奇襲攻撃により大勝利を収めたファレーン軍は、ついにルードリアの大平原に上陸を果たした。歓声に沸きあがる兵士達。
対して敗走したフレイド、ウィンディーン、アーセレナ各軍は、陸路からの援軍と合流し、反撃の態勢を整える。
ファレーン軍は、各軍が態勢の立て直しをはかる間に、今回の侵攻作戦における橋頭堡を確保すべく、海岸線に陣を構えた。
ポツリポツリと降り出した雨が、戦を前に紅潮する兵士達の頬を濡らし、余計な物音を耳から洗い流す。
雨が激しい雨に変わる頃、いよいよ海岸線の戦いが始まろうとしていた。(EW 第5戦「雨の中の激戦 」課題背景より)
彼女は、荒れる波に揉まれている自分に気が付いた。顔を叩く波の飛沫に雨の粒が混じる。
あれからどの位の時間が過ぎて行ったのか、あれ程沢山あった船の影は遠くまばらになり、むせ返る様な血の匂いも、風と波に流されて消えようとしていた。
小さな魚の鰭が、彼女に起きろと促していた。
魚達は、大きなうねりの中に有りながらも彼女の周囲を取り巻き、その小さな身体を寄せあう様にして彼女の身体を支えていた。
「守っていてくれたのね…。」
彼女には判っていた。そうやって守り切られたのが、自分だけなのだという事。今の自分には、他の仲間の安否さえ知る事は出来ないという事…。
彼女の瞳に、ひと粒の涙がこぼれ落ちた。
その時だった。彼女の目の前の波が大きくうねったかと思うと、金色の巨大な魚が雨の中に躍り出た。
「私を連れて行ってくれるの…?」
金色の魚は、彼女の下をくるくると旋回すると、彼女を下から持ち上げて海岸線へと泳ぎだした。
「貴方のその力を貸して頂戴…。」
彼女の頬は涙と雨が入り交じり、それと判らなくなっていた。
今度こそ、私の手は血にに濡れるかもしれない…。そんな気持ちが彼女の胸に溢れていた。
