| センゴクプー (TEAM発砲・B・ZIN) 下北沢本多劇場 01年1月18日 |
| 時は戦国。武将たちは虎視眈々と天下を狙い、農民や僧侶までが槍刀で武装する時代。越後の小国に奇妙な男がいた。腕は立たぬが口は立つ、「弁は剣よりも強し」と詭弁強弁口車を駆使して世を渡る風助だ。ふとした事から彼と出会った「侍になりたい若者」雷蔵は、当初は戦いを嫌う軽薄とも見える態度に反発しつつも、やがて風助に惹かれてコンビを組む。しかし、大名の天城嵐山、男装の軍師・雪那、宣教師ヌゥベンなど風助の知謀と弁舌を己が目的のために利用しようとする者たちが現れ……。 「発砲」は『ビデオ・デ・ゴメンバー』からなので通ぶった事を言うのも恥ずかしいのですが、「ヒーローもの」として見た場合、前作の『パレット』からちょっと傾向が変わったと感じました。いわばそれまでは「ヒーローではない人間がヒーローとして戦うようになる物語」だったのが、『パレット』と今回の『センゴクプー』では「戦う事だけが《戦い》かのか?」という問いかけが基調になっています。ただ、正直な話『パレット』ではそれがまだ熟成してなくて、きだつよし氏演じるPLET隊長が「何もかも解っている万能の美味しいトコ取り」という印象が拭えなかったのです。 しかし、今回は前作の問題点がクリアされ、より深みのあるドラマとして結実した感があります。主人公風助の飄々とした態度の裏に隠された真摯さと、青臭くもひたむきで実直な雷蔵の対比の効いたコンビネーションを中心に、それぞれのキャラの思惑に一貫性があり存在感があります。風助の思想も上司の腹の底も理解できない「単純な武人」竜巻(演:工藤順矢氏)や、コメディリリーフにしてメロドラマ担当の女忍者・しぐれ(演:武藤陶子氏)などもいいですが、「発砲」に不足している悪役面のために客演したという嵐山役の小山剛志氏の二枚腰で裏表ある悪役ぶりは特に見事でした。それと、今回のヒットは雪那役の小林愛氏でしょう。これまでは「正統派ヒロイン役」が多かった彼女ですが、今回は男社会にルサンチマンを持つ非情の軍師というクールビューティで、新しい魅力を発揮しているばかりでなく、無言で歩いているだけなのに雄弁に感情が伝わる芝居で魅せてくれました。 戦国時代なんで当然チャンバラアクションも豊富でしたが、そこでいい味出してたのが松井大氏デザインの衣装。全員、必ず左右非対称で、色がアクセントになる部分を作ってるのです。舞台ではカメラの寄せ引きという事が当然できないため、遠い席からは激しい立ち回りの際に役者がシルエットになり、動きがよく解らなくなってしまう事もあるのですが、身体の左右や裏表で色を変える事で役者の動きが強調されるのですね。 いつもの「主題歌」とは違う、インストにコーラスだけが入ったOP音楽も「風」を強くイメージさせて印象に残りました。思わずCDも買っちゃいましたよ。 ラストは悲劇的な展開かと思いきや……というあたりも力強い爽快感があります。テーマ的に私が書いている『黄金記』とかとも一脈通じる部分があり、いい勉強になりました。 |
| 和・三銃士(劇団SWAT) 下北沢 ザ・スズナリ 01年7月31日 |
| 伊達政宗がイスパニアに送りこんだ遣欧使節団の侍がヨーロッパに残って三銃士となった……という奇想の素晴らしさが光る、題して「四大海流外国文学改竄芝居」。 一本気で忠義に厚いが借金まみれの鳩巣虎之介、女たらしの新井助右衛門、大家族を抱えた婿養子の堀利通という幼い頃からの腐れ縁で結ばれた三人の伊達藩士が欧州に渡るのだが、当てにしていたスペイン無敵艦隊は既にイギリスに敗れ、ローマ教皇が正宗を皇帝として認めるというのも単なる噂どまり。結局、無為に帰国する事に耐えられない三人はヨーロッパに留まり、フランス国王に輿入れしたイスパニアのアンヌ王女に従って銃士となり、枢機卿リシュリューの陰謀に立ち向かう……とここから先の筋立てはデュマの『三銃士』そのものなのですけど、実はこの三銃士どもがあまりカッコよくないのです。 お話は小説家アレクサンドル・デュマが三人に若かりし頃の話を取材して聞き出した回想という形で進むのですが、三人が三人とも「自分が一番活躍した」「一番モテた」とてんで勝手な主張をするばかりで、本当の真実は結局曖昧模糊としたまま。このあたり、「華麗な騎士道の精華」ではなく「粗野で荒っぽい連中」として三銃士を描いたリチャード・レスター監督の映画版にも一脈通じるかも。腰抜けだったり優柔不断だったり見栄っ張りだったりしても、彼らの浪漫(ここは漢字で書きたい)を求める心と勇気は本物だった、というあたりも「虚像とは異なれど、本物には本物の美徳あり」というレスター版っぽいかな? 最後にデュマが病死するも、遺稿の断片を発見した子孫(史実上のデュマ)が完成させようと決意して終わるあたり、テーマは「浪漫の不滅」ってとこでしょうか。 SWATの芝居というのは「好むと好まざるに関わらず、じたばた足掻く人間のひたむきさ」を描くのが上手いという印象が私にはあるのですけど、その点でも今回の『和・三銃士』はいい味を出していたと思います。 役者陣としては劇団創立メンバーが揃い踏みした三銃士たちも良かったのですが、ミレディーを演じた中友子さんの存在感が大きかったですね。 ただ、残念だった事がふたつ。 ひとつは結構セリフを噛んでいる事。実際の芝居では「使節団が帰国する時にそこから脱走して欧州に留まる」なのが、チラシや劇団のホームページだと「支倉常長がフランスに送った別働隊」という初期設定(?)が載っているあたり、準備が不充分だったのかも知れません。テンポのよい掛け合いが劇団の持ち味のひとつであるだけに、細かいミスで流れが途切れがちだったのは悔やまれます。 もうひとつは、ザ・スズナリという小さな劇場だった事。小さな劇場には小さいなりの良さというのはもちろんあるのですけれど、今回は大人数による群舞もあるし、チャンバラ活劇も舞踏会もあるし、というダイナミックな芝居。正直、ステージのサイズと芝居の内容がマッチしていない印象が残りました。できれば、もっと広い舞台での再演を期待しますね。 |
| ゴメンバー・デ・ショウ(TEAM発砲B・ZIN) スペース・ゼロ 01年9月28日 |
| 「大の大人が笑って泣けるヒーロー物」を描く劇団の新作は、まさにそのキャッチフレーズにこれ以上相応しいものはない、という内容でした。何しろ「ヒーロー物を見て育ち、大人になった人々の物語」なのですから。 10年前に人気を博したテレビ番組「変身戦隊ゴメンバー」。主役のひとりはその後当たり役を得られず、今でも当時の名声に頼ってドサ回りのゴメンバーショーを率いている。そのアトラクチームが仕事をする予定のデパートに、一足早くアトラクチームに擬装した犯罪者の一団が現れ、夜の店舗を乗っ取ってしまう。彼らはショーに集まる子供達を人質に大金を要求するつもりなのだ。 アトラクチームでアカメンバーを演じている青年・紅比呂はテレビの中のヒーローに憧れる熱血青年。事件に直面した彼は、心の中の「本物のアカメンバー」ならばそうするように犯罪者に立ち向かおうとする。だが、実は犯罪者たちのリーダー、紅と同じアカメンバーのコスチュームに身を包んだ男・緋村も、かつて正義の味方ゴメンバーに憧れて刑事になり、そして挫折した男だった……。 シリーズ第一作『ゴメンバー』は本物のヒーローたちの物語、そして2作目『ビデオ・デ・ゴメンバー』は現実世界とヒーローたちが存在する架空世界が交錯する物語。ですが、この『デ・ショウ』ではゴメンバーたちは完全にフィクションの存在。ヒーローは実在しません。 そこで描かれるのは、さまざまな正義の対立。テレビの中のヒーローに憧れ、それを規範にして〈依存〉していた紅と、ヒーローを夢見て刑事になったものの法の限界に絶望し、己の信念だけを拠り所にしてしまった緋村の〈独善〉を両極として、〈愛する者を守る〉〈職務を全うする〉〈法秩序を守り、悪を罰する〉というようなさまざまな「正義」が交錯するドラマには厚みがありました。メインキャラが多く、特に犯罪者側のブルーやピンク、イエローなどはどんな人間で、なぜグループに加わったのかという事が断片的にしか語られず、それがかえって想像をかき立ててくれます。 テンポのいい演出とキレのいいアクションも健在。劇団の持ち味であるスピード感と、前々作『パレット』で試みられた(そして、残念ながらあの時点では成功したとは言い難かった)物語の深みが上手く調和したというのが全体の印象でしょうか? ただ、敢えて注文をつけるとしたら中盤、各キャラがバラバラになって深夜のデパートで追いつ追われつという『ダイ・ハード』風の展開がやや単調に感じられた事でしょうか? キャスト面でも、今回は世代交代を意識しているようで、従来の主役クラスが脇に回り、若手が力を発揮。主役の紅を演じた森貞文則氏は『パレット』に続き「強くカッコいい存在に憧れる若者」役ですが、若さや純粋さが行動として弾けた今回の方がずっと魅力的。事実上のヒロイン格・桜井マツリの福田千亜紀氏は演技のメリハリがもうひと匙欲しかったところですが、キャラとしては「かしこい天然ボケ」という美味しい役柄。すらりとした長身とメガネ、デパートの制服という一見有能風の外見とピントのぼけた感じのギャップがチャーミングでした。これまではテンションの高い「お笑いスパイス」っぽい役所が多かったタケウチヤスコ氏が二枚目で物語の鍵を握っていて、これもまたいい感じ。戦隊ヒーローのタイトなコスチュームのストイックな色っぽさを再認識させられました。 もちろん、脇に回ったいつもの主力もいい味全開です。物語のもうひとりの主役である緋村は平野くんじ氏がシブさとピュアさを併せ持った魅力を発散し、いつもはヒロインを担う小林愛氏はシニカルでシビアなテロのプロっぽいブルーという、ある意味で本作の中でも嫌われどころの悪役を好演。西ノ園達大氏はキレっぱなしでナイフフェチのオカマ・ピンクという強烈な役をこなして、器用なところを見せてくれました。 紅の心の中の「本物のアカメンバー・赤木一番」の劇団主催・きだつよし氏は、出番は多くないものの実に美味しい役どころで、要所要所を絞めてましたし。 あ、私が個人的に大ファンの武藤陶子氏は「ゴメンバーのオリジナルキャストで、今は落ちぶれて過去の栄光にすがるプライドだけ肥大した女優・青山ニコ」という本来ならかなり笑えない役柄にたっぷりの愛嬌を加えていました。やっぱりこの人は正統派ヒロインじゃないお笑い・ヨゴレ系だけど、ものすごくキュートだと思います。 キャスティングといえば、気を使っているなと思ったのが、これまで『ゴメンバー』シリーズでモモメンバーの小林氏と、キメンバーの西ノ園氏がテロリスト側でゴメンバーのコスチュームを着ているのだけど、これが前述の通りブルーとピンク。恐らくは「本物」とイメージがダブったり、観客が混乱したりするのを避けるための配役なのでしょう。お陰で、ビデオの中でモモメンバーとキメンバーがやっているのと同じ行動を、画面の前でブルーとピンクが取っている、という小技ギャグもあったし(もちろん芝居だから、ビデオの中の出来事もコスチューム着た役者が生で演じて、二組の動作がシンクロしているのです。『ジャスキス』シリーズでもやってたけど、このあたりは発砲の得意技でしょうか?)。 そうそう、この物語のクライマックスで誕生する「新ゴメンバー」が、黄色が秘めた恋に悩む男で、桃色が何にも考えていないようで要所要所で鋭さを見せるとか、緑が拗ねて反抗的なように見えるけれど実は正義感が強くて照れ屋というあたり、微妙にオリジナルとキャラが重なっているのもいい感じ。 オリジナルキャストで既に退団しているラブ&ピース川津氏と澤田太歩氏が揃わない限り『ゴメンバー』『ビデオ・デ・ゴメンバー』の再演はしない方針のようですけど、できれば『ジャスキス・トリロジー』みたいに『ゴメンバー三部作』の一挙再演とか、いつか観たいものです。 |
| 突撃!第九八普通科連隊(劇団S・W・A・T) 新国立小劇場 01年11月28日 |
| 陸上自衛隊の落ちこぼれ部隊・第九八普通科連隊。本物に触ってみたいだけのミリタリーオタク、オリンピック選手を目指してたけど体育学校に入れずにいるアマボクサー、親戚が自衛隊の偉いさんなので無理矢理入隊させられた軟弱者、チンピラ崩れ、ただのデブ、そしてなぜか防大出でレンジャー隊員だったのに今はこの部隊にいる男。 ぐーたらな日々を送っている彼らの元にエリート女性自衛官(しかし、のほほんとした癒し系おばさん)が現れて厳しい再訓練を課す。やがて訪れる総合訓練で、超エリートの一佐が率いる部隊に敗れれば彼らは予備自衛官扱い−−即ちクビになってしまうのだ。 例の事件に引きずられてポリティカルな内容になるかと思いきや、素直でシンプルな『がんばれベアーズ』系ダメチーム逆転モノでした。主演の清水浩智氏は実年齢はさておきいい感じでの「青二才」っぽさがあり、こういう芝居だと実にいい味を出してます。女性エリート役をTARAKOさん(私の印象だとやっぱりちびまる子ちゃんというより『ザブングル』のチルだな)が、設定上も「おばさん」なのにかなりかわいい「萌えキャラ」でありました。 自衛隊というモチーフのせいか、ずいぶんと「肉体性」の強い舞台。ステージの上でみんなが走り回り、腕立て伏せをして、あまつさえ兵器マニアの夢として登場したジャージ姿の一団が組体操でヘリコプターや装甲車を表現するわ、天井からヘリボーンが垂直懸下して降りてくるわというのには度肝を抜かれました。 細かい掛け合いとか繰り返しのセリフギャグがかなり多かったのですけど、これがタイミングとかかなり緻密に計算されている印象が残った、なかなか楽しめる舞台でしたね。 |