◆私的オモチャレビュー 2001年分〜

 オモチャを集めたりいじったりするのが好きです。特にコレクターというほど集めている訳でもなく、ディテールアップや改造をする訳でもないのですけど。主な守備範囲は変形ロボットを中心にした男玩キャラクター物で、むしろオモチャとその周辺について考えたり語ったりするのが好きという方が正確かも知れません。

 てな訳で、ここでは気に入ったり気になったりしたオモチャについてのよし無し事などを綴っていきたいと思います。なお、「2001年分」は2001年に更新した分という意味であり、この年に発売された商品という意味ではありませんので念のため。

平成ミクロマン(タカラ)を振り返って  2001年1月10日更新
 ここでいう「平成ミクロマン」とは、マグネパワーズから始まる新商品のラインナップのみを指し、復刻モノは含みませんのでご注意を。

 私はヘビーなコレクターではないので、商品をコンプリートしている訳ではありません(これには別の理由もあるのですけどそれは後述)。それでもひと通りの商品は買いました。で、並べてみるとまず気づくのが基本となる人形のレベルアップです。初期のマグネパワーズはフィギュアとしてのプロポーションは良いものの、関節可動は極めて制限されています。ただし、左肘が固定されているのは磁石遊びのためには仕方ない部分でもありますが。また、ボディは色替えでも頭部はそれぞれ別の形、しかも小さなサイズでも区別が付きやすいようなモチーフの意匠化という点では過去のミクロマンよりも改善されているとも言えます。で、次のスーパーミクロマンは両肘・手首・足首・ウエストなど可動範囲は拡大したものの、パワーアップ表現でもあるのでしょうが、一方でプロポーションが「小さな人間」というよりはロボット的になってしまいました。最後のレッドパワーズはマグネの美しい体格とスーパーをも上回る可動、さらに胸部の発光ギミックまで搭載し、オプションパーツとの接続部もさらに増えています。前作の問題点を改善し続けた素晴らしい商品と言えるでしょう。
 フィギュア以外のロボットマンやビークルなどにもさまざまな工夫が凝らされています。以前にレビューしたジャイアントアクロイヤー、並びにロボットマンD・Eはキャラクター性を持ったユニットをブロック玩具のように自由に組み合わせて遊ぶという「有形ブロック思想」が見事に結実し、しかも以前のロボットマンA・B・Cやアクロモンスターの「磁石+球体関節ではポーズをホールドできない」という問題点もほぼ解消されていました。
 ただ、やはり「見せ場をバンクシステム化する」現代のTVアニメという形式と、有形ブロックやタカラお得意の「多数のキャラクターのバラエティによって作り出される世界観」というのは充分に馴染まなかった印象があります。毎回毎回、パーツの意外な組み合わせや使い方で戦うというのは難しいでしょうし、実際見せ場の無いキャラクターやメカも多く、玩具が秘めた無限のポテンシャルも活きたとは言えません。また、せっかくの「マグネパワー」でありながらアニメ作中では単なる「エネルギーの名称」レベルに留まり、磁石能力を活かした描写はほとんどなされていなかったように記憶しています。
 結果論ですが、ちょうど今『ZOID』が「TVアニメでは冒険ヒーローもの、雑誌記事では戦記もの」という形式でやっているように、雑誌でカークやキースなどTVには登場しないキャラクター主導で「有形ブロック」「ヒーローを縮小したフィギュアではなく、1/1スケールのキャラクター」というアニメでは活用しきれなかった部分をもっとプロモートしていたら、別の結果があったのではないでしょうか(あるいは、私のチェック不足で当時ちゃんと行っていたのかも)?

 アニメ終了後「レッドパワーズ」と題して玩具&雑誌展開のみになったミクロマンですが、この中盤から同じ金型でカラーバリエーションだけをどんどん増やしていくという、コレクター狙いの、敢えて言えば「逃げ・守り」の商売になった印象があります。
 実はここで私は違和感を覚えました。あちこちで言い尽くされているかも知れませんし、オールドファンの感傷かも知れません。でも、「ミクロマンの魅力」の一端は「自分の手元にあるのがヒーローをスケールダウンして写し取ったモノ」ではなく「等身大のヒーローそのもの(かも知れない)」というイマジネーションを喚起する部分にあると思うのですよ。それがかつての「ディック」と「ダン」を単なるカラーバリエーションではなく、別々のキャラクターとして成立させていたのではないでしょうか?
 それこそが私がレッドパワーズ中盤以降にほとんど手が伸びなかった理由のひとつです。スパイだろうがシークレットブレストで色が何色も違おうがアーサーはアーサー。「もうボクのところにはいる」のですから。それよりだったら金型そのものはアーサーやイサムと同じで構いませんから個別の人格を持ったタケルだのチャールズだのツェッペリンだのを出した方が、少なくとも私の購買意欲はそそられました。実際、完遂ではありませんがそれなりに多数のメンバーを「人格のダブリ無し」に集めてますし。
 それと色と頭部以外全く同一だったマグネパワーズに比べ、各人に個別の武器を持たせたスーパーや個人武器を合体させられるレッドパワーズは商品プロモーションとしては優れていると思います。ただ、問題なのはせっかく個人武器装備で全種類を購入させようという誘い水を向けながら、すぐにほとんど全ての武器を装備したマスターミクロマンを出してしまうのはどうでしょう? コンプリートを狙うコレクター以外の消費者にとってはかえって悪印象を与えかねないのでは……。

 振り返れば、商品は改良され続け、遊びを広げるポテンシャルも高かった一方でプロモーションの方向性を見失い失速した−−それが平成ミクロマンについて私が受けた印象でした。
 最後に到達したレッドパワーズの人形としての出来の良さを思うと、何らかの形でこの技術を活かした商品が残り、あるいは復活して欲しいと願います。ミクロマンというブランドでなくても構いませんから。
ダイノゾーン(バンダイ)を振り返って  2001年1月10日更新
 奇しくも「メッキ+クリアパーツ」シリーズについての話題が続いてしまいました。
 このダイノゾーン、あからさまにビーストウォーズシリーズの後追い企画だと思うのですが、発売当初はそれなりに期待したのです。恐竜の骨というモチーフはBWとの差別化をしつつ「生物が変形する」という面白みは取り入れていますし、骨格部をメッキパーツで、「肉」の部分をクリアパーツで埋めるというのもユニークな発想で「骨」というアイデンティティを強調しています。それに、何といってもギガノドラゴンです。長い龍をワンピースで折り畳んでいき、人型にするという秀逸なアイディア! バンダイ製品で初期ラインナップに一体だけとは言え敵キャラが含まれている事や、価格帯にいい感じの幅がある点にも好印象を持ちました。
 さて、個人的にバンダイのデザイン傾向について「ノーブル&オーソドックス」と認識しています。このダイノゾーンでも主人公格のダイノティラノは確かに変形は価格の割にはシンプルで面白みに欠け、可動範囲もあまり広くありません。ただ、プログレスモードの「人体の美しさ」は充分に魅力たり得ていると思うのです。鍛え上げられた格闘家のようなノーブルなボディに、野性味を示すシンボルとして太い尻尾が生えているという姿は充分に主役を張れるものでしょう。ただ、玩具としてはその尻尾が「尻に繋がっていない」あたりがナニなんですが……。
 ノーブルな美しさはプロポーションだけではありません。それぞれのプログレスモードでの端正な顔立ちもこのシリーズの魅力です。ダイノモードでの生物の意匠をヘルメット部に取り入れ、またダイノステゴでは片目という特異なキャラクター性も導入しています。このあたりはバンダイらしさのいい側面の現れと言っていいでしょう。
 その一方ダイノゾーンの問題点として、「骨」がアイデンティティのはずなのにあからさまに「骨格の模型」ではなく「骨っぽくアレンジしてあるだけ」という点を挙げられます。ダイノティラノでもプログレスモードでの肩アーマーとなる「得体の知れない骨」がダイノモードの胸に露出しているのには興醒めさせられましたし、しかもこの傾向は後発商品ほど顕著になっていくのです。このあたり、もうちょっとリアルな骨格か骨はあくまでモチーフでとにかく見た目を追求するのか、コンセプトをはっきりさせてほしかったところです。
 また、第二弾商品として登場したシャドーウォリアーには首を傾げざるを得ない点もありました。敵の新勢力の登場は喜ばしいものの、それが全て主役サイドの色替えという露骨なコスト軽減もそうですが、全員が全員、性格設定は「獰猛で凶暴」。TVなどと連動しない玩具オリジナルであれば、パッケージなどでの設定紹介は重要なはず。悪役であっても性格は獰猛一辺倒ではなく「狡猾で卑怯な作戦を好む」とか「キザで貴族的だが残忍」とか、簡単な表現でバリエーションはいろいろ広げられるはず。自分が子供だった頃を振り返っても、こういう僅かな差異が結構購買意欲を左右するのではないでしょうか? このあたりは幅広いバリエーション展開よりもシリーズ内のイメージ統一を重視するバンダイスタイルが裏目に出た部分かも知れません。このシリーズ、ネーミングも全部「ダイノ××」「シャドー××」で、名前からのイメージの広がりも乏しいですしね。同じ悪党でもひとりひとり「クレイジーなんとか」だの「ブラッディ誰それ」だのと違う形容がくっついていればそれだけでまた印象も違うはずなのです。
 実は当初、友人と一緒に「ギガノドラゴンに続いて、悪役として伝説獣シリーズが展開するのではないか」と予想してたのですよ。私としてはグリフォンやケルベロスの「骨格」をイメージしたユニークなデザインの商品に期待したのですが……。

「合体」という新機軸や剣を振るアクションはいいとしても、プロポーションやポージングはますます不自由になったケラトプス三兄弟(両腕になる二体のダイノモードでの前足はあんまりです。それに、アクション機構のために恐竜形態時に胴の丸みが損なわれています)や、同じく武器へ変形して既存商品と連動できるもののやはり可動や体型に難を残すダイノアームズ(シールドザウルスなんてプロポーションは悪くないのに、股関節の前後への振り可動がわざわざ「殺して」あるんですよねぇ)など、面白いアイディアやギミックはあるもののトータルバランスで減点されてしまう商品が続き、結局ダイノゾーンは短い歴史を閉じます。
 今、何気なく書きましたがダイノゾーンというは「トータルバランスでの減点」が付きまとったシリーズだと思うのです。決して何の取り柄も無い商品ではなく、いろんな可能性を秘めていたのに「お買い得感」が無かったのです。特に、BWという「先行する競合商品」がある以上、後発は「上回って初めて互角」というところ。しかも今回は普通イメージされるシフトとは逆にタカラのBW側がTV番組と連動し、バンダイのDZが玩具のみの展開なのですから。
 小耳に挟んだところでは海外ではアニメ展開が続いているそうなので、そちらで商品もリリースされ続けて潜在的なポテンシャルが開花し、日本に逆輸入されたりすると楽しいのですけどね。
MS in Action シリーズ(バンダイ) 2001年4月27日更新
 前にもちょっと書きましたが、ロボット玩具に関しては値ごろ感とギミックを愛する私です。ついでに言うと模型方面は全然ダメ。スーパーカーブームの頃にちょっと作ってみた程度でガンプラにはほとんどハマりませんでした。ここ数年で組み立てたモノといえばZOIDとデータウェポンだけ。
 そんな訳で『ガンダム』系は好きな作品は多い割には、立体モノはほとんど手を出していなかったのです。で、ふと店頭で見かけて「GM&ボール」セットを買い、MSIAの魅力を知ってちょぼちょぼ集め始めています。
 まず、価格が手ごろ。それにとにかく遠慮会釈なく遊び倒せるところが好印象。基本的にデザインはアニメ原典の設定からは大きくアレンジせず、多少のスジボリが入っている程度ですが、素材が柔らかいおかげもあってよく動くのですよね。グフがTV版のままで腰が捻れるのは正直驚きました。もっとも、ランドセルに繋がっているパイプの長さに余裕が無いんで、大胆なポーズをつけると外れてしまうのですが……。
 しかし、「遊び倒せる」というメリットが最高に活きているのはやっぱり『ガンダムW』系の連中でしょう。もともと『Gガンダム』系のコンセプトを組んでいるだけあってキャラクター性が濃厚なデザインとユニークなギミック、そしてザクやグフと違って最初から模型・立体化を想定してあるので可動範囲も広めと実に商品コンセプトと好マッチ。アニメ本編でパワーアップがマイナーチェンジに終わったヘビーアームズとサンドロックの2体は「地上用」と「宇宙用」の疑似コンパチになっているのも嬉しいところ。モノによっては墨入れがうるさく感じる事や塗り分けが甘い部分もありますけど、私のように模型を自作できない身としては充分納得できます。
 ただ、これって本来海外用の商品なので説明書の類が同梱されず、パッケージに貼ったシールでの簡単な説明だけなのが残念なところ。私がバカなのか、最初サンドロックの「クロスクラッシャー」のやり方とか、ゲルググのシールドを背中にマウントする方法とか気づきませんでしたわ。
 今のところ「一年戦争」モノが中心ですけど、商品仕様からすると『Gガンダム』とか『ZZ』みたいなギミック過剰気味のメカが似合うと思いますね。MSのみならずオーラバトラーやウォーカーマシンなど他のサンライズ作品も同様の商品になっていますし、今後のラインナップの充実が楽しみなところです。
(ビルバインが変形するんだから、ウイングガンダムもちゃんとバード携帯になってほしかったなぁ。そんな難しい変形じゃないんだし……)

ザ・フィギアシリーズ 特殊警察シリーズ(ダイソー) 2002年1月28日更新
 おそらく今回紹介するモンについては知ってる人は少ないでしょう。そもそも私も偶然知ったし、googleで検索しても一件も引っかかりませんでした。
 ブツは、100円ショップで売ってる自社ブランドのチープトイなのです。
 このフィギア(表記ママ・フィギュアにあらず)のサイズは10センチほどで、可動部位は四肢の付け根と首がそれぞれ一軸。構造的にも造詣の雰囲気からしても以前タカラが販売していたミニサイズの「GIジョー」の廉価版という感じです。名前の通り警察の特殊部隊っぽい濃紺のコスチュームに、ごてごてと手錠やらホルスターやらナイフならを装備してますが、その中にはどうもスタングレネードではなく爆発物くさい手榴弾も……軍じゃなく警察なのに。
 フィギア本体にそれぞれ武器が付属しているのが4種類と、ビークル(オフローダータイプのバイク)で、シリーズ全5点で、ブリスターの台紙にはちゃんとキャラ設定もついています。その内容とデザインは次の通り(デジカメがあれば簡単なんですけどねぇ)。

・マイケル:特殊警察隊の総指揮者。銃についての豊富な知識を持つ。この15年のベテランで、隊員からの信頼も厚い(頭にキャップでサングラス着用。4人の中では軽装。付属武器はショットガンと長銃身のマシンガン)。
・ジョーン:隊長の優秀な補佐役。爆発物・麻薬についての知識が豊富。凶悪犯罪やテロ犯罪に素早く対応(口にはガスマスクで別パーツのヘルメット付き。武器はそれぞれ異なるデザインのサブマシンガンが2丁)。
・アーノルド:海や川での捜索活動を担当。人命救助等のレスキュー活動も兼任。水中銃の扱いを得意とする(他のメンバーとは違いウェットスーツ姿にゴーグル。付属品はレギュレーターと足ヒレ、水中銃、ナイフ)。
・ポール:特殊警察隊屈指の名射撃手。離れた所からでも正確に狙撃可能。国防軍出身で、空手の有段者でもある(頭全部も覆面で覆って顔もゴーグルで隠し、身体にザイルをたっぷり巻いたいわば現代忍者。暗視スコープ付きのアサルトライフルと、双眼鏡やワイヤー打ち出し銃などをひとまとめにしたバックパックが付属)。

 デザイン的にも結構キャラが立ってますし、付属する小物も安っぽい造形ながらなかなかいい感じ。アーノルドに付いてくるダイバーズナイフには落とさないように手首に通すコードまで。装備品と役職や外見の組み合わせで性格まで想像できそうなあたり、昔のミクロマンとかアオシマオリジナルプラモなんかにも一脈通じるものがあります。
 いや、本当に作りそのものはチープですよ。塗装は雑だし、バイクなんてたったの8パーツ(それでもスタンドが可動して立たせられるあたりがナイス)。それでもこの味わいがオモチャ本来の面白さなんだろうな……と思って、敢えて誰も注目してないだろう品物を今回は取り上げてみました。

 ただ、フィギアに対してバイクや武器が完全にオーバースケールなんですよ。銃器なんかむしろ装着変身のG3にでも持たせた方がしっくりくるサイズ。まぁ、そのサイズ狂いもある種の迫力になるんですけどね。ちなみにグリップが太めなので残念ながらミクロマンに持たせるのは困難。MSinActionに持たせるとほどよい迫力になります。
 このダイソー100円フィギアには「宇宙モノ」もあって、そっちもいろいろと装備品が充実してました。多少出来が粗くても100円だと思えば腹も立ちませんし、こういう衝動買いもたまにはいいもんです。

『セーラームーン』ガシャポン、新旧比較!(バンダイ) 2002年3月11日更新 New!
 発売と同時に高いクオリティとセクシーさで話題を呼んだガシャポンHGIFの『美少女戦士セーラームーン』シリーズ。この商品の出来がいい事に異論を挟むつもりはありません。しかし、敢えて声を大にして指摘しておきたいのです。「セラムンのガシャポンは当時からすごかったのだ」という事を。

 さて、『セーラームーン』も10年も前の作品。忘れている方やそもそも知らない方もいらっしゃるでしょうから、当時の状況をおさらいしてみましょうか。
 今から振り返ると勘違いしそうですが、『セーラームーン』はある種「狙った」作品ではありましたが、絶対のヒットを目指し、あるいは約束されたものではなく、手探りでスタートした作品でした。ゴールデンタイムで家族向けである事も強く意識され、セクシーな表現は控えめ。初期にはパンチラも慎重に避けられていたのです(事実、予告では存在していたパンツが見えるカットが本編では修正されていた例も)。
 また、スポンサーサイドの商品展開としても「初の変身美少女グループヒーローもの」としてどういうモノを出していいのか迷っていたようです。結局、二年目以降ドールなどを中心にした普通の女玩路線におちつくのですが、ここでバンダイはあくまでも「従来のドール顔」にこだわり、『セーラームーン』を呼び水としたセガの『レイアース』や『セイントテール』がアニメキャラに近い顔の人形をリリースして話題を集めたのとは対象的でした(なお、バンダイも現在の『おジャ魔女どれみ』商品などでは古典的なドール顔にアニメテイストを混ぜこむような路線のようです)。
 そんな中で、当時数少ないアニメ設定に忠実なバンダイ製立体物が、200円ガシャポンで販売された「メイクアップセーラー」シリーズなのです! しかも、極めて高い再現度で!
『セーラームーン』ガシャポンとしては『R』初期に登場した「パチパチセーラー」という2頭身にディフォルメされた塩ビ人形にプラ製の服を装着するものが先に存在していました。こちらのラインナップは主役5人の変身状態と普段の制服、さらになるちゃんと月影の騎士の12種類。ちなみに変身状態では前髪パーツをいったん取り外し、プラ製のティアラをはめるという凝った仕様です。変身後の手袋やブーツ、制服の靴も別パーツです。
 続いて登場したのが「パチパチセーラー」のリアルタイプともいうべき、今回の本題「メイクアップセーラー」。ちなみに『R』時代に第三弾まで一気に出て、その後は途切れてしまったという番組の長寿化に比べるとやや不遇なシリーズでもあります。
 基本的な仕様は塩ビ人形にプラ製のパーツを装着する点は同じですが、付けるパーツは基本的にティアラとスーツのみで、ブーツやグローブは予め人形の方に造形されています。スーツは基本的にワンピース的処理を前後分割(ごく一部は腰のリボンが別パーツになっています)。
 手元に全部揃っている訳ではありませんが、ある分に頼ってシリーズのレビューをしてみましょう。
(なお、放送当時のリアル頭身のガシャポンとしては『Supers』時代に「DXセーラームーン」という無ギミックの彩色済みフィギュアが存在していたらしいのですけど、当時は『セラムン』熱がもうかなり冷めてたんでノーチェックなんですよねぇ……)

*第一弾
 主役5人は「変身直後の決めポーズ」で、他に月影の騎士もラインナップ。また、全シリーズ共通の仕様として専用スタンド付。プラパーツを外した人形本体にはレオタード風のモールドが入っています。
 プラスーツ自体は比較的厚みがあり、もっさりした造形なのですが、装着状態でも脱いだ状態でも全体のプロポーションが破綻しない絶妙なバランスはすばらしいの一言。
 ちなみにこのシリーズ、人形は肌色単色、スーツはプラ単色(白・紺・朱・緑のいずれか一色でランダム)なのですが、私の手元にある中では第一弾のマーキュリーだけがなぜか紺色のクリアなのです。おかげで何か妙な印象が……(ひょっとしてそのせいで後のシリーズでは不透明プラだけになったとか?)

*第二弾
 主役5人の、他にプリンセス・セレニティとあやかしの四姉妹という全10種。セレニティはドレスが前後各2パーツで構成されているのに加えて、肩もプラパーツ製。四姉妹のコーアンはデザイン状額の飾りとスカートだけがプラなのでバランスはいまいちですが、ベルチェは表情・ポーズともに秀逸。もともと露出度の高いデザインであるためか、人形のアンダースーツモールドもかなりハイレグで胸ぐりも深く切りこんだ処理になっています。
 主役5人は「必殺技ポーズ」で、ムーンはロッドが付属。マーズのカッコよさや、アンダースローで大きく振りかぶるジュピターの躍動感などは特筆に値します。特に他のメンバーは「攻撃を放った瞬間」であるのに、ジジュピターだけはスパークリング・ワイド・プレッシャーの「予備動作」をセレクトしてるあたり、センスを感じます。こういうダイナミックさは現行商品を上回る魅力ですね。

*第三弾
 5人の他、ネオ・クィーン・セレニティ、プルート。ちびうさ&ルナ&アルテミスセットがラインナップ。プルートは当然ロッド付。セレニティは冠もプラ製で、ドレス背面の翼風のリボンだけで3パーツという凝りようです。
 シリーズの最高傑作にして到達点。主役5人はそれぞれ単品でも個性豊かなポーズで、しかも5個を集めると台座がハート型に合体し、集合ポーズになるというデザイン。
 前2シリーズに比べると髪の毛の処理などに現在のガレージキットにも通じるような適度なアレンジが加わっています。ムーンのおだんご&尻尾も初めて別パーツとなってシャープさが向上。また、大きな特徴としては従来のシリーズとは異なり、額にティアラをフィットさせるための「溝」が存在している事です。これによって事実上、変身していない状態のフィギュアとしては成立していない事になります(そのせいか、アンダースーツは従来よりもハイレグで露出度が高かったりして)。
 もともと「メイクアップ」シリーズのスーツ装着ギミック自体「玩具としてのプレイバリュー」として盛りこまれた印象がありますが、この第三弾は現在の「飾るフィギュア」に近いとも言えるでしょう。前述した台座のシステムなど、現行商品をも上回るアイディアとして評価したいです。
 第一弾・第二弾が作中でのお馴染みポーズの立体化という事もあってアニメのフィルムに忠実なのに比べて、第三弾は当時のオフィシャルなキャラ商品などでの一枚絵のクオリティ(線の密度とか)を立体化したという感じですかね。

 新旧両者を比較すると、当時の「メイクアップ」がアニメ設定を忠実に再現しているのに比べて、現行のHGIFは立体映えするようなアレンジがバリバリ入った「小さなガレージキット」という印象。後者の特徴として「髪の毛やリボンの造形が細かく、全体的にエッジが強く立っている」「アニメ設定に比べて顔が縦に短くディフォルメされている一方、胴が心持ち長めで体型はむしろリアル寄り」という事が挙げられます。これは前述した通り、最近のガレージキットのモードという感じですか。身体が実際の人体に近い表現になっているせいか、スーツのアンダーバストに入っているラインも乳房の丸みを強調するようなものにアレンジされています。
 また、横顔を比べてみると意外な事に「メイクアップ」の方が自然な立体で、HGIFの方が扁平に見えます。これは正面からの見栄えを重視したためか、あるいは当時のアニメ設定が優れていたのか……。
 また、大きな違いとしてはHGIFの方は塗装を前提にした造形という点も挙げるべきでしょう。「メイクアップ」の方は無塗装なので、瞳のハイライトやまつげまで全部彫刻してあるんですよね。この顔の表現はなかなかいい感じです。
 そうそう。塗装といえばHGIFでちょっと気になるのが、スーツ本体はパールホワイトなのにスカートの中は艶消しの白という事。これだと下着としてのパンツに見えますが、設定の通りレオタードにスカートを付けたフィギュアのコスチューム風にしてほしかったところです。まあ、実はその点は「メイクアップ」も間違っているんですけど。

 ここからはちょっと苦言めきますが、いかにも今風のHGIFが評価高いのは当然としても、原作アニメの良さを忠実に引き写した「メイクアップ」の価値も、今だからこそ評価すべきではないかと思います。
 何から何まで「原型師のイマジネーションのほとばしり」になられても困ると思うのですよ。特に最初から作った人間の名前を掲げて個人ブランドで売るガレキとは違い、低価格マスプロ商品であれば尚のこと。大多数の消費者にとって共通認識である「原作」の良さを再現する「職人」的な仕事も必要なはずです。作り手個人の、露骨に言ってしまえばわがままや偏見である「作家」性の強調ばかりではなく。
 二次創作の楽しさや意義、そして可能性も分かっているつもりです。何しろ私自身、すき間商売的な事ばっかりやってる、オタクのなれの果てとしてのフィクション屋ですから。それでもなお、他人がデザインしたものを他のメディアに置き換える作業について、「作家性」とやらを声高に叫ぶのは、何か違和感を感じてしまうんですよねぇ。


(この記事に関しては、いずれ写真をつける予定です)


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