなるんだろう
賞味期限が過ぎてても、何で食べても平気なんだろう

ああ母さん、今僕は ミュージカルのオケピに立っています

だけどちょっと待って
二千二百円じゃダメだわ
お酒を飲んだ人と 千六百円も差がついちゃう
飲んだ人は 三千三百五十円にしましょ
そう決めたわ これでいきましょ

とても臭いのです、なぜか
とても臭いのです、なぜか
気になって気になって 演奏どころじゃない

ゼロキュウゼロヨンゼロイチ(090401)
ゴーハチイチナナハチ(58178)
ゼロキュウゼロヨンゼロイチ(090401)
ゴーハチイチナナハチ(58178)

人にやさしく、地球にやさしく、食器にやさしい、ニュー洗剤
分解酵素の働きが、しつこい汚れを落とします

(アンサンブル)


◇M3「乾燥機はあなた次第」

 戸田恵子が手にしている東芝のパンフレット、表の写真は松たか子だとか。

これが私の結論です
あなたとは一緒に暮らせない
いろいろ考えてみたけど
あの日に戻る気持ちはない

水に流すと言ってるのに
どうして分ってくれないのか
過ぎたことは過ぎたこと
忘れて一からやり直そう

何を言われても、私の決意は変わらない
いまさら戻れない、戻る気もない
だからピアノは頂きます

ダブルベッドは置いてくわ
ひとりじゃ大きすぎるよ
部屋のカーテン持ってくね
丸見えじゃないか
マッサージ椅子はあげる
いらない
パソコン私が買ったもの
おい
テレビも頂き
待って
ビデオデッキはどうぞ
意味がない
ついでにベランダのサボテンも
あっ、痛、痛、痛
洗濯機は新しいの買うから
あれは不良品
乾燥機はあなた次第
幸子
乾燥機はあなた次第
考え直してくれ
気持ちがわからない
君のいない暮らしなんて
あー、これが私の結論です
あー、頼む
あなたとは一緒に暮らせない
幸子、頼む
乾燥機はあなた次第
頼む、考え直してくれ
乾燥機はあなた次第
考え直してくれ
乾燥機はあなた次第、よーーー
考え直してくれ、  よーーー


◇M4「くたばれミュージカル」

 トランペッター伊原剛志のソロ。テンポが速くて聞き取れない部分があり、ちょっと残念。ストーリーに関係ない曲をカットしたら『CATS』には『メモリー』しか残らない、というところが笑えた。

「くたばれミュージカル」

気持ち悪いんだよ(アーッ)
白々しいんだよ(アーッ)
冗談じゃないぜ(アーッ)
心底嫌いだミュージカル
何で急に歌になるのか
素直にしゃべれば三十分で終わる
話じゃないか

イライラするんだよ(アーッ)
ムカムカするんだよ(アーッ)
何とかしてくれ(アーッ)
とことん嫌いだミュージカル
何で急に踊りだすのか
普通に歩けば三十秒でたどり着く
距離じゃないか

何で王様急に踊れるワケ
何で猫が皆で笑ってるワケ
何で旗を持って歌ってるワケ
何で屋根の上に座ってるワケ

なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、
なんで、なんで、なんでー、
なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、
なんで、なんで、なんでー、

はっきり言っておくぜ
ライオンの親子がどうなろうと
俺には関係ない

Check It Out

なんでみんなが、いきなりダンシング
何でわき腹を、刺されてシンギング
何で死んでるのに、いつまでシンギング
なんで人前で、照れずにダンシング

なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、
なんで、なんで、なんでー、
なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、
なんで、なんで、なんでー、

なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、
なんで、なんで、なんで、
なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、
なんで、なんで、なんでーーー

はっきり言っておくぜ
この世にあるミュージカルすべて、くたばっちまえ

(楽しそうに踊る藤堂さん)


◇M5「パーカッションの理想と現実」

 山本耕史くん、マザコン! 「ねえ母さん、いま僕はオーケストラの……」 なぜか、つい口ずさんでしまう歌。譜面の最後にあるフェルマータが気になって仕方ない様子。はたしてうまく演奏できるのか?

どんなことも つらいことも 我慢する
好きなことを やるからには 平気 たいていは
気になることはシンバルを 鳴らすタイミング

ああなのに なぜなのか
誰も僕にろくに耳を貸さない
これが本気とするならば やる気ないのかあんたらは
こんなとこにはいたくない ああ母さん

夢に見てた あこがれてた この世界
音にあふれ 愛に満ちた その世界
音楽が好きで僕は ここにいるのに
(音楽が好きなのに)

ああなのに いまここに
いるのがつらくていやで悲しい
これが社会というものか 僕の思いは夢なのか
これが現実ということなのか
(これが現実なのさ)

ああ母さん いま僕は ミュージカルのオケピに立っています
これが夢ではないのなら
(夢じゃない)
僕はここにはいたくない
(逃げちゃダメさ)
僕がいるのはここではない ああ母さん
(これが現実)
僕が夢見たのはここじゃない 母さん


◇M6「リフレイン」

 布施明の歌っていいなあ。みんなでワルツを踊ったりして。

思えば子供の頃サラリーマンになるのが、
いやでいやでたまらなかった。
会社勤めをしていた父親の姿を見ていたせいでしょうか。
毎日決まった時間にうちを出て、決まった時間にうちへ帰る。
そんな暮らしだけはしたくないって、そう思ってました。
そして僕は大人になり、ミュージシャンになった。

だけど今の僕は...

リフレイン、リフレイン、リフレイン
今日はきのうの繰り返し
いつもと同じ、電車に乗って
いつもと同じ、劇場へ
同じ曲を、演奏しては
同じところで、間違える
何が楽しくて、何が嬉しくて、何を夢見て、何を望んで
何が嬉しくて、何が楽しくて、何を夢見て、望んで

リフレイン、リフレイン、リフレイン
今日はきのうの繰り返し
いつもと同じ、時間に眠り
いつもと同じ、夢を見る
八時に起きて、仕事に出かけ
家に帰って、また眠る

リフレイン、リフレイン、リフレイン
今日はきのうの繰り返し
リフレイン、リフレイン、リフレイン
リフレイン、リフレイン、リフレイン

リフレイン、リフレイン、リフレイン
今日はきのうの繰り返し
リフレイン、リフレイン、リフレイン
リフレイン、リフレイン、リフレイン

リフレイン、リフレイン、リフレイン
今日はきのうの繰り返し
リフレイン、リフレイン、リフレイン
リフレイン、リフレイン、リフレイン

リフレイン、リフレイン、リフレイン
リフレイン、リフレーーーーーーイン
リフレーーーーーーーーーーーーイン


◇M7「Who Are You?」

 《ヴィオラの彼》の名前は誰も知らない。今回の小林隆はジャージ姿で、しかも頭が……かわいそう(^^;)。稽古中に肉離れを起こした、とパンフに書かれていました。さらにかわいそう(;_;)。「姓名判断をしてあげるから、名前を教えてね」という名案もうまくいかず……。

誰も僕のこと、名前で呼んでくれない
知らないだけなのか、知りたくないのか、そんなこと
フー・アー・ユー
フー・アム・アイ
確かに僕は、ここにいる
僕は僕

誰もあなたのこと(フー・アー・ユー)
嫌いなわけじゃないのよ(フー・アム・アイ)
生きてる感じしない(フー・アー・ユー)
あなたのせいなの、わからない?
フー・アー・ユー
フー・アム・アイ
確かに僕は、ここにいる
確かにあなたは、ここにいる
フー・アー・ユー
フー・アム・アイ
僕は僕
あなたはあなたーーーーー

名前のヒントは(フー・アー・ユー)
漢字で ふたもじ(フー・アー・ユー)
名前のヒントはカナでも にもじ さーーーー


◇M8「ハーピストの理想と現実」

 松たか子の歌は大好き。歌詞は「お父さんは公務員で公団住宅に住んで……」とすごいけど、動きはセクシー。

ハープを弾く女性にはひとつにイメージが
箱入り娘で上品で、おまけに男に尽くすタイプ
それがそれが、わたくしのイメージ
ハープを弾く女性にはひとつにイメージが
パパは弁護士でママは美人、白いおうちに広い庭
それがそれが、わたくしのイメージ

お父さんはサラリーマンで、満員電車に乗っています
夫婦仲はとても悪くて、母の笑顔見たことがないーーー

実家は公団住宅、いまだにトイレは共同
それが本当の私
それが私の本当
これが本当の私

何人の男と寝たのかしら
本気で好きにはならないけれど
知らない男の部屋の中で朝を迎えたこともあったわーーー

誰かがそばにいないと、眠れない人生
それが本当の私
それが私の本当
これが本当の私

だからもうそんな目で
私を見ないでね
私を見て微笑まないで
私に夢を重ねないで
幸せにするなんて言わないでね

それが本当の私
それが私の本当
これが本当の私

これが本当の私


◇M9「ポジティブ・シンキング・マン」

 婚約したはずのハーピストにフラれたのに、いいように解釈しようとする健気なギタリストの川平さん。顔をはさむように両手を立てる《決めポーズ》が忘れられません。

いったいどうしたことだろう
彼女の気持ちがわからない
僕は嫌われたのか
この恋は終わりなのか
でもひょっとすると、思い過ごしかも
そう、彼女はちょっと錯乱しただけ
ポジティブシンキングマン
これが僕の名前さ
ポジティブシンキングマン
だからいいように考える

いったいどうしたことだろう
彼女の気持ちがわからない
僕は何が出来るか
彼女の心つかむために
でもひょっとすると、思い過ごしかも
そう、彼女はちょっと遊んでいるだけ
ポジティブシンキングマン
これが僕の名前さ
ポジティブシンキングマン
だから彼女は僕のもの

(ポジティブシンキングマン、こいつはバカだ)
(ポジティブシンキングマン、早く目を覚ませ)

ポジティブシンキングマン
これが僕の名前さ
ポジティブシンキングマン
だから彼女は僕のもの


◇M10「オケピ!」(リプライズ)

 最後のいいところで、タイミングをはずすパーカッション。やっぱり問題のフェルマータが……。ふふふ。

人生は、オーケストラとコンダクターの関係によく似ています。
操っているのか、操られているのか、
自分でも分らなくなるときがある。

もうすぐ一幕が終わろうとしています。
時々思うことがあります。
いったい僕は、人生の何幕目に立っているんだろうかって。

こんなこと言いたくないんですけど、
皆さんちょっと不真面目すぎませんか。
二日酔いで来たり、ウサギ持って来たり、
途中で寝ちゃったり、
おまけにコンダクターは本番中に愛人と浮気。
セールスに夢中の人もいれば、競馬に熱中してる人もいる。

僕は誰にも迷惑かけてない。
なんか残念です。
でもそれがオケピなんだ。
それから言っとくけど、ハープはコンダクターの愛人じゃない。
えっ、そうなの。
ハープが好きなのは別の男だ。
別の男?
トランペット
やっ、それは初耳だなあ。
えっ、やっ、だけどトランペットはバイオリンの愛人じゃないですか。
正確には元愛人。
えっ、それじゃ、トランペットが乗り替えた新しい恋人って言うのは。
ハープだっ。ハハハハハ。
どろどろじゃーないですかーっ。
もうすぐ一幕が終わるぞ。
ラストのシンバル、タイミングを逃すな。
ハイっ。

誰もが思い描くは夢物語
その裏の真実を知りはしない
ところがここには
生活に疲れた男たち
強気なふりして
寂しげな目をした女たち
もしもそれが現実ならば
(僕は認めたくない)
夢を見ずにあしたを生きる
(僕は許せない)
それがオケピ、それがオケピ
人生で起こることは、すべてここでも起こる
それがオケピ、それがオケピ
それがオケピ、それがオケピ
アーーーーー

(シンバル:川田君タイミングを外してしまう)

お客様の仲には、
休憩は自分たちのためにあると思っている方もいらっしゃるみたいですが、
とんでもない、僕らのためにあるんです。

ということで、二十分間の休憩です。


20分間の休憩。休憩を知らせるアナウンスも三谷の声。オケピの周りは覗き込むファンで一杯。指揮者・服部さんの譜面台の上に、2冊の台本とともに、なぜかサルのぬいぐるみが置かれてました。


◇M11「アントラクト〜俺たちはサルじゃない」

 休憩時間にオケピを覗いた私には、「やられた〜(^^;)」という感じ。「ここはサル山じゃない〜 俺たちはサルじゃない〜」 ……はい、すみません(^^;)。

アントラクトというのは、
二幕のアタマで演奏する、いわゆる間奏曲のこと。

僕にはわからない、どうしてみんな間違えて平気なのか
それでもプロなのか、お客さんに申し訳ないと思わないのか

お客さんに申し訳ないなんて、思うことはないんだよ
ホホホホホホホホホホホホ
誰でも一度はしくじるさ、大事なのはあとに引きずらないこと
ホホホホホホホホホホホホ
落ち込んだときはこう考える、わざとえらそうに胸を張って
僕らの演奏を聞けてあんたらは幸せだって、ありがたいと思えって

忘れちゃいけないのは、音楽家の誇り
そして、自信を持って叫べ
ここは猿山じゃない、俺たちは猿じゃない

幕が上がるぞ、早く席に着け、遊びの時間は終わりだ
もたもたするな、早く席に着け、いつまでもオケピを覗くな
(ここは猿山じゃない、俺たちは猿じゃない)

こっちを見ている子供、いいかげんあっちへ行きなさい
ここをどこだと思ってんだ
(ここは猿山じゃない、俺たちは猿じゃない)

そこのオヤジ、何しみじみ見てる
さては昔ブラバンやってたな
(ここは猿山じゃない、俺たちは猿じゃない)

そこのカップル、いつまでもいちゃついてんじゃないわよ
缶ジュース置いてくなぁ
(ここは猿山じゃない、俺たちは猿じゃない)

ごめんなさいね、間違えてばっかりで
でもね、今日に始まったことじゃないんです
(ここは猿山じゃない、俺たちは猿じゃない)

さあ、言ってやれ
バカヤローーーッ
(ここは猿山じゃない、俺たちは猿じゃない)

忘れちゃいけないのは、音楽家の誇り(誇り)
そして、自信を持って叫べ
ここは猿山じゃない、俺たちは猿じゃない
ここは猿山じゃない、俺たちは猿じゃない
ここは猿山じゃない、
俺たちは猿じゃーーーーーーーーーーない
(猿じゃない)


◇M12「オーボエ奏者の特別な一日」

あれは、肌寒い冬の夜
僕は、テレビを眺めてた
ケーブルテレビで前に見た、古い刑事ドラマ
真犯人も捕まって
そろそろ寝ようと思った時
鳴るはずのない電話が
突然、僕を呼んだ
ひと目だけでも、会いたいと
相手は小さく、つぶやいた
来週の日曜の午後
と、僕は手帳に書き込んだ
二十年ぶりに会う、僕の一人娘

待ち合わせの喫茶店
僕は、十七分前に着いた
珈琲を飲みながら、僕は彼女を待った
僕の頭の中は、実は不安でいっぱい
僕をどう思っているのか
僕は、何を話せばいいのか
彼女はどんな彼女に...
ひと目で分るのだろうか
いい女になっているのか、なっていないのか
やがて一人の女性が、店に入って立ちどまる
僕は彼女と、すぐに分った
そこに入ってきた彼女は
そこに、入って、きた彼女は
僕の妻に、とてもよく似ていた

僕たちは一時間ほどその店にいた
話したことといっても驚くほどたわいのないことばっかり
目玉焼きには何をかけるか、靴下はどっちから履くか
話題が途切れると彼女は、レモンティーを飲んだ
カップをつかむ彼女の指は、彼女の母親と同じ指だった
飲み終わると彼女は、カップの底のレモンのスライスを
なれた手つきでつまみあげると、ポイッと口の中に入れた
それは妻がいつもしていた、癖...

僕らは店の前で別れた
別れ際に、彼女は言った
恥ずかしそうに、目を伏せて
「結婚します」
おめでとう、と僕はつぶやいた
彼女はうつむき、ほほえんだ
そして僕に手を振って、彼女は去って行った
去って行く彼女の後姿を
僕はいつまでも見送る
彼女が見えなくなるまで
彼女が見えなくなっても...

その夜いつものように
僕はテレビを見ていた
いつもと違うのは、朝まで祈りつづけたこと
神様娘が幸せになりますように
世界中の父親が百回唱えるなら、僕は千回唱えよう
彼女が幸せになりますように...

僕の、一人娘...


◇M13「私を愛したすべての人へ」

いつも誰かがいた
いつも一人じゃなかった
だけど寂しくて
だけど一人ぼっちで

誰かに愛されても
誰も愛せない
傷つけあうのが怖いから

あなたを見つめれば
微笑み返してくれる
涙を浮かべれば
腕を回してくれる
愛されるなんて
簡単なことだわ

私を愛したすべての人へ
あなたが夢見た私はいません
私を愛したすべての人へ
過ぎ行くあの日を忘れてください
あーあー
あなたの胸の中で他の夢を見る
本気になるのが怖いから

誰かに愛されても誰も愛せない
傷つけあうのが辛いから

怖いから


◇M14「サバの缶詰」

ひとりで生きる
強がりなんがじゃない でも
人生はあまりにも長い

人間は そう ひとりで生まれて死んでゆく
わかっちゃいるけど 辛いもの

ホタルイカの塩辛 ワタリガニの味噌汁
ところてん ごぼう天 サバの缶詰
洗いたてのシーツ ふかふかの枕
カーテンの隙間から差し込む 朝日
ひとりで生きることの苦しみや
話す相手いないことの悲しみは
好きなもの好きなだけ考えて
忘れるのよ サバの缶詰

美容院で人の噂聞いた幸せ
通販に申し込んだ胸のときめき
みのもんたの言ったこと試す喜び
あとひとつは サバの缶詰

洗いたてのシーツ ふかふかの枕
カーテンの隙間から差し込む 朝日

それだけで それだけで
私...しあわせ


◇M15「ポジティブ・シンキング・マン」(リプライズ)

ポジティブシンキングマン
これが僕の名前さ
ポジティブシンキングマン
だからいいように考える
ポジティブシンキングマン
これが僕の名前さ
ポジティブシンキングマン
だからいいように考える
ポジティブシンキングマン
これが僕の名前さ
ポジティブシンキングマン
だからいいように考える
ポジティブシンキングマン
これが僕の名前さ
ポジティブシンキングマン
だから彼女は俺のもの

(コーラス:ポジティブシンキングマン)
(踊り狂う丹下君)
((客席の皆も、一緒に。))

ポジティブ、ポジティブ
ふっきれました


◇M16「ただひとつの歌」

 ショパン(ピアニストが飼っているウサギ。三谷ファミリーがCMに出ている《モルツ》の文字の入ったダンボール箱に入れられているあたり、芸が細かい)の出産。双子で、取り上げた人の名前をつけよう、という話になる。さあ、これで《ヴィオラの彼》小林隆の名前がわかるぞ! これまでに出されたヒントは、「漢字2文字で、読みも2字」。

わからないことがあるんです。
何が?
皆さん何が楽しくてこの仕事をしてらっしゃるんですか?
何が楽しくて?
だって楽しそうには見えない、仕事だって割り切ってるんですか?
そんなことないよ、楽しいからやってるんだよ。
そうでしょうか?
そうだよ。
むしろ辛そうに思える。
辛そうに?わかってないなぁ、君は。

例えば、どんな出来の良くないミュージカルにも
きっとあるさ、みんなの好きな歌
そこにいることの幸せ、歌う喜び

どんなにいやな人間でも、ひとつはいいところがある。
それと同じなんだ。
どんなにつまらないミュージカルでも、ひとつはいい歌がある。
このミュージカルにも?
あるよ。エム二十(M20)、これがそうだ。
この歌?
これがあるから、どんなに辛いことでも我慢できるんだよ。

藤堂君、例の入りの部分もっと遊んでもいいんじゃないかなぁ。
オッケイ。

日に日に凄くなってる気がする。
あそこはいくら遊んでもいいとこだからねぇ。

ギターも思い切って出ちゃっていいんじゃねえか。
本当?じゃぁ、ちょっと狂い気味でやってみる。

例のアルペッジョ昨日の良かったわよ。
ありがとうございます。

例えば、どんな草木もいつか花咲くよに
きっとあるさ、みんなの好きな歌
その曲の始まりの音はゲー(G)、そうしてこう続け
ゲー・エフ・ゲー・エス・ゲー・ベー・ツェー(GFGEsGBC)
デー・ゲー・エス・エフ(DGEsF)
(戻って)
ゲー・エフ・ゲー・エス・ゲー・ベー・デー(GFGEsGBD)
エー・ツェー・デー(ECD)

大変だショパンの様子がおかしい
一文字さん
苦しそうな息をしてる。あっ、陣痛が始まった。
もうすぐ生まれるぞ。お湯を沸かして。
あーいや、時間がない、誰か手を貸してくれ。
耳を持って。両足開いて。ショパン息を止めて。力を入れろ。
おぉ、生まれた生まれた。双子だ。
ショパーーーン。

ねぇ、ピアノの彼さぁ、どうしていつも僕が仕事を頼むか前に聞いたよね。
こういうことさ。彼がいると不思議と場が和む。
見てごらん、殴り合いがあったことなんてもうみんなすっかり忘れてるだろ。
本当ですね。
だから欠かせないんだ。多少のミスタッチは目をつぶろうよ。

例えば、どんな出来の良くないミュージカルにも
きっとあるさ、みんなの好きな歌
そこにいることの幸せ、歌う喜び
ゲー・エフ・ゲー・エス・ゲー・ベー・ツェー(GFGEsGBC)
デー・ゲー・エス・エフ(DGEsF)
(戻って)
ゲー・エフ・ゲー・エス・ゲー・ベー・デー(GFGEsGBD)
エー・ツェー・デー(ECD)
(戻って)
ゲー・エフ・ゲー・エス・ゲー・ベー・ツェー(GFGEsGBC)
デー・ゲー・エス・エフ(DGEsF)
(戻って)
ゲー・エフ・ゲー・エス・ゲー・ベー・デー(GFGEsGBD)
エー・エー・エー・エス・ツェー(EEEEsC)

ねぇねぇねぇねぇねぇ、名前どうすんの?
どうしよう。
やっぱりさぁ、取り上げてくれた先生の名前もらえば?
えっ、一文字さん?
いいわよね?
それじゃねぇ、もう一匹は?
ヴィオラの彼の名前がいいんじゃないかなぁ。
あのぉ、お名前頂いてよろしいですか。
僕の名前?光栄です。
呼んであげれば。
さぁ。
ほら行け。
覗いてもいいですか。
佐野君、始めまして。
佐野だ。こいつの名前は佐野だ。
佐野さんだそうです。

もうすぐエンディングだ。今度はしくじるなよ。
はいっ。
タイミングは一幕と一緒。
トランペットが終わって一、二と数えて大きく息を吸う、そして。
わかりました。
がんばれ。

それがオケピ、それがオケピ
それがオケピ、それがオケピ
アーーーーーー、オケピーーーーーー

(シンバル)


◇M17「オケピ!」(リプライズ)

もうすぐミュージカルも終わりを迎えようとしています。

この二時間半に起こった幾つかの出来事は、
ここにいる人々にほんの少しずつ変化をもたらしました。
...僕を除いて。
誰もが幕が開く前より少しだけ成長し、大人になった。
僕を除いて。そう、僕は驚くほど変わらない。
何の変化もなければ、何の進歩もない。

でも、ふと思うんです。人生なんてそんなもんじゃないかって。
そう簡単に人は変わるものではない。毎日が同じことの繰り返し。
僕らは、同じフレーズを繰り返し演奏するミュージシャンなんです。

そして、後になって振り返ったときに、
驚くほど遠くに来ていることに気がつく。

そう、あのボレロのように。

あの曲が好きな理由が分った気がします。


終演アナウンス「公演は終了しました。これ以上立っていてもなにもいいことはありません。終電の時間が近づいております。埼玉方面の方、すみやかにお帰りください。駐車場の門が閉まってしまいます。川平慈英が必死に開けているので車でお越しの方は、お急ぎください」

(大阪バージョン)「これは録音です。東京でドラマの脚本書いてます。大変なことになっています!」