Umberto Eco, Il
Nome della Rosa 2000.2.- (Feb, 23 '00更新)
※引用のページ数は、
ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』(東京創元社、1990年)のものを使用しています。
各章のあらすじと感想
| 《第1日》 皇帝より特命を受けた修道士ウィリアムと弟子の見習修道士アドソは北イタリアの山上にある僧院に到着する。着いて早々、鋭い推理力を披露するウィリアム。彼はここで最近、ある事件が起こったことを僧院長から聞かされ、その解明を依頼される。 |
フランチェスコ会の修道士ウィリアムと、その弟子でヴェネディクト会の見習修道士アドソが北イタリアの山上にある僧院に到着するところから、物語は始まる。
《バスカヴィルのウィリアム》と《メルクのアドソ》が探偵よろしく連続殺人事件の謎を解く。架空の地名を想定していると思われるバスカヴィル(Baskerville)は、言うまでもなく『バスカヴィル家の犬』のシャーロック・ホームズを連想させる。しかもウィリアムは"ブリトン人"である。一方、メルク(Melk)はオーストリア北部の町。14世紀の北イタリアでイギリス人とドイツ人の主従が殺人事件の謎を解明する物語、と考えれば理解しやすいだろう。
死を目前にしたドイツ人修道僧のアドソが、見習いだった頃を回想して14世紀にラテン語で書いた手記を、17世紀になってメルクの僧院長がフランス語に翻訳させたものを、1968年に発見した「私(=ウンベルト・エーコ)」がイタリア語に訳した本、といういささか込み入った経路をたどった書物ということになっている。
近づく死に、若い頃の稀有な経験をどうしても語っておきたかったアドソは、密かに手記を綴ったが、その忌まわしい事件が起きた場所を特定できるような記述は避けた。だから北イタリアの山上ということだけで、村の場所も、僧院の名前も、書かれてはいない。
到着した日、早くもウィリアムの探偵としての手腕が披露される。着いて早々、厨房係が慌てた様子であるのを見て、「逃げたブルネッロという名前の馬を探しているところ」であることを、ウィリアムは鋭い洞察力で言い当てる。この辺りはホームズがワトソンを相手に鮮やかな推理を見せびらかすシーンにそっくりだ。エピソードは映画では「化粧室の場所を言い当てる」話になっていた。
僧院の描写が非常に難解である。
「それは八面体の建造物であったが、遠目には四面体のように見えた。そして南面が僧院の内側の平らな敷地から聳え立っていたのに対して、北面は真逆さまに落ち込む山襞の上に直接に生えているみたいだた。つまり、下から見ると、場所によっては岩塊がそのまま天に向かって伸びてゆき、色合いも素材も切れ目なくつながって、いつのまにか聳え立つ塔を形作っているのだった。……さらに近づくと、地上の四面体はそれぞれの隅に七面体の塔を突出させ、各塔はその七面のうちの五面を外側へ張り出していた――したがって全体としては八面体がもつ八つの側面のうちの四面が、小さな四個の七面体の塔を生み出して、それぞれの塔が五面体となって外へ張り出しているのだった。……八は各四面体の完全数であり、四は福音書の数、五は世界の気候帯の数、そして七は聖霊の贈り物の数である」(p.36-37)
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