◆10月31日(金)
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バスを待つ買い物帰り、ホビーホース(hobby
horse)を見かけた。リーダーズを引くと「竹馬」とあるが、こういう郷土ものは百聞は一見にしかず。棒の先に馬の頭がついていて、子どもが跨(またが)って「お馬さんごっこ」をする玩具である。バイアットの小説で読んでから、興味をもっていた。甥っ子に買って帰りたい! S(英)に「どこで買えるの?」と訊くと、うーん、と頭をかかえた。昔のおもちゃなので、最近ではあまり売っていないそうだ。アンティークショップにはもちろんあるだろうが、高価で子どもには触らせられないだろう、という。「トイザらス」にはあるかもしれない、ほかに思いつくのはロンドンのHamleys(リージェント・ストリートそば)。ここは5階建ての玩具店で、クリスマスシーズンのごった返しは一見の価値あり、とのこと。ロンドン、一度行かなくちゃ。 |
ハロウィンだが、こちらの騒ぎは日本と同程度。スーパーのプロモーションコーナーにオレンジ色のかぼちゃや吸血鬼のお面などがちょこちょこっと並ぶくらいのかわいいものだ。きっとアメリカ人が住んでいるのだろう、寮の一部でキッチンにハロウィン装飾を施しているところもある。面白いのは「クモの巣」で、古い館を表すのだろうが、あまり美しいとは思わない。今週はhalf-term(学期中の中間休暇)なので、町は子どもたちであふれている。
来年1月のクール、上戸彩で『エースをねらえ!』とな。笑っちゃうほどぴったり。うう、宗方コーチは誰がやるんだ。そして、お蝶夫人は。
春学期の登録が始まった。履修便覧を真剣にめくって、第2希望までを記入。今期は幸運にも2つとも第1希望に入れたが、はてさて、どうなることやら。落ち着いたら文献集めにかからなくては。
小説ゼミの Week 5。今日からサミュエル・ベケット、今日は1929年、『フィネガンズ・ウェイク』がまだ"the
Work in Progress"(進行中の作品)として雑誌に連載されていた頃にベケットが書いたジョイス礼賛の論文と、ベケットの短編"Dante
and the Lobster"を読んだ。帰国してからもう一度ゆっくり読み直したい。『フィネガンズ・ウェイク』を1ページだけ読んでみた。二度と手に取ることはないかもしれない……。
夜、M(日)を招いて夕食。「たらこスパゲティしませう」と誘っておきながら、昨日届いた「錦」(カリフォルニア米、5kg、£8.70、1,740円)がおいしくて、ご飯に変更。すまん。エビと野菜(玉葱、南瓜、パプリカ、椎茸、人参)の酢豚風、味噌汁、フルーツ。おもたせのトマトとサラダ。ジントニック。日本人には南瓜がウケる。K(露)がやって来た。また生の食パンにジャムを塗って齧っている。許せない。ジントニックを勧め、サラダやフルーツもおすそ分け。もらえばちゃんと食べるんだな。なんだかんだとしゃべっていると、K(日)がやって来たので、飲み直し。トマト+モッツァレラ+バジルをご馳走になる。今夜は嘘のように静かだ。
S(中)が「ハロウィンのケーキを焼いたよ〜」と連絡をくれたので、彼女のフラットまで取りに。いい夜だ。大学構内のパブでパーティがあったらしく、仮装した学生の姿がちらほら。花火も上がっている。彼女の焼いたケーキは蒸しパン風。サンキュ、夜食にするよ。
◆10月30日(木)
| 日本のHPで「現在の気温は19℃」なんて文字を見ると、あったかくていいなあ、と思う。今日の最高気温は6℃。東京ともだいぶ差がついてきた。だんだん出不精になってきている。図書館には本を借りに行くだけ。部屋で勉強することが多くなった。お蔭で風邪も引かず、体調はいい。 ここでは、木々の葉の落ち方が面白い。1本ずつ順番に落ちていくのだ。まずある木が紅葉して、数日間でざーっと葉が落ち、丸坊主になってから、今度は隣の木が紅葉する、という感じ。 |
あまり外に出ないのもと思い、午前中、散歩がてら町へ買い物に。明日、明後日、来る予定の友人たちはベジタリアンなので、エビとスモークトサーモンを買う。生しいたけとコリアンダー。みかん(Clementines)。お昼ごはんにスモークトサーモンのタリアテッレ(tagliatelle)を試してみた。んー、生のまま混ぜるより、火を入れたほうがよさそうだ。ニンニクも使いたい。パスタは全般に安いが、タリアテッレは特に安くて、500gで170円くらい。フェットチーネ(fettuccine)とどう違うのかと悩み、調べてみた。タリアテッレのほうがやや幅が広い、とある。へえ。
修理の人が来て、ヒーターのストッパーをはずしてくれた。いいぞ、これで30℃までOKだ。
午後、S(英)が部屋に遊びに来た。月曜日に書いたエッセイを見てもらう。感謝。その後、『ユリシーズ』ほかの文学よもやま話を2時間ほど。
◆10月29日(水)
| チュートリアルを待つあいだ、研究室の前で。ジョージ・エリオットの顔が目に入る。ジョージ・エリオット協会が論文を募集しているのだ。そういえば、以前、日本でこの協会に入っていたことがある。今はとても余裕がない。 ほんの少し前、日本でネイティヴの教官のチュートリアルを受けるときは、けっこうドキドキしながら待ったものだった。英語でどう表現すべきか必死でシャドープレイしていた。あの頃の自分を思うと笑ってしまう。こっちに来たら、とにもかくにも英語で話すしかない。 |
ダイド『Life For Rent』、アルバムチャート4週連続1位。
夏まっ盛りの8月。イギリスに来て3日目の晩、デートに誘いに来た男の子が言った。"I
have to work, but I can afford a couple of hours to go
out..." ワーク? バイトしてるのかしら、と間の抜けたことを思ったのが今ではおかしい。勉強は
work
なのよね。最近は自分でもよく使う。「勉強しなくちゃいけないけど、でもちょっとくらいなら……」。英会話学校でも、こういうフレーズを教えればいいのに(教えてる?)。enjoy、という単語も最初はピンと来なかった。"Are
you enjoying your study?" "Enjoy your reading!"
……勉強、頑張ってる?みたいな。
気がつくと何も考えずに口から出ている言葉がいくつかある。"Are
you sure?"
(コーヒーいかが?)本当にいらないの? "I
have no idea." わかんない。"It's very kind of
you." あら、うれし。"Will you do me a
favor?" 頼まれてくれる? "Nice to talk to
you." 話せて楽しかったわ。こういうの、中学の英会話の授業で習いたかった。いやきっと、習ってもすぐに忘れていたんだろう。"Anyway,
..."と"Actually, ..."は1時間に一度は使っている気がする。skip、という単語も便利。"I
skipped my lunch." 昼食ヌキなの。"I had to skip
the last lesson." 先週は休んだのよ。"Take
time." これは特に教授からよく言われる。ゆっくりおやんなさい、っていう感じかな。"For
the first time in my life ..." こんなの初めて! こっちって、そんなに新鮮なことばかりなんだろうか。毎日使ってるぞ。
朝から雨模様。部屋でゼミの予習をしていると、クリーナーのウェンディが水周りの掃除にやってきた。「先週、見かけなかったけど?」 身体の調子が悪かったのだそうだ。1月末で引退するという。いい人なのに、残念。部屋のヒーターについて相談。温度調節のところにストッパーがついていて、24℃以上あげられないようになっている。今はいいが、炬燵もストーブもないので、冬になったらもう少し温かくしたい。誰か見に来るよう頼んでくれるそうだ。期待。ところで、クリスマスは12日間、クリーナーが来ないらしい。うへえ、survive
できるだろうか。
昼食はS(英)と待ち合わせて、センズベリーセンター(大学構内にある美術館)のカフェへ。ソファーに座ってゆったりおしゃべり。
伝記ゼミの Week 5。今日のテーマは"Intimacy"、取り上げた題材はメアリ・ウルストンクラフト。今週は課題テキストがすべて読了できたので、元気よくゼミ室に向かった。最初から3分の1くらいまではディスカッションの内容もよくわかってほくほくだったが、ゴドウィンのメモワールの第8章について討論していたときに、話題が飛び、ついて行けなくなった。みんな何を話しているんだろう、ときょろきょろしていると、タイミング悪く「あなたはどう思う?」と教授に訊かれ、さらにパニックに。ウルストンクラフトがイムレイとの経験を書いた原稿をゴドウィンが「コメディ」と呼び、彼女が亡くなったときに燃やしたことについて、その意図を話し合っていたのだった(後刻、判明)。後はわけがわからず、今週も涙目。それぞれのエッセイの朗読の後(相変わらず、クラスメイトの作文を耳で聞いても内容はさっぱりわからないのだが、みんなは私の作文の内容がわかり、いろいろ意見を言ってくれるのだった)、遅めの休憩。来週の課題について説明があり、さらにさらにパニくる。こんなのムリだ。
ゼミが終わる頃には外はすでに真っ暗。絶望的な思いにかられてホームズ教授の研究室を訪ねる。教授は私の話を聞き、まず今日の授業でつまづいた点について考えてみましょう、と問題の箇所を読むことから始めた。そのとき話されていたのは、I
judged it most respefctful to her memory to commit it to the
flames. という一文で、授業中にされた質問は"For
what reason do you think he burnt her piece?"だった。こうして文字にすると本当にバカバカしいのだが、into
the flame と誰かが言い出したのを私は frame、フレーム? 何だろう、と思い、わけわかめなうちに質問されて、バーント???と混乱したのだった。これは
burn の過去形をどう言うかの問題ではなく、flame
と frame のL/Rの問題でもなく、週300ページのリーディングノルマをこなすなかで、この一文が討論で取り上げられそうだと見抜けなかったことが問題なのだ。
来週の Week 6
はリーディング・ウィークといって、1週間休講になる。たいていは2,000語くらいの中間エッセイが課され、休みと言ってもサボれるわけではなく、篭って書くことになる。伝記ゼミでもエッセイの題目が発表になった。〆切は10日(月)で、内容は伝記の目的、人物を知る方法、書く方法について、これまでゼミで取り上げた伝記作家たちの手法をもとに論じるというもの。さらに、「いい機会なので、5日は授業は休みにしないで、書評のプレゼンテーションをしましょう」と6冊のリストから好きな伝記を1冊選んで発表することになった。うげ。エッセイのほかに、プレゼンの準備もするの? 無理だ、ムリ。ユリシーズのエッセイの〆切だってあるんだし。……教授は、まず不安材料を取り除きましょう、プレゼンは無理ならできなくてもいいから、エッセイのほうに集中しなさいと言った。それから、エッセイの内容についても、プルターク、ジョンソン、ボズウェル、ゴドウィンの分析が難しければ、クレア・トマリンについて書いてもいいし、もしくはウルストンクラフトに絞ってもいいので、よく考えて月曜日までに返事をするように……ロンドレットでぐるぐる回る洗濯物を眺めながら、どうしようかと考える。
夏目漱石はつらかったろうなあ、と思ってみたり。
カウンタが65,000に。
◆10月28日(火)
| 朝焼け。友人が最近撮った写真を見て思った。空の色というのは、世界中どこでも同じなんだな。基本的には。 サマータイムが終わって1時間繰り下がったので、午前7時前にもう明るい。霜で真っ白な草むらの上を、ウサギがぴょんぴょん跳ね回っている。しもやけになったりしないんだろうか。 |
早朝から頭を切り替えて『ユリシーズ』。A
Roland Barthes Reader
を拾い読みしながら、「複数の意味」と「書き得るテクスト」に的を絞り、さらに分析する3つの章(本当は「挿話」と呼ぶべき)を選ぶ。
11.10から賢人教授のチュートリアル(のはずが、前からつかえていて、20分押した)。アウトラインを説明すると、方針についてはOKがもらえた。さらに、個々に取り上げる箇所について相談。第2章の「失望の橋」については、場所はOK。naive
reader と advanced reader の比較について、私が
advanced に考えていた点も教授にとっては naive
だとわかり、まる子ちゃんのように青ざめる。第10章については
the piece of paper の行方を辿る、第18章については終盤を10行くらい抜くとよい、たとえばボイランのアスコットのエピソードなどが適当なのでは、とアドバイスをもらった。もうひとつ、来月の発表に向けてナタリー・サロートについて読む必要がある文献についても訊く。ドアを開けると、待ち人は2人になっていた。すんまそん。
| 12.00 と4.00 の語学レッスンの合間に、寮に戻って慌しく夕食の下ごしらえ。お昼は新聞をめくりながら、ラーメン。駅前の中華料理店に座るおやじのようだ。国際面に田中真紀子。ずいぶん大きく載ったものだ。連日、ダイアナ妃のニュースが紙面をにぎわしている。執事の暴露本は昨日が発売日だったが、高級書店Waterstoneでもすでに3ポンドOFF。チュートリアルで教わった文献を探しに図書館へ。コピーを終え、ライティングの授業に駆け込む。ぎりぎりセーフ……だが、学生はさらに減って3人。気持ちはわかる。エッセイの〆切に向けて、みんな時間がないのだ。 |
夕食の約束にやってきたC(中)に、「ごめん、夕食には90分しか割けないの」なんて、失礼千万にもほどがある。チーズソースのペンネ、ほうれん草のポパイ炒め、豚肉と野菜の黒豆ソース炒め、南瓜、味噌汁。キッチンは貸切状態、さてはフラットメイトたちは今夜もお篭りでエッセイ書きだろうか。きれいに平らげて、二人ともお腹一杯。後片づけもして、きっちり90分。見送って、サロートの文献チェックを始める。途中、S(中)が「お願い、ちょっと見て」と1,500語のエッセイを送ってきたので、軽くチェックして送り返し、その後は『ユリシーズ』に戻る。
◆10月27日(月)
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ときどき、こんなのが窓を通り過ぎる。最初は企業の宣伝だと思っていたが、この前地元の新聞を見たら、「プレゼントに空の旅はいかが? 気球に乗って、大切な人の誕生日に最高の思い出を!」みたいな広告が載っていた。うわあ、乗るんだ、あれに。炎が地上からでも見えるけど、大丈夫なのかな。 |
3時起きで(体内時計が…)メアリ・ウルストンクラフト。午後1時すぎ、エッセイを提出し、新聞と郵便。15:30から作家先生によるライティングのtutorial。先週、出した作文が真っ赤になって(いや、ブルーのペンだが)返ってきた。感謝。
| センズベリーでこんなのを見つけた。ローマ字で「Kabocha」とある。日本の南瓜だ〜。だしで煮て、パーティのおもたせにしてみた。大好評。 バスに乗って、ゴールデントライアングル(学生下宿街)のI(日)宅でこじんまりしたパーティ。南瓜のほかに、ワインと栗を持っていく。以前、大学のカフェで紹介されたS(日)と、今夜がお初のK(日)、それに猫2匹。豚肉としいたけのバーベキュー、かぶの漬物、大根(わあ、もう出てるんだ)のステーキ、白菜のトリュフ炒め、玄米ご飯。いちごタルト。ドイツで手に入れたという日本酒が美味しい。映画の話とか、妙に趣味があって、楽しい夜だった。 |
◆10月26日(日)
| もうすぐポピーデー(今年は11月9日)。スーパーやペーパーショップに、募金運動の人が立ち始めた。その姿はまるで赤い羽根の共同募金。 |
朝8時、キッチンでスコティッシュ・パンケーキを温めていると、J(台)がやってきて言った。「1時間遅くなるのは今日からだった?」 わあ、忘れてたよ。サマータイムが終わり、日本との時差は8時間から9時間に戻ったのだ。時計の針を1時間遅らせる。得した1時間を有効活用して、『ER』。
終日、ウィリアム・ゴドウィン『メアリ・ウルストンクラフトの思い出』(Memoirs
of the Author of "The Rights of Woman")を読む。妻の死後半年で夫が出版した伝記。当時は非難の嵐で、一大紛争を呼んだ。『女性の権利の擁護』で有名な人権論者の赤裸々な過去(妻のいるスイス人画家との恋や、アメリカ人企業家との結婚、出産、自殺未遂)が含まれていたのだから、当然だ。もちろん、当時は彼女の日記も手紙も公表されていなかったわけで。ゴドウィンの文体は驚くほど冷静で客観的である反面、婦人解放運動の先駆者に対して「男は理性で考え、女は感性で考える」というような文章を突きつけるのは、妻の思想が理解できていなかったと思わざるを得ない。視覚的表現に乏しいことも残念。メアリがどんな顔をして、どんな服を着て、どんな話し方をしたのか、ちっとも伝わってこない。彼女は北欧、フランスほか様々な国を旅行したが、その風景も描写されない。
◆10月25日(土)
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今日もいい天気。今日こそはスーパーに行かなければ。新聞を買いに出たついでに足を伸ばし、えいやっとシティセンターまで。午前中に戻ってくれるつもりが、目標より1時間ほど遅れた。料理や買い物にかまけていては、勉強が進まない。レディングに留学している大学の先輩は、寮が賄いつきで、料理をしなくていいそうだ。ちょっと憧れない気がしなくもない。 一昨日あたりから、なんか寮のあちこちでポンポンと花火が上がってるなあ、ハロウィンにもガイフォークスにも早いぜ、と思っていたら、インドの正月なのだそうだ。明日が元日だそうで。ああ、インターナショナル。 |
クレア・トマリン『ジェイン・オースティン伝』(Claire
Tomalin, Jane Austen)を読み始める。トマリンは70歳の伝記作家で、これまでにオースティンのほか、キャサリン・マンスフィールド、メアリ・ウルストンクラフト、ディケンズと愛人、などを書いている。数々の文学賞を受賞。夫は作家のマイケル・フレインで、私はまだ読んだことがないが、年明けに夫婦揃ってウィットブレッド賞の候補に挙がって話題になった(妻の勝ち)。
現存しているオースティンの資料は少ないようだ。日記は残っていないし、手紙もかなりの量が処分され、いちばん古くて20歳のときのものだという。その分、周囲のエピソードが多い気がする。第1章を読み終えても、まだジェインに会えない。トマリンの描く女性はとても生き生きしていて魅力的だ。特に女性だけをわざと持ち上げて書いているのか、それとも埋もれがちな女性を拾い上げることに意義があるのか、まだわからない。オースティンは恐ろしく家族が多い家系で(それに同じ名前が何度も出てくるので)、巻末のツリーを何度もチェック。
これまで描かれた家族のなかで、特に印象的な女性が2人いる。一人はジェインの父親の祖母、つまり曾おばあちゃん。夫は借金を残して早死にし、7人の子どもを抱えて無一文。家財を売って借金の返済はしたが、気になるのは子どもたちの教育。そこで彼女が見つけた仕事先は、学校だった。学校に住み込んで、校長や寮生の世話をする。「孟母三遷」という言葉が頭に浮かんだ。彼女の信条は「財産を相続より、知性やはっきり自分の意見が言える表現力を身につけるほうが大事」(intelligence
and articulacy could count for more than an inherited fortune)。
もう一人は、ジェインの父親の姉、フィラデルフィア。両親に早世された彼女は、21歳でお婿さん探しのためインドに行くことを決意。マドラスに着いて半年後、倍の年齢の平凡な男と結婚。結婚8年目に女児エリザベス誕生(彼女は後にイライザと名前を変え、ジェインの兄と結婚する)。さて、どうやらエリザベスの父親は、フィラデルフィアの夫ではなく、事業の共同経営者でジェインと同世代のヘイスティングスらしい。どちらにしても、ジェインの兄が伯母さんと結婚したことに変わりはないな。イライザはジェインと深く関わることになるようだ。ジェイン・オースティンは一般に「平凡な人生を生きた」と考えられているが、イライザは対照的に自由奔放な生き方をしたそうで、トマリンは「エキゾチックな人、まるで極楽鳥。ジェインがよく茶化して書いたロマンスに出てきそうな人」(an
exotic, a bird of bright plumange with a story that might have
come from one of the romances Jane liked to mock)と表現している。
BBC2「The Big Read」を見る。「国民的愛読書トップ21」を毎週3作ずつ紹介するシリーズ。第1回の今夜は、オースティン『自負と偏見』、フィリップ・プルマン『ライラの冒険シリーズ』(His
Dark Materials)、セバスチャン・フォークス『よみがえる鳥の歌』(Birdsond)。プルマンがノリッジ生まれであることを知る。『自負と偏見』を紹介したのはインド系のミーラ・サイヤル(Meera
Syal)、作家にして女優という才媛。
◆10月24日(金)
| イギリスでは一日にすべての天気を経験できる――言い古されたことばだが、最近の天気はずっとその通り。晴れたと思ったら雨で、ぐっと気温が下がり、しばらくすると、また晴れ。図書館に行こうと思った途端、ざーっと雨がはじまると、やっぱり部屋でいいや、と思い直したり。コーヒーでも淹れよう。ふと見上げると、虹。 「虹が出てるよ!」 キッチンに行くとK(日)とM(台)がいたので、みんなで窓の外を眺めた。 |
4時起きで『ユリシーズ』第10章「Wandering
Rocks」。6時、空腹に耐え切れず。キッチンでこっそりお湯を沸かして、「懐中しるこ」。菓子職人の発明はすごいなあ。西日本方面に向かって感謝。
珍しく朝からご飯を炊いた。フリーズドライの「たけのこのおみそ汁」。激うま。日本人の技術はすごいなあ。「香りの中に古里が見える」なんて、パッケージの文字も泣かせる。和歌山の後輩が送ってくれた紀州の梅干と、焼き魚の代わりにキッパー。日本の朝ごはん。
フィクションの Week 4。今日は『ユリシーズ』の第10章「Wandering
Rocks」(19のエピソードが入っていて、同じ時間にいろいろな登場人物が街のあちこちで動き回る)と第17章「Ithaca」(Q&A方式)。でもって、10章の担当者は「体調が悪く準備ができなかった」そうで、代わりに教官からロラン・バルトの有名な論文「作家の死」を渡され、読んだ。フランスとイギリスでは小説や作家の置かれ方が違う、そのまま受け入れることはできない、というのがディスカッションの要旨。17章のほうは、発表者の報告に、教官がエンプソンを引き合いに出し、「小説のなかで何も起こらなかったのではなく、何が起こったのかを考えることが大事なのだ」と反論していた。
金曜の夜はみんな疲れている。新聞を読みながらご飯が炊けるのを待ち、送ってもらったレトルトの牛丼を温める。あろうことか、紅しょうがが入っていない。許せない〜。Y(日)が瓶詰めのガリを持っていたのを思い出し、冷蔵庫から拝借。台湾ガールズ3人が料理を作り出し、K(日)も疲れた顔を覗かせた。Y(日)もやってきて、「金曜の夜だし、ワインでも?」とモーゼルを開けてくれた。J(台)から「さつまいものジンジャースープ」をご馳走になる。意外なことに美味しかった。こっちのサツマイモは人参みたいだ。それぞれエッセイの〆切が近いので、早々に自分の部屋に退散。平和。
◆10月23日(木)
| 味噌汁オンパレード。ばんざーい! これから毎日、miso-soup 三昧するぞ。イギリスに来てから2ヶ月が経ったのに、お米はまだ2kgしか消費していない。あまりご飯を食べないのは、味噌汁を作らないからだ。味噌なんて、この辺りでは手に入らないもの。ところが、こちらのスープは粉末も缶詰も結構おいしい。そして、スープを選ぶと、主食はパンやパスタになりがち。でも当分は、白いご飯とおかずで行こう。EMSで送ってくれた友人に大感謝。 |
祖母の誕生日。数日前に送ったバースデーカード、届いたかな。
快晴。リーディングに追われているので、せっかくの天気だが今日は洗濯に行けないな、とキッチンの窓から空を見上げていたら……バシャン! 淹れていたコーヒードリッパーをひっくり返して、着ていたシャツが真っ黒に。これってもしや、フロイトのいう無意識な現実逃避では。ロンドリーでマシンに洗濯物をセットすると、所要時間33分。ポストルームで郵便をチェックしたり、ペーパーショップで新聞を買うなどの用事が済むと、後はロンドリーに戻って新聞を読みながら洗濯が終わるのを待つ。
新聞はどちらかといえば The Guardian
が好きだが、ここ数日は横恋慕して The Times
一辺倒。というのも、昨日スタートしたロンドン映画祭を後援している関係で、タイムズに楽しい記事が載るからだ。1面にメグ・ライアン、二コル・キッドマン、アンソニー・ホプキンス……などハリウッドスターの写真がどーんと載れば、そっちを買ってしまうのが人情。オープニングを飾ったメグ・ライアン主演『In
the Cut』は、ここでは来月14日から公開。ぜったい見に行くぞ。彼女が昔、アンソニー・エドワーズ(グリーン先生)とつき合っていたことを知る。そういえば、『トップガン』で夫婦を演じてたが、その頃の話だろうか。
大学では週2〜3本、映画が上映される。しょーもない映画が多い気がするが、たまにロードショー映画もあるので油断がならない。料金は£2.75(550円)。今夜の映画は見逃せない。ベルリン国際映画祭で賞を獲った話題の映画で、イギリスでも先月公開されたがスケジュールの都合がつかず残念に思っていたのだ。ドイツ映画なので、英語の字幕がつく点も重要。S(中)を誘う。
映画の前にうちで夕飯を食べていかない?というと、逆に招待された。で、午後7時、彼らのフラットに行くと、「これで何か作ってよ」と箱を渡された。――《ハウス・クリームシチュー》。「君が来るときのために見つけておいたんだ」 だから、どうやってこういう物を手に入れるんだ、あーたたちは。日本人の私ですら、入手できずにいたんだぞ。「肉ある? ジャガイモある? ニンジンある? 玉葱は?」 何でも揃ってるんだな、これが。で、日本のシチューの作り方講座。名料理人のY(中)が作ってくれた中華料理(牛肉と人参の炒め物、鶏肉のスティック、卵と葱の炒め物)を白いご飯でいただいているあいだに、シチューは煮えた。中国人4人、韓国人1人と私で、あっという間に売り切れ。――日本語で何て言うんだっけ? 「おーいしーい!」
『グッバイ、レーニン!』(Good-bye,
Lenin!)。1989年、ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツ。社会主義者で、心臓の弱い母親は、息子のアレックスが反社会主義のデモで警官に捕らえられるところを目撃し、心臓発作を起こす。昏睡状態のまま8ヶ月が経ち、母親が奇跡的に目を覚ましたとき、東西ドイツは劇的に変化していた。医者から「次に発作を起こしたら死ぬ」と言われ、アレックスは母親にショックを与えないよう、彼女の目の届く範囲だけ壁崩壊前のドイツの世界にしようと奮闘する。今はもう売られていない社会主義時代のピクルスやジュースを探したり、テレビには自作ビデオを流したり。見ているこっちは、お母さんにバレそうになる度にハラハラさせられる。時に滑稽で笑いを誘うが、どこか哀しい。ベルリンの壁崩壊のシーンやブランデンブルグ門の鐘の音などに改めて感動。いい映画だ。日本でも来春、恵比寿で上映されるらしい。おススメ。
◆10月22日(水)
| 日本からの荷物は水曜日に届くことが多い。山形のいもうとからEMS便が届いた。18日発送だから4日しかかかっていない。昨日、実家から届いたSAL便も5日しかかかっていなかった。速いが、それなりに料金もかかるわけで、申し訳ない。でも、でも、でも! 一番うれしかったのは、もちろん先月生まれたばかりの姪っ子の写真なのだが、そのほかに、いろいろ楽しみなものが入っていた。「たらこスパゲッティの素」、そう、これが食べたかった。さすがは4年間アメリカで暮らしただけあって、感心するほどよくわかっている。東京に置いてきた三谷の文庫本もヒット。内祝にオルゴール付の写真立てを送ってくれたが、曲は『らいおんハート』だった。心遣いに感謝。 |
このところ日本から友人・知人が美味しいものを送ってくれて、楽しい食生活になっている……が、昨日ネットで読んだ新聞記事「富山で給食にベニズワイガニ――小6が1匹ずつ堪能」には、しばし見とれてしまった。蟹なら日本を離れる前にさんざん食べてきたはず。帰ってからの楽しみも取っておかないと。
伝記ゼミの Week 4。今日のテーマは「逸話を組み立てる」で、ジェイムズ・ボズウェルの『サミュエル・ジョンソン伝』を読んだ。厚さ5センチのPBのうち、リーディングノルマは5箇所で合計約300ページだったのだが、3箇所しか読んでいけなかった。ボズウェルがジョンソンに出会った頃の話は比較的わかったが、ボズウェルと同世代の作家スレール夫人との関係などは読んでいかなかったので、わからず休憩時間にS(英)の助けを借りた。それでもわからないことだらけで、またもや涙目。わからないのは予習が不十分だからだと思うと、余計に情けなくなる。来週こそ。
ここ2日ばかりキッチンが静か。夕食の時間になっても台湾人のフラットメイトたちが料理を作りに来ないので、「平和ねえ」と日本人3人でゆっくり食事していたが、今日は反動のようにお友だちをたくさん連れてドンチャン。耳を押さえたくなるような喧騒をかいくぐって、どうにか調理。雑誌をめくりながら食べていると、K(露)登場。おお、生きてたか。でもって、夜だというのに生の食パンにジャムを塗ってムシャムシャやりだした。コップにオレンジジュース。ボルシチとか、作ったりしないんだろうか。私のグリルドチキンを勧めてみたが、いいという。Y(日)も料理を始め、またもやビールをご馳走になる。K(露)にも勧めてみると、グラスに1センチくらい飲んだ。
| 夜10時、BBC2で『The Office』。日本で評判を聞いて、楽しみにしていた。2001年に第1シリーズ、2002年に第2シリーズ、それぞれ6回ずつ放送されて、今やっているのは、第1シリーズの再放送。ゴールデンタイムに再放送、日本では考えられない。すでにDVDも発売されているのに。『The Office』はある製紙会社の支店を舞台にした30分のシットコム。オフィスはロンドンの西、スラウ(Slough)にあって、この支店はリストラ対象になっている。主な従業員は10人くらいで、メインはボスのデイヴィッドとリーダー格のガレス。 |
今夜は1-4の「Training」。最近仕事に幻滅しているスタッフに活を入れるため、外部から教育スタッフを呼んで一日研修(「研修のため席をはずしています。明日以降、かけ直します」と留守電メッセージを吹き込む社員たち)。顧客サービス向上のビデオを見たり、モチベーションをテーマにディスカッションしたり、チームワークを学ぶためのゲームをしたり……この辺りは日本企業の教育とほとんど変わらない。「究極の夢は?」というインストラクターの問いに、ガレスは「2人のレズビアンがからんでいるところを見てみたい……できれば、シスターがいいな」と答え、デイヴィッドは「昔、バンドのメンバーだったんだ」とギターを片手に歌いだす。並行して、ドーンとティムのエピソード。ティムはドーンが好きだが、彼女は別の社員と婚約してしまった。「バレンタインにカードをもらったの。『LEE LOVE DAWN, MARRIDGE?』とだけしか書いてなくて、ロマンチックと倹しさの融合に感動したわ」 ティムはやさしい兄貴役に徹して彼女の悩みを聞きながら、もしかしてまだチャンスは残っているかも……と迫るが、こっぴどくフラれておしまい。定番エピソードらしい。少しは笑えたが、もっと笑えるようになりたいので、アマゾンにDVDを注文。
◆10月21日(火)
| 授業の後、夕食をご馳走になりに、クラスメイトのC(中)のフラットへ。水に戻した大量のきくらげを刻んでいく。これで2人分。豚肉と一緒にニンニク・油・酢で炒めた。不思議な味がした。郷土料理なのだそうだ。ほかにもやしと春雨の炒め物。魚柄先生は「乾物は食べ過ぎるな」とおっしゃっていた気がするが。このフラットは13人が住んでいて、にぎやか。中国人がほとんどだが、イラン人やアフリカ人もいる。ほか学生と『時の流れに身をまかせ』を歌ったり、やはり友だちのところに遊びに来た知り合いの学生と話し込んだり。彼のルームメイトのガーナ人には4人の子どもがいるが、双子が2組だという。すごい確率だ。 |
ぶちっ。朝、部屋を出るとき、机から垂らしていたネットケーブルに足を引っ掛けて……気がつくとケーブルがちぎれていた。ショック。日本から持ってきた「世界最細の」(さいさい? さいほそ?)ケーブルは、あまりにも脆(もろ)かった。せっかく回復したネットに繋げないのでは元も子もないので、構内のITショップへ直行。3mのワンサイズしかなくて、£1.20(240円)。世界共通で本当によかった。
火曜日は英語研修センターのサポートプログラムを受けている。12時からの発音と、4時からのライティング。講師はどちらもプログラム責任者のAG(英)だが、彼女は容貌といい、話し方といい、『ER』のケリー・ウィバーそっくりなので心ひそかにケリーと呼んでいる。今日の発音は〔^〕(とんがり帽子のア)と〔a〕の違い。絵を見ながら発音する、という幼稚園のようなレッスンで、白鳥の絵に「スワン」と言ったら、「ノー、ノー、ノー。スウォンよ」と言われたのが今日のショックその1。「wanted
と発音してごらんなさい。同じ音だから」 doctor
は「ドクター」、college は「コレッジ」なのだ。
授業のあいだに、頭上で轟音。「コンコルドだわ」とケリー。ヒースロー近くの丘に行くと、コンコルドが着陸する様が眺められるのだそうで、それがどんなに美しい姿であるかを夢見るように語っていた。経費削減のため、コンコルドは今日がラストフライトなのだ。終日、イギリス中を飛び回ってファンに最後の挨拶をするらしい。斜陽の国、という言葉が頭に浮かんだ。
ライティング、ケリーは最初のレッスンでIELTS
6.5以下の学生を「あなたたちの面倒まで見切れないわ」とばっさばっさと切り落とし、12人くらいに絞ったのだが、3週目になってみると学生は6人しか来ない。「困ったわ。最低8人いないとクラスはつぶされてしまうのよ。来週はお友だちを連れて来てね」 そう言われても……。このクラスはそれぞれが書いている論文の進行状況を報告しながら、アドバイスを受ける、というワークショップ型。
アマゾンに注文していた『ザ・ホワイトハウス2』が届いた。日本での放送に追いつこうと、2話まで見る。過去のシーンが続いて、ジョシュはどうなったんだ〜と気をもたされたが、ジョシュとサムがバートレット大統領について行くことに決めるシーンはなかなか感動的だった。秘書のドナは私のお気に入り。キャンペーン中から陣営にいたらしい。CJの馴れ初めも面白かった。しっかし早口だな〜。英語のサブタイトルを読むのも必死(字幕なしでは絶対ムリ……)。
◆10月20日(月)
| 図書館3階、文学書のコーナー。ここの書架は1列おきに蛍光灯がついていて、用があるときに紐を引っ張って明かりをつける。蔵書は80万冊。本の貸し出しは circulation という。MAコースの学生は6週間、15冊まで。一般貸し出しは standard loan、短期貸し出しは short loan で、一日だったり半日だったりする。ローンなんて、お金を借りるみたいだ。バーコードの読み取り機がついている自動貸出機があるが、私の学生証はどういうわけか読み取ってくれないので、いつもカウンタで貸出手続きを受けている。 |
Dido(ダイド)のニューアルバム『Life For Rent』(全曲視聴)、全英ヒットチャートで3週連続の第1位。夏にシングル第1位を取った「White
Flag」もいい曲だが、私の一番の好みはタイトルチューンの「Life
For Rent」。今のところラジオでかかるのを楽しんでいるが、CDはすでにアマゾンのバスケットに入れてある。留学中にはやっていたCDを買って帰るのも、きっといい思い出になるんじゃないだろうか。彼女ももうすぐ来日するそうだ。
午後2時の〆切に仕方なく起きだし、エッセイ書き。内容はともかく、とりあえず提出。3時から30分間、ライティングの個人指導を受ける。講師は
Royal Literary Fund Fellow
からライティングの指導のために派遣されている先生で、ペンギンブックスに3冊の小説が入っている作家。彼はこの大学の創作科でMAを取得した後、学生寮のクリーナーをしながら小説を書いたそうだ。物腰が柔らかく親切。この個人指導を受けている学生は85〜90%がネイティヴだそうだ。最近書いたエッセイを渡す。来週、それについて指導を受ける予定。
夕方、FTRAN(ニフティ)のチャット潜入に成功。約1ヶ月ぶりに繋がった。嬉しい。急に食べたくなって、夜はお好み焼き。スーパーの小麦粉コーナーには、strong
flour、self-raising flour、plain flour
の3種類が置いてあった。どれを買ったらよいのかわからず、とりあえず無難そうな
plain にしてみた。500g、たったの20p(40円)。卵、白菜、葱、桜えび、かつお節。紅しょうががあったら最高なのだが。とんかつソース。
◆10月19日(日)
| Mary is my sister. She makes her bed every morning. ――朝、ベッドを整えるたびに中1の英語の教科書にあった例文を思い出す。そう、ベッドメイキングってこういうことよね。シーツとシーツの間に寝るのに一度慣れてしまうと、これでなくては眠れない。日本で使っていたシーツは裏表があって、こんな使い方をするには不便。帰国したらホテル仕様のを探そう。 |
アインシュタインは毎日10時間、翌日特に難しい問題を考えなければいけないときはそれ以上、寝ていたそうだ。The Times でそんな記事を読んだから、というわけでもないが、新しい枕が気持ちよく、ベッドから出られず。『ER』の第2シーズンを見終えてしまう。スランプ。
◆10月18日(土)
| ゼミは午後2時から5時、3時間の長丁場。英語のディスカッションを集中して聴いているので、精根尽き果てる。休憩時間にそそくさとカフェで自販機のコーヒー(60p、120円)を買い求め、一口すする。おーいしーい! と思わず口をついた言葉に、慎吾くんを思い出した。ビストロは今も営業しているだろうか。 |
ネットの調子がよく、約1ヶ月ぶりにBBCラジオが聴けた。FTPも1度か2度でhtmlファイルのアップができる。MSNのチャットを試してみると、短時間だが友人と話ができた。RTCにふたたび行ける日も近いかも。
午前中、図書館でボズウェルについての評論を読んだ後、オフキャンパスに住むC(新)の下宿で同居人の学生L(伯)と一緒にお茶してから、シティセンターへ。WHスミスでPBを2冊。セインズベリーで食料の仕入れ。枕を買った。さらによく眠れそうだ。
◆10月17日(金)
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栗拾い。「Congregation Hall の前に栗が落ちてるよ!」 フラットメイトの台湾人の言葉に、早速いってみた。うわー、たくさん。でもって、通り過ぎる学生たちは見向きもしない。と、近所から老夫婦が袋をもって拾いに来た。へえ、イギリス人でも食べる人いるんだ。「私はスペイン人なの。イギリス人はめんどくさがりなのよね。美味しいのに」 巨大な栗の木で、ときどき落ちてくる毬栗(いがぐり)が、剣山のように危険だった。 |
最近の気温は13〜15℃くらい。あまり寒さを感じない。こちらの気候に身体が順応してきたらしい。climatize(新しい風土に慣れる)というそうだ。
fiction の Week 3。よーし、今回はバッチリ予習もしたし、がんばって発言するぞ……と意気込んでゼミ室へ。教官が出張で弟子の講師2人がピンチヒッター。今日は2章と4章だが、時間を過ぎても2章の発表者が現れない。うへえ、この国でもこんなことがまかり通るのか。仕方なく、講師がトピックを振り、みんなでディスカッション。よく読んでいっただけあって、とりあえず話は見えた……が、ブレヒトの演劇論に入った辺りからわけわかめ。なんでここでブレヒトが出てくるんだ? 休憩の後、さらに事態は悪化。何の話をしているのかまったくわからず、頭にたくさん?マークを抱える。しばらくして気づいた。後半の発表箇所は「Cyclops」(12章)なのに、「Calypso」(4章)を予習してきたのだった……撃沈。
ちんぷんかんぷんのルカーチ。こりゃダメだ、邦訳が欲しい……検索すると、東京のK市図書館に蔵書があった。K市には友人が住んでいる。ここはひとつ、コピーをお願いしてしまおう。友人、ご快諾。早速pdf
ファイルにしてアーカイヴのURLを送ってくれた(この世にPDFライターというものがあることを始めて知った)。大感謝。さて、回復しつつあるとはいえ、まだ劣悪な大学のサーバー。ファイルの保存もカメの歩み。がんばれ〜と手に汗握りながら(大げさ)見守るが、途中で力尽きてしまう。図書館に行くたびにトライ。FDに落としたものしか印刷できないが、pdfファイルは2つ(4ページ)でディスクがいっぱい。ぜーぜー。明日、もう一度トライしよう。ここは本当に先進国なのか。ADSLで24時間つなぎっぱだった実家が懐かしい。
| Exhausted。今日はもう動けないー、とぼやきながら冷凍の Cottage Pie を温めて、ワイン。ベッドに入ったところでM(日)から電話。今から遊びに行っていい? いいよ! この機会に日本から送られてきた謎の中国茶にトライしよう。木の実、フルーツ、氷砂糖、それに花が入っている八宝茶。奇怪。説明書きを見ても、中国語で書かれているので読めない。ん? 中国語? ここには台湾人がわんさかいるじゃないか。……というわけで、フラットメイトに読んでもらった。「わあ、すごいの持ってるのね。このお茶はね、とっても身体にいいのよ」 甘くて不思議な味だった。深夜までくっちゃべって、憂さ晴らし。ハングオーバーしなかったのは、もしやこのお茶のおかげ? |
◆10月16日(木)
| 秋の夕日に照る山もみじ――今日も一日、図書館でジョイスと過ごした。本から目を離し、3階のお気に入りキャレルから赤く染まる木々を眺める。そろそろ帰って夕飯の支度をしようか。 2章「ネスター」でスティーヴンが生徒に言う「失意の橋」(a disappointed bridge)の意味について考える。去年、『若き芸術家の肖像』を読んでおいてよかった。 |
今日はやけにネットの調子がいい。このまま回復してくれるのだったらいいが。
夜、急に食べたくなって日本から持ってきた「釜飯の素」で鶏ご飯。期待した割には出来が今ひとつ。イタリア米で炊いたのが敗因らしい。偶然、K(日)も今夜は味ご飯で(彼女のは鶏・松茸だった)、気の毒がって分けてくれた。うむう、日本米だとこんなに美味しいのね。中国の有人宇宙飛行成功を伝える新聞記事を見ながら、台湾・中国・日本人で喧々諤々(けんけんがくがく)。こういう話題になると、愛国的発言になるのは仕方がない。Mainland(中国本土)では快挙に国をあげての大騒ぎだそうだ。で、キッチンでわいわいやっていると、……ついにロシア人の彼女が顔を出した。待ってました、ばんざい。はじめまして。
彼女、K(露)は「犬の餌入れみたいな」(K(日))タッパーにオートミールを入れ、ミルクを注いだ。プラスチックの小さなスプーンで食べはじめる。ひええ、3食オートミールなのか、あーたは。菜食主義なの?、と訊いてみたが、違うという。だったら、これ食べてみない? みんな、少しずつ自分の料理を分け与え出した。なーんだ、何でも食べるんじゃないか。棚にシリアルしか入ってないから心配したよ。よろしくね。
◆10月15日(水)
| 幅約4メートル掲示ボードも、部屋で気に入っていることのひとつ。甥っ子の写真、講演会や映画のチラシ、ゼミの課題、時間割、友人の連絡先、……これだけ広ければ、何でも貼れる。真ん中にでんと構えているのは、Academic Planner と呼ばれる年間スケジュール表で、8月に始まり、来年7月で終わる。学期の始まりと終わり、エッセイの〆切など、主に研究の計画のために使われるべきカレンダーだが、もちろんパーティやイベントの予定も。昨日、ホームズ教授から朝晩練習するように言われた例文も大きく書き写してはった。恥ずかしながら、「イギリス歴代国王表」なんてのも張ってある。……すぐに忘れてしまうので。 |
月ごとのカレンダーを探したが見つからず、不自由している――とぼやいていたら、友人が送ってくれた。ありがたい! 曜日ごとのマス目になっているカレンダーが常に目の届く範囲にあることは、とても、とても、大事なのだ。small
packet で届いたのだが、中身はカレンダーだけではなかった。まったく、大阪人というのは。それは、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような楽しさだった。何が入っていたかは、……ひみつ。感謝。
伝記ゼミの Week 3。テーマは"Sympathy &
Empathy"で、サミュエル・ジョンソンほか18世紀の伝記作家の作品を読んだ。頑張って準備をしていったにもかかわらず、今日も惨敗。討論の要点がつかめず、ほとんど涙目。授業が終わり、消耗し切ってしょんぼりしていると、C(新)とM(英)がお茶に誘ってくれた。「ディスカッションの内容なんてぜんぶわからなくたっていいのよ。大事なのはテキストを読んで、テーマについて考えて、自分の意見を書くこと。わからないことがあったら、いつでも質問しなさいよ、メールでも電話でも」 授業の内容について、二、三、質問する。なるほど。ホームズ教授からも「あとで研究室に寄りなさい」と言われていたので、さらに深まった質問をする。そうか、そういうことだったんだ、と個々の討論や例証が初めてテーマと結びついた。嬉しい。
ゼミの流れで学内のパブ。英語圏の外で暮らした経験がある人は、non-nativeに思いやりを示してくれる。彼らは世界にはいろいろな言語があること、言葉が通じないつらさをよく知っているのだ。親切にしてくれるクラスメイトは、海外経験のある人ばかり。C(新)は英語が母国語でも外国人だし、M(英)は冬でも北欧や東欧で泳ぐ趣味をもっている。S(英)はタイやアラブで英語を教えていた。「わかった? 今のはこういうことよ……」 気を遣って、ときどき話の要点をフォローしてくれる。感謝。
| 最後までパブに残った5人で食事に出かけた。Golden Triangle と呼ばれる下宿街のパブ「Mad Goose」。メニューボードの Tempura の文字が気になり、注文。たまご麺の上に豚肉の天ぷら(というより竜田揚げ)にチリソースふうの甘酢をからめたものが載っている。中華料理屋さんで出てきそうな一品。たいへん美味。ハーフパイントのアップルサイダーをつけて、£8.30(1,630円)。リチャード・ドーキンスの講演会の話から、延々と遺伝子の話が続いている。時計を見ると、10時半を回っている。タフだなあ。会話は半分しかわからない上に、そろそろ耳が英語を受けつけなくなってきた。ねえ、もう帰ろうよ。 |
行きも帰りも送ってくれたD(英)は、オックスフォードの病院に勤める、現役のお医者さん。どうして英文科のMAコースなんて通ってるの? 「伝記を書いてみたくなってね」 彼はこれから3時間運転してオックスフォードに帰るのだ。本当にタフ。
◆10月14日(火)
| 友人からお餞別にもらった七味唐辛子。思いついて白菜に重しを載せ、一夜漬けにしてみた。ばっちぐー。日本の味だ。感謝。 |
学内の情報はHPで見られるほか、情報誌も2種類発行されていて、「ラビット」が毎週、「コンクリート」が隔週、どちらもユニオン(学生組合)の発行。寮にも配達してくれるので、食事どきに楽しんでいる。教授の昔話が載っていたり、「ヒュー・グラントは昔ここの美術史コースを受験して落ちた」とか(彼は「あんなコンクリートの箱みたいなセンスのない校舎で勉強しなくてすんでよかった」と今では語っているという)、けっこう面白い。「ラビット」は「10
things to do this week」が楽しみ。たとえば今週だと、「Make
lots and lots of noise / Drink Tequila / Don't encourage stray
moggies / Curse yourself for not getting a Darkness ticket / ...」。「でかい音、出そうぜ」は、金曜日にキャンパス内で行われる大規模デモのこと。トニー・ブレアの
top up fees
案に対するデモで、学費値上げ反対はどこも同じ。「テキーラいかが?」は、メキシコ協会のドリンクパーティの案内。「のら猫をもてはやすな」には補足説明がついている。「最近キットくんという名の黒猫がブルーベル・ロードの縄張りからキャンパス内に出張してきて、餌をおねだりしている。彼をいい気にさせると、そのうちとんでもないことになるぞ…」。のどかだ。「ダークネスのチケットを手に入れなかった自分を呪え」 なはは。
12時と4時の English lesson
の合間に、3時から伝記ゼミのホームズ教授のtutorial。教授は私のことをとても心配してくださっている。ゼミで
non-native
は私ひとりだからだ。これまでに提出した3つのエッセイを見ながら、grammatical
errors はあるものの、まあリーディングとライティングは問題ない、やはり当面の課題はディスカッションに入ることだと分析される。授業中に発表する討論のテーマを前日にメモで知らせるから、短いコメントを用意してきなさい、それから理解度をチェックするために、毎回のノートのコピーを提出しなさい(ひえええ)。伝記ゼミの長期的な勉強の進め方についても、アドバイスをくれた。クレア・トマリンの書いたジェイン・オースティン、キャサリン・マンスフィールド、メアリ・ウルストンクラフトの3つの評伝を読んだ上で、ウィリアム・ゴドウィンのメモワールを読み、天国のウルストンクラフトになったつもりで夫へ感想文をしたためた手紙を書きなさい。それから、発音について、「朝晩、唱えるように」と例文を考えてくれた。L/Rの発音については、「気が違ったと人に思われてもいいから」常に「La-la-la...」を繰り返すように、それからWについては、「バースデーケーキのロウソクを吹き消す」練習をするように。例文は、「Lady
Macbeth always flies Club Class」と「Wonderful Virginia Woolf」。さらに、Royal
Literary Fund Fellow
の講師に連絡を取って、定期的にライティングのレッスンを受けなさい、とのアドバイスも。至れり尽くせり。1時間もおつき合いくださった。もちろん、先生はみんながみんな、こんなに面倒見がいいわけではないと思う。ラッキーだ。
英語研修のクラスメイト、C(中)が遊びに来た。夕食はビーフカレー、ハムサラダ、フルーツ。彼女はマネジメントコースだが、クラスのなんと9割が中国人だそうで、つまり英語を話すのは先生だけという状態。彼女はイギリス人ばかりのクラスにいる私をとても羨ましがる。たしかに英語に接する機会が多いのは幸せなことだ……でも、大変なんだぞ。毎週ひそかに楽しみにしている新聞のクイズのことを教えると、彼女も数学が好きらしく、乗り気。気に入ってくれたのはこんな問題(2つとも、時間はかかったが自力で正解を出した。みあげたものだ。)
1. Removing 5 beans from the jar of beans leaves you with a
fifth as many as adding 55 would give you. Now how many beans is
that?
2. If a hen and a half lay an egg and a half in a day and a
half, how many hens do you need to lay 4 times 49 eggs in one and
a half fortnights?
(答えは、1. 20、2. 14。)
| ブッカー賞(The Man Booker Prize 2003)の発表&授賞式。ノミネートされた作家が編集者など関係者とともに丸テーブルを囲む。まるで歌謡大賞みたいだ。去年から大英博物館で行われるようになった。BBC2で生中継。以前からずっと見たかった。嬉しい。 |
ショートリストの候補者は2年前に一度受賞しているマーガレット・アトウッド(左から2番目の写真)を含む6人。で、栄冠を勝ち取ったのは、DBCピエール(3番目。うまく撮れなかったが、右端は発表直後に女性から祝福のキスをされているところ)。ノーマークだったもので、11日のThe Guardian で初めて知ったのだが、彼の本名は Peter Finlay で、DBCは Dirty but Clean の略、という冗談のようなペンネームなのだ。ピエールは42歳、オーストラリア生まれ。作家の前の職業は、メキシコで悪行の限りを尽くしたならず者。酒・麻薬に溺れ、泣かした女は数知れず。詐欺・密輸、なんでもござれ……だった彼が、3年前にアイルランドに渡り、改心した。更正する意志が固いことを周囲に認めてもらうため「汚いやつ」から「きれいなやつ」に変わったという自虐的なペンネームをつけて、小説を書き始めた。できた作品が受賞した"Vernon God Little"で、テキサス州で15歳の男の子が高校の大虐殺に巻き込まれる。自伝的小説だが、主人公には作者が直面した借金の取立てより厳しい、死刑という現実が待っている(そうだ)。候補リストに名前が載ったときから、債権者たちがピエールの元に列をなし、手始めに5万ポンドの賞金から返済に充てられるという……。こんなサクセスストーリーをもつ作家なら、世間が興味をもつのは必定――私も、その一人だ。彼の文体はとてもアメリカっぽいそうだ。この人、本当にブッカーの看板を背負って立つ大作家になるんだろうか、という気はしなくもないが、この本はすでにPGウッドハウス賞を受賞、ガーディアン処女文学賞の候補にも上っている。
◆10月13日(月)イギリスに来て2ヶ月。
| 寮は4階建てで、私が住んでいるのは 2 Floor、つまり3階。この寮はコの字型をしていて、私のフラットは右端にある。全体に白っぽい建物が両端だけ黄色になっていて、写真では右端の木の上に見える窓が私たちのキッチン。食事のときに見下ろす湖の景色は最高。 |
この大学は開発学(Development Studies)ではオックスブリッジを凌いで英国1、2位を争うトップ校。(因みに、英文科の評価が高いのは創作コースのお蔭だ。) 日本人留学生の多くは開発で、略称でDEVと呼んでいる。――研究は何を? 「デブです」 という会話が最初は奇異に聞こえた。開発学部の開発コースなら「デブデブ」で、さらに笑える。この開発学は、私が学部時代に勉強していた国際関係学に非常に近い。周囲にDEVが多いので、自然と関心もよみがえる。「クリックで救える命がある」というサイトを教えてもらい、早速トップページにバナーを貼った。1日1クリックでスポンサー企業から1円、年間たった365円の寄付だが、それでも多くの人が賛同すれば力になるし、自分にとっても勉強の機会になる。
正午〆切のエッセイを午後1時すぎに提出し(週を追うごとに遅くなっている気がする。いかんな)、晩ご飯のサンドイッチを作ってから図書館へ。『ユリシーズ』第2章「ネスタ」に取り組む。ジョイス語にも、ほんの少し慣れてきた。the
gorescarred book という言葉があれば、「ああ、gore(血まみれ)で
scar(傷だらけ)な本ね」とか、a corpsestrewn plain
なら「corpse(死体)が strew(散らばってる)な平原ね」、というふうに。注釈は邦訳のと、Giffordの注釈本、それに
new bloomsday book を参考に読み進めている。それぞれに解釈が違い、面白い反面、なかなか進まない。たとえば、an
actuality of the possible as possible
という表現があって、これは確かにアリストテレスなのだが、丸谷才一は『霊魂論』だといい、Gifford
は『自然学』だといい、そしてゼミの教授は『詩学』だという。人の頭のなかに流れている意識なんて、それこそ果てしなく八方に広がってまとまりのないものなのだろうから、ぜんぶ理解できなくてもいい……ということにして、どんどん先に進まないと。
途中、館内で顔を合わせたC(中)が、私が以前作ったようなカードを作りたいので千代紙を分けてほしい、というので、彼女を連れて部屋に戻り、ついでにスコーンで午後のお茶。図書館に戻って閉館まで引き続きジョイス。向かいのユニオンハウスが何やら騒がしい。ドラムスの音がお腹に響き、エレキの音が脳を刺激する……たかみぃが好きそうな音楽だ。人によってはうるさいかもしれないが、私には快感。The
Darkness というバンドだった。日本ではアルフィーの秋ツアーがスタートしている。うう、ライヴに行きたい! (ヘビメタバンド「ザ・ダークネス」はこの秋、初来日するそうだ。)
このフラットは8部屋。先週、T(インドネシア)が出て行った。彼とは語学研修中から顔見知りだったが、ここに移ってみると、意外なことに女ともだちと暮らしていた。「彼女はすぐ帰る」と言いながら、いつまでもいるので、「ひょっとして奥さんなんじゃないの?」と訊いてみると、その通りだった。シングル用の寮なので、バレると追い出されると思ったらしい。で、やはりここでは何かと暮らしづらいと思ったのか、オフキャンパスに部屋を探した。この寮の競争率を考えれば、彼もよくよくの決断だったろう。
さて、そうなると、新しい住人は誰か、というのが一番の関心事。キッチンで顔をあわせる度に、「どんな学生が来るんだろう」「国籍はどこかな」と噂しあっていたが、土曜日に「今日、新しい学生が下見に来た」とK(日)が言う。BFのR(中)が見かけたそうだ。どんな人? 「うーんと、背が高くて、ブロンドで、きれいな女の子だって」 ブロンドってことは、アジア人じゃないのね。今朝、R(中)が言うには、「新しい学生に会った? 私もまだなんだけど、どうもうち(マネジメント)のクラスメイトらしいわ」、そして昼、ポストルームで顔をあわせたY(日)が「会いましたよ! ロシア人です。僕よりずっと背が高くて、香水がきつかった」。……で、私はまだ会っていない。キッチンの彼女の棚にはコップとお皿が1枚、それにシリアルだけ。あまり料理をしない人なのかな。早く話したいぞ。
◆10月12日(日)
| 東京は3連休。体育の日と文化の日は晴れが多い気がするが、今年はどうだろう。こちらは今日もいい天気〜と思い、『サザエさん』を鼻歌で歌い出したら、財布を忘れたサザエさんは「愉快」なのか「陽気」なのかわからなくなって、しばし悩んだ。くだらん。キャンパス内の寮から図書館へ向かう道。秋まっさかり。(後刻、財布を忘れて「愉快な」サザエさん、だと友人から教示された。おお、すっきり。感謝。) |
キッチンが空いている時間を見計らい、ハム&セロリ、2色チーズのサンドイッチ2食分と、カレーライスを鍋に一杯。よし、これで心おきなく勉強できる。「オーブリーの文体を模してリチャード・サヴェッジの略伝を書け(Write a Brief Life of Savage, as written by John Aubrey)」という明日〆切のエッセイを書くために、リーディング。ジョン・オーブリー(John Aubrey 1626-97)は数ページの短い評伝をたくさん書いた伝記作家で、日本では聞かないが、こちらでは常識のように愛読されている。というのも、先日の伝記ゼミでS(英)が自分のエッセイを朗読したとき、それがオーブリーのパロディだとわからなかったのは私だけだったのだ。古書店で手に入れたAubrey's Brief Lives から、シェイクスピアの章を読み、それからサミュエル・ジョンソン『サヴェッジ伝』(An Account of the Life of Mr Richard Savage)に取りかかる。サヴェッジはイギリスの詩人だが、複雑な生い立ちと悪行で名高く、借金で投獄され、獄中で最期を迎えた。30歳のときに起こした殺人事件に興味を覚え、並行してDNBと Newgate Calendar に目を通す。
◆10月11日(土)
| I like sparkling water very much, but used to seldom buy it, for it was very expensive in Japan. When I came here to learn that sparkling water is sold by the same price as still one, I decided to keep drinking sparkling as long as I was in this country. Nowadays I'm really happy with my favourite bottled water, and always carry it in my bag, but sometimes I forget that it is fizzy and make a big mistake. Pshhuuu! It is too late to remember that I should be careful not to shake it. In the library, in the train, I repeated the same mistakes again and again and always have to sweep around in a hurry with my towel, embarrassedly. Can't my tiny brain learn anything? |
サンドイッチを作り、図書館。フィクションゼミの課題で、アウベルバッハ『ミメーシス』から"The Brown Stocking"を読む。『ミメーシス』はバイアットをやっていたときから一度読んでみたいと思っていたので、いい機会だ。この章ではウルフ『灯台へ』のミセス・ラムゼーと末っ子のジェイムズが燈台守の子どもにプレゼントする靴下を、長さを測りながら編むシーンを取り上げている。外側のプロットと内側の登場人物の意識の流れがどのように共存しているかを分析し、さらにプルーストの『失われた時をもとめて』との比較と続いていくのだが、今日はここまで。
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夕食に友人を呼び、ごんが送ってくれたお餅でお雑煮を作る。S(中)、M(中)、Y(中)、K(日)。椎茸の出汁で、醤油とみりんで味つけ。野菜は白菜、葱、人参。グリルで焼いたお餅はちょっと焦げ目がつきすぎたが、みんな美味しいと言ってくれた。料理はほかに、アボガド・シュリンプ、グリルドチキン、それに煮魚。デザートに赤と白のぶどう、グレープフルーツ、オレンジ。魚は初挑戦の Skate Wing、つまりエイヒレだ。意外な美味しさで、カレイとほとんど変わらない味だった。M(中)の差し入れのAdnams Broadside(ビター)はSuffolk名産、すなわち地ビール。ビターがこんなにおいしいとは知らなかった。こくがあって、好み。 |
カウンタが64,000に。
◆10月10日(金)
| そこらじゅうに生えているローズヒップ。これを干せばあのお茶になるわけだ。料理に使うという人もいるが、クチナシのように色をつけるのかと思ったら、そうではないらしい。酸味が加わっていいのかな。そのうち、ひもときたいが。 |
最近、町でよく見かけるもの。ベッカム本、DidoのCD、それにAtkins-Diet。Posh
& Becks という表現を新聞でよく目にする。クラスメイトに尋ねたところ、スパイスガールズの5人のうち、ヴィクトリアはポッシュというニックネームだったのだそうだ。「なんでベッカムに"s"をつけるの?」 たとえば、ラジオのMCの
Brian Johnston なら Johnners、みたいに"s"をつけると親しみがこもるのよ。ほら、ウィリアム王子も小さい頃はWillsと呼ばれてたでしょ。……こんな幼稚園児のような質問につきあってくれる彼女に感謝。Nidoは若い女性シンガーで、これだけ宣伝されているとちょっと聴いてみたくなる。日本での評判はどうだろう。アトキンスのダイエット本は常にベストセラーの上位にあって、テレビや新聞でもよく顔を見る。彼のダイエット法は簡単にいえば、肉を好きなだけ食べて炭水化物を減らすというもので、ベジタリアンの友人は「僕らには向かない」と言っていた。お蔭でフィッシュ&チップスの売り上げが減っているという話だが、本当だろうか。
語りの形式(Forms of Narrative)のフィクションゼミ、Week
2。今日のテーマはジョイスの内的独白(interior
monologue)で、課題は『ユリシーズ』の第1章「テレマコス」と第18章「ペネロペイア」。M(愛)とJ(英)がそれぞれ20分くらいずつ発表した。1ページにとつぜん出てくる
Chrysostomos は何か、スティーヴンは金歯を見ながら何か別のことを考えている、など冒頭のシーンを細かく分析した後、『ユリシーズ』にプロットはあるのか、という話題に移り、スチュアート・ギルバートとジュリア・クリステヴァの論文を読んだ。あらかじめ渡されたコピーなら時間をかけて読めるが、授業中に渡されて相当のスピードで音読されても、ちっとも頭に入らない。音読するのと同じ速さで英文を理解できないとついていけないわけで、現在のいちばんの課題だ。
伝記ゼミのクラスメイトS(英)が部屋に遊びに来た。お茶だけで、4時間も話し込んでしまう。彼女は私より5歳年上の創作科の学生で、もちろん作家志望。創作科のゼミでは毎週3人ずつ、5,000語の作品を提出して批評し合うのだそうで、つまりはクラスメイトの創作15,000語分を読み、コメントをつけなければいけないわけか。ハードだ。どんな作品を書いているのだろう。いつか読ませてもらおう。『ユリシーズ』の話になると、目を輝かせてPBを開き、ここと、あそこと……と自分の好きな箇所を次々に説明していく。『ユリシーズ』はランダムハウスの「20世紀の英文小説」ナンバー1に輝いた作品で、さぞかし皆よんでいるのだろうと思えば、この国では誰に聞いても読んだことがない人ばかり。彼女のように「本当に好き!」な人は初めてだ。17のとき、イースター休暇の旅行中に4〜5日で一気読みしたという。面白くて止まらず、夜2時、3時と遅くまで読んだそうで……なんだかこっちまで好きになれそうな気がしてきた。
◆10月9日(木)
| 週末になると訪れる、釣り人たち。ちょっとわかりづらいが、湖畔にテントを組み立てて、寝ずの番らしい。土曜の朝、Broad(湖)を散歩すると、こんなテントがあちこちにできている。寒くないのかな。訊いてみようか。 この前の日曜日はここでボートレースがあったそうだ。わあ、見たかったな。大学構内の湖でレースなんて、素敵じゃない? 朝から晩までホテルに缶詰で、チャンスを失ったぞ。 |
LAN回線は50時間以上繋がらず。図書館の回線は優先度が高いらしく、速度は非常に遅いながらもメールのチェックはできる。ただし、日本語で返事を書くことができない。パソコンを持参すれば接続できるはずの「ドッキングエリア」も、外部からのウィルス感染を恐れて現在は使用を禁止されている。このページがときどき真っ白になるのは、たまに回線が繋がったときにFTPがアップしようとしてコンテンツの途中で力尽きてしまうからだ。この状態が長く続くようなら、大学のLAN以外の接続方法を考えなければならない。
午前中、部屋で勉強していると、ブザーが鳴った。resident
tutor(寮監)のJ(英)。彼女とは9月末に一度キッチンで顔合わせをした。イギリス人の(たぶん)学部生で、各寮に一人ずつ、こうした寮生の面倒を見る住み込み学生が配置されている。『ER』でも、カーターがチューターになり、学生のもめごとで何かというと睡眠を妨げられ、挙句の果てにパーティで食堂から火が出てしまうというエピソードがあった。まさに、あれ。飛んで火に居る夏の虫、災害時の避難誘導係にされてしまった。火災が発生したら、学生がフラット内にいるかどうか確かめ、もしいたら外に追い出す――ま、いいか。J(英)に台湾人の住人たちの騒音がうるさいと文句を言ったら少しすっきりした。チューターさんも気の毒に。
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シティセンターへ。Cinema Cityという単館の映画館で Spirited Away (『千と千尋の神隠し』)。客席はガラガラだったが、私以外にアジア人はいなかった。吹替だと聞いていたのに、幕が開いてみると字幕だった。わあ、沢口靖子だ、菅原文太だ。この映画は全体に白っぽい。白字のサブタイトルはかなり見づらいが、だからといって日本語のように「縦書き」にするというわけにもいかない。あれでストーリーがわかるのだろうか。ゆばーばは Yubaba、千とハクは Sen & Haku だったが、カオナシは a No Face だった。終演後、"I really like it."などと感想を言い合う声が聞こえる。寛大だと思う。でもって、「呼んでいる〜よ あの〜」と主題歌の『いつでも何度でも』が始まったときには、客席にはもう誰もいなかった。 |
◆10月8日(水)
| 先月末にレスターでホームステイをしたとき、ロータリアンの奥さんが帰りの列車のなかで食べるようにとお弁当を作ってくれた。アメリカの映画でよく子どもが学校に lunch box を持っていく姿を見るが、イギリスでは sandwich bags にサンドイッチやリンゴ、チョコレートなどを詰めて、スーパーのレジ袋に入れるのが普通。お弁当は a packed lunch という。パンは食パンではなく、丸いバンズを使う。列車のなかでお弁当を開けると、チキンやらハムやらチーズやら、それに野菜がぎっしり詰まった豪華版だった。で、たぶん夕べのおかずの残り物。なるほど、こういうふうにすればいいのね、とそれ以来、なんとかの一つ覚えのように何でもパンにはさんでランチにしている。朝食やお茶のときにちょちょっと作って sandwich bags(サランラップのような形で売られている)に入れておけば、勉強に集中してもお昼の心配をしなくてすむわけ。便利。 |
ごんからSAL便が届いた。12日かかっている。箱を開けると、わあい、お餅だ〜。留学中に受け取る小包がどれくらい嬉しいかは、体験した人でないとわからない。それから、三谷のコラム、ひと月ぶん。ある雑誌に「思い出し怒り」している話と『王様のレストラン』の話がよかった。『王様〜』は、すべてのセリフを覚えているくらいよく見た、お気に入りのひとつ。久々に梶原善が帰国したという記述に、おお、と思う。そういえば、米国留学する日の朝、三谷が自転車に乗って自宅まで届けたプレゼントって何だったんだろう。英語の勉強などしたことのないはずの彼、アメリカではどれほど苦労していることか。まだあっちで頑張っているんだなあ、こっちも頑張らないとなあ、と思う。亡くなった伊藤俊人についても触れられていた。あの作品は彼の嫌味たっぷりギャルソンくんなくしては語れない。日本では『振り返れば奴がいる』が再放送中だと聞く。帰ったらビデオを見るぞ。
伝記ゼミのWeek 2。今日のテーマは「character」(ethos)で、古代の伝記作家2人を取り上げた。プルタークとスエトニウスが描いたシーザー、ブルータス、アントニー、そして女性たち(カルパーニャ、ポーシャ、クレオパトラ)を読み比べ、二人のスタイルやトーンの違い、何に眼目を置いたか、などについてディスカッション。惨敗。敗因は聞き取り能力のほかに、テキストのリーディングが不十分だったこと。討論自体は興味深い内容だったので、原文をじっくり読んで復習したいところだが、それでは来週のテキストが読めない。これは後回しにして、次に進まないと。ジレンマ。
疲労困憊してしまい、パブへの誘いも断って、寮に戻って夕食。
◆10月7日(火)
朝、珍しくネットに繋がったので、嬉しくて古書店サイトで文献漁り。アマゾンUKに"The
West Wing"のDVDを注文。去年日本で放送されたシリーズ1がぜんぶ入って、£44.99(9,000円)。£25を超えているので、送料なし。今月20日にはシリーズ2のComplete版が発売されるので、それも楽しみだ。『ザ・ホワイトハウス』のDVDは、喉から手が出るほどずっと欲しかった。うれし〜。日本のアマゾンを覗いてみると、こちらでも11月18日にアメリカ版DVDが発売される。7,000円弱という値段は悪くないが、これってReal
1だぞ。誰が見るんだ。どうせ売るならUK版にすれば?
午前と午後に1つずつ、無料の語学コースに出席した。発音とライティングで、どちらもレベルが高め。特にライティングのほうはIELTSが6.5以下の学生はほかのクラスに回され、授業内容も難しかった。ライティングのクラスで語学研修のクラスメイトK(中)と一緒になった。久しぶりに会えて嬉しい。
夜は飲み会だが、ランチが重かったので食欲がわかず、「出前一丁」に初挑戦。悪くない。図書館でモダニズムの学生R(中)と待ち合わせ、会場に向かう。話す道々、どうも様子がおかしい。てっきりパブでの飲み会だと思っていたが、そのパブが目印で数軒先の教授宅に招かれたのだと判明。ああ、このヒアリング能力のなさ。連れがいて助かった。教授が2人と、学生が7〜8人のなごやかなパーティ。ポテトチップスとオリーブ、チーズのほかにつまみはなく、ワイングラス片手にひたすら会話が続く。海辺の町クロマーに行ったときの話や、クリスティの『ねずみとり』が見たい、などの話題のほかは、ひたすら聞き役。パーティは苦手なほうではなかったが、こちらに来てからは重荷。徐々に慣れるといいが。タクシーを使うのもと思って歩いたが、徒歩50分。寒かった。こういうとき、車を持っているパートナーがいたら。
◆10月6日(月)
| squash (かぼちゃ)を出汁(だし)と砂糖・醤油で煮てみた。日本の南瓜のようなねっとり感はなく、ウリに近い感触。でも、美味しい。 |
午前中はエッセイ書きに精を出し、提出後、ほっと一息。The Bowl で伝記ゼミのクラスメイトS(英)と1時間ほどおしゃべりした後、近くに座っていた日本人の学生に混じって、さらに1時間。イギリスの講師職の年俸表を見せてもらう。日本の国立大と同じように、ランクごとに一律のお給料。専任講師でだいたい450万円くらいで、大都市でなければ暮らしていけそうな金額だが、所得税はなんと27%。VATが14.5%であることを考えると、この国の税金は本当に高い。ほかに、保険なども支払わなければならないので、かなり厳しそうだ。
| マーティン・エイミスの講演会。イギリス人作家の講演を聴きにいくのに、10分前までキッチンでのんびり夕食をとっていられるなんて、日本では考えられない贅沢。さて、チケットは売り切れで隣の部屋でビデオスクリーンを見るはずが、どういうわけか会場に入れてくれた。ラッキー。やっぱり生がいちばん。先月に発売され、惜しくもブッカー賞のショートリストには漏れた『Yellow Dog』の冒頭を30分ほど朗読したほか、9-11の後、パロディを書くのは難しくなったがそれでも書いていくのだ、という内容のスピーチ。朗読のあいだ、周囲は盛んに笑っていたが、私には笑えなかった。後刻、その部分を読んでみて、初めて笑えた。あらかじめ読んでおくのだった。 |
◆10月5日(日)
| 今朝いちばんのプログラムは礼拝。救世軍(Salvation Army)のバンドの伴奏で、賛美歌を歌う。先週の2泊3日の合宿に続き、今週も週末をすべてロータリーに奪われ、ずっと2〜3時間しか寝ていない。今日は本当は家で勉強したかったが、「奨学金をもらっている以上、義務を果たせ」と頭ごなしに注意され、早朝から不承不承の参加。でも、すばらしい演奏と牧師さんの説教に、少しだけ心おだやかになれた。 |
地区大会2日目。「君は英語でメモを取っているんだね。感心、感心」 隣席の見知らぬロータリアンが声をかける。そりゃあね。とにもかくにも終わってほっとする。帰りにシティセンターで買い物。冬用の布団(Devet)を購入。夏用(4.5tog)に足して、合計15togだ(断熱効果の計算はこれでいいのか?)。やっぱり日本人にはこれくらいの重みがないとね。ふっかふか、幸せ。
連日の会議で疲れきっていたらしく、電子レンジでピザを真っ黒こげにする。3ポンドもしたのに……ああ。
◆10月4日(土)
水曜日に首筋から左頬にかけて湿疹ができた。私は漆(うるし)には弱いが、肌はわりと強くて化粧品もサンプルの使い放題。寝不足や英語まみれのストレスなどで体が弱っているのかもしれない。医者のアポを取るのは面倒だし、まめに洗うだけで何もつけずにいたが、2日たってもよくならず。寝ている間に掻いたりして、よろしくない。ところが、夕べ思いついて、オロナイン軟膏を塗ってみたら一晩でだいぶ赤みがひいた。ほっ。
ロータリーのDictrict Conference(地区大会)で、朝9時から深夜12時すぎまで空港近くのヒルトンホテルに缶詰。不安だった
The Ball も無事に終わって、ほっとする。寮に着いたのは午前1時で、明日は朝8:10に迎えの車が来るという。体力をつけないとやっていけない……というか、タフすぎないか、ロータリアンのおじいちゃんたち。
◆10月3日(金)
| The Times の付録『T2』にどーんと載ってしまった日本の醜聞。こんなことで話題になりたくないな。a girl plied with drink...から、女の子を酔わせて〜という表現を覚えた(何かの役に立つのか?)。日本社会は女性の現実から目をそむけている、と非難。隣はほのぼの、ハリー・ポッターの次作はリサイクルペーパーを使って出版する、という記事。これまでに650万本の木が『ハリポタ』に費やされ、森林でいうとロンドンのリージェントパークからロンドン塔までの広さになるという。ブレインは誰か知らないが、ローリングさん、着眼点がいいな。 |
部屋のLAN回線が20時間以上も繋がらず。大学のネット事情は悪くなる一方だ。しびれを切らして早朝4時にITルームに行くと、ここのパソコンでは繋がった。英語のメールには返事が書けるが、日本語は書けないし、Googleで日本語の検索もできず、もちろんHPの更新もできない。こういう状態では、HPを更新しようという意欲がそがれてしまってよろしくない。
Fiction の Week 1。『ユリシーズ』全般で、ジェルシ・ルカーチの悪名高いジョイス批判の論文を読んだ。討論のテーマは
possibility, provability, actualityの3つをモダニズム作家は表現していたか、という内容で、ほかに参考文献としてアリストテレスの『詩学』も読んだ。文学研究科に4年在籍していたが、これまでゼミでアリストテレスを読んだことはなかった。こっちでは常識。
ルカーチはゼミでは「ルカーシ」と発音される。同様に、アリストテレスは「アリストトル」だし、ゲーテは「ゴート」で、外国人名は泣かされどころのひとつ。日本ではTGVは「テージェーヴェ」、KGBは「カーゲーベー」だが、ここでは「ティージーヴィ」「ケイジービー」と言わないと通じない。もっと母国語の発音を尊重してよ、と嘆いても始まらず。そういえば、気がつけば
resource は「リゾース」、often
は「オフトン」と言っている。クイーンズイングリッシュで、なんてカッコつけているのではなく、そう発音しないとまったく通じないからだ。I
can't
を「アイキャーント」というと、ここではなんだかバカっぽく(失礼)聞こえるので、「カーント」と言うようになった。日本に帰って、中学の英語教師が務まるだろうか……。
◆10月2日(木)
私の住む寮の1階は「コモンルームB」という公共スペースになっていて、各種グループ活動に使われている。午前中、「チャットルーム」という留学生&家族のおしゃべり会が行われていたので、ジョイスから逃避。学生のほかに、予定日が今月の妊婦さんとか、お子さん連れの奥様とか、いろいろな方たちと話せて楽しかった。non-native だけの集団の会話は、時にいい休憩になる。
◆10月1日(水)
今日から独立行政法人となったJICAの理事長に、緒方貞子さん就任。お元気そうで何より。
午前中は部屋でリーディング。合間に文献さがし。ネットがかろうじて繋がるのが嬉しくて、古書店で注文しまくり。イギリスの古本屋さんのほか、日本でも自宅宛てに3冊。家族にSAL便で送ってもらうつもり。
12時に英文科で待ち合わせて、2時から始まる伝記ゼミのプレセッション(授業前の打ち合わせ)。集まったのはC(新)、S(英)、L(英)、M(英)と私の5人。「MANGO」というカフェテリアでチーズと卵のオープンサンドをかじりながら、課題本の収集など情報交換。研究するのが伝記なので、人間観察も大事。「クラスメイトとなるべく話をしてお互いをよく知るように」とtutorからも指示が出ている。
合間にちょっと席をはずして、銀行に寄り(今日も送金はなし)、その後ポストルームへ。ここの開館時間は平日の10:30〜16:30で、窓口で係のおじさんに学生証を見せ、寮の名前(私ならNelson)を告げると、ABC順に並ぶpigeon-hole(棚)から私宛の郵便物を探し出してくれる(土日は郵便物を受け取ることはできない)。古書店に注文した伝記ゼミの2週間後の課題本と、塾講の生徒からの便りが届いていた。あら、うれし。
伝記ゼミの Week 1。先週出された課題は12ページの論文が1本と、伝記に関する7つの引用の筆者を当てる、というもの。論文はtutorがある本に書いた「伝記は大学院での研究テーマになりうるか?」というテーマのエッセイで、伝記の先行研究についてまとめられていた(授業では特に触れられなかった)。引用の7枚のプリントは、No.1〜No.5はネットで検索できていた。Plutarch
"Life of Alexander the Great"、Samuel Johnson
"Rambler #60"、W.H.Auden "Who's Who"、Virginia
Woolf "The Art of Biography"、Janet Malcom "The
Silent Woman: Sylvia Plath and Ted Hughes"。No.6はPeter
Ackroydの去年刊行された"Albion: The Origins of the
English Imagination"からの引用だとわかった。ピーター・アクロイドは小説しか読んだことがないが、こちらでは伝記作家としての評価が高い。No.7は明かされなかった。"Those
only are the favourite characters of a biographer in which are
united qualities which seem incompatible with each other, which
appear impossible to exist together at the same time, and in the
same person. The writer here reigns and revels."(伝記作家が好むのは、互いに矛盾する性格、同一人物のなかに同時に存在するのは不可能に思える複雑な性格だけである。作家はそこに君臨し、喜びを覚えるのだ)。 もしかしたら、tutor自身の言葉なのかも。
3時間の授業のうち、半分は今日のテーマ「アイデンティティを表現するには」についてディスカッションし、後半は月曜日に提出した300語の短いエッセイを一人ずつ朗読して、感想を言い合った。このゼミではこれが発表(presentation)の代わりになる。今日の題目は「自分のautobiographyを一人称で書き始め、途中から三人称にしてbiographyとして完成させなさい」で、なにしろ300語だからスペースがない。16人分の合評はそれなりに時間がかかる。私はみんなの朗読がほとんど聞き取れず、意見もあまり言えなかったのに、私の拙い英語はみんなが分かってくれて、意見や質問が山ほど来た。なんだか申し訳ない。早くもっと会話に慣れるようにしなくては。
自分のアイデンティティを何で表すか、という討論のあいだに、ひとつの要素として「ユニフォーム」の話題になり、C(新)がスピルバーグの映画「Catch
Me If You Can」を例に取り上げた。パイロットの制服を武器に詐欺を働く少年(ディカプリオ)とFBI捜査官(トム・ハンクス)の話で、映画の宣伝は覚えがあるが、実話だとは知らなかった。いかにもおバカなハリウッド物という印象を受けたCMがうらめしい。見ておくんだった。(後刻、勢いでDVDを注文。中古で送料込み£9.24。まあ、英語の勉強にもなるだろうし。)
来週のリーディングリストを眺めて、作戦を練る。プルタークの本から3章分と、スエトニウスの本から2章、論文が3本、それに……シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』、ぐわん。これ、余計だなあ。ここではひょいとBook-Offに寄って100円の文庫本を(きっとたくさん並んでいるだろう)買うというわけにはいかない。グーテンベルクで落とそうか、とネット検索すると、あにはからんや、翻訳があった。坪内大先生訳だって、旧かなだって、いいです日本語であるなら。こんな奇特なことをしてくれたのはどなたかしら。感謝。月曜締め切りのエッセイのタイトルは、「もしあなたがプルタークかスエトニウスで、カルプルニアもしくはポーシャの伝記を書いているのだとしたら、シーザー暗殺の場面をどのように書きますか?」(If
you were Plutarch/Suetonius writing a life of Calpurnia/Porcia,
how would you present the assassination of Caesar?)。ええと。