| 幕末ジャイアンツ(劇団S・W・A・T) 観賞日時失念(失礼!) |
| 坂本龍馬・高杉晋作・西郷隆盛・大久保利通・岡田以蔵・桂小五郎。それに新撰組の近藤・土方・沖田を加えた9人が野球チームを結成して日本を賭けてペリーと試合をする……という奇想天外な喜劇。 思想も立場もバラバラの9人が練習を通じてひとつにまとまっていく様や、チビで運動音痴の大久保利通が最後の最後で活躍する展開は、いい意味でスポ根の王道という感じでした。俊足を誇る「逃げの小五郎」が一番バッターだったり、新撰組の三人が「最後の砦を守る男らしいポジション」として三人揃って外野を守ったりとか、実在の人物を野球に準えるやり方もGood。 ただ、陽気に盛り上がった試合の後、スポーツを通じて思想信条の垣根を乗り越えてほしいという龍馬の願いも空しく、結局9人は立場故にバラバラになっていきます。特に近藤勇の試合を経たからこその「徳川幕府と新撰組はチームメイトだ。チームメイトを見捨てるなと、教えてくれたのは坂本さん、あんただ!」という叫びが胸を打ちました。分割された背景画をそれぞれ引きちぎって「チームメイト」が去っていき、何も無い真っ暗な舞台に残った龍馬が絶望の中から大政奉還というみんなを救うための着想を得るものの、彼も凶刃に倒れ……。 明るい中盤と、ラストの喪失感の対比が切ない舞台でした。 |
| ビデオ・デ・ゴメンバー(TEAM発砲・B・ZIN) 新宿シアターアプル 99年5月30日 |
| 「大人が泣けるヒーロー物」にこだわり続ける劇団の噂は耳にしていましたが、実際の舞台を観るのはこれが初めてでした。 基本的には戦隊モノのパロディというかバリエーションなのですが、メタフィクション構造になっています。とあるフリーライターが仕事でいやいや「ゴメンバー大百科」のストーリー紹介を書くためにビデオを見ていると、落雷がきっかけでビデオの中の世界と現実がつながってしまい、ヒーロー物の「ご都合主義」が気にくわないライター氏は怪人たちに助言してヒーローを敗北させようと画策するが、何をやってもゴメンバーは勝ち続ける。意地になった彼の行動はどんどんエスカレートしていき……って展開なのですが、東野圭吾氏の小説『名探偵の掟』にも通じる「お約束へのツッコミ」が満載。そして、これも『名探偵の掟』同様に単にありがちなネタを茶化しているのではなく、ヒーロー物への熱く暖かい思い入れに満ちた芝居。 「しょせんお前たちなんか作り物だ。予め勝利を約束され、制作者の思いのまま動かされているだけなんだ」というライターに「オレたちにとってはこれが現実だ。オレたちはオレたちの世界の正義と平和を守るために戦っている!」と堂々反駁するアカメンバーの姿はひとりのフィクション書きとして感じるところ大でした。 加えていうと、さすがこだわっているだけあって「ヒーロー物」としての細部の行き届き方が嬉しかったですね。ゴメンバーのデザインは「ゴレンジャー+マスクマン」という雰囲気なのですが、色が違うだけじゃなくてそれぞれゴーグルの形が違うとか、さすがって感じですね。 |
| 白血球ライダー2000(惑星ピスタチオ) 新宿シアターアプル 99年11月16日 |
| これも前々から興味はあったものの、なかなか観劇の機会が無かった劇団。首都圏に出てくる前は上京のスケジュールの中でやりくりするしなかなったのですよ。 タイトルからも想像できる通り、こちらも基本的にはヒーロー物のスタイルを取っているのですが、なかなか難解というか、前衛的なムードのお芝居でした。 「何者か」の体内を舞台に、謎のウィルス軍団「セルショッカー」と、人体を守る「免疫警察」の戦い。その中で記憶を失った異形の白血球、シロー=シロガネが己の過去を振り返りながら遍歴する……というのが基本的な筋なのですけど、作中で回想シーンが入れ子構造になっていたりとか、奇妙な味がありました。 役者の肉体の存在感を強くアピールしながら、その一方では全編に濃厚な「死」の臭いが漂っています。「死なない」細胞であるガンと、「差し違えて死ぬ」ために存在する白血球という関係が、ひとりの人間の「死」と新たな生命の誕生の関係と照合されているのかなぁ……と思いましたが、やはり言葉ではうまく説明できません。 ともあれ、次の舞台が楽しみな劇団です。 |
| ジャスキス・トリロジー(TEAM発砲B・ZIN) 下北沢本多劇場 |
| TEAM発砲B・zinの出世作シリーズを3作品一挙再演……という事で本当は一日に三本まとめて上演する日を狙っていたのですが、その日のチケットは早々に売り切れてしまったので、別々に観賞してきました。では、以下各エピソードについて……。 |
| ジャスキス 2000年1月12日 |
| 長野の山奥、吹雪に閉ざされた温泉ロッジで落ち目のアイドルのグラビア撮影が行われていた。そこへキスを媒介して移動し、宿主をコントロールする寄生生物パラシャイダーの犯罪者セクシャルと、それを追ってきた宇宙刑事ジャスティ&ロボット刑事K−X1のコンビが乱入。アシスタントカメラマンの正義(マサヨシ)くんは行きがかりで体内にパラシャイダー・スパークを宿し、セクシャル逮捕に協力させられてしまう、というのが基本のストーリー。 意中の相手にキスもできない純情な正義くんが、セクシャル逮捕のためにいろんな相手にキスをしなければならない。しかも、当のセクシャルは次から次へと宿主を変えていく。ペンションに集まっているメンバーもそれぞれ誰かにキスしたがっていたり……と「密室の中でエスカレートしていく混乱」が楽しい舞台でした。 シリーズ3作の中でも「キスで悪を追いつめる」というコンセプトが最もストレートに出ていて、個人的にはいちばんのお気に入りですね。 小林愛さん演じる宇宙刑事ジャスティが美人なんですけど性格的にはツンツンして「かわいげのない可愛さ」全開。戦隊モノなどでも知られている阿部統さんがデザインしたコスチュームも全身をくまなく覆うストイックさとピンクのハートマークを大胆にあしらったキュートさのバランスが絶妙でした。 『ビデオ・デ・ゴメンバー』以来お気に入りの武藤陶子さんは年齢を大胆にサバ読んでいる発情気味のアイドル歌手という「イロモノ美少女」役。武藤さんはスチルなどで見るといわゆる「美人」というのではないのですけど(失礼!)舞台の上でキャラクターが宿ると実にかわいいんですよ。それも、メインのヒロインではなく、脇ならではの美味しさがあるように思えます。敢えて手前ミソで言ってしまうと『石のハートのアクトレス』の縁ちゃん系の魅力とでも申しましょうか。 |
| ゴージャスキス 2000年1月22日 |
| 前作と共通のキャラはジャスティのみという第2弾。キスによって相手の姿を盗みとる能力を持った宇宙人ダッシュが地球に逃亡。大富豪金ヶ淵家の姉妹がクリスマスパーティを催しているクルーザーに紛れこむ。それを追ってきたジャスティと、彼女の恋人であり同僚でもあるダン、そしてパラシャイダーの宇宙刑事シン。航行中の船という密室の中でホンモノニセモノ入り乱れ、しかもホンモノの人々も腹に一物抱えていたり……。外から見ただけでは誰が誰だか分からない騙しあい化かしあいの結末は? 今回は地球人サイドの主役はクルーザーの操船を担当するミステリアスな男・音無。彼を演じている工藤順矢氏がなかなかのヒットでした。今まで『ビデオ・デ・ゴメンバー』の怪人ワンダーブルや『ジャスキス』のロボット刑事などドンくさい三枚目役ばっかり観ていたのですが、音無というクールでシブいキャラクターを見事に表現していましたね。主催きだつよし氏が怪演するシンとの絶妙の絡みはさすがというべきでしょう。 実質的に「一人四役」をこなした西ノ園達大氏の熱演と、『ジャスキス』のアイドル役とは180度逆の潔癖症でいき遅れのご令嬢を演じた武藤陶子さんが印象に残りました。 また、設定から当然導き出されるのですが、ホンモノとニセモノの同一人物が同時に出現したりと、TVや映画の特撮では当たり前の事も生の舞台で行われるとインパクト充分。 そうそう。私が観た回ではカーテンコールが2回かかったせいか、きだ氏がまるっきり同じ内容の挨拶を繰り返していました。これはひょっとして時間犯罪者クロノスの仕業? (予告編での武藤さんのアドリブツッコミでうろたえたらしい……というのが真相?) |
| ジャスキス・デス 2000年2月2日 |
| キスする事で時間を巻き戻す能力を持った宇宙犯罪者クロノスを追って三度地球に現れたジャスティ。とあるオフィスビルにクロノスを追いつめ、閉じこめるが戦いに敗れジャスティは死んでしまう。だが、事故によってクロノスの能力が暴走し、彼自身も制御できない同じ時間を繰り返すループが形成されてしまう。それを解消すべく平凡なサラリーマンの奥下と、彼に寄生したパラシャイダーの宇宙刑事ゼロが動き出す……。 うーん、正直言うと前2作に比べると今ひとつという印象が残りました。『ジャスキス』では好きな人にキスできずにいる主人公がキスしまくります。『ゴージャスキス』の時はダッシュがいろんな姿に変わり、しかしそれぞれの「本物」も表の顔と内心が食い違っていました。 ところがこの『ジャスキス・デス』ではキスというギミックがトリガーとしてしか作用していなくて、クロノスの能力やシナリオ上の仕掛けが、キャラクターのドラマとうまく連動していないないのです。ジャスティが死ぬとか、これまで空間としての密室であったのにプラスして「時間の密室」という、前2作との差別化は効いているのものの『ジャスキス・デス』内部では歯車が噛みあっていないというか……。 ただ、役者陣の演技はかなりよかったですね。これまでとイメージを一変させてスマートな悪役クロノスを演じた西ノ園達大氏や、逆に普段はダンディな二枚目の印象が強い平野くんじ氏がちょっと情けない感じのサラリーマン奥下くん役だったり、実質的主人公とも言えるゼロの武藤陶子さんの熱演など、3作品を通じてもいろいろと新鮮なイメージに出会えたのは収穫でした。 唯一3作品通じて同じキャラクターを演じた小林愛さんもシリーズを通してジャスティ本人の微妙な変化を見せてくれましたし。 |
| ザ・舞台(劇団S・W・A・T) 下北沢「劇」小劇場 2000年2月2日 |
| いつもはスポーツを題材にしたり、チャンバラ活劇だったりとダイナミックなイメージがある劇団なのですが、今回は芝居の稽古場という狭い空間で、登場人物もメイン4人プラス2人アンドチョイ役数人というコンパクトで密度の濃い舞台。最後列で観たにも拘わらず役者の細かい表情まで見える小さな劇場というのも内容にマッチしていました。 ストーリーは、ある芝居のために集まった4人の役者。演劇経験ゼロのモデルに落ち目のアイドル、新劇出身でやたらとオーバーアクションな奴、アングラ崩れというまるっきり方向性も性格もバラバラの顔ぶれに、ピンチヒッターで任された演出家。チームワークも何にもない人々が演劇の稽古を通じて反発し、触れあい……と物語の方はS・W・A・Tらしくストレートなもので、物語が終わった後に「ダメ押し」の落ちがつくあたりニヤリとさせられました。 それと、面長のせいか普段は「バッタ」とか言われてイロモノな役柄や狂騒的なキャラクターが多い中友子さんがしっとりしたヒロインを演じているのが印象的でした。すらりとした長身がモデル出身という設定にもマッチしていましたしね。 発砲の武藤さんのところでもちょっと書きましたが、一見でパッと分かる「美形」ではない人が「ドラマ」の力で美男美女になるというのも、テレビドラマや映画では味わえない舞台演劇の魅力の一端ではないかと思いますよ、私は。 |
| 4人のN氏(惑星ピスタチオ) 新宿シアターアプル 2000年3月12日 |
| 前々から興味があった劇団、やっと首都圏住まいになって足繁く観に行けるかと思った矢先に届いたダイレクトメールに書かれていたのは「解散公演」の4文字……。非常に残念なのですが、敢えて言えばこれも舞台演劇が持つ「一期一会」性のひとつです。 前回の『白血球ライダー2000』とはまた違った意味で難解な芝居でした。何しろコレを含めて2回しか観ていないので「ピスタチオらしさ」について語れるような立場にはないのですけれど、装置は抽象的な鋼鉄製の彫刻作品だけで、全てを役者の肉体で表現するという事は共通していながら、印象は大きく異なります。敢えて比較すれば『白血球』の方が肉体の内部を舞台にした「生命」の物語であり、例え静かな場面でも絶え間なく続く「命」の息吹が底流となっているのに対し、『4人のN氏』は内的世界を舞台にした「精神」の物語……というところでしょうか。舞台全体にどこか静謐な雰囲気が漂い、巨大なロボットか、あるいは抽象化された人体をバラバラにしてパーツごとに並べたような装置が、これが「人の内側」での出来事というイメージを強めていました。 教授の代役として学会に出席する事になった学生が、列車の中でうたた寝をした事から見知らぬ草原に迷いこみ、奇妙な夢の中で様々な人や事件に巡り会う……というのが大筋ですが、これを説明したところであまり意味がないような気もします。ひとりの役者が場面によって異なる人物を演じ分け、場合によっては人間以外の生き物や怪物、自然現象まで表現するというスタイルそのものが、夢の中での認識の曖昧さを表しているのでしょう。何しろ、主人公は他人の視点になって別人が演じる「自分」を「他人」として眺める事さえあるのですから。 結局夢の中で何年もの時間が経過し、悪夢は覚めずに終わる……という解釈が正しいのかどうか分かりませんけど……。 |
| ハピネスシート〜消えるな萬映画館〜(小野プロデュース) 萬スタジオ 2000年4月7日 |
| 客席の物語です。 会場の「萬スタジオ」は80席ほどの小さな劇場で、そのステージに椅子を並べてそっちが客席。通常なら客席として使われる階段床に椅子を据えつけたエリアが舞台という、いきなり面白い仕掛けを見せてくれました。前説によると照明さんがとにかく苦労したとか。 3つの「客席にまつわるドラマ」がオムニバスとなって、それぞれのエピソードに登場した登場人物が最後の第4話では一堂に会するとスタイル。 新アトラクションを初日最前列で観ようと前夜から客席に忍びこんだディズニーランドマニア、コンサート会場で設営のバイトをするSMAPになれない男たち、しょぼいノンプロ野球の試合を応援する男とそこで合コンする彼の妹たち、そして潰れかけた名画座……。そこで語られるのは客席の物語であり、客席のこちら側と向こう側の物語。 素直な気持ちでほろりとさせられたり勇気が出たりという舞台でした。芝居らしいテンションの高い演技と、日常会話に近いダルな雰囲気がほどよくミックスされて独特なムードを醸し出しています。正直、ところどころセリフをとちったのかと思う場面もあったのですが、すかさずフォローする復元力もありますし。 平日にも拘わらずほぼ満席だったのですけど、前述の「日常っぽい会話」なんかはあまり規模の大きい劇場では出せないと思うので、これからどういう方向を目指すのかが注目したいところでもあります。 そうそう、最近は声優としても名前を見かける折笠富美子さんが演じる「やる気なさげで身も蓋もない女の子」が妙にツボでした、はい。 |
| 不純恋愛2000 GO GO!(小野プロデュース) 渋谷・シアターD 2000年11月24日 |
| 小野プロは今回が2度目。今回は一種のシチュエーションコメディで、5マタ交際をしている女の子の部屋でつき合ってる5人の男が鉢合わせするというもの。マンションを買った当人でもあるソフトハウスの成り上がり社長、流行に賢い遊び人、生真面目で話好きの中学教師、お人好しで朗らかなコック、そして幼なじみの自称詩人。この5人が彼女を挟んで揉めているところに現れた彼女の女友達も同性愛者で、という事でますます混乱に拍車がかかるが、実は……というお話。 はっきり言って、設定そのものはかなりきわどいというか、不快感を招きかねないのだけど、役者陣の熱演で宿ったキャラの魅力で救われている舞台という感じがしました。折笠富美子さん演じるヒロインが、5マタ交際はしていてもまるっきり邪心や下心がなくて素直に全員を同等に愛しているという事、そして男どもの方はそれぞれ下心こみで自分の魅力を彼女にアピールしているのだけど、彼女にとっての魅力はそのセールスポイントとは別のところにあるっていうのがミソでしょう。タイトルは「不純恋愛」ですが、逆に「純愛」って何じゃらほいと考えさせる内容でした。 前述の通り役者陣の熱演はなかなかのものでした。聞くところによると小野プロは原則としてアドリブは用いず、一見そう見える部分も「アドリブ風に計算された演技」だそうで。 舞台では映画やドラマとは違い、役者の「体格差」を誇張する事は難しいのですが、今回の舞台は男性5人がほぼ常に舞台に勢揃いしていて、そこにかなり極端な身長差があり、面白い個性になってました。長身の大塚英淳氏がのほほんとした役柄で、小柄な小野真一氏や大場達也氏がエネルギッシュだったりとか。折笠氏のヒロインはどこか「天然不思議少女」っぽい感じでなかなかよかったのですが、以前に別なキャストで同じ芝居(正確に言うと、原型)を観た友人の話によると、前回は長沢美樹さんが主演で「天然不思議」ぶりはそっちの方がマッチしていたとか。そっちも観てみたかったなぁ……。 今回の会場はお笑い系のライブなどがメインのスペースらしく、芝居用としてはステージも客席も小振りなのですが、それが「彼女の部屋に野郎がたくさん鉢合わせてゴタついている」という雰囲気をむしろ強調していました。恐らく、これも狙ってやったんでしょうね。前回の『ハピネスシート』もそうでしたが、芝居の仕立て方はオーソドックスでありながら、味のある空間が印象に残りました。前作の『ハピネスシート』では意図的に日常会話っぽい雰囲気を混ぜていたのに、今回は演劇的なテンションの高さをずっと維持してたりとか、アドリブの件なども含めて、一見の印象以上に緻密でテクニカルで侮れない劇団です。 |
| 3・1・5・6 THE BEST OF ME(劇団S.W.A.T!)新宿スペース107 2000年12月7日 |
| タイトルは「サイコロ」と読み、「PSYCO LAW」という副題もあります。座長で作者で演出家の四大海氏と、SWATのエースのひとりである清水浩智氏による2人芝居ですが、登場人物は2人ではありません。「倉本荘」というアパートの住人を、四大氏と清水氏がそれぞれ3人ずつ演じるという趣向なのです。清水氏がアパートのオーナーの息子である倉本荘クンとオカマのミレーと柄の悪い強面風のゴーギャンの三役。四大氏は常に咳きこんでいるゴッホ、子供っぽくて感情の抑制ができないムンク、そしていつの間にかいなくなった少女に代わり、倉本クンの治療のためにここに引っ越してきた医者の毒田の三役。 で、このシフトのために早い段階で気づいてしまうのだけど、このアパートの住人たちは実在の人物ではなく、倉本クンの「多重人格」。そこから半歩踏みこむとやっぱり気づいてしまうのが医者の毒田すら、多重人格のひとつでしかないという事。こういう仕掛けにしていながら、単に「二人芝居だから」っていう理由だけで「他の人格」と「全くの他人」を同一の役者が演じている訳はないでしょうからね。「サイコロ」というタイトル自体、同一の存在でありながら、常に6つのうちの1つの面だけが意味を持つという事を言っているのでしょうし。 まあ、実際にそういうオチがつくんですが、途中でネタ割れするから詰まらないという訳ではなく、途中でこの「気づき」を否定するような描写が入ったり、補強するような表現があったりで最後まで緊張は維持されますし、単純に両人の目まぐるしい演技の展開を観ているだけでも引きこまれます。 (間に旧作の再演があったものの)前作の『ザ・舞台』といい、今回の『3156』といい、出演人数を絞ったタイトな舞台が続いているのは、SWAT自体新しい方向性にチャレンジしているのかも知れません。 さて、実はこの舞台もうひとつ強烈な趣向があります。SWATには「スーパー割ぜり」とも称されるテンポよく休みない台詞の掛け合いで長い時間を持たせるという得意技があるのですけど、今回はメンバーは2人だけ。しかも、舞台の上で実際にカレーライスを作り、それが背後で煮込まれていく中で掛け合いが続いていくのです。何というか、ものすごい緊迫感です。視覚聴覚だけでなく、嗅覚にまで訴えかける舞台なんですから。 しかも、出来上がったカレーを全員が食べるというシーンになるのですけど、お気づきの通り、キャラクターは6人ですが役者は2人。次々に違う人物として、都合3杯のカレーライスを平らげなければならないのです。まぁ、観ていて実際にかなりキツそうでした。しかも、チラシを見ると9日と10日は日に2回ずつの公演……6杯のカレーを二日続けて……ふたりとも大丈夫だったんでしょうかねぇ? ちなみに、私は芝居を見終わった後、帰り道のココイチで遅めの夕食としてソーセージカレーを食べたのでした。 |