『世界が終わる場所へ君をつれていく』の裏話


 この作品は、東野圭吾氏のエッセイを読んだ後、買い物か何かのために自転車こいでる時に思いついたものです。
「怪獣映画で、科学者でも防衛隊の隊員でもない人間には何ができるのか」というような内容が書かれていたのを読み、「中学生くらいの男の子にとっては、別に怪獣を倒したりしなくても、見に行くだけでも立派な《事件》じゃないだろうか」と思いついた瞬間に話の大筋は決まりました。怪獣を見ようと自転車こぐ男の子が、途中で奇妙な女の子(当然制服、髪はストレートロング)と出会い、住民が避難した無人の街をふたりきりで旅する話にしよう、と。ですから、最初は「銀の樹」ではなく、もっと怪獣らしいものを想定していましたし、企画書のタイトルは「怪獣ボーイミーツガール」でした。なお、タイトルは最後の最後まで決まらずに、原稿が完成した後でほとんど無理矢理ひねり出したもの。
 自分でもかなり気に入った企画だったのですが、ライトノベルに限らずエンターティンメントフィクションというのはシリーズ化してどうしても一冊きりで完結するタイプの企画というのはなかなか通らないのですよ(まあ、作者のネームバリューだけで売れるようになれば話は別なのでしょうが)。
 で、ちょうどメディアファクトリーでは初仕事という事もあって「とりあえず試しの一冊」という事でお願いして、何とか形になったのが本作です。
 その後、打ち合わせの過程で「怪獣を前面に出すのはいろいろ好ましくない」という話になり、現状の「銀の樹」に変化した次第。初稿の時点では悪乗りして「ガメラ2」のみならず「トレマーズ」とか「ディープ・インパクト」いろんな怪獣&特撮映画へのオマージュが入っていたのですが削りました。確かに「僕」の一人称なんだから、彼自身があんまりマニアックになっちゃいけませんわな。
 ただ、ネタは抜きにしても「ミニシアター系邦画っぽさ」というのは前編に意識しました。例えば、終盤「僕」が「彼女」の後を追いかけて走るシーンは手持ちカメラの主観映像っぽさを狙ったつもりです。

 舞台が青森県なのは、作者の出身地で土地勘があるのも一因ですが、最大の理由は大都市圏から離れた場所じゃないとこの話自体が成立しないからです。御陵原市のモデルは五所川原市、柄良市のモデルはつがる市と、本当に作者の地元だったりします。
 本当なら主人公の「僕」も「彼女」も津軽弁まるだしで会話しているはずなのですが、それだと読者の皆様の理解を妨げますし、何よりも「青森らしさ」を出したかったのではありませんから、そういう部分でのローカル色はむしろ抑えました。

 自作について作品の外でいろいろと解説するのは本意ではないので軽く触れるに留めますが、「銀の樹」については「設定を放り投げた」のではありません。あれは「明らかにしない事」に演出的な意味があります。「彼女」の名前が明記されないと合わせて「はっきりさせてはいけない事」なんです。
 そのあたりまで上手く通じなかった点もあるようで、自分の表現力不足が悔やまれますわ。


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