彼女は道に迷っていた。
海に向かって川を下る途中で、水上都市への陸路が有るという話を聞いて、川を離れた為だった。
彼女の様な水のものは、水の匂いで進むべき川が判る。しかし、水以外の道にはめっきりうといのだ。
そして今、小さな山脈の尾根を越えて彼女が迷いこんだのは、砂漠のはずれに相当する場所だった。
広大な砂漠の、しかしほんのはずれの砂地。しかし、彼女が目にした事も無い様な大きな太陽が照りつける灼熱の地。
その暑さは肌を覆う水を少しずつ奪い、それにも増して水の温度を上げてゆく。
彼女は、慌てて引き返そうとするが、時折吹き付ける砂嵐に進むべき方向を失い、身動きをとることも出来ない。
そんな彼女の目の隅に、何か動く物が写った。敵か…味方か…。
その時の彼女には、それはそんな領域を越えて忌むべきものであり、頭は逃げる手立てを探す事に夢中だった。
それも仕方の無い事。どう転んでもここは砂漠、水の民の住まう場所では無い。
彼女は、片手を一杯に空へと差し上げた。身体を覆う水を、手の上に集める。
「光よ…。」
今、彼女が頼れるのは、自分と太陽だけ…。
一瞬煌めいた光の道が、望まれない訪問者の視線を遮ったその次の瞬間、もうそこには小さな者の姿は無くなっていた。
