| 感想は冷めないうちに〜読書日記 |
新潮ムック『海外作家の文章読本』(Jun 05, '99 記)
| 池袋・ジュンク堂に行ったときに「うわあ、4位だ」とショーウィンドーを見て驚いた。こういうムック本が売れるのは、海外の作品(訳書)に関心のある人がそれだけたくさんいるということだろう。 ウィンドーに飾られたムックの表紙をみながら、「長篇小説、回想録、旅行記、伝記、エッセイ、……ポピュラー・サイエンス?」と、そこではたと止まってしまった。帰宅して「ポピュラー・サイエンス」のページを開いてみて納得。「文化としての科学」、なるほど『利己的な遺伝子』のような本のジャンルをポピュラー・サイエンスというのか。 魅力的な作家がたくさん載っているが、私が真っ先に読んだのは「TLSの覗きかた」(p.141-)だ。TLS(Times Literary Supplement、新潮社では「タイムズ文芸付録」という訳語になっている)が取り上げられるとは嬉しい。 TLSを読むようになったのは、グランタを読みはじめてからのことだ。最初はどこから読んでいいやら、まるでわからなくて大変だった。最近、ようやく慣れてきて、自分の気になるところだけを30分くらいでぱぱーっと目を通すようになった。 このコラムの斎藤兆史氏も「毎号まともに読んでいたら、時間ばかり取られてとても仕事どころではない」と書いている。うんうん、と嬉しくなった。週刊のこのTLSのほかに、隔週の London Review of Books も読んでいるが、TLSのほうがアカデミックな感じがして惹かれる。 イアン・マキューアン『アムステルダム』の第一章が掲載されていたので、とりあえずそれだけを読む。先日、訳者の小山太一氏がこの作品について研究社の雑誌『青年』4月号に書かれたコラムがあった。 「アムステルダムの素材はジャーナリズムと政治とアート、プロットはところどころほとんどジェフリー・アーチャー風ともいえるくらい予想可能的にエンタテイニングである。これは要するに、マキューアンがエンターテイメントと自己の小説のうまい折り合いをつけたということなのだろうか」 アーチャー風のプロットという言葉をきいて、「ブッカー30」のなかの一節を思い出した。 However, even Jock Campbell, in his later years, expressed the wish that the modern literary novel had "better story-lines". そういえば、今回の『海外作家の文章読本』でも、デイヴィッド・ロッジのインタビューの最後のほうに「現代文学には、多かれ少なかれエンターテイメントの要素が求められているのです」とあった。 ところで、去年の秋にホンセのDiplomaで課題になったチャールズ・フレイジャーの『コールドマウンテン』冒頭の訳文が載っている。自分の訳と比べてみると勉強になるかもしれない。土屋政雄訳で8月に刊行される予定だそうだ。 |