| SAVIOUR BLUE(カプセル兵団) WEST END STUDIO 02年04月29日 |
| 火星で演習を続けていた戦闘用試作アンドロイドが4体脱走した。リーダーはバランスの取れた万能タイプで、腕に戦闘用ブレードを収納したフェンサー505。近接格闘戦に特化し、外皮を覆うナノマシンによって獣人型へと変貌するシーフ6Zはガラの悪い皮肉屋。両腕にグレネードランチャー、胴体にはミサイル弾倉を装備した重砲支援タイプのディーマンI型は仲間思いで気のいい奴だ。そして紅一点で情報戦に優れたクレアヴォイアンス99はフェンサーに秘かな想いを寄せている。 彼らの中枢には死体から摘出された有機脳が使わており、ふとしたショックから生前の記憶を取り戻したフェンサーを妹に再会させるため、そしてもうすぐ3年の耐用年数が終わってしまう自分たちの命を永らえるために危険を承知で地球にやってきたのだ。 彼らを迎え撃つのは全身がサイボーグ化された刑事のコンビ。バルカン砲とマニュピレータで武装した多脚歩行戦車を駆る賞金稼ぎ。そして、サイバーダインボディ社がフェンサーらのデータを元に作り出した新型アンドロイド・ネクサス。未来都市のビルの谷間をタクシースピナーが走り、ミサイルが飛び交い、ガンファイアが閃く! 念のため言っておきますが、これは映画でもマンガでもなく舞台演劇の紹介文ですし、別段内容の誇張もしていません。基本プロットや「ネクサス」「サイバーダイン」という言葉の選び方からも分かる通り、80年代のアニメやマンガ、SF映画を思わせる設定とストーリーを、舞台で再現した意欲作。特殊なギミックなどは使わずに、音響効果とたった9人の役者の肉体だけで上記のようなネタまで表現しているのです。さらには懐かしい「板野サーカス」まで! ストーリーはややパターンなきらいがないではないですが、ドラマは骨太で熱く、アクションのキレもいい。ウェルメイドなOVAか、一冊完結のライトノベルという感じ。キャラもよく立っていて、伏線も地道に張り巡らされています。 主人公・フェンサーを演じた田中精氏のヒーロー芝居が実に板についていて、そのまま戦隊や仮面ライダーに出してもいいような雰囲気でした。 単色のTシャツとレザーの上着の組みあわせを基本にした衣装も、個々のキャラ立ちと群舞の際の統一感という一見相反する要素を両立させていて大満足。今回の会場は小さなスタジオだったけど、もうひと回り大きな劇場でも通用する内容だと思います。 ただ、ちょっと気になったのがせっかくメカアクションや特殊な状況設定など、ちゃんと動きを観ていれば充分に分かるのに、言葉で補いすぎたためにいささか安っぽくなってしまっていた点です。このあたりはもっと役者の表現力と観客の読解力を信じても良かったのではないでしょうか。 同様に、ツカミとして入れたらしい序盤の小ギャグも、むしろ中盤以降の近況感あるシリアスな展開に比べるといささか間延びしていたような気もします。いや、個人的には寄生虫超人サタンクロスの魔技トライアングル・ドリーマーを生身の人間がやってるってのは楽しかったんですけどね。 |
| メルダイバー(TEAM発砲B★ZIN) アートスフィア 02年06月20日 |
| 今よりほんのちょっと未来。政府は悪質なネット犯罪に対抗するためにあるシステムを導入した。自らの肉体を電子情報に変換し、ネットの海に潜ってウイルスと戦う戦士−−メルダイバーである。だが、メルダイバー第一号の竜宮は任務中に謎の「穴」に落ちて姿を消した。 当局は竜宮の教え子である新人女性ダイバー・防人を派遣しようとするが、そこに携帯電話すら知らない通りすがりのローテク人間・潮が首を突っこんで……。 電脳世界を舞台にしたヒーロー物。しかも従来のシリーズとは違い、戦隊や宇宙刑事というようなオリジンを持たない、まるっきり発砲独自のヒーローという事になります(類似のアイディア自体は『グリッドマン』や『デジモン』などないわけではないですが)。メルダイバーたちのコスチュームもオーソドックスながらも既存のヒーローにあまり似ていない独自のものですし。それだけに「ヒーローものの第一話」として世界観や事件に巻きこまれた何も知らない男が主人公になるプロセスなどは丁寧に描いていた印象があります。 大きな劇場に見劣りしないアクション満載の舞台で、キャストも世代交代を計った『パレット』『ゴメンバー・デ・ショウ』とは違い、脂の乗ったメンバーが然るべきポジションに治まった配役でした。 ただ、個人的には充分満足とは言えない出来でした。決してつまらないわけではないのですが、快勝というのではなく、ハンディキャップマッチで善戦した敢闘賞という印象なのです。 ネット世界を舞台で表現するという点では、かなり頑張っていたと思うのです。ただ、やっぱり同じ題材を用いた映画やアニメに比べると不利は否めません。ストレートな分かりやすさは発砲の魅力なのですけど、今回はそれが裏目に出たというか、ちょっとチープな感じになっていたのではないでしょうか? もっと思い切って役者の肉体ならではの極端な表現をしてもよかったのではないかと。 ストーリー面でも防人と潮のふたりに主人公としてのウエイトが均等にかかっている感じで、もうちょっとどちらかにピントを絞った方がよかったように思います。 前述の通り、題材が新しいためか逆に役者陣は今回かなりオーソドックスな配置。主人公はきだつよし氏、ヒロインに小林愛氏、平野くんじ氏が二枚目でギャグ担当は武藤陶子・工藤順矢両氏といったように。いい感じだったのは防人役の小林氏ですかね。ここしばらく悪役とかクールな男装の麗人とかいう役どころが続いていましたが、今回はドジで健気系のヒロインというのはちょっと新鮮でした。 |
| 幕末ジャイアンツ(劇団S・W・A・T) 本多劇場 02年7月30日 |
| 坂本龍馬を初めとする幕末の有名人が、思想も立場も飛び越えて、尊皇佐幕入り乱れ、野球チームを組んでハリス率いるアメリカチームと戦うという奇想天外な物語。 98年の初演時でも存分に楽しんだ、SWATの芝居の中でも個人的には一、二を争う好きな物語です。今回は前回とはキャストを一部変更していますが、これがかなり大胆な入れ替え。座長であり、作者であり、演出家でもあり、ほぼ常に主役もしくは重要なポジションを演じてきた四大海氏が脇に回り(ただし、かなりの「飛び道具」な配役ですが)、龍馬役を高橋将氏が演じたのです。女優陣でも、中友子氏が不在でしたし。 好きな演目だけに前回の印象は強いのですが、飄々として超然とした四大龍馬に比べ、高橋龍馬は青臭い若さと誠実さがあり、独自の個性を出していたと思います。敢えて難を言えば「日本人VSアメリカ人」というモチーフの中で日本側にいるのが不自然なくらい、本人の印象がバタくさい点ですかね。同じく、交替したキャストに関して、ハリス夫人メアリーに関しては前回の役者の個性に則ったギャグを無理に移植したようなところがあって正直いまいちでしたか。やっぱりバッタに比べてガガンボじゃインパクト弱いですよ。 ただ、役者のシフトを入れ替え、再演モノで敢えて役柄の固定化から脱却を計った事そのものは大きく評価すべきでしょう。 何しろ上記のような設定なので、年代の考証などはいい意味でデタラメなのですけれど、歴史上の人物から上手く膨らませたキャラは魅力的。ある意味では主人公である大久保利通のプライドや劣等感と、文武両道のエリートである桂小五郎の対比が実にいい味出してます。あと、やっぱり瀧下涼氏が演じた岡田以蔵が味わい深かったですね(瀧下氏といえば、今回はいつもの前説芝居「ヤクシャイダー」がちょっと変則的な扱いだったのにも意表を突かれました、はい)。 非常に男くさく汗くさく、舞台の上で動き回り、ひたむきな連中がじたばたしながら何かを成し遂げる……実にS・W・A・Tらしいいい芝居でした。悲劇的な結末もじんわり染みますし。そう言えば、S・W・A・Tの時代劇といえば真田十勇士をモチーフにしたものもありましたが、『幕ジャイ』の連中のほとんども十勇士も、史実ではある意味「負け組」なんですよね。真田十勇士で「史実」ってのも変な話ですが、まあ負けた陣営に属するキャラという事で。このあたりは四大氏の好みの反映なんでしょうか。 |
| アルケミスト(カプセル兵団) アドリブ小劇場 02年8月23日 |
| ある企業が孤島に作った研究所−−そこでは南極の氷山に埋まっていた隕石に付着していた未知の細胞を培養する実験が行われていた。異様に厳重なセキュリティで外界から隔絶されたそこは、ひとつの街であり、ひとつの世界。そして錯綜する恋愛模様。高校時代から知り合いだった同僚の女性・ユリコに想いを寄せるシンイチ。一方、両親から捨てられてシンイチの妹分として育ったメグミはシンイチを愛している。だが、ユリコの気持ちは研究班のチーフに向いていて……。 そんな中、ある傲慢な研究者が秘かに手を加えた培養サンプルが急成長して怪物化する。殺戮の嵐に包まれた孤島で、それぞれの恋はどんな結末を遂げるのか! 紹介した通り、物語そのものはオーソドックス。ただし、表現は大胆という手法は前作『SAVIOUR BLUE』とも共通しています。今回も成長し、変異を重ねるクリーチャーを役者の肉体だけで表現し、しかもそれが重装備の警備部隊と熾烈なバトルを繰り広げるのです。また、ひとりの役者がシーンによって異なる役柄を演じたり、場合によっては舞台装置の一部や怪物まで担うため、抽象化され、適度な統一感と色による視認性を盛りこんだ衣装も効果的。転換というか、シーンの切り替えが早いのも限定された装置・人数でスケールの大きな物語を見せる力になっています。 役者陣も魅力的で、特にシンイチを愛しながら、彼からは恋愛対象として扱われないメグミを演じた今井麻美氏が光ってました。シンイチの田中精氏も、前回の強いリーダーシップと行動力を持つセイバーとはまったく異なる、気弱で純情な科学者役を好演。 それと、これは余談というか何というか。 これもカプセル兵団の芸風というか持ちネタなのかも知れませんが、今回も懐かしのアニメ・マンガがらみの小ギャグが序盤に乱れ撃ち。しかも微妙にマニアックなのが。『ガンダム』や『Gガン』はポピュラーとしても、『北斗の拳』ネタでもよりによって雲のジュウザとか『キン肉マン』のクロスボンバーやらトライアングル・ドリーマーやら……。 こうなったら次の公演でも寄生虫殺法が炸裂するのを期待しろという事なのでしょうか? |
| メモリアルタンク(ミライエンジン) 新宿シアターモリエール 02年12月17日 |
| 砂漠に覆われた、滅びを目前にした世界。そこで目覚めた坂本龍馬のクローン。新撰組の近藤・土方・沖田の三人や岡田以蔵、千葉兄妹に妻のおりょうに加えて、なぜか女性になっている勝海舟まで再生されているけれど、他に人はおろか生き物の影すらない場所で、幕末の英雄のDNAと記憶を持つ男は、徐々にこの世界の在り様を知っていく……。 これが事実上の旗揚げらしいのですが、なかなか今後に期待できる劇団です。状況設定が秀逸ですし、女海舟や坊主頭の龍馬など、独自のイメージもツカミが強くてOK。役者の掛け合いもテンポよく、繰り返しギャグも上手く効いてました。 ただし、まだまだ難点もあります。例えば舞台上の装置があまり機能していなかったり、中盤から各キャラクターの動きがバラバラで、細かいギャグや激しい肉体表現で間もたせしているものの、物語のつながりが悪い点などは気になりました。キーパーソンである龍馬と以蔵の絡みが終盤に集中してしまい、ドラマとしては悪くない流れを内包しているのに、やや唐突な印象が残ってしまったのです。 どちらも惑星ピスタチオ(腹筋善之介氏)の流れを汲んでいるせいか、衣装のセンスや肉体表現の技法など、カプセル兵団に似たところが見受けられましたが、やはり向こうに一日の長があるように思えます。特に今回は公演形態が公演形態だけに、どうしても比較してしまうんですよねぇ。 |
| ドラゴン(ショーGEKI大魔王) 全労債スペース・ゼロ 02年12月21日昼の部 |
| わずか50人しかいない地下?の世界。しかしそこで彼らは歳をとることもなく永遠の時を過ごしていた。そこへ突如、天に向かいそびえ立つ巨大な塔が現れた。高さは約2000メートル、階にして500階はあろう。それこそは失った時間を取り戻し、元の世界へ帰ることのできるドラゴンの塔。ただし、その頂上へ上れるのはただ一人のみ。永遠の繰り返しの中に閉じこめられた50人の男女は、失われた時間を取り戻すためこのドラゴンの塔を上るレースを始めた。 人生はレースだ、いやこのレースこそ人生そのものだ。 思わず、チラシに書かれている宣伝コピーをそのまま転記してしまいました。 日記でも触れた通り、今回初めて観る劇団でしたが、これが大当たり。まず、上記の宣伝文にある通り、コンセプトが実に明確。そして、そのイメージを実現させるために横幅はステージいっぱい、高さが三階建てほどもある階段の塊が組み上げられ、50人もの役者が走り、戦い、踊り、歌う! 単純に物理的な迫力だけでもかなりのものです(しかも、私の席は翻った裾が触れるか触れないかの場所だったのですから)。 競争する各チームも「他チームをすべて打破し、吸収合併して世界を統一する」「己の勝利よりも困っている人を助ける事を優先する」「他チームの妨害を無情の喜びとする」「他に束縛・支配される事を拒み、自由に生きる」など明確な個性を持ち、レースの行く末そのものが楽しめました。しかも、敗れたチームが併合される描写のあたりから、この世界が「社会」の比喩というよりは「ひとりの人間の心の中」という様相を帯びてきたように私には思えました。いわば、感情やら正義感やら悪意やらを各チームが象徴し、ひとつの人格として統一され、表出するプロセスの視覚化とでも言いましょうか。 「地下?世界には、ベートーベンの第九合唱しか音楽は存在しない」という設定のもと、劇中の楽曲がすべてそのアレンジというのも、独特のイメージを生んでいました。 それぞれのチームが競い合い、併合し、まとまっていく中で、そもそもドラゴンの塔出現のきっかけとなった50番が、ついに名前を獲得し、頂上を目指す参加者のひとりとして、そしてたったひとりの「チーム」として決意表明するクライマックスも盛り上がり充分! 途中休憩を挟んで3時間の舞台が、あっという間でした。 |
| ドラゴンロード(カプセル兵団) 新宿シアターモリエール 02年12月21日 |
| いつの時代とも知れぬ「昔の中国」。各国が覇を競う中、総督・王は天下の平和のためには武力統一以外に道はないと考え、軍備増強のための酷税を民に課していた。そんな外界とは離れた覇王寺で拳法の修行に励んでいた龍と馬のふたりは、反乱組織の一員・少鈴を助けた事をきっかけに、俗世と距離を置く師匠の態度に疑問を抱き、下界に降りる。そして、龍は苦しむ人々を救うために反乱組織に身を投じ、馬は兵士となって総督の娘・神花と恋に落ちていく……。 毎回迫力ある肉体表現で楽しませてくれるカプセル兵団の新作は「カンフー映画」でした。ストーリーはオーソドックスで、とにかく役者が戦う、跳ぶ、そして飛ぶ! ワイヤーアクションやさまざまな映画的特殊効果を、舞台上で、しかも特殊な仕掛けではなく役者の肉体だけで再現しようという試みは、かなりのレベルで成功していると言っていいでしょう。殺陣の面でも、同じ棒が振るい方で「刀」になったり「蝶剣」になったり「矛」になったりと、それぞれ違った武器に見えるあたりもいい感じです。 「映画」的なのはアクションばかりではありません。「同じ場面をアングルを切り替えてカットバックする」「視点が回りこむ」というようなカメラワークにも果敢にチャレンジしていますし、挿入歌が流れる中、短いシーンをつないで時間経過や心情の変化、人間関係の深まりなどを表現するというのも演劇というよりは映画っぽい技法です。 ちょっと残念だったのは、クライマックスのシチュエーションが必要以上に回りくどく、そのせいで展開が駆け足になってしまった事でしょうか。龍と馬の同門対決がラストに来るのは当然としても、羅鬼がらみのシーンは物語的には蛇足だったのではないでしょうか? 表現としては面白かったのですけど。 あ、そうそう。細かい事ですけど、今回も『北斗の拳』ネタ(しかも五車星という微妙にマイナーなもの)や『ガンダム』『キン肉マン』ネタが織りこまれてましたが、なぜか寄生虫殺法トライアングルドリーマーはありませんでした。 |