Elemental World  / 小さな出会い


 あれはミシュラ湖にピクニックに行った日の事。
 ジュライは小さな丸い水槽に浮かびながら、みんなのはしゃぐ声に耳を傾けていた。
 久しぶりの緑と湖を渡る風が心地よい。

 そんな昼食の時の事だった。
 水から上がったみんなと一緒に果物を口にするジュライに、アクエリアが近付いて来た。
 アクエリア「・・・。」
 ジュライ「?」
 アクエリア「あのさあ…これ、あげるよ。」
 差し出された一枚のハンカチ。
 アクエリア「男連中がさ、目のやり場に困ってるみたいだからさ…。」
 そう言ったアクエリアも、恥ずかしそうに目線をそらして笑う。
 ジュライ「あ、ありがとう…。」
 彼女は、照れた様な微笑みをアクエリアに返した。

 その日はハンカチをバスタオルの様に巻き付けていたジュライだったが、宿に帰って1人になるとちょっと心配になった。
 『もしかしたら、そういうわけで、あんまり声をかけていただけないのかしら?』
 自分の明らかに違う容姿とサイズが原因で、なかなか宿の仲間に馴染めないと思っていたジュライだった、しかし、もしかしたら違うのかも…という考えは、彼女を一念発起させた。

 次の日の昼、彼女はアクエリアのハンカチから作った簡単なサンドレスを着て食堂に現れた。
 すると、そこに居合わせたアリエスがジュライに声をかけてきた。
 アリエス「あら、ジュライさん、今日は可愛い格好をしてるのね。パンダの腹掛け?」
 ジュライ「えーっと、腹掛けって何ですか?」
 アリエスは、しまった…という表情を隠し切れぬまま、ジュライに”腹掛け”の意味を説明する。
 ジュライ「・・・・・・・。」
 アリエス「そ、そうよね、私ったら勘違いして。それは、エプロンに決まってるわよね。(笑)」
 ジュライ「・・・・・・・・・・・・・。」

 脱力感もあらわに立ち去ろうとするジュライ、そしてアリエスがおろおろとその後ろ姿を見送ろうとしていた時だった。
 ジュライの目の前に、1本の黄色いリボンが降りて来た。
 振り返ると、そこには大きな黒いマント姿の男が立って、リボンを差し出している。
 ユリーゼ「あ、クロトさん…。」
 後ろからユリーゼの声が聞こえる。
 ユリーゼ「今日からここに御泊まりになる、クロトさんですよ。ほら、アリエスさんも、いただいたお茶菓子一緒に食べませんか?」
 ジュライは、ユリーゼの視界に入っていないらしかった。(苦笑)

 何も言わない2人に、アリエスが口を挟んだ。
 アリエス「あら、綺麗なリボンですね。あ、そうそう、こうやったら似合うんじゃないかしら。」
 アリエスは、クロトからリボンを受け取ると、ジュライのサンドレスに巻き付ける様に結んでやった。
 緑色のドレスに黄色い花が咲く。
 無言でいるクロトに、ジュライは半泣きで笑って見せた。
 ジュライ「あ、ありがとお。」
 ジュライに、1人無口な友人が増えていた。

 

 ジュライのリボンが菓子折りの箱に結ばれていた事は、周囲の人間が気付かない事実だった。(大笑)