| A. S. Byatt, Possession: A Romance (1990) |
各章の構成
ランドルフ・ヘンリー・アッシュの詩
※ ページ数は Vintage 版(1991)を使用しています。
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Possession あらすじ
しがない研究生であるRoland
Mitchel はロンドン図書館で19世紀の著名な詩人
Randolph Henry Ash の蔵書に挟まれた手紙の下書きを発見する。Christabel
LaMotte という、ややマイナーな女性詩人に宛てて1858年6月21日に書かれた手紙だとわかる。Roland
は LaMotte の遠縁に当たる研究者 Maud Bailey を訪ね、協力を依頼する。二人はAsh
と LaMotte の往復書簡を発見、このヴィクトリア朝の詩人たちが恋愛関係にあったことを知り、また1ヶ月の逃避行をした可能性があることもわかる。二人は詩人たちの旅行の足跡を辿る。そこへ、フランスの女性作家の研究者からLaMotte
が妊娠し、出産まで仏ブルターニュ地方の遠縁の家に滞在していたという情報が寄せられる。Roland
と Maud の動きから周囲は次第に Ash と LaMotte の関係に気づき、それぞれに利益を得ようと躍起になる。Ash
の文献を買い漁るアメリカの研究者 Cropper は Ash の遺族を抱きこみ、強硬に
Ash の「墓暴き」をもくろむ。事前にその計画を察知した
Roland たちは、Cropper が墓を掘り問題の手紙を手に入れたところを「現行犯」で取り押さえ、関係者一同が揃うなかで手紙が読み上げられ、真実が明かされる。この発見は
Ash、LaMotte 双方のそれまでの人物研究・作品解釈を根底から覆す、学問的スクープとなった。一連の共同調査のあいだに
Roland と Maud に恋愛感情が芽生え、やがて性的に互いを所有(possess)する。二人はヴィクトリア朝時代の詩人カップルに取り憑かれて(possessed)いた。Maud
は Ash、LaMotte の血を引く直系の遺族として書簡ほかの所有権(possession)・著作権を手に入れる。Roland
は Maud を通してそれらを手に入れるほか、啓示を受けて自分の研究テーマを見つけ、文学研究者としての方向性を得る。
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《1986年のストーリー》
Roland Mitchel はロンドン図書館で19世紀の著名な詩人 Randolph Henry Ash の蔵書に挟まれた手紙の下書きを発見する。女性に宛てた手紙である。Roland は名前と手紙が書かれた時期を特定する。Christabel LaMotte という、ややマイナーな女性詩人に宛てられて1858年6月21日に書かれた手紙だとわかる。Roland は LaMotte の遠縁に当たる研究者 Maud Bailey を訪ね、協力を依頼する。Maud の案内でリンカーンにある LaMotte の墓に訪れた二人は、そこで偶然に LaMotte が余生を送ったシール館の領主 Bailey 卿夫妻と出会う。LaMotte の部屋に入室することに成功した二人は、巧みに隠されていた手紙の束を発見する。Ash と LaMotte の往復書簡である。30通におよぶ手紙から、このヴィクトリア朝の詩人たちは恋愛関係にあったこと、1859年6月 Ash が海洋学調査のためヨークを旅行した際、LaMotte を同行させようとしていたことがわかる。
Roland と Maud は Ash の旅行の跡を辿り、二人の詩表現の一致、ヨーク地方の方言、ジェットなどのヒントを得て、詩人たちが1ヶ月間の逃避行を実行したことを確信する。そこへ、フランスの女性作家の研究者から LaMotte について有力な情報が寄せられる。1859年秋から翌1860年夏まで LaMotte は仏ブルターニュ地方の遠縁の家に滞在していた。しかも、姪に当たる作家志望者の日記から、LaMotte が妊娠していたことが判明する。
Roland と Maud の動きから周囲は次第に Ash と LaMotte の関係に気づき、それぞれに利益を得ようと躍起になる。Ash の妻 Ellen の日記によれば、夫の埋葬に際し LaMotte が Ash に宛てて真相を記した未開封の手紙を、遺体と共に埋めたらしい。Ash の文献を買い漁るアメリカの研究者 Cropper は Ash の遺族を抱きこみ、強硬に Ash の「墓暴き」をもくろむ。事前にその計画を察知した Roland たちは、嵐の夜 Cropper が墓を掘り問題の手紙を手に入れたところを「現行犯」で取り押さえる。関係者一同が揃うなか手紙が読み上げられ、真実が明かされる。
この発見は Ash、LaMotte 双方のそれまでの人物研究・作品解釈を根底から覆す、学問的スクープとなった。一連の共同調査のあいだに Roland と Maud に恋愛感情が芽生え、やがて性的に互いを所有(possess)する。二人はヴィクトリア朝時代の詩人カップルに取り憑かれて(possessed)いた。Maud は Ash、LaMotte の血を引く直系の遺族として書簡ほかの所有権(possession)・著作権を手に入れる。Roland は Maud を通してそれらを手に入れるほか、啓示を受けて自分の研究テーマを見つけ、文学研究者としての方向性を得る。
《1858年のストーリー》
Christabel LaMotte (1825.1.3.-1890.5.8)はイングランドで生まれた。祖父Jean-Baptiste はフランス人で、ロベスピエールの恐怖政治時代にイングランドに逃れた。父Isidore は歴史家・神話学者。1853年、叔母の遺産を相続した LaMotte は、ロンドン・リッチモンドに居を構え、ラスキンの講演会で知り合った年上の女性画家 Blanche Glover と暮らし始める。外部との交際をほとんど断ち、性的行為を含むレズビアンの隠遁生活であった。
Randolphe Henry Ash ( 1816 - 1889.11.23)は15年の交際を経て1848年6月、2歳年上のEllen(1814 - 1893)と結婚する。フランスのエイサン・プロヴァンスのヴォークリューズの噴泉へのハネムーンでの初夜以降、Ellenは夫との性生活を拒み、以来この夫妻はセックスレスのまま思いやりと知的レベルでの協力に満ち溢れた穏やかな結婚生活を終生通す。
1858年6月、LaMotte と Ash は元新聞記者 Henry Crabb Robinson (1775-1867)が自らも創立に関わったロンドン大学の学生に啓発的な談話の場を提供するため日曜日に催していた朝食会で、はじめて顔を合わせる。すでに著名な詩人であった Ash の著作について LaMotte は熱心に意見し、また自分の創作の構想について語る。降霊術についても話す。LaMotte に強く惹かれた Ash は6月21日、LaMotte に会って意見交換の続きがしたい旨の手紙を出す。この後、二人は互いのパートナー(Ellen、Blanche)に隠れて、時には密会しながら約30通の文通を続ける。
やがて二人の関係はパートナーたちの知るところとなり、思い余った Glover はある日 LaMotte に届いた Ash からの手紙を郵便受けから盗む。その手紙にはようやく完成したばかりの Ash の叙事詩 Swammerdamが入っていた。LaMotte は文通中止を提案するがやはり別れがたく、手紙のやりとりをはじめて1年になる1859年6月、Ash が海洋学調査のためヨークに出かける旅行に同行させる。約1ヶ月間の逃避行である。ウィットビーの漁港で Ash は LaMotte に人魚の形をしたジェットを買い、Ellen には白薔薇のジェットを送る。LaMotte は Glover に「握手する手」のジェットを買う。
二人が不在のあいだに、Glover は盗んだ Ash の手紙とSwammerdam の原稿を手に Ellen を訪ね、Ashの不倫について話す。7月はじめ、Ellen の女中バーサが妊娠を隠せなくなり、暇をとる。
二人はロンドンに戻り、LaMotte がこれまで自分が書いた手紙をすべて戻すよう要求して二人の関係は終わる。Ash は以前と変わらぬ妻との暮らしを続ける。妊娠に気づいたLaMotte は密かに出産するためフランスの遠縁に身を寄せる。冬になり、Ash は妻に不倫の件を告白するが、Ellen は Glover から預かっていた叙事詩の原稿を差し出し、「知っていた」と告げる。Ash は情報を得てフランスに LaMotte を訪ねるが、LaMotte は会わない。
1860年5月1日、LaMotte は修道院で女児 May を出産し、リンカーンに嫁いだ妹 Sophie に娘を預ける。6月、Glover は遺書を残してテムズ河に入水自殺し、LaMotte は警察の知らせでイングランドに戻る。LaMotte はしばらく Miss Olivia Judgeの家に滞在するが、その間に Mrs. Leeds降霊会がこの家で催される。Lytton卿のつてでこの会に出席した Ash はMrs. Leedsの降霊術がいかさまであることを暴き、LaMotte に「子どもはどこにいる?」と詰め寄って、部屋から追い出される(それが二人の最後となった)。Ash はこの事件をテーマにした詩 Mummy Possestを後に発表する。
LaMotte はリンカーンの妹夫妻の館に身を寄せ、叔母として実の娘の傍で余生を送る。1868年5月、Ash はリンカーンを訪ね、野原で娘 May に会う。そこで花冠を作ってやる代わりに彼女のブロンドの髪をひと房もらう。LaMotte には会わずに帰り、この一件を彼女は知らない。May は1878年に結婚するが、血の繋がった従兄妹同士の結婚であったために両家の仲はこじれる。May は10人の子を出産するが第一次大戦を経て、残ったのは男の子ひとりだけだった。
1889年晩夏、Ash がベッドで寝たきりになる。10月下旬、LaMotte は二人の子どもについて真相を打ち明けるAsh宛ての手紙を書き、封をしてEllenに託す。11月23日、Ashの死に際し、Ellen はその手紙を未開封のまま墓に埋める。1890年5月、LaMotte は「遺稿と著作権をMayに譲る」という遺言書を残して息を引き取る。