| 感想は冷めないうちに〜読書日記 |
デイヴィッド・ロッジ『小説の技巧』(柴田元幸・斎藤兆史訳、白水社、1997年)(Aug. 12, '99記)
| イギリス小説の勉強をするため E.M.フォースターの『小説の諸相』を読みながら、そういえば、と思い出したように取り出して、最後まで読んでしまった。 イギリスの現代作家であり、過去に大学で英文学を教えていたこともあるロッジが、文学研究とは縁のない一般読者にも興味をもってもらおうと新聞に連載した小説の技法や歴史である。書き出し、作者の介入、サスペンス、視点、名前、……のタイトルのもと、ヴィクトリア朝時代の小説から現代小説までの作品をふんだんに取り上げ、解説している。 私が特に気に入ったのは、「意識の流れ」でウルフの『ダロウェイ夫人』の冒頭を解説している部分と、「信用できない語り手」という切り口でカズオ・イシグロの『日の名残り』を論じているところだ。 ほかにも例えば、オースターのニューヨーク三部作(「名前」)や、『シンドラーズ・リスト』(「ノンフィクション小説」)を取り上げたり、とイギリス文学が好きな人なら興味のありそうなところがたくさんある。 「『ノンフィクション小説』というのは明らかに逆説的な表現であり、その名で呼ばれる本が属するべきジャンルについて懐疑的な議論がなされてきたのも無理はない。はたしてそれらは歴史の本なのか、ルポルタージュなのか、それとも想像力の産物なのか? (中略)『シンドラーズ・リスト』などは、アメリカではノンフィクションとして出版されたが、イギリスではフィクションとしてブッカー賞を受賞した」(p.272) さらに興味深いのが「訳者あとがき」だ。この本で引用されている小説は、軽く100冊は超えていると思うが、「先達の訳業を参照させていただきつつ、引用はすべて訳者二人で新訳した」とある。また、共訳作業は二人で「それぞれ二十五の章を受け持ち、たがいに訳稿を見せあい叩きあった」そうだ。 安心して読める本。 |