A.S.バイアット Antonia Susan Byatt (1936-)
☆アントニア・スーザン・バイアット。1936年8月24日生まれ。4人きょうだいの長女にあたり、作家マーガレット・
ドラブルは実妹。女性の自立などを主題に小説を描き、1990年、"Possession:a
romance"(邦題『抱擁』)でブッカー賞を受賞。作風はリアリズムを追求し、保守的傾向が強い。現代イギリス女
性最高の知性と称されることが多く、しばしばI・マードックと比較された。『グランタ』誌編集委員の経験あり。王立文学協会特別会員。2000年、The Biographer's Tale 刊行。2002年9月、フレデリカ4部作の最終作
The Whistling Woman 刊行予定。
☆BBCラジオドラマ(2002年5月、9月)
Monday, May 13th - Friday,
May 31st
THE FREDERICA QUARTET Part
one
Dramatisation of A. S. Byatt's novels The Virgin in
the Garden& Still Life.
Fifteen 15 minute episodes broadcast at 10.45 each
morning & repeated at 19.45 each evening.
BBC Radio 4 beginning Monday, 6th May. Monday, September
9th - Friday, September 27th
THE FREDERICA QUARTET Part
two
Dramatisation of A. S. Byatt's novels Babel Tower &
A Whistling Woman.
Fifteen 15 minute episodes broadcast at 10.45 each
morning & repeated at 19.45 each evening.
BBC Radio 4 beginning Monday, 9th September.
☆著作リスト
・The Shadow of a Sun (1964)
・The Game (1967)『ゲーム』(鈴木建三訳
河出書房新社)
・フレデリカ4部作
The Virgin in the Garden (1978)
Still Life (1985)
Babel Tower(1996)
The Whistling Woman (2002)
・Sugar and Other Stories (1987)『シュガー』(池田栄一・篠目清美訳
白水社)
・The Possession (1990)『抱擁』(栗原行雄訳
新潮社) → 映画化情報
・The Matisse Stories
『マティス・ストーリーズ』(富士川義之訳
集英社)
・The Djinn In The Nightingale's
Eye
・The Biographer's Tale (2000)
・Degrees of Freedom: The Novels of Iris Murdoch
・Unruly Times: Wordsworth and Coleridge
・Passions of the Mind (1991)
・Imagining Characters: Six Conversations about Women
Writers (with Inges Sodre)
『ゲーム』は現在、版元で品切れ。『抱擁』は絶版。『シュガー』は短篇集。『マティス・ストー
リーズ』はピカソと並び称される巨匠マティスの3枚の絵をモチーフに、中年女性
の心の秘密を描く。ブッカー賞受賞作『抱擁』後の作品で注目されるのは、最新作
"Babel Tower"。
バイアットは小説家としはもちろん、批評家としても名高く、たくさんの著作があ
る。特にアイリス・マードックに関する研究は有名。"Imagining
Characters"では、 ジェイン・オースティン、シャーロット・ブロンテ、ジョージ・エリオットなど6
人の女性作家の作品を取り上げ、文学がいかに価値あるものであるかを説く。
☆お薦めサイト
http://www.salon1999.com/weekly/interview960617.html
インタビュー
http://www.salon1999.com/08/departments/litchat.html
インタビュー
http://www.sjsu.edu/depts/jwss.old/possession/
『抱擁』に関する注釈の
ほか、全作品・論文リストも。
http://www.uwec.edu/Academic/English/Projects/VonHaden/byatt.htm
UWEC 大学のサイト。バイアット関連のリンク集が充実。
http://www.stg.brown.edu/projects/hypertext/landow/post/uk/byatt/
byattov.html ブラウン大学のサイト。
http://www.cis.upenn.edu/~bhatt/byatt.html
個人作成のリンク集
◆バイアット公式ページあり。著作紹介のほか、本人によるエッセイも。2000年は、3月8日にロンドンのアイリッシュ・クラブでティボール・フィッシャー他とパネルディスカッション「現代文学は生き残れるか?」を開催予定(→バイアット近況)。
☆研究書、論文
佐藤宏子・川本静子編『母と息子』(研究社出版,
1992.3 現代英語圏女性作 家短編集 ; 第4巻)
現代女性作家研究会 窪田憲子編『イギリス女性作家の半世紀2 60年代・女が壊す』(勁草書房、1999年)第9章 若き芸術家同士の葛藤〜アントニア・スーザン・バイアット『ゲーム』岡村直美
現代女性作家研究会 宮澤邦子編『イギリス女性作家の半世紀5 90年代・女が拓く』(勁草書房、2000年)第1章 甦る女の物語/歴史〜A・S・バイアット『抱擁』窪田憲子
☆AV資料
BBC作家対談シリーズビデオ「バイアット×マードック」ほか
映画 "Angels and Insects"(監督:Philip
haas 出演:Mark Rylance, Patsy Kensit, Kristin Scott
Thomas, Jeremy Kemp ほか、1996年)
☆参考書
大平章ほか編著『現代の英米作家100人』(鷹書房弓プレス)
久守和子ほか編著『英米女性作家−たのしく読める−作品ガイド120』(ミネルヴァ書房)
◆『抱擁』メモ
ヴィクトリア朝の詩文のよくできたおびただしいパロディが織りなす狂気めいた引用のあわいに推理小説の構造が浮かび上がってくる。テクストにかかわるあらゆる文学技法を結集し超マリエリスム的な力わざ。われわれのテクスト世紀末が一世紀前のテクスト世紀末に対してした最もクレヴァーな理解(中世の「末」に対する『薔薇の名前』の関係?)。そしてそのバイヤットがさかんに引き合いに出すヴィクトリア朝細密詩人テニソンについて、ジェラード・ジョセフの『テニソンとテクスト』(1992)が織り物/言語[テクスト]の二重の含意をアクロバティックに離合させて、まさに解き難くエレガントな緻密批評の鑑のような仕事をしてくれている。(高山宏『ブック・カーニヴァル』、自由国民社、1995年)
まず普通「小説」と訳される英語は「ノヴェル」(novel)である。(中略)ところでこのもとの「ノヴェル」という言葉だが、これはイタリア語の「ノヴェラ」(novella)に由来する。そして「ノヴェラ」とは「新しいもの」の意で、ニュースとか読み物を刺す。だからボッカチオの『デカメロン』なども「ノヴェラ」だった。「ノヴェラ」に由来する「ノヴェル」は、したがって「新しい読み物」ということになるが、ではどういう意味で「新しい」のか。
(中略)次に「ロマンス」。これも意味範囲の広い言葉だ。まずなじみ深いところでは、男女の恋を表すときに使う。「テニス・コートが育てたロマンス」なんていうのがある。続いて「ハーレクイン・ロマンス」というやつ。御存知の通りの小説のシリーズ名だが、この意味での「ロマンス」はもともと由緒のある使い方だった。つまり中世の『トリスタンとイズーの物語』や騎士道物語群を「ロマンス」と呼んだのであり、ここからフランス語、ドイツ語の「ロマン」(roman)が生まれて「小説」を表す言葉となっている。一時はやった「ヌーヴォー・ロマン」(新しい小説。プロットらしいプロットのない小説)、「ビルトウングスロマン」(教養小説。ゲーテの『ウィルヘルム・マイスター』のように、主人公の魂の成長を描く小説)を思い出す向きもあるだろう。ただし英語で「ロマンス」というと、「ノヴェル」に対して「現実離れした荒唐無稽な話」という意味合いで使われることが多い(「ハーレクイン・ロマンス」はなるほど空想的である)。
(中略)小説はどのような意味で新しい物語だったのか。結論から言えば、「ロマンス」のような非現実的な理想化された世界を描くのではなく、われわれ一般の人間が生きている社会の姿を写実的に描いた点にその新しさがあったと言えるだろうか。(中略)巷のできごとを題材に、できるだけ現実に即した書き方で(人間の性格や心理もできるだけ現実味豊かに描く)表現したもの、それが小説ということになるだろう。(小林章夫『愛すべきイギリス小説』、丸善ライブラリー、1992年)
※バイアットは『抱擁』に副題として「ロマンス」をつけている。この作品は「ノヴェラ」ではなく「ロマンス」なのだと言い切っている。やはり実験的な性格の強い小説だったのだろうか。
作家が自分自身を二分することで小説を書くといふ方法がある。(中略)彼女の『抱擁』の場合は非常にこみいてゐて、自分のなかの小説家的要素を十九世紀の男女の詩人たちに、自分のなかの学者的要素を現代の男女の学者たちにした。二分したあげくが数人になるわけである。(丸谷才一・和田誠『女の小説』光文社、1998年)
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